眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

2014年の高知のオフシアター・ベストテン選考会が終わりました~(^^)

2015-02-09 18:54:20 | 映画・本

2014年は、自主上映(オフシアター上映)の作品数がいつもより少なめでした。(外国映画50本・日本映画67本) 今回の選考会の参加者も10名くらいで、やはり少なめです。それでも、私にとってはいつもどおり、映画のことだけ考える幸せな時間になりました。

選考会ではまず、自分が去年観た自主上映作品の中から、日本映画・外国映画各10本(以内)を選んで投票します。
その集計の後、暫定の結果を見て、順位が高すぎると思う作品については「拒否権」を全部で3回投じることができます。(ただし、「拒否権」は当然自分が観ている作品についてだけ)

この選考会の面白さは、実はこの「拒否権」システムにある・・・と、私はいつも思います。
私は去年は少ししか観てないのですが、それでも3回分、全部使い切りました~(^^)。

といっても、順位を引き摺り下ろした作品を嫌いなわけじゃあ全然なくて、「いい映画だったと思います」なんて言いながら、いけしゃあしゃあと?「拒否権」に手を挙げるので、他の方からは意味不明に見えたかもしれません(^^;。(自分としてはそれなりに辻褄が合ってる行動のつもりでも、人に説明するのはいつも私には難しい・・・)

でも、私としては珍しくも「人と会って話をする」機会だからでしょうか、毎年新鮮な体験をします。

今回は、たとえば・・・

日本映画のドキュメンタリーで、沖縄の基地問題を取り上げた『標的の村』という作品がありました。
私はそれにベストテンに入ってほしくて、今回の選考会に出たようなものなんですが・・・

ある方はその映画に「拒否権」を投じ、その理由として

「映画の内容に、明らかに嘘とわかる部分がいくつもあって、政府側が嘘をつくのは許せないと言いながら自分たちが同じようなことをするのはおかしいと思う。たとえば、デモ参加者の人数が10万人と言っていたけれど、その会場にはどうやっても、それほどの人数は入れない」

その方が本気で怒りを感じておられるのが聞く方にも伝わってきて、「言われる意味はよくわかります」と
言った方もおられました。

私は・・・実は、不思議な感動がありました。説明するのはちょっと難しいのですが・・・

私は学生の頃から、折にふれてその方(拒否権を投じた人)と同じことを感じていた記憶があるのです。

私の学生時代(70年代)は、今とは違った意味で?デモが珍しくなかった??というか、「主催者」発表と「警察」発表とはビックリするほど違っているのを、私のようなボンヤリでさえよく目にしました。

「警察」発表の数字が実数より少ないのはともかく、「主催者」発表がずいぶん「水増し」されて見えると、私はなんだかゲンナリしました。どうしてコンナコトするんだろう・・・と。

でも・・・いつのまにか、そういうことに腹は立たなくなってしまって・・・

「実数」は「主催者」と「警察」の発表の間のどこかにあるわけで、それがどちらに近くてもあまり問題と思わなくなった自分・・・それを、今回の「拒否権」を投じた方の言葉で、久しぶりに思い出したのです。

選考会の帰り道、私は歩きながら考えました。

正直、今の私にとっては、『標的の村』の中のデモ参加者の数字が10万だろうが1万、或いは数千だろうが、大した違いはないのです。「沖縄」がいかに自分から遠いことなのか・・・という証明だというなら、まさにそうなのでしょう。実際、私には沖縄の人たちの気持ちは、全くといっていいほどわかっていないと思います。

でも、私がそのとき考えていたのは、もう少し違うことでした。 

読んだ本も、観た映画も、片方からどんどん忘れていく(もう映画のタイトルも平気で間違えるレベル)今の自分には、とにかく、「これまで全く考えたことが無かった」ことに映画の中で初めて出会ったなら、そのことが何より重要なのだ・・・と。(大体、10万という数字がデモについてのことだったかどうかも、すでにアヤフヤな状態です(^^;)

