PAINKILLER

ここが皆さんのPAINKILLER(鎮痛剤)になることを願って・・・・

苦行

2008-04-29 08:54:07 | Weblog
激しい雨音で目覚めた。




昨夜は寝返りするたびに足が痛み熟睡できなかったが、不思議と疲れは然程感じない。今日も騙し騙しなんとか歩けそうなのでホッとする。
体の衰えなのか、運動不足なのか、原因は分からないが今まで経験したことのない種類の痛み方だ。筋肉痛でも関節痛でもなく、膝から下の筋という筋が痛い。この日は特に足の甲の痛みが酷く、朝食後にPAINKILLERを飲んだ。

相部屋の一人は親族に不幸があり急遽帰宅することになったようだが、3日後にはお遍路に復帰するとのこと。昨日一緒に歩いたお父さんは雨と足の痛みにダウン。今日一日静養して明日からに備えるそうだ。

外は土砂降りなので入念にパッキングしてウェアも雨仕様で挑む。
その様子を真剣に見ているお父さんから質問攻撃。

「なるほど~。袋や服にもそれぞれ意味があるんですね」

『衣食住全て背負うので吟味した物しか持てないんです』

バックパックにザックカバーを被せ、首にMSRのパックタオルを巻き、靴紐を緩めに締めた。女将さんとお父さんに挨拶をしてフードを被り雨に打たれながら歩く。
何気なしに振り向くと軒下で女将さんが見送ってくれていた。無意識のうちに手を合わせ、心の中で

『ありがとうございました』

と言い、お辞儀をした。
ここ数日で確実に感謝の気持ちが強くなった。自分の気持ちを素直に表現出来ることが嬉しい。
これは遍路をしている影響なのか、それとも道中の苦悩の蓄積が感謝の念に転化したのか、私にも判らないし知る必要もないと思う。

雨音を聞きながら、濡れた景色を、雨の匂いを、楽しむ。
雨は好きだ。濡れた草木を見ていると生命の息吹を感じる。
深層意識を持っている人なら雨が生命の深部であることを知っていると同時に雨の楽しみ方も知っている。表層意識で暮らしている人は雨を邪魔者扱いし、雨を楽しもうとする心も、ない。
私は雨に濡れながら思った。
科学がいくら進歩しても我々人間は雨粒一つ作り出すことも止ますことも出来ない。自然界で人間が知っていることや出来ることなど微々たるもので、分からないこと、予測できないことの方が圧倒的に多い。だから自然は面白いと思う。
雨に唄えば。雨もまた良し。


一時間ほど歩いただろうか。足の痛みが限界になったのでバス停で休憩する。



ベンチを濡らしたら悪いのでオールウェザーシートを敷き、その上にザックを置き横に座る。靴とソックスを脱ぎ足裏のマメに貼ったテーピングを交換して足をマッサージする。足の甲はある一定方向へ曲げると奇声を発したくなるほど痛い。

”もうそろそろ限界か・・・・・情けない”

体が冷えてきたので黒砂糖とバウムクーヘンを食べ、ストレッチして体を温める。何とか今日一日だけでも歩きたい。足よ、頼む、もってくれ!

この日は2つのルートを考えていた。
一つはひと気のない山越えルート、もう一つは徳島の繁華街を通るルートで、本来なら有無を言わず山越えルートを選ぶが、この足では不可能だ。河川沿いのフラットなルートを歩き、徳島市内の宿に泊まることにした。
徳島市には以前から泊まってみたい宿があった。
何年ぐらい前だろうか、北陸にある某温泉街近くの川原で一緒に野宿したライダーから

「徳島市内にある○鶴旅館の90歳近いおばあちゃんがとても優しくて可愛い。娘さんと一緒に現役で旅館を切り盛りして、四国遍路やその他の巡礼地も周っており、お遍路に好意的」

という話を聞き記憶に残っていた。
その後も何度かこの旅館の噂を聞き、いつか泊まってみたいと思い続けていたが、同じ四国にありあがら徳島は他県と比べ一番行く機会の少ない県。剣山系、祖谷、海部、など自然豊かな場所には野遊びで行く機会は多々あるが、徳島市となると淡路方面へ行く際に通り過ぎるだけで立ち寄ることはまず無い。今回の遍路旅でこの旅館に泊まらないともう行く機会もないと思い、出発前からずっと心に引っ掛かっていた。
徳島市内まで頑張って歩き、今日はこの宿に泊まろう。

