‥公園の中で音楽を集おう!‥

今まで聴いてきたロックのアルバムの中で、気になっている作品をいろんな角度から検証してみませんか?

検証7   Cocteau Twins  /   Treasure   (miffin)

2014-03-24 20:18:37 | 検証

コクトーツインズを聴く時は・・
まず、部屋の灯りを消し
ヘッドフォンをして
コンポの前で正座。
高校生の私はそうしないと彼らの音世界に入れなかった。
恐れ多い美しさ。
闇夜からかいま見える、それは一体何なのだろう?
手探りで探し当てる、かすかな感触。
それは光なのか、闇のままなのか・・。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

1.タイトルについて

Treasure=秘宝。
タイトルからして、完璧。



2.アートワークについて

23 Envelopeの最高傑作といってもいいデザインワーク。
アルバムの曲とほぼ同時に思い起こさせるジャケットは数あれど
ここまで曲の流れと一体化したものはなかなかない。



3.アルバム全体の雰囲気(曲順も含む)について

ギリシャ神話の神々が曲のタイトルになっている。
前作までの流れにある「Persephone」「Amelia 」「Cicely 」などの曲がギリギリのところで彼らの闇の部分を表現しており、それがアルバム全体の耳障りの良さを小気味よく破壊してくれる。



4.P.Vや当時のライブ映像について

87年にあった二度目の来日公演を運良く見ることが出来た。
会場は大阪の御堂会館。
もう四半世紀以上前のことで思い出す記憶にもあやふやなところがあるが、当時の気持ちに立ち返って記してみよう。

初来日へ行った人達の噂から彼らのライブは全員席に座ったまま「鑑賞」すると聞いてはいたが、会場へ入ると見事にその通り。
まるでクラシックコンサートのように静かにたたずむオーディエンス。
私たちももちろんその流儀に従う。
舞台から右手にエリザベス、フロントから少し左手にロビンとサイモンが。
まずジュリエッタ・マシーナがパンクスになったようなイメージを持っていた
エリザベスの胸板が想像していたより厚く見えて驚く。
あの声を出すにはやはりかなりの肺活量がいるのだな・・。
胸元に少しレースの飾りのある白いブラウスに、ボトムはダークなロングスカート。
まるでコーラスサークルの奥様のような出で立ち。

PA自体があまりよくないようで(この会館は真宗大谷派難波別院というお寺さんの敷地内にある)ドラムマシンの低音部ばかりが強調され、腹部にドスドスと響き、隣にいた友人はその振動で気分が悪くなると最後まで嘆いていた。
そのせいかサウンド自体の広がりにも欠けていて、コクトー・ツインズという音世界を堪能できたかというとかなり怪しい。
エリザベス自身も声の調子があまり良くないようで、終始納得いかない表情と態度だった。
特に低音部はほとんど聴き取れない部分もあり、声を出すたびに平手で胸を叩くアクション(初期のライブでも見受けられる)を繰り返し、かなりいらだちがあるようにも見えた。
演奏自体は1時間ほどで終了。

その後、初来日時の日本の印象があまりよくなかったと聞き、それなのに短期間よくもまた来日してくれたものだと感謝しつつ、それならもう少しあの態度はどうにかならなかったのかとこっちがいらだつ結果に。
しかし、ファンに対してはとてもフレンドリーだったということをつい最近知ることになった、ごめんなさい。


84年のスウェーデンでのライブ。

これは調子が良いときですね。

COCTEAU TWINS Live in Sweden, Orebro 1984 FULL CONCERT



5.関連商品について

数年前にボックスセットが出ていたような気がする、高いので手は出ませんでした。


検証7   cocteau twins / treasure  (メリベル)

2014-03-23 15:09:31 | 検証


私たちはずっとその狭い部屋に居た。
外は雨だった。
恋人同士のようにお互いの熱が感じられたが、黙っていた。
「さあどうしよう」
そのコクトー・ツインズの狂わんばかりの音世界を前に。
「何を語ろう」
「何を動作しよう」
何もかも無ではないか、何をもすることが。
一切がその音楽の前に結晶体と化す。
圧倒的な世界観の前に。

私たちはただ黙っていた。
けれど、私にはただ一つ分かっていたことがあった。
コクトー・ツインズの「神々が愛した女たち」だけが、
二人を結びつけるものだったということが。
そのアルバムを私がダビングしたことによって、
その恋は始まったのだ、ということが。
けれども、それは‥。

『こんな音楽聴いてる女性ってどういう人なんだろう!!凄く興味を持ったよ』
『素晴らしいよ、素晴らしい!!全ての世界が彼ら一色に塗り変わってしまう。毎夜、夢を見るよ!!ローレライやパンドラが僕を連れ去っていく夢を」

けれど、それは幻想にしか過ぎなかった。

ひとたび、部屋のドアを開ければ、酔っ払いがふらふらしながら胆を吐いている光景が目に飛び込んでくる。
上では電柱にとまっているカラスがほくそ笑んでその様子を見ている。

