オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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シリーズ絶滅種:「レッドドッグ」をラスベガスで見た記憶

2017年04月08日 13時42分47秒 | シリーズ絶滅種
どんなものにも流行り廃りはあるものです。コインマシン業界やギャンブル業界においても、かつては人気を博したのに今では全く顧みられなくなったものは珍しくありません。今後はそんなゲームを「シリーズ絶滅種」というジャンルにまとめ、少しずつ記録を増やしていこうと思います。その第一回目に取り上げるのは、「レッドドッグ(Red Dog)」というギャンブルゲームです。

確か1993年、ワタシにとって生涯二度目のラスベガス訪問時のことです。この時ワタシは、仕事仲間と共にラスベガス・ヒルトン(現ウェストゲート)に宿泊しました。当時はモノレールもなく、ラスベガス・ヒルトンは繁華街から孤立して聳え立つ巨大ホテルだったので、滞在何日目かの夜、少しは違うところに行こうと仲間たちと語り合い、とりあえず目の前に見えるサハラ(現SLS)まで歩いて移動することにしました。しかし、ラスベガスヒルトンの敷地は広く、宿泊棟から表通りのパラダイス通りに出るだけでも数百メートルは歩かされ、そこからさらにサハラまで1㎞弱、トータルではおそらく20分程度は歩いたと思います。これにより、「ラスベガスでは近くに見えるものも実は遠い」ということを初めて思い知りました。

サハラに到着し、パラダイス通り側にある裏口のようなエントランスからカジノに入ると、そこはすぐスポーツブックのエリアだったように記憶しています。しかし、当時からその壮大さが有名だったラスベガス・ヒルトンのスポーツブックエリアとはまるで違って、さほど広くもないエリアの頭上にいくつかのCRTモニターが設置されているだけで、めっぽうみすぼらしい施設だった記憶が残っています。そのスポーツブックのエリアを抜けた先のカジノエリアに、一見したところブラックジャックテーブルに見えるけれどもレイアウトが全く違う、初めて見るゲームがありました。それが「レッドドッグ」でした。

いったいどうやって遊ぶのだろうとしばらく観察していたら、ルールがわかってきました。

【レッドドッグのゲーム手順】
(1)プレイヤーが賭ける。
(2)ディーラーがシューから2枚のカードを取り出し、表向きにして並べ、
  2枚のカードのランクの間隔(スプレッド)がいくつであるかを示すレイアウト上の数字の上に
  赤い犬の人形を置く。
(3)この段階で、プレイヤーは賭け金を倍にレイズできる。
  ただし、2枚のカードが同じランクの時にはレイズはできない。
(4)ディーラーは3枚目のカードをシューから取り出して表向きに見せる。
  3枚目のカードがスプレッド内に収まるランクであればプレイヤーの勝ち。

例えば初めの2枚が5と9の場合は、3枚目が6 or 7 or 8であれば勝ちとなる(スプレッドは3)。

【レッドドッグのルール】
*カードのランクは、2を最低とし、Aを最高とする。
*2枚のカードのスプレッドがゼロの時(例:4-5、10-J)は引き分けとなり、3枚目は配られない。
*2枚のカードが同じランク(例:7-7)で、3枚目も同じランクの場合(スリー・オブ・ア・カインド)は11倍の配当が付く。スリー・オブ・ア・カインドが成立しない場合は引き分け。
*配当はスプレッドによって異なる。
 スプレッド=1: 5倍
 スプレッド=2: 4倍
 スプレッド=3: 2倍
 スプレッド=4以上: 1倍

このゲームでプレイヤーのテンションが上がるタイミングは、スプレッドが大きい時のレイズと、初めの2枚がペアで負けが無いことが確定し、あとは11倍の高配当を得られるかどうかで期待感が盛り上がる時であるように思いました。ただ、ルールが簡単で手を出しやすいところは良いのですが、全てのプレイヤーが同じ結果になってしまうところが今一つ妙味に欠けるように思いました。また、ひょっとするとカードカウンティングが有効なゲームかもしれないとも思いました。

この頃、レッドドッグは、ラスベガスの他のカジノでも見ることができました。ワタシの手元には、サーカスサーカスの別館のようなカジノ「スロッツ・ア・ファン」と、「インペリアルパレス(現Linq)」で配布されていたレッドドッグのインストラクションがあります。


