ロバート・ウェストール著:岩波書店
この『ブラッカムの爆撃機』を初めて読んだ時、不覚にも鳥肌がたってしまいました。読んでいる途中で、背中に冷たいものが走ったのです。
ロバート・ウェストールはイギリスの児童文学作家です。最初に読んだ本が「海辺の王国」でした。以来、すっかり魅了されて、「かかし」「弟の戦争」「猫の帰還」「クリスマスの猫」「青春のオフサイド」「禁じられた約束」と、彼の本を見かけるたびに買い求めて読んできました。(「機関銃要塞の少年たち」は買ったけど、もったいなくてまだ読んでません。)
「ブラッカムの爆撃機」はすでに絶版となっており、入手することが困難で、図書館で見つけてやっと読むことができたのです。最近になって岩波書店から復刻されたことを知り、早速本屋さんへ走りました。
宮崎駿監督が編集しており、書き下ろしの漫画も入っています。宮崎監督もウェストールに魅了された一人なのでしょう。
戦争が何もかも破壊していくこと、人の心も例外ではないことをウェストールは本を通じて語りかけてきます。一人でも多くの方にウェストールを読んでほしいと思います。
上橋菜穂子著:偕成社
守り人シリーズが始まってから十年、いよいよチャグム皇太子とバルサの物語も完結しそうです。本書はその完結編の第一部。
新ヨゴ皇国を救うため、自らを死んだことにして海からの脱出を図ったチャグム皇太子。その彼を守るために、ジンからバルサに伝言が届けられます。
バルサは行方不明になったチャグムを探し出すために、一人、ロタ王国へと旅立ちます。
敵味方が入り乱れて複雑な人間関係を築き上げていますが、バルサとチャグムの絆はとてもシンプルで、その分、深いものがあります。このシリーズもあと2巻だけかと思うと、読んでしまうのがもったいないようです。
ケヴィン・ヘンクス著:白水社
ケヴィン・ヘンクスは「夏の丘 石のことば」(徳間書店)を以前読んだことがあり、それがおもしろかったので、書店でこの本を見つけたときは迷わずに購入してしまいました。
十二歳のマーサはある日、女の人の訪問を受けます。女の人はオリーブという女の子の日記の切れ端を持ってきました。日記には小説家になりたいこと、そして、「今年の夏はマーサと友達になりたい」ことなどがつづられていました。
オリーブは目立たないおとなしい女の子で、何週間か前に交通事故で亡くなっていました。
マーサはそれまでオリーブについて考えてみることさえしていませんでした。しかし、それからというものマーサはオリーブや自分の周りのことについて深く考えるようになるのです。
ジャッキー・フレンチ著:鈴木出版
ヒットラーには娘がいました。顔に赤いあざのある足の悪い娘です。娘は父を別の名前で呼んでいました。お父さんに会いたいのに、、忙しいお父さんはたまにしか会ってくれません。
お父さんはほかの「多くの子どもたちと同じように」ハイジを愛してくれました。でも、ハイジはハイジとして愛されたかったのです。
でも、これは本当のお話ではありません。これはアンナが始めたお話の中の女の子の話です。けれど、いつしかマークにはお話の中の女の子だとは思えなくなってきました。
もしも、ヒットラーに娘がいたら?
娘はあの戦争を止められたのでしょうか?
何が正しくて、何がいけないかを外界から隔離された娘に理解することができたのでしょうか?
今、目の前にヒットラーがいたら・・・・?
今まで何の疑問も持たずに生きてきたマークが、戦争について社会について考えるようになります。