皆さま、GEIT(Governance of Enterprise Information Technology)のエバンジェリストこと、ITコーディネータの元村憲一です。
「おっ! 何か役立つまたは、面白そうな事が書いてありそうだ」と思われたら、是非読者登録してください。
ブログの第249回目は、このブログの本題になっている GEITについての続きです。
これまでほとんどは、ISACAの話題を中心にお伝えして来ましたが、第210回目からは、ISACAを離れて、日本のGEIT人材であるITコーディネータについて、お伝えしています。
【IT経営とは?】
ITコーディネータ制度は、経済産業省が、日本の競争力を回復する高度人材として、未来を見据えた構想の中で制度化した割には、10年以上経った現在でも、非常に認知度が低い状態が続いています。
前回に続き「IT経営」と言う言葉につて、お伝えして行きます。
経済産業省のIT経営ポータル(以下を参照)
URL:
http://www.it-keiei.go.jp/index.html
IT経営とは何か?
経済産業省が行っているIT経営の定義は、以下の様に書かれています。
IT投資本来の効果を享受するためには、目的なく、単に現業をIT化するだけでは、不十分であり、自社のビジネスモデルを再確認したうえで、経営の視点を得ながら、業務とITとの橋渡しを行っていくことが重要です。
このような、経営・業務・ITの融合による企業価値の最大化を目指すことを「IT経営」と定義します。
IT経営について
IT経営ポータルには、IT経営についてとして、以下の5項目が記載されています。
・7つの機能と20の行動指針
・IT経営力指標と4つのステージ
・IT経営協議会とIT経営憲章
・IT経営ロードマップ
・各種報告書
・IT経営ロードマップ
【IT経営ロードマップとは】
IT経営憲章に基づき、企業がIT経営を実際に推進するにあたっての取り組みを、IT経営における先進企業の事例を踏まえて、以下の2点として整理したものです。
平成20年6月に初版が発行され、平成22年3月に改定版が発行されています。
1. IT経営の実践に向けた取組
2. マネジメント上の課題
【IT経営ロードマップの詳細】
2. マネジメント上の課題
「見える化」、「共有化」、「柔軟化」を推進し、IT経営を実現していくためには、並行して、マネジメント上の課題を解決していくことも不可欠です。
このため、IT経営の成熟度に関わらず解決すべきテーマとして、以下をマネジメント上対応すべき観点として位置付けています。
・ITガバナンス
・人材・組織育成
・IT投資
・人材・組織育成
◇対応の方向性
人材・組織育成の対応の方向性については、以下の3分類の視点から書かれています。
(1)人材活用を有効かつ柔軟に行うために
(2)社員の情報活用能力向上
(3)高度人材育成の推進
(1)人材活用を有効かつ柔軟に行うために
ここでは、以下の様に書かれています。
人材を有効に活用するためには、企業価値の源泉となる「コア・コンピタンスの差別化および差異化」とグローバル経営における競争を勝ち抜く「省力化および効率化」の両立を目指さなければならない。
これを実現するためには、コア業務とノンコア業務を見極める必要がある。
さらにコア業務の中でもルーティン業務は、徹底的に標準化、汎化した上で効率性を高め、本当に人材を集中させて価値を生み出す作業に特化させる必要がある。
ブルーカラー的な仕事、単純作業に関しては、アウトソースによる効率化やIT化による自動化、省力化が言われて久しい。
しかし、知的作業と呼ばれるいわゆるホワイトカラー的な作業に関しても、良く業務を分析し細かく分類していくとかなりの部分を省力化する事が可能である。
そのためには、まずは業務を標準化し、可視化することで、何が代替可能なのかが分からなければならない。
そうする事で、アウトソースの活用やIT化による代替が可能になる。
それでも最終的に代替できない作業、つまり人が行わなければ出来ない業務、対応などに関して、如何に高度な人材で高度な対応ができるか、という事が今日の企業経営における人材の有効活用に求められている。
また、柔軟な人材活用に関して言えば、ルーティン業務のいくつかに関しては、繁閑が激しく、間歇的に発生する業務に対して、ピーク時に対応できるような人員配置をしている事が少なくない。
この状況では明らかにピーク時以外の際に、人材が無駄に待機させられることになる。
これを無くすためには、まずそのルーティン業務をモデル化する事が重要である。
