うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

おもに運動に関して、気ままに話したいと思います。
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福島千里が陸上女子100mで日本新を連発

2009年06月08日 | 陸上
陸上のスプリント挑戦記録会を兼ねた布勢リレーカーニバルは7日、鳥取県コカ・コーラウエストスポーツパーク陸上競技場で行われ、女子100メートルで福島千里(北海道ハイテクAC)が追い風1・9メートルの条件下、11秒24の日本新記録を樹立した。
20歳の福島はこの日、100メートルを2度走り、追い風0・8メートルだった最初のレースで11秒28の日本新を出し、世界選手権(8月・ベルリン)参加標準記録A(A標準=11秒30)を突破。これを2レース目でさらに0秒04塗り替えた。従来の日本記録は福島と二瓶秀子(福島大=当時)が持っていた11秒36だった。
女子100メートルの高橋萌木子(平成国際大)も2レース目で11秒32を出してB標準(11秒40)を突破。男子100メートルで期待された塚原直貴(富士通)は最初のレースで10秒36に終わり、疲労を理由に2レース目は棄権した。

〔共同通信社 2009年6月7日の記事より〕


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凄いぞ、2レース連続A標準突破!

日本の陸上の短距離陣は、男子に関しては、個人としては、2003年のパリ世界陸上200mで、末続慎吾が銅メダルを獲得した事はありますが、まだまだ世界のトップクラスには及びません。ただ、リレー種目となると、素晴らしいバトンパスなど、日本人の持ち前である巧緻性を発揮して、1992年のバルセロナ五輪以降、世界大会の決勝進出の常連になっています。強豪国の敗退の幸運があったとはいえ、日本男子短距離陣の長年の集大成が、400mリレーの銅メダル獲得だと思います。

だが、女子短距離陣は、おそらく日本のあらゆる競技を通じて、世界から最も遠い種目だと思われてました。体格や身体能力もさることながら、選手層の薄さも要因でしょう。しかし、近年は強化が進んでいます。女子短距離は、かつてはレベルが低すぎて五輪に参加する事すら出来ませんでしたが、昨年の北京五輪では、福島千里が日本女子短距離の選手としては、56年ぶりに五輪の女子100mに参加しました(なお、1次予選敗退)。また、福島をはじめ高橋萌木子や北風沙織など、ライバルが多数存在するのも大きいです。競争によってお互いが刺激を受け、結果的に日本女子短距離陣全体のレベルアップに繋がるからです。

その成果が、今回の福島の2レース連続の日本新記録の更新です。しかも、この2レースの記録は、いずれも世界選手権参加標準A記録を満たす記録なので、本当に価値があります。実は、福島は北京五輪では参加標準A記録を満たせませんでしたが、陸連は将来性を見込んで代表入りさせました。それだけに今回のA標準記録突破は、自力で世界への切符を勝ち得ただけに、見事に周囲の期待に応えました。また、同走した高橋も11秒32とB標準記録を満たしました。ライバルが鎬を削って、お互いを高め合ったことによる相乗効果でしょう。まさに好循環です。この好ムードを今月末の日本選手権にまで持ち込んで、彼女達の好レースを期待したいです。そして、8月のベルリンでの世界選手権でも、少しでもタイムを伸ばし、一つでも上のステージで戦えたら幸いです。


この勢いを400mリレーに繋げよう

そして、この勢いを持続して、女子短距離陣にとって最大の目標である、ロンドン五輪の400mリレー出場権の獲得に繋げてほしいです。前回の北京五輪の400mリレーの参加資格は、五輪の年に国際陸連の認定する大会の上位2レースの平均タイムで、世界16位以内に入れば五輪出場権が決まるシステムでした。日本は昨年5月の北京五輪プレ大会で、予選で43秒67の日本新記録を叩き出して、この時点で世界20位から17位に上昇しましたが、決勝では44秒11に終わり、あと一歩で五輪出場を逃した悔しい経緯があります。かつて、男子は弱すぎて五輪のリレー種目に派遣しなかった時代がありましたが、ここ20数年近く継続して五輪や世界陸上に派遣させています。継続的に世界を経験させてきた事で、世界と戦う術を学んで、精神的な重圧にも臆することはなくなりました。その長年積み重ねた成果が、北京五輪での銅メダル獲得に繋がりました。

まだ、女子短距離陣の強化は、世界的に見れば、羊の歩みかもしれません。ただ、かつてはメンバーが揃わずに、リレー種目に派遣すらできなかった男子が、決勝レースの常連になって、五輪でメダルを獲得できるまでレベルアップするなんて、20数年前には誰も予想できませんでした。だからこそ、女子も男子の成功から学び、必ず五輪の大舞台に立つ権利を自力で掴み、継続的に世界大会に参戦してほしいです。それだけに、今回の福島が参加標準A記録を突破しての日本記録更新は、ライバルや後に続く選手の励みになって、結果的に個人のレベルアップや選手層が厚くなる事に繋がるので、非常に価値があります。今月末の日本選手権がとても楽しみです。



☆福島の日本新記録の走りです

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