森と大地からのメッセージ ・・favorit colors・・

自然のおりなす物語、
きらめ樹・・・杉や檜の森のお手入れについて
をしたためてまいります

さよなら鹿島槍ヶ岳〜赤岩尾根を下る〜

2019年07月22日 | 自然のものがたり
今日は晴れ〜



青空に映える山々が嬉しい
鹿島槍ヶ岳の凛々しい姿


名残惜しいなあ
ダケカンバと鹿島槍


青空を背景に、
尾根にはツガ林


ザ・岩尾根 植生
ツガ・ゴヨウマツ・クロベ


岩塊斜面にもクロベ林
岩塊斜面は、氷河時代のお土産
氷河期の寒冷厳しい時に、凍結解凍によってバラバラになった岩たち
その岩の上でなら、広葉樹に負けずに生きていける針葉樹たち。

針葉樹、きみたちは氷河期時代を今に伝えているんだね。


このルートでの、
私的予期せぬメインイベント②
モウセンゴケ
虫を捕らえて、消化中。。。
貧栄養に生きるには、虫の窒素分が必要で。
虫を恨んでいるわけではないのですが、
なぜか、食虫植物というものにひかれてしまうのです。

私的予期せぬメインイベント①
ヒカリゴケ
写真中央のうっすらとした苔の小さなかたまり
自ら光っているのではなく、
レンズ体と呼ばれるレンズ状の細胞があり、

細胞の奥にある葉緑体に光を集めている。
このため薄暗い、穴の奥まったようなところで、わずかな光で生きていくことができる。これも、他の植物や苔との競争を避けて生きていくための手段。

私たちの目には、
そのレンズ状細胞が反射した光がエメラルドグリーンに光って見える。


ぐっと下山してハクサンフウロ


林道沿いにはサワグルミ林や、ブナ林が見られる
ブナ林の中でひときわ大きなミズナラ。

岩の上は、ブナは避けたのか、
じゃあ、ということで乾燥に強いミズナラが岩場の崖を占拠。

ほんのちょっとした斜面でも、
ブナとミズナラは棲み分けているらしい。

地質があって地形があって
それに合わせた森があって
高山には高山の棲み分けがある。

自然の織り成す景色は
本当に美しい。
それは何も言わずに人を感動させ
幸せな、満ち足りた気持ちにしてくれる。



・・・・・・・・・・・・・・
この後、実は、道は続き、
人の作った巨大なものが目に入ってくると
景色は大きく変貌させられる。

人間は、
地球の怪我を治し修復するために知恵と与えられた。

森と川と海と大地を修復していくのが
本来の私達、人間の役割なのだと
いつも、自らに言い聞かせていこうと思う。

五龍岳から鹿島槍ヶ岳へ〜岩四つん這いと花々の旅〜

2019年07月20日 | 自然のものがたり
五竜山荘から五龍岳への登りに
予期せぬ、ウルップソウとの出会い.
嬉し.

安山岩質の火山岩


五龍岳山頂

しばらくするとガスが晴れて、
今日いく工程が見える.

こんなにも岩峰を上り下りするのね.....
ひるむ


段差の大きい岩場を下りると
鮮やかな紫色のお花畑

細かなオヤマノエンドウ //日本固有種
縦長のウルップソウ
下向きのミヤマオダマキ
後ろの濃いピンクはミヤマシオガマ//日本固有種
これらはみんな岩礫地のパイオニア植物

日当たりは抜群だけど
栄養に乏しく、
気温変化も激しく、
強風にさらされ、
冬は雪に閉ざされる.

高山植物は
氷河期に日本に渡ってきた種類も多く、
氷河期が終わって暑くなると平地では生きていけず
高山に逃げ込めたものが、細々と生き抜いている.

このパイオニアたちが有機物を作り
2番手3番手を得意とする植物たちの足がかりになっていく.


雲が上がり、
立山連峰が見える.
さすがに残雪が多い.




振り返ると五龍岳も青空の中に
東斜面には、剥離現象で沸き起こる雲.

本日のメインイベント
八峰キレット渡り
濡れた丸太と濡れた鉄ハシゴに
なかなか緊張する.

岩の四つん這いをいくつか過ぎて
ほっと一息
ミヤマクワガタ(同姓同名の虫いますね....)//日本固有種
ちょっと崩れているような砂礫の斜面に見られる.
砂礫の移動に強いのかな?


