そしてバーベキュー開始。「さて、そろそろか。締めの焼きおにぎりの前に、最後の肉としてこの小ぶりのハンバーグを食べるのがウチ流だ。牛100%でつなぎは卵黄のみ。レアで召し上がれ」「美味しそう」「こんなに食べたのに、性懲りもなくヨダレが出るね」しかしハワードは箸でつかんで皿に運ぶ途中でうっかり落としてしまう。「ああっー!」絶叫する一同。余分はない。「ダイジョーブです。ちょっと落ちたところだけ剥げば」しかし箸でつかんで持ち上げようとするも、つなぎが卵黄だけだからか崩れてしまう。「ああっー!」絶叫する一同。「もう、下手くそね」「アスホール野郎」「猿以下だな」「これを使え」調理用トングを手渡そうとする清水。しかし焦って箸で救出しようとした結果、嬲られたハンバーグは既に無惨にも崩壊していた。「あーあ、こりゃ食えねえな」「勿体ない」「信じられない愚行だわ」「そりゃ国家財政も破綻するわ」「やはりアメリカ人は食べ物の扱いがね」「ゲータレードばかり飲んでるからこうなる」四面楚歌に泣きそうになるハワード。しかしそこに救いの手が。「僕の分、半分食べなよ」「その時、私には道真君が、夕飯の救世主、夕メシアに見えました。今思えば、それが最後の晩餐でしたが……」この期に及んでの駄洒落に唖然とする一同。しかし本気でボロ泣きするハワードの姿に、やがて泣き笑いに。
木下古栗「金を払うから殴らせてくれないか?」所収の「Tシャツ」という短編の記述
木下古栗「金を払うから殴らせてくれないか?」所収の「Tシャツ」という短編の記述