ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

新国立劇場バレエ団『アンナ・カレーニナ』2012年3月17日(土)19時開演

2012年03月26日 | Weblog

Nさんよりアンナ・カレーニナ
新国立キャスト分の寄稿頂きました。

何時もながらそれぞれのキャストに対する深い考察流石です。

--------------------------
新国立劇場バレエ団『アンナ・カレーニナ』2012年3月17日(土)19時開演

アンナ:長田佳世
ヴロンスキー:厚地康雄
カレーニン:マイレン・トレウバエフ
キティ:本島美和

楽しみにしていた初役キャスト、
予想以上に心揺さぶる舞台であった。

長田さんは恐らくはアンナを踊ったダンサーの中では
最も小柄であろう。
しかしながらそう感じさせないほどダイナミックで大きな踊りに魅せられ、
凛とした佇まいにも自然と吸い寄せられた。

また、豊か且つ繊細な表現も忘れ難い。
長田さんといえばクラシックを職人の如く正確に踊るダンサー
という印象を抱いていたが、
演劇要素の強い役柄も見事にこなしていた。
官僚の妻として家庭に身を捧げる慎ましい女性がヴロンスキーと出会い、
許されないと分かっていながらも心を抑え切れず
破滅へと突き進んでいくその過程が鮮やかであった。
1回きりの公演であることがとても残念である。

トレウバエフさんのカレーニンは、
いぶし銀という言葉がぴったり当てはまる近寄り難い存在感と貫禄があった。
生真面目で変化を好まない、いかにもな官僚らしさがあり、
アンナの心変わりにどう接するべきか悩み苦しむ姿が目に焼きついた。

厚地さんのヴロンスキーは華やかさ、若い美しさ、爽やかさといった
一昔前の少女漫画に登場しそうな甘い雰囲気が漂う青年であった。。
アンナが忘れかけていたときめきを蘇らせ、
官僚の妻という安定した生活が保障された身であるアンナが
心奪われることに大いに納得がいった。
ひたむきさや火照るような熱い思いに溢れるソロも印象深い。

3人ともしっかりと舞台を務め上げ、とても初役とは思えぬ
仕上がりだった。
福岡雄大さんの代役でカレーニンを務めたトレウバエフさんは、
最初からキャスティングされても違和感が無いと感じさせる
渋い魅力が光っていた。

特に魅せられたのは
長田さんと厚地さんのパ・ド・ドゥである。
『アラジン』のルビーに引き続き
今回も確かなパートナーシップが光り、
通い合う心が見えてくるような素晴らしいペアであった。
激しい場面においても互いを思いやる優しさ、あたたかさが滲み出て、
細やかな感情が伝わってきた。
次回の共演が待ち遠しいばかりである。

本島さんのキティは貴族らしい気品と煌びやかな雰囲気をまとい、
伸びやかに踊っていた。
アンナの登場によって幸福の絶頂から急降下し
未練を残しながらヴロンスキーのもとを走り去っていくまでを
短い出番の中で色濃く描き出していた。
連日大活躍であった群舞のダンサーにも惜しみない拍手を送りたい。
ベテランの湯川さん、西川さん、千歳さん、楠元さんを始め
男性では福田さん、江本さん、宝満(ほうまん)さんが目を惹いた。
初出演のダンサー達も健闘し、締りのある踊りを堪能させてくれた。
男性ダンサーにとっては珍しく衣装の早替えのある演目で、
舞台裏は終始運動会状態だったことと察する。
今回怪我で降板した福岡さんのカレーニンも
次回こそは鑑賞できることを祈りたい。

ロシア文学といえば堅いイメージが付きまとい、
中でも『アンナ・カレーニナ』は一大長編作品である。
原作の文庫では上中下巻からなり、
読破に挑戦したものの途中で脱落してしまった方も
いらっしゃることと思う。(私もその1人である)

しかしながらキティの登場が少ないとはいえ作品の核を保ちつつ
洗練された数々の踊りでめくるめく舞台展開が進み、
鑑賞後もう一度観たいと思わずにはいられないバレエだ。
新国立の宝である統制の取れた群舞の底力が発揮される作品でもあり、
レパートリーとして再演を重ねてほしいと願う。
また、再演時には是非とも1人でも多くの方にご鑑賞いただきたい。

次回公演は4月のDance to the Future、
平山素子さんの3作品が上演される。
どれもバレエ団では初演作品で、
ダンサー達の新たな魅力の発見が楽しみである。



最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
予想をはるかに超えた (aruyaranaiayara)
2012-03-26 08:52:09
ため息の出る観劇レビュー!!

会場に浮遊し、様々な角度から観た気分になり、
原作を読んだような幸せな心もちです。

本当に素晴らしいです。
Nさん、ありがとうございました!

次の公演も楽しみにしております。
ありがとうございます (N)
2012-03-26 21:47:40
aruyaranaiayaraさん

引き続きコメントいただきありがとうございます。
aruyaranaiayaraさんはご覧になって
いかがでしたか?

こちらこそ、お読みくださった方が
喜んでいらっしゃることを思うと
本当に嬉しい限りです。
ロシア文学に対する意識を覆してくれた
思い入れのある作品で、
再演が待ち遠しく思います。

また来月の公演にも足を運び、
寄稿致す予定でおります。
是非お立ち寄りくださいませ。

ありがとうございました (管理人)
2012-03-27 07:25:39
Aruyanaraiyaraさん
何時もコメントありがとうございます。
Nさんの素晴らしい寄稿を管理人もいつも楽しみに
しています。
関西に来月引っ越せば当方自身も多少は観劇記をUP
出来るかと思いますがNさんのようなものは一寸
無理です。
今後共Nさんの寄稿楽しみにしております。
コメントも是非宜しくお願いします。
ぱぴこ (papiko75w@yahoo.co.jp)
2012-04-20 20:55:51
はじめまして!ヾ(〃 ̄ ̄ ̄ ̄▽ ̄ ̄ ̄ ̄〃)ノ ハロハロー♪ 初めてコメント残していきます、おもしろい内容だったのでコメント残していきますねー私もブログ書いてるのでよければ相互リンクしませんか?私のブログでもあなたのブログの紹介したいです、私のブログもよかったら見に来てくださいね!コメント残していってくれれば連絡もとれるので待ってますねーそいじゃ+*◆*・。+.*.◇+*・。+..◆+・。*◇・.。アドレス残していくのでメールしてね!そいじゃ+*◆*・。+.*.◇+*・。+..◆+・。*◇・.。

コメントを投稿