数理論理教(科学教)の研究

数理論理(科学)はどこから来て、どのような影響を与え、どこに行こうとしているのか、少しでも考えてみたいと思います。人文系

土建屋帝国主義、すべてがクロではどうにもならぬ、原発震災列島の遠因

2015-07-15 21:43:51 | 原発震災列島
森功著『泥のカネ』文藝春秋を読了しました。
 
内容は大雑把に以下のようです。
1.建設業界は日常的に談合組織体制になっている。昔は堂々と行っていたが、官庁や政治家・自治体首長との不明朗なカネのやり取りが糾弾され、最近は目立たないようにやっている。表向きには、建設業界はもう談合はやりませんと言っているが、政治家・官僚・地元首長などとの腐れ縁やスーパーゼネンコン5社の独占状況の基、今でも核心的な案件では談合を行っている。
2.各社には、談合の担当者(業務屋と呼ばれる)がおり、定期的に集まり情報交換している。その中でも談合の分配を行う者がいる。田中角栄が絶大な影響力を持った後、それに近い者が代々引き継いできた。例えば、○島建設 植良氏西○建設 平島栄氏など。
田中角栄亡き後は、また新たな分配役が現れた。東北地方は小沢さんがずっと握ってきたとのこと。二階氏も地元和歌山周辺では権力を持っている。
3.水谷建設の元水谷会長は、政治家・地元首長・闇組織・官僚など幅広い人脈を持ち、積極的な受注工作を行っていた。ばら撒く現金は、中古重機(水谷建設は土木重機工事が主力)を海外で売って、香港などの業者にプールさせていた。中古重機は減価償却特例制度で大幅に償却でき(簿価を安くできる)、海外ではメンテナンスの行き届いた中古重機は新品の1~2割程度で売却できるため、簿価で売ったことにすれば、多額の現金を裏金にすることができた。ODA利権の闇もあるとのこと。
4.業界では「現金」ばら撒きは日常化していた。名目としては以下のようなものがあるとのこと。●挨拶料(5百万円程度):これは別段理由なく、談合により工事が分配されたときに渡す。●保険料(1千万程度):談合による分配から漏れないように、念のために分配役に渡すお金。●「天の声」の代金(数千万~):一度談合で決まった(受注できなかった)後、それを覆すために実力者に渡すお金。
5.小沢一郎事件・福島県知事(佐藤栄佐久氏)事件は、水谷建設の不明朗なカネの流れがすべて検察に握られたために行われたものであり、氷山の一角に過ぎない。水谷建設では数十億円の使途不明金があったが、その大部分はどこに行ったか突き止められなかった。水谷会長はマカオで賭博に負けた、暴力団の親分に渡したなどと供述して逃げ果せたとのこと。
 小沢一郎さんや佐藤栄佐久とも、胡散臭いカネは流れていたようです。しかしそれは、通常の建設土木業界の慣例からすると、至極当たり前のもので、偶々事故のようなものであつたとのこと。しかし、小沢さんと佐藤さんが狙われたのは、ある政治的な陰謀もあるように思います。
6.原発工事入札受注のため、電力会社などにも様々な工作を行った。特に原発を造るためには、土木・建設関連業界などに巨額な金が動くので、裏金攻勢も物凄いものがあった。
7.建設土木業界の選挙の集票能力はスバ抜けている。大阪府知事選挙(大田房江前知事の最初の選挙時)では、業界の談合関係者(業務屋)が関西のスーパーゼネンコンに集められ、自民党からの要請のもと、10万票近くの上乗せに成功したとのことです。

