眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

正直にしか生きられない ・・・・・ 『サンシャイン・クリーニング』

2011-02-10 19:34:08 | 映画・本
長すぎる「ひとこと感想」その4。(多少ネタバレです。)

生活のために「事件現場の清掃業」を「軽~い気持ち」?で始める姉。お菓子だのエビ(ロブスターだったかな?)の訪問販売で「一攫千金」を狙う父親。バイト先で喧嘩を売って?クビ・・・を繰り返す妹。そして、なんでも「ナメる」癖がエスカレートして小学校を退学?になる(姉の)息子・・・。

チラシを見ないとあらすじも満足に思い出せない自分のい~加減さはさておいて、登場人物たちの不器用さ、危なっかしさ、その行き当たりばったりにしか見えない?ような生き方は、「貧困から抜け出す」ことの難しさであると同時に、「正直にしか生きられない」人たちのリアルな人生でもあるのだと、映画を観ながらなんだかしみじみしてしまった。

その時その時に仕方なく自分を誤魔化しているようでいて、その実彼らは「自分に正直にしか生きられない」人たちなのだ。自分を誤魔化せないからこそ、姉は元同級生の「ベビーシャワー」(というお披露目みたいなパーティーがあるらしい)に無理を押しても出掛けたのであり、妹が火事を起こしてしまうのも、姉のビジネスに問答無用に協力させられる事に対する抵抗感から、仕事に集中出来ない気持ちが土台にある。「押しつけられた(そもそも大嫌いな)仕事」より、子猫の方が妹には大事なのだ。不注意を責められても仕方がないとしても、元々妹はそういう情感豊かな娘だからこそ、母親の事件が深い傷にもなったのだと私は思う。一方、行き当たりばったりを絵に描いたような父親が最後にする提案も、好きなように生きてきた人の言葉だからこそ、姉は罪悪感抜きに受け取れたのかもしれない。

姉妹間の葛藤も、姉と2人きりの姉妹の私には興味深いものがあった。「私自身に興味を持ってくれたのかと思ったのに。」と言う友人に妹が言葉を失うのは、そういう孤独を感じることなく生きてこれた自分に気がつく瞬間であり、それは姉や父親の彼女に対する愛情に気づく瞬間でもあったと思う。終盤の2人の言い争いが姉妹の絆を確かめる方向に働くのは、そういう互いの間の愛情という土台があって初めて成り立つことなのだとも。

姉エイミー・アダムス、妹エミリー・ブラント、父親役のアラン・アーキン(『リトルミスサンシャイン』のおじいさん!)などキャストもピッタリ。姉妹よりもっと上手に「正直に生きている」模型店のオーナー(クリフトン・コリンズ・ジュニア)も魅力的~♪



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2 コメント

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報告とお礼に参上しました。 (ヤマ)
2015-03-20 20:18:39
ムーマさん、こんにちは。

 今日付の拙サイトの更新で、こちらの頁をいつもの直リンクに拝借しております。ちょうど観たばかりの『ビッグ・アイズ』のエイミー繋がりなのですが、奇しくも人物造形の巧みさが印象深い作品でした。

 とても強いキャラクターなのに、妙に現実感がありますよね。まさしくムーマさんが「自分を誤魔化しているようでいて、その実彼らは「自分に正直にしか生きられない」人たち」と書いておいでの人物造形に物語以上の味があったように思います。もちろん、「貧困から抜け出す」ことの難しさのほうも強い印象を残してるんですけどね。

 どうもありがとうございました。

 
ありがとうございます(^^) (ムーマ)
2015-03-21 15:01:47
>ヤマさ~ん

リンクとコメント、ありがとうございま~す。

ほんと、個性的なヒトばっかの映画でしたよね~。
でも、私はどの人も好きで、「物語」の方は大半忘れてしまってるのに
人物の顔・表情は、今でもくっきりと浮かんでくるから不思議・・・なあんて思ってましたが
「人物造形に物語以上の味があった」と言われて、「あ、そうかあ」。納得がいきました(^^)。

『ビッグ・アイズ』はあっという間に終わっちゃって残念。
(エイミー・アダムス、ディズニーのお姫さま以来ずっと好き~♪)
ヤマさんの日誌、いつかきっと読みに行きますね~(^^)。

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