世界の南船北馬から

中国の言葉で南船北馬は旅を意味します。南は船(シーカヤック)で旅を。馬は飼ってないので北馬はいずれ。

北大武山:高砂義勇隊の石碑を読む(その2)

2011年06月30日 | 台灣/Taiwan
 前回より。

 台湾南部。三千メートルを越える北大武山の頂近く、日本統治時代に日本人が建立した神社がある。


(解読しているのは、正面の石碑の碑文です。)

 日本人が建立した石碑から、当時の高砂族の感情を読み取るというのは難しいですが、今の日本と同じように国難に際した時に、犠牲となっていった人々の忘れ去られそうな歴史を憶えておくことも、現代に生きる者の務めではないでしょうか。

 もちろん、当時は戦争中なので現代と比べるような事ではないでしょうが、善悪関係無く、戦争を美化する意図も無く、ただ台湾の地に刻まれ残された日本語の碑文を知ってもらいたいだけなのです。

 幸い、台湾では日本統治時代の遺物遺構を保護しようという機運が高まっていることは、日本人として非常にありがたい事なのだと思います。1987年まで続いた戒厳令下の台湾でもそうでしたが、他の国でも大日本帝国が残した遺物遺構は破壊を免れずに消えていきました。

 善悪関係無く、歴史資料として残っていく事を望みます。



昭和十七年三月十五日第一回高砂義勇隊ノ編成ヲ了ル
(昭和17年3月15日 第一回高砂義勇隊の編成を終えるや) 

ヤ勇躍比島ニ侵攻シ米比軍最後ノ據點タル「バタアン半
(勇躍フィリピンに侵攻し、米フィリピン軍の拠点であるバタアン半島)

島」及ヒ彼カ金城湯池ト特〇シ「コレヒドール」要塞ノ攻略
(及び、金城湯池のようなコレヒドール要塞の攻略戦に)

戰ニ参加シテ功アリ更ニ轉戰「ニューギニア」ニ侵攻スル
(参加して功績を挙げた。更に転戦してニューギニアに侵攻するや)

ヤ熾烈ナル空爆下彈雨ヲ浴ヒテ上陸ヲ敢行シ沈著能ク
(熾烈なる空爆の下、弾雨を浴びて上陸を敢行し、とても冷静沈着に)

糧秣彈藥ノ擔送ニ成功セリ而モ時ヲ移サス挺身「モレス
(糧秣弾薬の担送に成功し、しかも時を移さず身を挺してモレスビーに)

ビー」向ヒ先遣隊トシテ強行進撃ス此ノ間千古不鉞ノ
(向かい、先遣隊として強行進撃した。この間、千古不鉞の)

大密林ニ荊棘ヲ排シ峨々タル懸崖ヲ攀チ「スタンレー」ノ
(大密林に荊棘を排し、峨々たる懸崖を攀じ登り、スタンレーの)

天險を踏破シ道路構築ニ補給輸送ニ將又直接戰鬪ニモ
(天険を踏破し、道路構築に補給輸送を行った。また直接戦闘にも)

参加セリ特ニ「ギルワ」「ブナ」ノ戰鬪ニ至リテハ死山血河ト
(参加して、特にギルワ、ブナの戦闘に至っては死山血河と)

言フモ過言ニアラス地軸揺カス砲爆撃下骸ヲ積ミテ
(言うも過言ではない、地軸揺るがす砲爆撃の下、骸を積んで)

壘ト爲シ血ヲ醜シテ池ト爲ス而モ尚能ク第一線陣地ヲ
(塁と為し、血を醜して、池と為す。しかも尚、第一線陣地を)

死守シ遂ニ頑強ナル敵ヲ撃退セリ又敵ノ包圍圏ヲ突破
(死守して 遂に頑強なる敵を撃退した。また敵の包囲圏を突破)

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バタアン半島:フィリピンルソン島中西部にある半島のこと
金城湯池:非常に守備の堅いこと
コレヒドール:ルソン島マニラ湾の入り口に浮かぶ小島のこと

沈著:落ち着いた様子
糧秣弾薬:食料と弾薬
モレスビー:現パプア・ニューギニアの首都「ポート・モレスビー」のこと

千古不鉞:開拓できないほどのジャングルのこと
荊棘:いばらのこと
峨々:山などが険しく聳え立つ様子

「スタンレー」:パプアニューギニア南東部にあるオーエン・スタンレー山脈のこと
「ギルワ」「ブナ」:スタンレー山脈を挟んでモレスビーと反対側の地名
死山血河:死者が山の様になり、河が血に染まる様子
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※:前半のフィリピンでは功績を挙げていますが、後半のパプアニューギニアではモレスビー攻略の為に赴いたスタンレー山脈を撤退命令の為に越えられず、後のギルワ、ブナの戦闘ではかなりの犠牲者を出した。
「又直接戰鬪ニモ参加セリ」とは、軍人ではなく軍属(道路構築や補給輸送)での任務が主な為。

つづく

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