monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

ラジオ「私の日本語辞典」に松井栄一が

2009年08月31日 | 日本国語大辞典

 NHKラジオ「私の日本語辞典」に松井栄一氏が登場してました。昨年のものの再放送らしいですが、楽しく聞きました。

 「大日本国語辞典」の編纂を引き継いだ際、用例は、辞書の前半に多く、後半は少なかったそうです。(ってことは、用例探しも、後半部分を重点的に行なった方がよいのかしら?)
 そして、用例探しはやっぱ楽しそう! 用例探しバイトとかあったら、絶対応募するなー。1例幾らとかの出来高制でもいい。(だって最近、用例探しにハンパないほど手を広げちゃってるんだもん。もう収集がつかないくらい。多過ぎて、どれから先に投稿すべきか迷ってます。)

 松井氏は「この単語は用例がない(或は、古いものがない)」とかいうのを覚えておいて、本を読むんだそうですが、今どきそんな効率の悪いことしないでも良いのでは、と思ってしまいました。
 だって、ネット上にかなりの量のテキストが公開されてるんだから、それらを集めれば、網羅的に用例を探すことが可能でしょ? たまたま読んだ本に出てきた用例を、ってんじゃなくて、時代ごとに当るべきテキストを選定してるんだろうから、それらを引っぱってきて、編集部で電子テキストとして保存して、それから、五十音順なりに単語を検索するとかすれば、かなりさかのぼる用例が発見できると思います。
 ネット上で公開されてるのは、古代~近代までのものがほとんどなので、用例もその時代に限られますが。

 というわけで、いっそのこと、日国編集部でOCRを購入して、現代の文章なんかどんどん電子テキストにして、用例収集用データとして蓄積してしまえばよいのでは?
 本を通読して用例を探すのは1回読んだら終っちゃうけど、電子データにしておけば、後からでも繰り返し検索できるし、網羅的に集められるしね。
  ここまでくると、国語学者の共用データベースとしてそういう電子テキスト集積所があると、すごく便利な気がするんですけど……。

 和歌はかなりまとまった量のデータを1ヶ所で探すことができますが、散文になるとネット上のあちこちにバラバラに存在してるので、まずはそれらを集める方が良いだろうと思います。一つの単語の用例を探すのに、あちこちのサイトを開いて検索してたのでは、効率が悪いですからね。

 そして「浮足立つ」はやっぱりまだ明治期の用例が見つかってないんですねー。いっそのこと、江戸時代の文章にあたってもいいのかも?


秋霧

2009年08月29日 | 日本古典文学-和歌-秋

河霧のふもとをこめてたちぬれば空にぞ秋の山は見えける(古今和歌六帖)

たれかまた弓束(ゆづ か)まくともしらまゆみほそ川霧の秋のゆふぐれ(津守国冬)

山路には人やまどはす河霧のたちこぬさきにいまわたりなむ(古今和歌六帖)

野べの色はみなうす墨になりにけりしばしと見つる夕霧の空(夫木抄)

秋の野に旅寝せよとやゆふ霧のゆくべきかたをたちへだつらむ(続古今和歌集)

ことならば晴れずもあらなむ秋霧のまぎれに見えぬ君と思はむ(古今和歌六帖)

君がゆく海辺のやどに霧たたば我が立ちなげく息と知りませ(万葉集)

秋の田の穂の上に霧(き)らふ朝霞いつへのかたに我が恋ひやまむ(万葉集)

峰くだる雲にたちそふ川霧の晴るるかたなき我が思ひかな(玉葉和歌集)

ながめてもむなしき空の秋霧にいとどおもひのゆくかたもなし(草庵集)

隔(へだ)つるも晴れ行く色とみるものを人の心をあききりの空(蒙求和歌)


秋の有明月

2009年08月28日 | 日本古典文学-和歌-秋

秋風にうきつながるる河霧のそらにさびしき有明の月(文保百首)

わが心なほはれやらぬ秋霧にほのかに見ゆる有明の月(新古今和歌集)

秋の夜のながきかひこそなかりけれ待つにふけぬる有明の月(新古今和歌集)

呉竹(くれたけ)のは山の霧の明けがたになほ夜をこめて残る月影(続拾遺和歌集)

秋霧のほのめきしらむ山の端にそれかと見ゆるありあけの月(広沢切)

おもひ知る人に見せばや山里の秋の夜ふかき有明の月(更級日記)

かたみとや袖の別れにとどめけむ涙にうかぶありあけの月(続古今和歌集)

わすられぬ我がこころにぞ残りけるともに見し夜の有明の月(藤葉和歌集)

ながらへて世にありあけの月すまばまためぐりあふちぎりともがな(風葉和歌集)


秋の月

2009年08月27日 | 日本古典文学-和歌-秋

秋はただ荻の葉すぐる風のおとに夜ふかく出づる山の端の月(風雅和歌集)

山鳥の尾の上の秋の夜半の月こころながくも待ちいでぬるかな(文保百首)

あまつそら浮き雲はらふあきかぜにくまなくすめる夜半の月かな(新勅撰和歌集)

あさぢはら葉末にむすぶ露ごとにひかりをわきてやどる月影(千載和歌集)

かげやどす露のみしげくなりはてて草にやつるるふるさとの月(新古今和歌集)

おもひかねながむる空もかきくらしなみだにくもる夜はの月かげ(風葉和歌集)

しらざりき雲ゐのよそに見し月のかげをたもとにやどすべしとは(山家集)

秋の夜の月のひかりはあかけれど人の心のうちはてらさず(古今和歌六帖)

夜ごとにながむる人はあまたあれど空には月ぞひとりすみける(纂題和歌集)

さびしさにあはれもいとどまさりけりひとりぞ月は見るべかりける(千載和歌集)

こころすむ秋の月だになかりせばなにをうき世のなぐさめにせむ(風雅和歌集)


秋の三日月

2009年08月26日 | 日本古典文学-和歌-秋

三日月の野原のつゆにやどるこそ秋のひかりのはじめなりけれ(正治初度百首)

三日月のやどかる露のむらすすきほのめきわたる秋はきにけり(洞院摂政家百首)

秋の色もあるかなきかのみかづ きのかげ 吹きはらふ荻のうは風(草根集)

三日月のほのめきそむる垣ねよりやがて秋なる空の通ひぢ(拾玉集)

つま木こる遠山人は帰るなり里までおくれ秋の三日月(玉葉和歌集)

月の眉みねに近づく夕まぐれおぼろけにやはものあはれなる(内大臣家歌合)

弓はりの月みる宵はほどもなく入(い)る山の端(は)ぞわびしかりける(玉葉和歌集)