加えて、属人性を排除し、ある程度のスキルがあれば誰でも出来る状態にまで持っていくことができれば、人材教育によってあるスペックさえ確保できれば、非常に柔軟にリソースを活用する事が可能になる。
組織の柔軟性をもつことに他ならない。
総括すると、如何に例外的な業務、人が行わなければ価値が出ない業務を特定し、そうでない仕事を徹底的に汎化して標準プロセスにした上でルーティン業務としてIT化またはアウトソースするかで人材の有効活用度が決まる。
また、差異化と標準化のバランスをとり両立を目指す事が重要になる。
これを読むと?が、3つ以上付きます。
全体から受ける印象は、ルーティン業務と言っている一部だけをIT化、つまり昔からある一部の作業の機械化イメージから抜け出していない様に思えます。
人が行わなければ価値が出ない業務と言っている部分が、全くITの支援を受けられない事になりかねません。
また、ノンコア業務と言われるものへの対応が、最初からアウトソーシングありきなのか、記述されていません。
ルーティン業務は、徹底的に標準化、汎化した上で・・・
汎化するとは? オブジェクト指向のクラスを意識しているのか、よく解らない言葉です。
まずは業務を標準化し、可視化することで・・・
先に現状業務(As-Is)を可視化しないで、標準化ができるのでしょうか?
まずそのルーティン業務をモデル化する事が重要・・・
一部だけをモデル化して、全体最適出来るのか疑問です。
この文章からは、戦略の意思決定を支援するまで、高度にITを利活用するイメージが全く湧いてきません。
(2)社員の情報活用能力向上
続けて、ここでは、以下の様に記述されています。
情報活用能力の向上に向けては、研修等の育成・自己啓発等の機会を増やしていくことが有効だと考えられる。
◆施策例
・社員が自ら育とうとする土壌作りと社員の育成を支援する取り組みを実施
・教育支援制度の導入、教育カリキュラムの策定、全社研修の実施、全社員IT資格の取得の推進等
また、自社のビジネスモデルに即した業務モデル、概念データモデルなどの情報モデルを設計する機能を確保すべきである。
これをつくることによって、コストを抑え、変化に強い、安定したシステムが構築できる。
こうした、情報モデルを構築できるような機能を強化するためには、ITと業務の両面を熟知している現場の人材を育成することが必要である。
モデリング能力は、方法論に関する研修とプロジェクト実践の中から生まれてくると思われる。
他方、こうした人材を、現場に配置するのか、管理部門内の業務改革推進組織に集めるのか、情報システム部門で育成するのか、若しくは、外部にアウトソースすべきなのか、現段階では、まだ一つに絞れるような解は得られていない。
ベンダーとユーザーの役割分担、業務部門と情報システム部門の役割分担など、様々な観点から、こうした人材の育成方法について検討していくことが必要である。
おおよその察しはつきますが、ここに書かれているモデルは、EAで使用しているような古いモデル(DMM、DFD、ER図等)だと思われます。
コストを抑え、変化に強い、安定したシステムが構築・・・
古くからDOA(データ中心)で言われている事ですが、たとえ業務の構造を情報から押さえても、頻繁に発生する外界の変化によって大きく影響を受ける制約・束縛(業務ルール)を網羅的に捉えられていない場合、変化に強い、安定したとはなりません。
また、社員の情報活用能力向上と項目を作っていながら、人的資源の少ない中小企業を意識しているためか、「外部にアウトソースすべきなのか」と矛盾した事が書かれています。
この部分をベンダーに丸投げして依存している様では、いつまで経ってもIT経営は実現して行かないと考えます。
これを読んでみると、ユーザ企業側の立場で、ITコーディネータが支援する内容に一致すると考えられます。
人材の有効活用を含めた業務改革や情報活用能力を支援する事も、IT経営を実現するプロフェッショナルと言われている、私達ITコーディネータに課せられた重要な使命の1つです。
少し長くなりましたので、経済産業省IT経営ポータルの、IT経営ロードマップの説明の途中で、終了します。
次回もこのシーズからは、経済産業省IT経営ポータルの、IT経営ロードマップの続きを説明して行きます。
この続きは、次回以降に、ITコーディネータ資格の変遷や、ITコーディネータのバイブルと言われるプロセスガイドラインの内容についても紹介して行きます。
最後まで、お付き合いくださいまして、ありがとうございます。
次回以降も、本題のGEITの話題として、ITコーディネータを中心に、ISACAが認定している資格の最新版が明らかになった段階で、順次お伝えして行きます。
