失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「港のマリー」 夏木マリ 1995年

2009-09-09 | 
港のマリー。このタイトルは、ジャック・ドゥミの港町3部作、ミシェル・ルグラン、さらに言えば「ローラ」のアヌーク・エーメへと続く連想ゲームを小西さんは想定している。確実に。

①港のマリー La Marie du port
作詞・作曲:小西康陽
くどいようだが、ほとんど「ローラ」の設定だもの。異国へと去っていった男と、港町に残された女の物語。「お酒ばかり飲んでる 物憂げなマリー」「どうせマリーは今夜も 誰も愛さない」と前半はマリーをとりまく情景の淡々とした描写が続く。最後になって「あなたも」「可哀想なマリーに 恋をしたのね」「やめたほうがいいわね」と、語り手(おそらく中年の女性)と聞き手(おそらく若い船乗り)が急に生身の人間として姿を見せ、物語の入れ子構造が立ち現れる。うまいなあ、小西さん。ルグランほどの名曲は書けなくても、ミニマルな持ち札を上手に料理している。フルート、サックス、ヴィブラフォン、アコーディオンなどをカラフルに並べたアレンジは、やっぱりルグランチックだし。夏木マリのクールな表現力も魅力的。

②むかし私が愛した人 L'homme qui j'aimais
作詞・作曲:小西康陽
オリジナルはちわきまゆみ、1994年。前にも書いたけど、一年後のこの夏木マリヴァージョンのほうが、あらゆる面で優れている。この曲はマリに歌われるのを待っていたのだ、と思う。

③④カラオケ

定価1000円、中古で100円。
タバコをくゆらすマリー。いや、マリ。絵にかいたような「いい女」。ちょっとコロッケ(の、ちあきなおみ)ぽい、とか言っちゃダメっす。クレジットないけど、まず間違いなく信藤デザインだろう。絵的にはちょっとキマリ過ぎか。「夏、キマリ!」はエイチ・アイ・エスのCM。



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2 コメント

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Unknown (都市色)
2009-09-10 08:09:50
こんにちは。
シングルのジャケット良いですね。
そうですね、「ローラ」を彷彿させますね。この映画も好きです。
小西さんのリクエストに容易く応じてしまえる芸の深さを感じます。
夏木マリさんとの共演盤は結構多いのですね。その存在感の大きさがあるから、小西さんもインスピレーションが湧いたのでしょう。
野宮さんもマリさんも小西さん好みの個性を持っていたのですね。
小西さんは解散以降、活動がピチカート時代に比べて散漫なのはミューズの不在が影響してるのかも。
野本かりあさんでは役不足だったかもしれません。「カアリィ」は良いアルバムですが。
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Unknown (nakamura8cm)
2009-09-10 23:04:51
確かに夏木マリの存在感はこの方向性(クールないい女)では最高峰、これ以上は望めない素材ですよ。
80年代頃は、年増の魔女みたいな「残忍な悪役」のイメージでしたけどねえ(笑)。こんなに声がいいなんて思ってませんでした。
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