スロッツ・ア・ファンが配布していたインストラクション。本来は二つ折りで、左は表紙側、右は中側。遊び方のほか、レッドドッグの歴史が紹介されている。


スロッツ・ア・ファンのクーポン。インストラクションにホチキス留めしてあった。このクーポンを添えて1ドルを賭け、勝つと2ドル貰えると書いてあるが、スプレッドが3以下の時はどうなるのだろうか。


インペリアルパレスのインストラクション。これも本来は二つ折りで、左は表紙側、右は中側。「速い勝負、エキサイティングなアクションがあなたを待っている。我々の最新カジノカードゲーム、レッドドッグ!」とある。「最新の」と謳っているところを見ると、レッドドッグはちょうどこの時期に、ラスベガスに新たに導入されようとしていたということだろうか。

スロッツ・ア・ファンのインストラクションによれば、「レッドドッグ」は、西部開拓時代の1920年から30年にかけて「エイシー・デューシー(Acey Deucy)」もしくは「イン・ビトゥイーン(In-Between)」と呼ばれ、西部一帯でたいへん人気があり、またたくさんのバリエーションもあったとのことです。

実は1970年代の半ばころの少年ジャンプ誌に、良く似たゲームをテーマとした漫画(タイトルは覚えておりません)が掲載されており、そこでは「インサート」と呼んでいましたが、これも多くのバリエーションの一つだったのかもしれません。

コインマシンの世界では、sigmaがビデオポーカー筐体の「HRシリーズ」で、「Between Card」というタイトルの、レッドドッグのバリエーションを発売しています。正確な発売時期は特定できませんが、HRシリーズの発売は1987年(関連記事:ワタクシ的「ビデオポーカー」の変遷(6) 90年代のビデオポーカーとsigmaの終焉)ですので、それ以降であることはわかります。このゲームでは、3枚目のカードは画面上部からスクロールして現れる5枚の裏向きのカードからプレイヤーが選んで決める、と言うルールでした。また、スプレッドやスリー・オブ・ア・カインド以外にも様々な役が設定され、数百倍の高配当もありました。

また、これも正確な時期が特定できませんが、おそらく1990年代半ば、sigmaは「HRシリーズ」に続く「LOTUS DEAL」筐体でも、「Red Dog Poker」というタイトルを出しています。ゲームの内容は「Between Card」から若干変更され、通常のドローポーカーのように5枚のカードを裏向きに配り、このうち左右両端の2枚を表向きにした後、残った3枚から1枚を選ぶ形になりました。このタイトルは、1台の機械で複数のゲームが選べるマルチゲーム機の中でも見ることができました。


sigmaのレッドドッグポーカー。

しかし、ワタシがラスベガスに毎年行くようになった最初の年である1998年には、ラスベガスにレッドドッグの姿を確認することができませんでした。その後もラスベガスに行くたびにレッドドッグを探し続けましたが、その名前すら見ない状態が何年も続いたため、「レッドドッグ」はワタシ的絶滅種に認定されることとなりました。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
アレンジボールはあまり多くは (道草亭ペンペン草)
2018-11-11 16:37:30
アレンジボールはあまり多くはやりませんでしたが、我々が学生時代は神田神保町方面に行きますと雀玉の専門店が何店もありました。靖国通りの黒沢楽器の近くのスキー用品を売っていた付近、そして神保町から水道橋に向かう途中にいくつかありました。当時は、店員が役を数えて、手動でメダルを出してました。天和で和がって役満だったのに関わらず単なる自摸上がりにされて文句言ったことがあります。後に全自動になり、水道橋のミトヤ(だったか?)などに置かれていたのを覚えてます。
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Re:アレンジボールはあまり多くは (nazox2016)
2018-11-11 23:35:29
70年代終わりころは、まだアレンジボールや雀球は現役でしたね。全自動の雀球が初めて登場したのは、おそらく1976年か77年くらいだったと思います。今ではなんてことのない技術なんですが、当時は驚いたものでした。
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Unknown (Liner)
2021-06-08 10:53:07
SigmaのHDは「Between cards」じゃなかったかなぁ…
並びがQKA as spadeだと高配当とか、そういう仕組みを入れていたような記憶があります。

RED DOG POKERは配られている5枚で特定ポーカー役が出来ていると別配当があるというルールで、これによりRED DOG側のハウスエッジを薄める役目を持っていたのでしょうね。
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Unknown (nazox2016)
2021-06-08 20:45:25
「Between cards」と「Red dog poker」の違いは、実ははっきりとは覚えておりませんが、かなりの高オッズの役が設定されていましたね。

ミス投稿は先ほど削除しておきました。またお気づきのことがありましたら躊躇なくご指摘ください。
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