皆さまからの、ご意見・ご感想をお待ちしております。
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【資格】
・ITコーディネータ
・公認情報システム監査人
Certified Information Systems Auditor (CISA)
・公認情報セキュリティマネージャー
Certified Information Security Manager (CISM)
・公認ITガバナンス専門家
Certified in the Governance of Enterprise IT (CGEIT)
・Certified in Risk and Information Systems Control (CRISC)
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これまでほとんどは、ISACAの話題を中心にお伝えして来ましたが、第210回目からは、ISACAを離れて、日本のGEIT人材であるITコーディネータについて、お伝えしています。
【IT経営とは?】
ITコーディネータ制度は、経済産業省が、日本の競争力を回復する高度人材として、未来を見据えた構想の中で制度化した割には、10年以上経った現在でも、非常に認知度が低い状態が続いています。
前回に続き「IT経営」と言う言葉につて、お伝えして行きます。
経済産業省のIT経営ポータル(以下を参照)
URL:
http://www.it-keiei.go.jp/index.html
IT経営とは何か?
経済産業省が行っているIT経営の定義は、以下の様に書かれています。
IT投資本来の効果を享受するためには、目的なく、単に現業をIT化するだけでは、不十分であり、自社のビジネスモデルを再確認したうえで、経営の視点を得ながら、業務とITとの橋渡しを行っていくことが重要です。
このような、経営・業務・ITの融合による企業価値の最大化を目指すことを「IT経営」と定義します。
IT経営について
IT経営ポータルには、IT経営についてとして、以下の5項目が記載されています。
・7つの機能と20の行動指針
・IT経営力指標と4つのステージ
・IT経営協議会とIT経営憲章
・IT経営ロードマップ
・各種報告書
・IT経営ロードマップ
【IT経営ロードマップとは】
IT経営憲章に基づき、企業がIT経営を実際に推進するにあたっての取り組みを、IT経営における先進企業の事例を踏まえて、以下の2点として整理したものです。
平成20年6月に初版が発行され、平成22年3月に改定版が発行されています。
1. IT経営の実践に向けた取組
2. マネジメント上の課題
【IT経営ロードマップの詳細】
2. マネジメント上の課題
「見える化」、「共有化」、「柔軟化」を推進し、IT経営を実現していくためには、並行して、マネジメント上の課題を解決していくことも不可欠です。
このため、IT経営の成熟度に関わらず解決すべきテーマとして、以下をマネジメント上対応すべき観点として位置付けています。
・ITガバナンス
・人材・組織育成
・IT投資
・人材・組織育成
◇対応の方向性
人材・組織育成の対応の方向性については、以下の3分類の視点から書かれています。
(1)人材活用を有効かつ柔軟に行うために
(2)社員の情報活用能力向上
(3)高度人材育成の推進
(1)人材活用を有効かつ柔軟に行うために
ここでは、以下の様に書かれています。
人材を有効に活用するためには、企業価値の源泉となる「コア・コンピタンスの差別化および差異化」とグローバル経営における競争を勝ち抜く「省力化および効率化」の両立を目指さなければならない。
これを実現するためには、コア業務とノンコア業務を見極める必要がある。
さらにコア業務の中でもルーティン業務は、徹底的に標準化、汎化した上で効率性を高め、本当に人材を集中させて価値を生み出す作業に特化させる必要がある。
ブルーカラー的な仕事、単純作業に関しては、アウトソースによる効率化やIT化による自動化、省力化が言われて久しい。
しかし、知的作業と呼ばれるいわゆるホワイトカラー的な作業に関しても、良く業務を分析し細かく分類していくとかなりの部分を省力化する事が可能である。
そのためには、まずは業務を標準化し、可視化することで、何が代替可能なのかが分からなければならない。
そうする事で、アウトソースの活用やIT化による代替が可能になる。
それでも最終的に代替できない作業、つまり人が行わなければ出来ない業務、対応などに関して、如何に高度な人材で高度な対応ができるか、という事が今日の企業経営における人材の有効活用に求められている。