それでも・・・私にとっての『標的の村』は、ドキュメンタリー作品としての出来の良し悪しとか、中に混じっている「嘘」の数とかよりも、「ベトナム戦争当時、米軍の模擬訓練?として、ベトナムの人の格好をさせられて『標的』の役を務めた沖縄の人たちがいた。そういう『村』があったのだ」ということを、初めて教えてくれた作品として、とても意味のある映画だったのです。

タイトルも内容もあっというまに忘れてしまっても、その「ベトナム村」のことは、私は忘れないだろうと思います。

知ったときの驚愕(としか言いようがない)と、その一方で、それくらいのことは米軍はどこかでしていたとしても当然・・・と感じる自分。驚いているのに、どこかでコロンブスの卵のような気もしている・・・それでも、『標的の村』を観るまで、私は「そんなコトは考えてもみなかった」のは事実なのです。

自分が普段抱えている「想像力」というのは、ごくごく限られたちっぽけなものなのだ・・・ということ。

それを改めて痛感させてくれるものなら、少なくとも私にとっては、「人生において意味がある」と言えるほど
重要な作品なのだと思います。(これまでに出会った、そういう「タイトルも思い出せない」ドキュメンタリー映画のことを、その後あれこれ思い出しました。)

今回のベストテン選考会は、私にとっての「ドキュメンタリー」というものの意味を、改めて考えさせてくれた貴重な機会になりました。

以下は、ベストテンの結果です。

【外国映画】

   ① 『もうひとりの息子』

   ② 『いとしきエブリデイ』
   ② 『レイルウェイ 運命の旅路』

   ④ 『ワン・デイ 23年のラブストーリー』

   ⑤ 『インポッシブル』
   ⑤ 『ハンナ・アーレント』

   ⑦ 『セデック・バレ』(第一部 太陽旗 第二部 虹の橋)

   ⑧ 『少女は自転車にのって』

   ⑨ 『この道は母へとつづく』

   ⑩ 『海角七号 君想う、国境の南』

   次点 『あなたを抱きしめる日まで』


【日本映画】

   ① 『0、5ミリ』

   ② 『そこのみにて光輝く』

   ③ 『みなさん、さようなら』

   ④ 『さよなら渓谷』

   ⑤ 『東京難民』

   ⑥ 『オー!ファーザー!』
   ⑥ 『旅立ちの島唄~十五の春』

   ⑧ 『標的の村』
   ⑧ 『60万回のトライ』

   ⑩ 『黒蜥蜴』

   次点 『ある精肉店のはなし』 


 

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4 コメント

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参加のみならずレポまでいただき、深謝。 (ヤマ)
2015-02-09 20:51:16
ムーマさん、昨日はご参加、ありがとうございました。

 シネマサンライズの上映会で配布されたフリーペーパーに寄稿を求められて掲載した拙文に「高知のオフシアターベストテンの対象作品…のなかで邦洋の第1位を選出するとすれば、日本映画は『標的の村』、外国映画は『もう一人の息子』となる。」としていた僕も似たようなことを感じています。
 あの場でも発言したように南京大虐殺の人数だとか、かの百人斬りの人数とか、市史に載っている高知大空襲の死者401人とか、まぁ数の問題を競り始めると、問題の本質からどんどんずれていくということを経験すると、そういった検証のしようのない正確さの問題に執心する熱意を若い時のようには持てなくなりますよね。何だか詮無くて(笑)。そういったところに拘らずにいられない熱意も記憶にはあるので、否定する気には到底なれないのですが、「少なからぬ人々が」とか「大勢の人たちが」で間違いはないのだろうから、それでいいじゃないかという気がします。
 『標的の村』の作り手が自ら数えるなどということは不可能でしょうから、何らかの“発表数”を引用したのでしょう。であれば、出典を明らかにすれば、事は足りるわけで、作り手自身がその数字に責任を負うものではない気がします。(ムーマさんもお書きのように、主催者発表なら主催者発表としての割引をするし、警察発表なら警察発表としての抑え幅を見込みますし、ね。)
 まぁでも、そこんとこに立ち入って議論する場ではありませんし、きちんと理由説明することだけが求められる拒否権行使であって、理由の如何によってその有効無効の判定権など誰も持っていないところに意義のある理由説明ですから、あれでいいのだと僕は思いました。
 とはいえ、今回は個人的には釈然としない拒否権行使が目立った気はしますが、選考結果は、そうおかしなものにはなっていないように思います。そのあたりがまた絶妙で面白いものですよね。
 ともあれ、どうもありがとうございました。鬼も呆れるかもしれませんが、来年もよろしく(笑)。
返信する
やっぱり名司会でしたよ~(^^) (ムーマ)
2015-02-09 23:53:42
>ヤマさ~ん、

