経済社会問題 #32

2006年07月23日 | 経済問題
私はニッポン放送の携帯情報サイトで、その週に起こったことを中心にコラムを書いています。一週間遅れで、その記事を公開しています。世の中の流れが速いので、だいぶずれてしまうこともありますが、ご容赦ください。なお、最新版は携帯電話からニッポン放送のサイトに行ってください(こちらは有料です)。
※更新をサボっていたら、1ヶ月近く経ってしまいました。失礼しました。

 6月22日の衆院財務金融委員会に、日銀の福井俊彦総裁が参考人として招致された。野党の要求で閉会中審査が行われたからだ。この席で村上ファンドへの投資契約の詳細な内容を訊ねられた福井総裁は、「本当にど素人で覚えていない」と答弁した。途端に委員席から「それはないだろう」というヤジが飛んだ。
 確かに、金融政策のトップがど素人でよいはずがない。しかし、私は福井総裁は本当に詳しい中身は知らなかったのだと思う。志を共有する村上良彰被告がよきにはからってくれると信じていたのだと思う。
 先週も指摘したが、今週も福井総裁と新自由主義者たちの親密な関係が次々に明らかになった。一つは、福井総裁の村上ファンドへの投資を仲介していたのがオリックスで、しかもオリックスの宮内会長と「個人的に非常に親しい」ことを6月22日の衆院財務金融委員会で福井総裁自らが明らかにしたのだ。
 6月29日付けの『週刊文春』は、もっときな臭い記事を載せている。
(以下引用)
 福井総裁の村上ファンドへの出資が発覚した十三日、なぜか真っ先に「福井総裁擁護論」を展開したのが、ポスト小泉「大本命」の安部晋三官房長官だった。「安部産は福井総裁辞任論の火消しに躍起でした。なぜなら、村上ファンドが原因で福井総裁が辞任すれば自分にも火の粉が降りかかってくる可能性があったからです。安部さんは、村上の逮捕時に「パーティーとか大きな会合で会ったことはある」と“疎遠ぶり”を強調していましたが、実際はかなり親密な関係だったんです」(政府関係者)
(以上引用)
 この後、『週刊文春』は六本木ヒルズの村上被告の自宅でのパーティに安部官房長官がよく顔を出していたことを伝えている。
 また、この『週刊文春』は私のコメントも紹介しているので、それも引用しておこう。
(以下引用)
 堀江や村上が活躍できるような“海賊資本主義”の経済体制を作り上げてきたのが、日銀総裁の福井さんと金融・経済財政担当大臣だった竹中さんのツートップだった。そして村上や木村といった人物が金儲け主義の民間伝道師としてマスコミで言論を振りまいていった。彼ら4人こそが、いかがわしい風潮を創り出し、格差社会を作り上げた悪の枢軸「四人組」といえるでしょう。
(以上引用)
 ちなみに上記で「木村」となっているのは、竹中金融庁で顧問を務めた木村剛氏のことだ。福井総裁は木村剛氏が日銀を受験したときの面接担当で、結婚式の仲人も務めている。
 私は、村上ファンド事件や福井総裁のスキャンダルの背後にあるのは、日銀、政府、評論家、そして投資ファンドのインナーサークルによる暗黙の共謀なのではないかと考えている。
 福井総裁が金融を引き締めることでデフレを継続させる。デフレで生まれた不良債権を、木村剛氏が主導して作った「金融再生プログラム」にしたがって強引に処理していく。それを投資ファンドや新興企業が二束三文で買収する。さらに投資ファンドは、デフレで割安になった優良企業の株式を買い占めて、高額配当の引き出しと高値での売り抜けを狙う。
 四人組の間に明確な共謀はなかったと思う。しかし、志を同じくする人の間には暗黙の共謀が成立する。この暗黙の共謀を破壊しつくさない限り、日本にまともな資本主義は根付かないだろう。
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