汚い
汚い
汚い世界

けれども。
もう少しだけ夢を見ていたい。
Treasureに浸っていたい。



‥‥‥‥‥‥‥‥

1.タイトルについて
邦題「神々が愛した女たち」
誰がそのようなタイトルを付けたのか今になっては忘れてしまったが素晴らしい。

2.アートワーク
荘厳美の傑作スリーヴ。地味ながらどっぷりハマる仕掛け。

3.アルバム全体の雰囲気(曲順も含む)について

何も言葉で表せないほど好きなアルバムである。
コクトー・ツインズを狂ったように聴いていた日々は、その3rdアルバムが原点だった。
教えてくれたのはレコード屋のマスター。コクトーズは3rdがとにかく凄いからと言って薦めてくれた、86年くらいだったか、忘れてしまったが。
1st、2ndはどちらかというと、ニューウェーヴ、パンク色が強く、それが一気にその3rdへ来て、音の成熟さとフェミニンさを身に着ける。
何回聞いても孤高の存在感を放つアルバムである。

曲ごとのタイトルのみをざっと分析してみると‥。

Ivo
男性の名前。
「4ADを司どる神、アイヴォ・ワッツ・ラッセルなら話は判るが」という中川五郎氏の説("Blue Bell Knoll"の解説)

Lorelei
ローレレイLoreleyとも。ドイツのライン川流域の民間伝承に登場する女の水の精。セイレーンの一種という書き方の資料があるがセイレーンはギリシャ(ヘレネス)神話のもので、この使い方はそれより広義にあつかったものだが、あまりふさわしくないと思われる。
ライン川のビンゲン近くの同じ呼び名の岩にすみ、不思議なこだまを響かせながら美しい声で歌い船乗りを誘惑して死に至らしめたという。またコブレンツの近くのライン川の川の中の岩の名前で、ブロンドの美女が髪をすき、岩に座って歌うと通る船は岩にあたり沈没したという。


Beatrix
女性の名前。


Persephone
ギリシャ神話の女神、ペルセポネ。



Pandora(for Cindy)
Pandoraはギリシャ神話の女神、パンドラ。

Amelia
女性の名前。


Aloysius
男性の名前らしい。
Aloysius (Aloisia)


Cicely
女性の名前。


Otterley
謎の言葉。


Donimo
謎の言葉。


4.P.Vや当時のライブ映像について

Treasureは1984年リリースなのだが、その当時、確か来日情報があって(その2,3年後かな?)凄く行きたかったけどチケット取れずで、確かFools Mateとかに来日ライブの写真が載って、ちょっと面食らったのを思い出す(凄く勝手に美化していたもので)。


5.関連商品について
ハロルド・バッドと共作した、The Moon And The Melodies(1986年)がとにかく好きだった。
コクトーズの活動に関しては、Treasureのあとの作品「ヴィクトリアランド」(1986)は静か過ぎてつまらなく、1988年の「ブルーベルノーズ」がとにかく可愛くて好きだった。
ずっとずっと好きだった。
結婚しても忘れられなかった。アルバムは全部アパートに持ってきて、ターンテーブルが使えなくなるまで聴いた。
今改めてTreasureを聴くと、本当に、何ていうか、私にとってはただただ感謝したい音楽である。あの早春の日々にコクトーズを聴いていたからこそ、出会いもあり、別れもあった。リズの歌声は私をときとして天へ救い上げ、ときとして地へ落下させた。
激しく暖かなコクトーズとの恋だった。




検証7 TREASURE / COCTEAU TWINS (Bプログラム)