「レポ」を書くつもりじゃなかったんですが
書いてるうちに思ったより長くなっちゃって・・・
わざわざ来ていただいて、申し訳ないくらいです。

去年はシネマサンライズの上映会もロクに行けなくて
あのフリーペーパーも、手元にあったり無かったり~なんですが
たまたま、あのヤマさんの文章は読むことが出来ました。
『標的の村』と『もうひとりの息子』と書いておられるの見て
「わ~一緒一緒~」なんて(^^)。
『もうひとりの息子』は、ほんとに1位になりましたね~。

>、きちんと理由説明することだけが求められる拒否権行使であって、理由の如何によってその有効無効の判定権など誰も持っていないところに意義のある理由説明ですから

あの選考会は、その辺りが本当にきちんとしていて
「言いたいことがあれば、何を言っても構わない」雰囲気が常に保たれていますね。
何をどう思おうと、それを他者から一方的に否定されることは無い・・・というような。
ヤマさんは当たり前と言われるかもしれませんが
私には、その開放感?は貴重なものに見えます。
(もっと不自由?な議論を、過去に結構見てきた気が)

で、その結果として「選考結果はそうおかしなものになっていない」という「絶妙」さに
私もいつも感心します。
実は今回は、スクリーンで見たのはぜ~んぶで11本しか無かったんですが
参加してやっぱり良かった~って思いました。

鬼サンには呆れさせておいて
こちらこそ、来年もどうぞよろしくお願いします(^^)。
返信する
報告とお礼に参上しました。 (ヤマ)
2015-03-31 22:25:56
ムーマさん、こんにちは。

昨日付の拙サイトの更新で、こちらの頁を
いつもの直リンクに拝借しております。

『標的の村』に限らず、ドキュメンタリーというジャンルは、
ひとそれぞれに拘りポイントが違ってることが多く、
評価軸も異なるようですね。

「私にとっての「ドキュメンタリー」というものの意味を、
 改めて考えさせてくれた貴重な機会」
素晴らしいことです。どうもありがとうございました。
返信する
今は現実が大変そうで・・・ (ムーマ)
2015-03-31 23:08:39
ヤマさ~ん(^^)

リンクと丁寧なコメント、いつもありがとうございます。
沖縄は今や、大変なこと(もっと良い表現ができたらいいのですが出来ない自分・・・)になってますね。

政府側のコメントをニュースなどで見るたび、家族共々呆れたりため息吐いたりしてますが・・・
そういう政府の支持率が下がらないのにも、最近は驚かなくなって?しまいました。

ドキュメンタリー以上に現実はシビアーだと、改めて思う今日この頃です。

それでも『標的の村』を観たことは、私にとっては意味のあることだったと思います。

べrストテン選考会は本当に良い機会を与えてくれました。
その他モロモロ、ありがとうございました。
(この先も、自分にとって意味のあるドキュメンタリーに出会いたいと思っています)
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