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 韓国国内で感染者は180人、死者は29人を超えたMERS。院内感染が80人、死者が15人も出たサムスンソウル病院は、主たる“感染地”と言えよう。そんな危険地帯から2.5km離れた位置に、ソウルオリンピック公園体操競技場がある。その競技場に隣接する病院にも多数のMERS患者が入院している。

 ところが、MERSの脅威もなんのその、ソウルオリンピック競技場に日本人が大挙として押し寄せた。目的は、6月13日、14日に行われた東方神起・ユンホの入隊前ラストライブの観戦だ。

「1日1回公演で、1公演あたり1万2000人が来場。トータルで2万4000人もの観客を集めました。会場では1000人で1ブロックの全4ブロック、計4000人がアリーナで立ち見できるんです。ある程度自由に動けるので楽しい反面、誰か一人でもウィルスを持っていたらパンデミックになると思って、私は泣く泣く数日前にキャンセルしました」

 とは芸能関係者の話。一方、実際ライブに行った女性ファンはこう話す。

「会場は日本人が6割、韓国人3割、他国の人1割といった具合でした。2公演とも見る熱心なファンもいましたが、ざっと1万5000人は日本人だったのでは」

開催は韓国も目当ては日本人客

 日本人ばかりが会場を埋め尽くすのには、韓国のある事情が関係していた。

「韓国ではアイドルを追いかけるのは学生まで。20歳を越えてアイドルを追いかけるのはおかしい、変な人扱いを受ける文化があるのです。だから韓国で開くライブでも、実は日本人相手というのが彼らのやり方。チケットだけなら1万円程度で手に入るのに、往復の飛行機やホテルを付けて、10万円以上のツアーを作って人を集めたりしています(韓流アイドルマスター)

 では、MERSが猛威をふるう中、運営サイドはどのような対応をしたのか──。

 会場入り口に大型フォグ防疫機で消毒薬を噴霧し、会場外および入場ゲートにアラーム機能が搭載された熱探知カメラを設置。異常温度を検出した場合は、医療検査を受けるシステムがとられていた。

 それほどまでに安心のはずの韓国ライブ。しかし、6月6日のEXO SPAOサイン会、10日のEXO釜山イベント、14日のSMファミリーバスケイベントが中止されるなどの対応がとられた。ではどうして東方神起のコンサートは決行されたのか。

 韓国芸能の事情通はこう分析する。

「もちろんユンホに芸能活動休止で、一度プライベートの時間を与えてあげたかったというのはあり得ると思います。ただそれだけではないはず。あの競技場は一度中止をしてしまうと、とんでもなく高額なキャンセル費用が発生します。また、その事務所は数か月の間、利用できなくなる。こうした事情が働いたんだと思います」

 大丈夫だといわれて訪韓する日本人。一番被害を受けるのはそれ以外の人たちだと自覚して欲しい。

(取材・文/大伯飛鳥)