イワウメ
必ず岩の隙間、岩の上でお目にかかれる岩好き.


キバナシャクナゲ
ハイマツと仲が良くて、
一緒に高山帯の背の低い樹林を作っている.

そして
ハイマツ樹林とともに生きているのが
やはり氷河期から日本で命を繋いでいる
雷鳥

出会えて嬉しい.

そして人を恐れない.

二羽ともメスだから、
母と娘かな.


ハクサンチドリ
蘭の仲間
美しいピンク色にはいつも
ハッとさせられる

クロユリ
ハイマツ樹林のふちの、
日当たりの良いところ.


ミヤマダイコンソウ
黄色3兄弟

ミヤマダイコンソウ // 丸っぽい葉っぱ
ミヤマキンポウゲ  //細くくびれた葉っぱ
ミヤマキンバイ  //三つの葉っぱ

みんな黄色にオレンジでアクセントをつけた可愛い
そっくりな花をつけるんですけど
葉っぱのデザインで個性を演出.


キヌガサソウ  //日本固有種
このきっぱりしたデザインの花は、
残雪が溶けた縁で花を咲かせる
雪田の花.

雪が溶けて芽が出て葉っぱを広げ始めると同時に
花をつけている.
何が何でも子孫を残そうという決意.

サンカヨウやヒメイチゲも
雪田近くを好む

サンカヨウ

ヒメイチゲ



雪田から一段上がった
湿り気の多い土の出来上がったところで
見られる草原のメンバー

ミヤマキンポウゲ

キバナノコマノツメ

ヒメクワガタ  //日本固有種


道々ずっと花を楽しませてもらいながら、
冷池小屋にて
二日目の工程終了〜

(令和元年7月16日)

五龍岳〜遠見尾根を登る・花々の旅〜

2019年07月18日 | 自然のものがたり
ゴンドラとリフトを乗り継いで、遠見尾根の高度を稼ぐ。
リフトの終点は、霧雨。
 
さっそく
オニアザミに初対面。
そして予期せずニッコウキスゲに会える。
 
 
 
日本海側の多雪地帯に来たことを実感させてくれる
タニウツギ
この木は、本当にしなやかだ。
雪の重みにぺちゃんこに押し付けられていても、
 
春になって雪が溶けるにつれて
毎年、毎年 起き上がって こうして優しい桃色の花を咲かせる。
 
 
ウラジロヨウラク
は花の色がぐっと深みのある紅色。
この木も日本海側の多雪地帯にだけ分布し、しかも日本固有種。
 
 
この遠見尾根は
白岳直下まで、ゴマ塩模様の花崗岩。
この花崗岩は白亜紀後期・古第三紀(6500万年前頃)の有明花崗岩で、
地下深くで固まったマグマが長年の風雨で浸食されて
表に出てきているところ。
 
足の下の地面が6000万年以上昔のもの、というのが
気の遠くなるような不思議な感覚になる。
 
 
 
尾根では、岩場になり
針葉樹の森になる。
クロベ、ゴヨウマツ、コメツガ
が、この地域での岩尾根の主役たち。
 
葉っぱはヒノキそっくりで、幹が赤っぽいのにクロベ。ネズコともいう。
クロベもコメツガも日本固有種。
日本には、世界で日本にしかない植物がたくさんある。
身近なヒノキも、スギも日本固有種である。
 
日本にはヒノキがあってこそ
法隆寺などの優れた建築が
1300年もの時を経てもなお立派に現存しているのである。
 
 
アカモノ
遠見尾根を登って行く道々、
ずっと道を彩ってくれている。
果実は高山の動物や鳥たちの食糧になってくれる。
 
 
ムラサキヤシオ
この華やかなピンクのツツジも、
日本海側の雪国を好み、
山地から亜高山の、ちょうどダケカンバ林地帯の明るい道端で会える。
だから、間近に撮影できるのがちょっと嬉しい。
 
