気になる人に会いに行こう! ~大学生によるインタビュー録~

テーマは様々。
私が会ってみたいと思った人にインタビューをするという、この上なく自由なブログです。

地域を盛り上げたい!~お金と心の自立を目指して~

2016-07-30 05:10:21 | 取材記事
行って参りました、岡山県西粟倉村!
今回は、温泉に入れるゲストハウスを営まれる村楽エナジー株式会社取締役社長の井筒耕平さんにインタビューをするため、西粟倉の「あわくら温泉元湯」に行ってまいりました。

初の県境は、正直、かなり遠かったです。岡山駅から約2時間半!笑
まず、JRの兵庫県上郡駅で智頭急行という私電に乗り換えるのですが、そこではICOCAが使えないことが乗る直前に判明。現金を持っていなかった私は予定していた電車に乗れず、一時間待たなければなりませんでした…。
約束の時間にも大幅に遅れてしまい、申し訳なさでいっぱいになったスタートでした💦



西粟倉の駅は、たったの20メートルくらい。
目の前に広がる山と青空が沁みます。


駅に着くと、井筒さんが軽トラックで待ってくださいました。ああ、申し訳ない…。
笑って許してくださる井筒さんに感激しながら、車で10分弱。
元気よく咲いている朝顔の横に「あわくら温泉元湯」の看板が見えて、なにやらにぎやかな声が聞こえてきました。



玄関では小さい子たちがわいわいと遊んでいます。
子どもちゃんたち(井筒さんの子どもさん)は元気いっぱい!笑


それではここでちょっくら、井筒さんに関するご説明を。

井筒さんが社長を務める「村楽エナジー(株)」は、西粟倉村を拠点に、バイオマスエネルギー(生物由来の植物などから取れるエネルギー)を中心とした再生可能エネルギーの活用を実践する会社です。
取り組みの一つとして、同社が経営する温泉施設「あわくら温泉元湯」があります。源泉を温めるために石油燃料ではなく、間伐材の薪を使っています。

日帰り温泉やゲストハウスの他、カフェやバーとしても機能する元湯は、大人にとっても、子どもにとっても居心地のいい場所になっています。

実はここ、2011年に廃業していたのですが、行政からの依頼を受け、井筒さんが会社として2015年に運営を再開されたそうです。そんなバイタリティー溢れる井筒さん、実は以前は東京でサラリーマンをされていたそうです。
一体どんな経緯や想いがあって、この西粟倉でベンチャー企業を立ち上げたのでしょうか。



フリースペースでわいわいと子どもたちが遊び、大人たちがおしゃべりするアットホームな雰囲気の中、マジメなインタビューを開始しました。




〈東京から西粟倉へ〉
私:井筒さん、以前は東京でお仕事をされていたということですが、なぜこの西粟倉で「元湯」を経営することになったのでしょうか

井筒さん(以下、井)
:西粟倉に来たのは、仕事でたまたまです。
前は、環境エネルギー政策研究所というところで、国が決めるエネルギー政策を提案、調査、研究していました。でも、東京にいると、そういうルールを決めているだけで、実際にそのルールに基づいて活動する地域のことはよくわからないまま必死に空中戦をしているみたいだなと感じていました。そこで、東京以外のどこか地方で、もうすこし地に足を付けて地域と向き合いたいと思ったんです。そんな時に岡山県でプロジェクトがあるというのでやって来ました。本当は1年とかで帰るつもりだったのですが、住みついてしまいました。笑

私:なるほど。実際に地域で暮らして、現地で必要とされていることを見つけようと思われたのですね。
では、元湯を始めた理由は何でしょうか。

井:これもすごく単純で、「元湯を復活させましょう」という話になったときに、「じゃあ僕がやります!」と言ったからです。
薪ボイラーを使って温泉を復活させたら、西粟倉にとって持続可能な社会づくりができると思ったのです。燃料は石油を使うよりも安いし、林業は活性化できます。
でも、ボイラー(火をおこすための機械)に薪を毎日入れて水を沸かすなんて、面倒ですよね。その上、温泉を経営するなんて、上手くいくかわからないし、失敗するリスクもある。誰もやりたがる人はいませんでした。
でも、真剣にリスクと向き合っている人がビジネスとして成功している例は多いです。一生懸命やれば、地域のみんなも認めてくれるし、協力してくれます。あいつらがいないと困るなって言わせたら勝ちですね。笑



〈井筒さんの想い〉
私:確かに、何かの仕事をしなきゃならない状況になったとき、お互いに責任を押し付け合う、ということはよくあるかもしれません。

井:そう。地方、都会問わず、日本の多くの人は、心の自立があまりできていないと思います。

私:心が自立、ですか。

井:そう。自分がやってやろうじゃないかって思う気持ちのことです。そういう心意気が、今の人たちは希薄だと思います。でも、「面倒なことは誰かに任せて、自分は楽に暮らせていたらいい」というようなマインドを変えることは難しい。
だから、まずは自分が地方で一生懸命働いて、それに呼応するように自分も頑張ろうって思ってくれる人が地方で増えるといいな、と思っています。
そうして、地方に住む一人ひとりが地方全体を支え、その地方が都市を積極的に支えるようになれば、無理のない社会づくりができるんじゃないかと思うんです。




井筒さん。あわくら温泉元湯にて。



〈金銭的な自立〉
井:先ほど、心の自立と言いましたが、地域ではお金の自立も必要だと思います。

私:経済的な自立ですか?

井:地方には、東京から送られる地方交付税交付金が自治体の大きな財源となっていて、その多くは地域全体のエネルギー代として地域外に流出してしまいます。
僕は、熱などのエネルギーを自給することで地域外に流出するお金を減らすことが大切だと考えています。また、再生可能エネルギーだけでなく、様々な分野の起業が増えていくことが大切です。特に、地域にある資源を生かせるビジネスをすれば、仕事が増え、お金が増え、人が集まってきて、持続可能な社会を創ることができます。


〈田舎でビジネス〉
私:ビジネスですか。

でも、都会の方が、モノも人もお金も田舎よりは多くあるのでビジネスがしやすそうです。あえて田舎でビジネスをするメリットって何なのでしょう?

井:足りないものがあるからこそ、ビジネスが成り立ちやすいんじゃないかな。それに、田舎でビジネスをする実践者って、行政やメディアにとっては珍しいから、自分のやっていることが取り上げられて承認されやすいんですよね。でも都会では、そんなに注目されたりしない。

私:なるほど。

井:だから、みんなもやりがいを感じていて。もっと最先端のことをしてやろうとか、東京の奴らにはできないことをしてやろうとか、いろいろ考え出します。東京じゃなくてもうニューヨーク行っちゃえとかね。笑


〈これから〉
私:では最後に、村楽エナジーが今後目指す方向を教えてください。
井:いま西粟倉でやっているように、観光などの第三次産業と、農業や漁業などの第一次産業とを組み合わせて、様々な地域にインパクトを与えていきたいです。西粟倉の場合は、観光業(温泉)と林業、そしてエネルギー分野を融合させた取り組みですが、地域にはそれぞれ特性がありますから、その地域の強みを生かした盛り上げ方をしたいですね。
そして、それぞれの地域の若い人たちが、その影響を受けてどんどん起業し、自ら地域を盛り上げていってほしいですね。




いかがでしたか?
私は、井筒さんの「心を自立させる」という言葉が身に沁みました。
他人任せにせず、自分の地域のこと、日本のことを真剣に考えていきたいと思います。



2016年 7月30日