2014-03-15 15:03:15 | 検証


・・・大切な場所が埋もれていた・・・


2週続けて20cmを超える積雪を観測した東京

辺り一面に積もった雪は音を吸収するが振動は増幅されて伝播する。

スマホに「Treasure」をコピー、密閉式のヘッドフォンを装着し出かけた

所用を済ませ帰路の途中、ふと思い直し久しぶりにお気に入りの庭園に行くことにした。

そこは数年前に鬱の症状が酷くて外出もままならない状況の時リハビリの為の散歩コースだった

幹線道路がすぐ傍を通ってるというのに森閑な場所で時折、鳥のさえずりが聞こえてくる

鬱というのは鬱蒼の鬱というくらいで、枝が茂り過ぎて風通しが悪いという状態
まさに頭の中は、そんな感じだった

そこに行くと、ほんの少しだけ気分が和らいだ

四季や植物、狸の痕跡、池の小動物たち
それらを時間を気にせず見ているのが好きだった

やがて症状が良くなるにつれ足が遠のき、街や人気の多い所に行けるようになった

だからここは大切な場所だ


氷の張った池の上に積もった雪が美しい

前に雪が積もった時はデジタル一眼を提げて撮りに来たが もう今さらと思ってた
けど、夢中で写メのシャッターを切ってた



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

リアルタイムでは避けて通ったバンド

コクトー・ツインズというよりか4ADそのものを避けていた気がする

ベガーズバンケットの方は、バウハウスなど聴いていた
ただ、イメチェン前のMODERN ENGLISHとかMASSなんか日本盤で出てたので、それは聴いた。


ここ数年の間に、そういった空白を埋めるべく とにかく聴きまくってる

4ADもコクトーツインズはじめデッドカンダンス(これはライヴにも行った)、ディスモータルコイルなど
いずれも当時縁の無かった作品ばかりだったので紙ジャケットで一通り揃えた。
コクトーツインズに至ってはシングルボックス
(化粧箱仕様のオリジナルは手が出なかったので日本盤にした)や4枚組のベストとか
振り幅大きいんだよね相変わらずやることが

(シングルBOX日本盤)

80年代の終わりにほんの少しだけ歩み寄ったことがある
当時のメモが残っている

―――'82デビュー、という
   デビュー当時に聴いていたら、変わってたかもしれない
   (NHKの洋楽番組でPVを見て...)[1988.12.2]

でも結局それっきり

着せられたパブリックイメージは、さしずめ
幽玄、深淵、暗澹
といったとこだろうか

そいつらにまんまと乗せられて自分の耳で確かめることをしないでいた


それから25年
おそらく直接のトリガーは自分では勝手に はんぴー と呼んでるUKの不思議ちゃん(死語?)Hannah Peel

がカヴァーした「Sugar Hiccup」かな

オリジナルを聴いてみたら良かったんで、そのまんますんなりと

ちなみに彼女、その時にカヴァーしたのは
SOFT CELL「Tainted Love」
NEW ORDER「Blue Monday」
OMD「Electricity」
というわけ。
どれも必聴ですぜ。


さて本作は、84年の3枚目
代表作と言ってもいい?
ガイドブックには、このアルバムが紹介されてることが多いから

ではそろそろ、この「検証」で2件めのリアルタイムで聴かなかったアルバムの検証を



1.タイトルについて
ギリシャ神話をモチーフにした、と帯に書いてあります。
1984年リリース当時の邦題は「神々の愛した女たち」


2.アートワーク
ジャケットをしげしげと見るのだが、どうにもわからなかった
財宝なのだろうが

3.アルバム全体の雰囲気(曲順も含む)について。
オープニングは多くの人がそう思う通りケイト・ブッシュを意識してる
ちょっと気負い過ぎなような気もする
が、それ以降は独自の世界が展開する

やはり「Lorelei」が前半のハイライトかな
語り口調は、ラップの影響が否めないというのは飛躍しすぎか?

中世音楽の雰囲気漂う「Beatrix」も良い。
このあたりはデッドカンダンスが継承し更に深めている

「Persephone」での80年代らしい打ち込みサウンドに、やはりヒップホップの影響を感じる

「Cicely」のイントロなんかサスペンスドラマのBGMでパクられてるよきっと

ラストの、やや長尺な「Donimo」での高らかに歌い上げるオープニングといい
これまで抱いてたパブリックイメージがいかに湾曲していたのだということがわかった。
リアルタイムで聴いていたら果たしてそう感じただろうか。

4.P.Vや当時のライブ映像について。
な訳でPVもライヴも語れませんので悪しからず

シングルが無いのだからPVもあるのかどうか不明。
YouTubeの4AD公式チャンネルでは何曲か上がってるのだけど。

5.関連商品について。
今だにライヴやPV集といった映像作品が出ていない
そんな一貫した姿勢もまたCOCTEAU TWINSの美学と言うべきか

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コクトーツインズの影響力は広範囲に及び、
日本でその方法論がそっくり再現された作品がある

2枚目のベストアルバムでキャリアに一区切り付けた後に発表された
最も実験的な作品「不思議」。(1986年8月)
片面だけピクチャーレコードという変則的な仕様だった。

(CDとともに)

一言で表わすなら、コクトー・ツインズまんまである。
むしろデフォルメされているくらいに。
深淵の果てに微かに聴こえてくるような深くエコーがかかったヴォーカルは殆ど聴き取れないという、
もちろんシングルなし

ジャケットもそれまでとは違い、ポートレートではあるのだが、その表情は読み取ることができない。

人気絶頂の時期に敢えて取り組んだ実験作はもちろん賛否両論であり、
購入者からはクレーム、問い合わせが殺到し
結果としてサウンドを変えヴォーカルを録り直し
歌詞も聴き取りやすくした姉妹作「Wonder」を出さざるを得なくなった事実がそれを物語っている。

当時、洋楽志向に走った彼女が行き着いた先がコクトーツインズってわけだ

それでも当時、コクトーツインズは聴かなかった。

聴かなくても良かったみたいだ。