また、柔軟な人材活用に関して言えば、ルーティン業務のいくつかに関しては、繁閑が激しく、間歇的に発生する業務に対して、ピーク時に対応できるような人員配置をしている事が少なくない。
この状況では明らかにピーク時以外の際に、人材が無駄に待機させられることになる。
これを無くすためには、まずそのルーティン業務をモデル化する事が重要である。
加えて、属人性を排除し、ある程度のスキルがあれば誰でも出来る状態にまで持っていくことができれば、人材教育によってあるスペックさえ確保できれば、非常に柔軟にリソースを活用する事が可能になる。
組織の柔軟性をもつことに他ならない。
総括すると、如何に例外的な業務、人が行わなければ価値が出ない業務を特定し、そうでない仕事を徹底的に汎化して標準プロセスにした上でルーティン業務としてIT化またはアウトソースするかで人材の有効活用度が決まる。
また、差異化と標準化のバランスをとり両立を目指す事が重要になる。
これを読むと?が、3つ以上付きます。
全体から受ける印象は、ルーティン業務と言っている一部だけをIT化、つまり昔からある一部の作業の機械化イメージから抜け出していない様に思えます。
人が行わなければ価値が出ない業務と言っている部分が、全くITの支援を受けられない事になりかねません。
また、ノンコア業務と言われるものへの対応が、最初からアウトソーシングありきなのか、記述されていません。
ルーティン業務は、徹底的に標準化、汎化した上で・・・
汎化するとは? オブジェクト指向のクラスを意識しているのか、よく解らない言葉です。
まずは業務を標準化し、可視化することで・・・
先に現状業務(As-Is)を可視化しないで、標準化ができるのでしょうか?
まずそのルーティン業務をモデル化する事が重要・・・
一部だけをモデル化して、全体最適出来るのか疑問です。
この文章からは、戦略の意思決定を支援するまで、高度にITを利活用するイメージが全く湧いてきません。
(2)社員の情報活用能力向上
続けて、ここでは、以下の様に記述されています。
情報活用能力の向上に向けては、研修等の育成・自己啓発等の機会を増やしていくことが有効だと考えられる。
◆施策例
・社員が自ら育とうとする土壌作りと社員の育成を支援する取り組みを実施
・教育支援制度の導入、教育カリキュラムの策定、全社研修の実施、全社員IT資格の取得の推進等
また、自社のビジネスモデルに即した業務モデル、概念データモデルなどの情報モデルを設計する機能を確保すべきである。
これをつくることによって、コストを抑え、変化に強い、安定したシステムが構築できる。
こうした、情報モデルを構築できるような機能を強化するためには、ITと業務の両面を熟知している現場の人材を育成することが必要である。
モデリング能力は、方法論に関する研修とプロジェクト実践の中から生まれてくると思われる。
他方、こうした人材を、現場に配置するのか、管理部門内の業務改革推進組織に集めるのか、情報システム部門で育成するのか、若しくは、外部にアウトソースすべきなのか、現段階では、まだ一つに絞れるような解は得られていない。
ベンダーとユーザーの役割分担、業務部門と情報システム部門の役割分担など、様々な観点から、こうした人材の育成方法について検討していくことが必要である。
おおよその察しはつきますが、ここに書かれているモデルは、EAで使用しているような古いモデル(DMM、DFD、ER図等)だと思われます。
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古くからDOA(データ中心)で言われている事ですが、たとえ業務の構造を情報から押さえても、頻繁に発生する外界の変化によって大きく影響を受ける制約・束縛(業務ルール)を網羅的に捉えられていない場合、変化に強い、安定したとはなりません。
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人材の有効活用を含めた業務改革や情報活用能力を支援する事も、IT経営を実現するプロフェッショナルと言われている、私達ITコーディネータに課せられた重要な使命の1つです。
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この続きは、次回以降に、ITコーディネータ資格の変遷や、ITコーディネータのバイブルと言われるプロセスガイドラインの内容についても紹介して行きます。
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