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輸入マラリアにおける死亡リスク

2012-04-03 | Malaria
背景
英国での輸入マラリア症例は2007年から2011年にかけて5774例報・告され増加傾向にあり、欧米のその他の国でも増加傾向
先進国における致死率は約1%
マラリアの流行国への渡航とマラリア死亡は関連しない可能性がある

方法
英国では法律でマラリア症例の報告義務があり、英国 national dataを用いた20年間の観察研究
Malaria Reference Laboratoryで診断が確認される
1987年から2006年までのマラリア症例を調査死亡例と生存例について、年齢、渡航目的、出生国、診断時期、予防内服有無を比較

結果
191/39302例のマラリア死亡症例
熱帯熱マラリアは184/25054例死亡
致死率は0.73%で年代で変化なし
非熱帯熱マラリアは7/25054例死亡(MR 0.05%)
483症例の重複感染
適切な予防内服に5.7%に確認(903/15933)
ガンビアでの死亡リスクが最多
高齢者で死亡率が上昇
65歳以上の死亡率は4.6%で18-35歳と比較してOR 10.68 [95%CI 6.4-17.8]
5歳未満の死亡症例なし
VFRの死亡率 0.32% (26/8077)と比較して観光旅行の死亡率 3.0% (81/2740)がOR 8.2
アフリカのマラリア流行国で出生した症例の死亡率は0.4% (36/8937)に対して、それ以外では2.4%(142/5849)と高い
平均マラリア原虫感染RBC 8.5%

Discussion
2世・3世のVFRでも死亡率が低い理由は不明だが事前の知識や注意が関与する可能性
12月はクリスマスや正月で診断が遅れる可能性と意識の低い観光者が罹患する可能性
マラリア死亡の26%が自宅 or 救急車内であり、受診の遅れが死亡と関連する可能性
受動的報告システムによる過小評価の可能性

結論
旅行者のマラリア罹患者はVFRが多い
一方、マラリア死亡は高齢者の旅行者で多く、マラリアの流行が少ない地域にみられる
医師はマラリアのリスクが低いと考えることがあり、渡航前に発熱時の受診等の助言が死亡率を低下させる可能性

その他
渡航先等の英国の事情を反映しているデータ
遺伝子学的な抵抗性(鎌状赤血球症等)が関与している可能性

Reference:
http://www.bmj.com/content/344/bmj.e2116

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