そんなことを考えながら足を引きずりつつ何処にでもあるような市街地を歩いていると、真新しい休憩小屋が目に入ってきた。中を覗くと綺麗に整頓され、コーヒー、ミカン、飴、金平糖、せんべい、などの接待が置かれていた。ザックを下ろし中に入りコーヒーを頂くことにした。



全身濡れているので座ることは出来ないが、コーヒーを飲み金平糖を食べると体が温まり元気を貰った。小屋の中は地域の方々の愛が溢れていた。

  

   

みかんを食べていると一人のお遍路さんが入ってきた。
2人でこの小屋への感謝を話し、今日の予定などを雑談した。会話中、何気にお遍路さんが着ているレインウェアを見ると、私と全く同じタラスブルバのレインウェアだったので驚いた。

私は一足先に出発して、先を急いだ。
足の痛みが増して来たので早いく寺を周っておきたかった。いつ動けなくなるか分からない爆弾を引きずっているので、少しだけ気持ちも焦っているようだ。まぁ、常にマイペースな私なので、これぐらいの焦りがあって人様と同じペースなのかも。珍しく頑張っている自分に驚く。


本日一つ目の寺を打ち、川辺の道を歩く。女性遍路と出会い話ながら歩いていると昨日少し話をした自転車遍路くんと再開した。昨夜会ったときは互いに寝床が決まってなかったので昨日の宿泊状況を報告し、今夜の予定を話した。ひた向きに自転車を漕ぐ姿が爽やかな青年で、この旅で成長する片鱗が表情から窺える。
(5日後。私が帰宅して出張に出かける道中で自転車をガムシャラに漕いでいる彼を見かけた)

女性遍路にツマラナイ話をしていると道に迷ってしまった。
足は強烈に痛むが私は喋り続ける。彼女には申し訳ないが何故だかハイテンションで喋り続けた。
寺は直ぐに見つかった。
友人と昼食するという彼女とはここで別れ、土砂降りの雨に打たれながら足を引きずり歩き続ける。昼食も食べたいがびしょ濡れのいでたちでは食堂にもスーパーにも入れない。バックパックを下ろしレインスーツを脱ぎ濡れた顔や手を拭いてまで何か食べる気力はなかった。濡れた身体は冷え切っており歩いていないと寒さで身体が震え、歩くと足の痛みに襲われる。
早く宿でゆっくりしたい。

無心で歩き続けた。













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2 コメント

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足の痛みはとれましたか? (そのみ)
2008-05-09 22:44:37
徳島を立江寺まで一緒に歩きましたが、やっぱりだいぶ足を痛めていたんですね。回復しましたか?私は、4月23日に結願。やっぱり荷物の重さに身体が悲鳴を上げ、種埼千松公園でテントを張ったのを最後にシュラフやコンロを含め送り返し、歩き通しちゃいました。始めた事を途中でやめられず・・、花や海や山、そして出会ったたくさんの人に励まされて。88番大窪寺では、『着いちゃった・・』でした。今は、膝や踵に痛みが残っていて、これはもう、これまでに経験したことのない疲労の蓄積を感じています。自分の身体とこんなにきちんと向き合ったのも、いい経験になりました。
また出かけるのですね?楽しみに、ブログ、たま~に拝見します。
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やあ! (モルド)
2008-05-12 22:26:30
秘密のブログを探し当てましたね。(笑

まずは、結願 ご苦労様でした。

道中は辛さと励ましの繰り返しだったのではと想像しております。自分と向き合える人の辛さや迷いは、その後必ず人生の深みに転化すると私は信じています。

そのみさんと御一緒できた数時間。歩きながらマニアックな劇団や映画の話ができたので足の痛みを感じることなく歩けました。お別れして電車に乗った瞬間、立てないほどの痛みに襲われ、若い衆のように地べタに座り込んでしまいました。
痛みは5日間ほど残りましたが今は大丈夫です。ありがとうございます。

いつ遍路旅を再開できるのか今は分かりませんが、まとまった休みはもう取れそうにないので小刻みでいいから進めたいと思います。私は四国遍路を3回周りたいと思ってます。

また戯言を書きますので暇つぶしに読んでやって下さい。

モルド
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