(私の感想)
1.表面に出る「ゼネコン汚職」は、本当に氷山の一角なのだと思いました。その全容解明はは不可能に近い。政治家・官僚らの鉄壁の防御の基、所詮官僚組織に過ぎない検察などができることは、見せしめために何人かお縄にする程度のようです。要するに政治家・官僚・地元首長・関係者(業者含め)がすべてクロなので、お茶を濁す程度のことしかできないのは当たり前かもしれません。
2.検察は、米国の謀略組織(下請け)ではないかと思ったこともありましたが、制約はありながらも、あまりにも腐り切った部分を摘発するため、それなりに努力しているようです。ただし制約があり過ぎるようです。
3.小沢さんは改革者で、自民党・検察が国策捜査で潰そうとしたというシナリオがよく語られましたが、小沢さん含め大物政治家はほとんどがクロなので、たまたま水谷建設の資料から尻尾を捕まれ、自民党中枢にも関係なかったので(そういう意味では謀略とも取れる)、集中攻撃されたのかもしれません。小沢さんは東北地方の建設・土木関係では、絶対的な権力を持っていたようです(当然業界慣例のお礼ももらっていたと思います)。特に水谷建設は実績のない東北地方で積極的な営業をかけていたのですから、相当のお礼が動いたものと思います。
4.しかし、なぜこのような土建屋国家(賄賂が当然のことにような慣例になっている社会)になってしまったのでしょうか。田中角栄さんの影響も大きかったようですが、そもそも明治維新から、官僚中心の経済振興政策を行い、長らく官僚が地方自治体のトップになることも多く、また官僚上がりや官僚べったりの政治家も多かったことを踏まえると、そもそも日本の近代化と賄賂は渾然一体となっていたということではないでしょうか。官僚・自治体・政治家などは、許認可権等を握り、民間の企業の首根っこを押さえて、利益のうちの一部を確実にリベートとしてもらう仕組みを作っていた。どんなに批判されても、全てがクロなので、どうにもならないような気がします。
5.この土建屋的な精神の基、ダムや空港や道路(その他様々な無駄なサービス・研究)と同じように、「原発」も乱造してしまったのではないか?巨額の構造物は造れば造るほどリベートも多く入る、利益が上がる、もうどうにも止められなかった。原発の科学技術的な危険性などまったく頭に入らない、拝金主義の偶像崇拝者のような強欲の属性の人たちが群がって、強引に進めて行った。原発反対者などは邪魔者だけであって、自分の利益の前では蝿のような存在に見えていたのかもしれません。

『田中角栄に消えた闇ガネ「角円人士」が明かした最後の迷宮』森省歩著 講談社
 
 この本の中に、柏崎原発の立地の土地売買の話がありました。日本海に面する不毛の砂丘が結局東京電力の原発用地になるのですが、当時の柏崎市長が通産省に誘致のために陳情に行ったときのエピソード(「トンチンカン問答」)がありました。これは、当時の柏崎市長が通産省の役人に、原発の立地には盆地が良いのでないか?(もし爆発したとき被害が最小になるので、素人考えで)と聞いたところ、そこには水はたくさんありますかと尋ねられ、ある程度はありますと答えたところ、無尽蔵の水が必要ですと言われ、あっと気が付いた(砂丘!)という顛末です。
 原発誘致を進めていた自治体のトップが、このような認識でいたとは、開いた口が塞がりません。原発推進派の多くが、ほとんどこのような知識の基、カネの分配に預かろうと必死に工作を行っていたようです。しかし当時としては、このような知識レベルなのはごく標準的だったと思います。自治体は、工場誘致に必死で、雇用・税収・開発のことで頭がいっぱいだったと思います。開発・工業化⇒よりより文明的な暮らしがしたい!

 しかし、一般市民も拝金教(偶像崇拝思想)のような現世主義にどっぷり浸かっていたと思います。誰でもカネが回れば万々歳です!当たり前かもしれません。リベートも当り前。科学技術などというのは、カネのためになるものだけ(カネのためになる面のみ)が必要だ!すべての人がカネに狂奔して、「原発」を乱造してしまいました。国民を含めてすべてクロではどうにもならばいと思います。

 どうしたらこの偶像崇拝的思想(拝金教)から抜け出すことができるのでしょうか?カネは確かに神がかり的に魅力がありますが、それを超絶する抽象的・合理的な理想思想を尊ぶ精神が備われば、どうにかなるのでしょうか?


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 小保方さん事件、日本での「... | トップ | 原発震災列島(5)緊急警戒... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

原発震災列島」カテゴリの最新記事