 
ベニバナイチゴ
この花があると、近くに残雪が見られることが多い。
雪が遅くまで残るような湿っぽい森の淵に群落を作っている。
 
標高を上げて、白岳が近づくと、
白っぽい火山性の岩や、黒っぽい安山岩質の火山岩など
地面も多様になり
白はもろく、黒は固い塊になっていて、その変化がおもしろい。
 
 
ミヤマアズマギク
遠見尾根ルートの中では、
黒っぽい固い塊の岩のある、ここだけで見られた。
 
 
ハクサンシャクナゲ
はハイマツが見え出すと登場する。
虫たちには大人気なレストランで、
甲虫やハナバチたちがひっきりなしに訪れている。
 
 
白岳山頂から、五竜山荘への道々で
ハクサンイチゲが満開で出迎えてくれた。
 
1日でたくさんの花々に会えて、
無事に、まずは五竜山荘に着きました。(令和1年 7月15日)
 
 
 
 
 
 

富士山の小さな火口めぐり その1

2017年05月16日 | 自然のものがたり
GW最終日、富士山の小さな噴火口巡りをしてきました。


1つ目は氷池。
ひっそりとしていて、雪と氷が残っています。



二つある噴火口の一つに、白大竜王という石碑が立っていて
昔から大事に扱われてきた場所だというのが伝わってきます。

青木が原溶岩の噴火より前、
410〜600、640〜770年ごろの噴火とされています(富士火山 2011)。

タチツボスミレの仲間と苔が美しい。




2つ目は、氷穴へ。

林道から、精進湖登山道を上がって10分程度。

ここは貞観噴火の噴火口の1つで
ここから青木が原溶岩流がドオ〜と噴き出した。

ザ・割れ目噴火口。
谷のような形のくぼみが断続的に斜面に沿って並んでいる。

西暦864年ここからカーテンのように溶岩が吹き上がったのだと思うと、
苔むした今の静けさが不思議なくらい。

噴火口の縁は溶岩の張り付いた岩場になっていて、
立派なヒノキとツガが林立。
やはり青木が原溶岩流はヒノキとツガの天国だわ。



3つ目は大室山の噴火口へ。

緑のエリマキトカゲはイヌブナの双葉。



見上げればイヌブナの新緑がうつくしく……
歩けばフデリンドウ、エイザンスミレも。



火口へ下りる斜面にサワラが生えていて、
生きているのに
キツツキの穴が集中的に彫られている。
4個とか6個とか。



サワラは材が柔らかくて、彫り心地が良いのか?
確かに広葉樹は硬いっていうからなあ。

キツツキはサワラが好きなのか。。

3000年前に噴火した、その火口。
初めて足を踏み入れた。



心地よいお山散歩になりました。

富士山宝永火口〜富士山は森を壊す、でも森はまた昇る〜

2016年08月14日 | 自然のものがたり

いつも、なぜか火星にいるような気持ちになる景色、
宝永火口へやってきました。

8月9日科学教育研究会のフィールドワーク、
全国の小中高理科教諭の方々を1日ご案内いたしました。


お盆ころになると、富士山五合目はもう秋の実り。
タイツリオウギが、鯛の実りをつり下げています。



宝永第1火口では、お一人が
かわいい火山弾を発見!
みなさん、お〜〜と言って写真撮りまくり、



樹林帯の水平道入口では、
「カラマツの樹高の低い部分は、
宝永噴火の影響を受けたところですね?」
お一人が鋭い観察。


宝永噴火後、300年で再生しているのは
パイオニアのカラマツ。

ダケカンバのかたまっているところは、
何十年〜100年単位で雪崩が起きるところ。

カラマツは雪崩に弱いけど、
ダケカンバはしなって耐えたり、
ひこばえを出して再生するので
雪崩のあとはダケカンバ天下になるようです。


そしてもう一つ観察したのは、
横切る2つの谷。

谷ができた原因が、
1つは割れ目噴火、もう1つは土石流。
溶岩がペタペタ張り付いた縁のあるのが、
割れ目噴火、

砂が多くていろいろな色や大きさの石が混じっているのが
土石流の谷。


森は毎年上にも広がっていくけれど、
噴火や、土石流で下に押し下げられてしまう。
するともう一度、パイオニア植物から
緑化のやりなおし。


なので、五合目の森も均一ではなく、
同じ標高でも森だったり、草地だったり、
何も生えていなかったり、
まだら模様になっています。

そんな、
森と大地と時間のおりなす景色を、
現地でたっぷり観察してまいりました。

ふふふ、何度行っても楽しいところです。