若干時機に遅れての投稿になりましたが、先週、ロシア人船員に対するおとり捜査の違法性が問題となった事件の再審公判が行われました。
私は下っ端弁護団員にすぎませんが、アンドレイさんの尋問を担当させていただきました。
「異例 検察が無罪論告 違法なおとり捜査再審は即日結審 ロシア人男性は無罪へ」(北海道文化放送)
北海道警察の違法なおとり捜査で、有罪判決を受けたと訴えたロシア人男性のやり直し裁判の初公判が、2月23日、札幌地方裁判所で開かれました。検察側は「無罪が宣告されるべきだ」と異例の無罪を求めました。
ロシア人のアンドレイ・ナバショーラフさん(47)は、1997年、北海道小樽市で、拳銃や実弾を所持したとして逮捕され、懲役2年の判決を受け服役しました。
その後、北海道警察の違法なおとり捜査で実刑を受けたと再審請求、違法を認められ、再審が決定しました。
23日、札幌地方裁判所で開かれた再審の初公判で、ナバショーラフさんは「道警の捜査協力者に中古車と拳銃を交換するとそそのかされた」と無罪を主張。
弁護側は「違法なおとり捜査」だと批判しました。
一方、検察側は「無罪が宣告されるべき」として異例の無罪を求め、即日結審しました。
3月7日の判決公判で、無罪が言い渡される見通しです。
ロシア人のアンドレイ・ナバショーラフさん(47)は、1997年、北海道小樽市で、拳銃や実弾を所持したとして逮捕され、懲役2年の判決を受け服役しました。
その後、北海道警察の違法なおとり捜査で実刑を受けたと再審請求、違法を認められ、再審が決定しました。
23日、札幌地方裁判所で開かれた再審の初公判で、ナバショーラフさんは「道警の捜査協力者に中古車と拳銃を交換するとそそのかされた」と無罪を主張。
弁護側は「違法なおとり捜査」だと批判しました。
一方、検察側は「無罪が宣告されるべき」として異例の無罪を求め、即日結審しました。
3月7日の判決公判で、無罪が言い渡される見通しです。
「おとり捜査再審 『すっきりした良い気持ち』」 (毎日新聞)
北海道警の違法なおとり捜査で実刑判決が確定し、服役を強いられたとして、無罪を訴えていたロシア人男性のアンドレイ・ノボショーロフさん(47)に対する再審の初公判が23日、札幌地裁(中桐圭一裁判長)であり、即日結審した。検察側は論告でおとり捜査に触れず、「直ちに無罪判決が言い渡されるべきだ」として求刑を放棄した。判決公判は3月7日に行われ、無罪が言い渡される見通し。
ニュースサイトで読む: http://mainichi.jp/articles/20170224/k00/00m/040/075000c#csidxc8aab2a6a6ab879b980f98f14f2eceb
Copyright 毎日新聞
ニュースサイトで読む: http://mainichi.jp/articles/20170224/k00/00m/040/075000c#csidxc8aab2a6a6ab879b980f98f14f2eceb
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北海道の方ならご存知かもしれませんが、この件は、あの有名な稲葉警部補が絡んだ、警察による組織的な違法捜査事件です。
「恥さらし」稲葉圭昭(だいわ文庫)
北海道警察 日本で一番悪い奴ら (だいわ文庫)
銃器対策課のエースと呼ばれた警察官が、「エス」と呼ばれるスパイ(捜査協力者)を通じて、手当たり次第に銃の密輸を唆し、その誘いに乗って拳銃を持ち込んでしまったアンドレイさんを逮捕したという事件でした。
逮捕当初からアンドレイさんは、「パキスタン人に勧誘された」と主張していましたが、警察官らは会議を開いて、パキスタン人が逮捕現場にいなかったことで口裏合わせをしました。
刑事の公判では、アンドレイさんの具体的かつ迫真性に富んだ主張について、嘘だと言い切ることも出来ず、一旦その信用性を留保したうえで、「捜査官らの証言が皆一致している」からという理由で、捜査官らの証言を採用し、それと異なるアンドレイさんの証言を最終的には信用出来ないとして排斥しました。
アンドレイさんは、懲役2年の実刑判決を受け、服役したのでした。
事件は平成9年のことでしたが、事態が急変したのは平成14年のことです。
稲葉警部補が覚せい剤取締法違反で逮捕されたことがきっかけでした。
稲葉事件はネット上でもたくさん情報がありますし、書籍も販売されています。
さらに、昨年公開された「日本で一番悪い奴ら」という映画にもなりました。
「日本で一番悪い奴ら」公式HP 映画『日本で一番悪い奴ら』 予告
公判で検察官は、有罪の立証はしませんでした。
その点は勿論良いことなのですが、検察官は、弁護側が申請した書証について、不必要だとの意見を述べました。裁判所も、書証の採用を見送りました。
弁護側が申請した書証は2つだけ。稲葉氏の陳述書と、証人尋問調書です。
確かに、違法捜査の事実については、確定した再審開始決定審において認定されています。
確定した決定の内容は、裁判所にとって「公知の事実」となりますので、弁護側申請証拠が絶対に必要か、といわれれば、そうではないかもしれません。
しかし、弁護側証拠が取り調べられないと、再審公判期日においては、まったく違法捜査について触れられないまま結審することになります。
弁護側申請証拠が取り調べてもらえたならば、その内容を法廷で読み上げるので、違法捜査の事実を明らかに出来たのですが、それをさせてもらえませんでした。
本件では、立証責任を負っている検察官が有罪立証をしない以上、無罪判決が下されることは確定しています。
アンドレイさん自身、拳銃を持ち込んだこと自体認めていますが、日本の刑事裁判では、自白のみでは有罪に出来ません。
補強証拠が必要ですが、その証拠がないのです。
判決においては、無罪の理由はあくまでも「有罪とすべき証拠がない」ということです。
今の争点は、裁判所がさらに踏み込んで、捜査機関による違法捜査の事実をどこまで踏み込んで書くのか、という点です。
我々としては、きちんと法廷において、違法捜査の事実を読み上げるべきだったと考えています。
裁判長には期待は出来ませんが、あとは左右の裁判官がどこまで頑張ってくれるか、だと思います。
話題は変わって、先週末は、公判を終えたアンドレイさんと、ルスツに滑りに行ってきました。
アンドレイさんにとって、日本は、おとり捜査で自分を陥れた国です。
そのせいで2年間も服役したのですから、日本に対して決して良い印象を抱いていないのではないかと思います。
しかし、アンドレイさんは、日本に対しても、捜査機関に対しても、稲葉氏に対してさえも、決して悪く言いませんでした。
アンドレイさんは、ロシアに帰った後、町会議員を10年間勤められたそうです。
そのような方だからこそ、外部に発するコメントがどういう影響を与えるかまで、考えて発言されているのでしょう。
スキーを楽しんだアンドレイさんが、少しでも日本を好きになってくれたらいいなと思いました。
中村憲昭法律事務所
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