議会雑感

国会のルールや決まりごとなど、議会人が備忘録を兼ねて記します。

安保法案の採決方法(衆院)

2015-07-20 | 国会ルール
○日本国憲法第57条

(前項略)出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。

○衆議院規則第152条

議長が必要と認めたとき、又は出席議員の5分の1以上の要求があつたときは、記名投票で表決を採る。


通常の表決(採決)方法として、衆議院は起立採決、参議院は押しボタン採決が採られています。また、以前紹介した、無名投票に対し、記名投票があります。

7月16日、衆議院本会議で安保法案の採決が行われましたが、起立採決でした。

参議院の場合は、出欠も押しボタンでの採決も記録に残る形となっていますが、衆議院の場合は、記名投票にしない限り、出欠も採決も、議員個人の行動としては記録に残りません。

よって、予算や大型法案の場合は、賛成する議員は白票を、反対する議員は青票を持って檀上で投票する、つまり記名投票で記録に残すのです。

が、今回は「起立多数」と記されるのみで、議員一人ひとりの投票行動は記録に残りません。

採決前に退席を決めていた野党各党が、記名投票を求めなかったからです。

もちろん、これには野党の考え方もあったものと思われます。なぜなら、充実審議を求める野党各党からすれば、安保法案は1法案あたりに換算すると10時間しか議論されておらず、論点も山積している中、質疑の終局も採決も認められない立場でしょう。

この立場に立てば、採決に加わるということは、質疑の終局を認め、採決という行動を認めることに繋がるため、採決の直前の退席を選んだものと考えられます。

しかしながら、我が国の在り方を大きく転換することになるであろうこの法案については、議員一人ひとりの投票行動を後世に明確に残すべきではなかったのかと、個人的には強く思います。

現実的なことを指摘すれば、衆議院の議席に占める野党の割合からすれば、どう見ても巨大与党に届くわけはなく、どこかの時点で与党が採決に踏み切るのは自明の理だからです。

数の少ない野党といえど、出席議員の5分の1に届く議席は有しているため、本会議で記名投票を求めることができます。与党を含め、議員一人ひとりの投票行動を議事録に掲載し、後世への記録として欲しかったな、と思うのです。

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