うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

おもに運動に関して、気ままに話したいと思います。
のんびり更新しますので、どうぞ気長にお付き合い下さい。

異例の「200日合宿」を敢行中の男子ホッケー“さむらいジャパン”

2010年04月16日 | 団体球技(屋外)
「さむらいジャパン」こと、男子ホッケー日本代表。現在世界ランキング16位の男子ホッケーは、1968年メキシコ五輪以来、実に44年間も五輪本大会から遠ざかってます。そして、男子ホッケーは11大会ぶりの五輪出場を目指して、今年の1月から異例の強化方法を現在行ってます。それは、200日にも及ぶ長期合宿です。こんなに長期に合宿をするのは、地元開催だった1964年東京五輪以来だそうです。

オランダ人監督である日本代表のジークフリート・アイクマンが目指すホッケーは、サッカーで例えるなら監督の母国の代名詞である「トータル・フットボール」の如く、全員守備&全員攻撃だそうです。体格とパワーで劣る日本は、運動量が生命線です。かつての日本は、玉砕戦法同然に攻撃一辺倒で、守備はザルのような感じでした。だが、今回の合宿で日本は、守備意識を植え付けた指導を心掛けているそうです。なので、今回招集した28名の選手を、徹底的に体力トレーニングで鍛え上げております。その後は、より戦術的な指導を施して実戦経験を積み重ねるなど、段階的な強化を図る予定だそうです。

ただ、代表チームの長期合宿を実施するに当たってひとつ気掛りな事があります。それは、今年の日本リーグの試合数を大幅に減らした事です。男子の日本リーグは参加10チームです。昨年なら参加10チームが1回戦総当りのリーグ戦を実施して、上位4チームがプレーオフを戦いました。全試合は49試合で、少なくとも1チームあたり9試合は戦えました。しかし、今回は10チームを東西5チームずつ分けてそれぞれ1回戦総当りのリーグ戦を実施し、リーグ戦の順位の応じたプレーオフを戦う形式に変更。なので、全試合数が29試合と激減。1チームあたりの試合数も、最低でも5試合だけしか戦えなくなりました(なお、女子は例年通りに、参加8チームが2回戦総当りのリーグ戦なので、1チームあたり14試合戦えます)。

つまり、男子ホッケーは、国内リーグを犠牲にしてでも、五輪出場に賭けているのです。ちなみに、競技は異なりますが、近年躍進著しい女子体操は鶴見虹子ら10人を強化指定選手に選び、ロンドン五輪で悲願のメダルを獲得する為に、今年1月から異例の22ヶ月の長期合宿を行ってます。ただ、本来なら、限られた選手のみに時間と資金を集中的に投下するこの強化方法は、国内全体の発展を考えれば、決して望ましいとは思えないです。とはいえ、競技人口や資金も少ない競技団体の事情を考慮すれば、少数精鋭の集中強化方式は致し方ないのかもしれません。ましてや、日頃からマイナー扱いされているホッケーの場合、五輪出場を果たせれば投資した元は全て取り戻せる算段もあるのでしょう。

かつて、男子ホッケーは、1970年バンコクアジア大会の3位決定戦でマレーシアを1-0で勝利して、1972年ミュンヘン五輪の出場権を獲得しました。だが、1972年1月に、札幌五輪の準備で忙殺された日本体育協会と日本オリンピック委員会が、男子ホッケーの五輪出場の手続きを怠る信じられない大チョンボを犯して、五輪出場を絶たれた悲劇があります。更に不幸なのは、この悲劇以降、男子ホッケーは現在に至るまで五輪本大会の出場が遠ざかっていることです。他の団体球技を見渡しても、五輪未出場の女子水球を除いて、男子ホッケーは最も五輪出場から遠ざかってしまった種目となりました。それだけに、関係者は五輪出場に対して、並々ならぬ強い意欲があります。

だが、男子ホッケーが今年最大の目標としている、ロンドン五輪アジア予選を兼ねた11月の広州アジア大会では、優勝チームしか五輪出場権が与えられてません。アジア大会で出場権を得られなかった場合、来年以降に行われる五輪世界最終予選に回らなければなりません。残念ながら、日本男子は昨年5月のアジア杯では6位に終わり、11月のW杯世界最終予選も決勝戦で強豪のパキスタンに敗れてしまい、今年3月にインドで開催されたW杯本大会の出場を逃した悔しい経緯があります。

世界ランキングも、アジア王者の韓国が5位とアジア最上位に位置し、8位パキスタン、9位インド、14位マレーシア、15位中国、そして日本が16位と続きます。なので、現在の実力を考慮すると、アジア大会での五輪切符獲得はかなり厳しいと言わざるを得ません。世界最終予選も組み合わせ次第だと思います。日本は一昨年4月に岐阜・各務原で開催された北京五輪の世界最終予選では、当時の世界ランキング1位のドイツと同組になり、決勝戦で0-4で完敗してあと一歩で出場を逃した経緯があります。五輪参加チームは全12チームなので、ランキング的に見れば日本はあと一歩ですが、なかなか超えられない高い壁が聳え立っているのが現実です。

諸刃の剣ともいえる今回の異例の長期合宿は、はたして実を結ぶのでしょうか?



▼第12回男子ホッケーW杯の最終順位
(2010年2月28日~3月13日 @インド/ニューデリー)

優勝:豪州、2位:ドイツ、3位:オランダ、4位:イングランド、5位:スペイン、6位:韓国、
7位:アルゼンチン、8位:インド、9位:NZ、10位:南ア、11位:カナダ、12位:パキスタン

今大会の詳細の記録


日本ホッケー協会ホームページ
日本ホッケー協会公認ブログ

今年の男子日本代表候補リスト(pdf)
2010年3月15日発表の国際ホッケー連盟の世界ランキング

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。