‥公園の中で音楽を集おう!‥

今まで聴いてきたロックのアルバムの中で、気になっている作品をいろんな角度から検証してみませんか?

Depeche Mode ☆ Some Great Reward (miffin編)

2014-01-30 22:17:22 | 検証

ギターバンド好きの私が一番思い入れのあるバンド
それがDepeche Mode
ほんとに不思議。
初めて見た海外バンドも彼ら。
10代の思い出の半分以上はDepecheと共にあった。
それはとてつもなく幸せなことだったのかもしれない。
あれから30年・・。




1.タイトルについて。
当時、ミュージックライフでマーティンがこのアルバムが僕たちからファンに向けてのSome Great Rewardだよ!と言っていたような記憶が。でもそんなストレートな意味じゃないよね。



2.アートワークについて。
新郎と新婦が仲むつまじくたたずんでいるものの、バックは工場地帯の一角。
工場萌えなんていうのが出てきた昨今に見返すと、かなり先見の明があったと感じられる(多分違う)
友人はこの新郎をアランだと信じて疑わなかった。
確かに似てはいるけどね。



3.アルバム全体の雰囲気(曲順も含む)について。
People Are Peopleのヒットにより快進撃が始まった彼ら。このような場合、シングル曲だけがアルバムの中で突出しがちであるが、全くそうはならなかった。
ただ、唯一の難点は曲が全てシングルカットできそうなクオリティであるが故のまとまりのなさ。
これは前作が統一感のあるアルバムだったからだとは思うが、それでもよくここまで平均点以上の曲アルバム一枚分も書けたものだと感心する。
そしてなんといってもアランの持ち込んだハンマービートが、決して耳障りでなく効果的にマーティンの曲と同化している。
しかし、どれだけハードな音を導入してもどこかSweetな印象になってしまうのは、メンバーのキャラによるのだろうか。そこがまた彼らの大きな魅力だ。

個人的には
Lie To Me(なぜかいつもマーティンが歌っているような気がしてしまう)
Stories Of Old (地味でありつつなかなかの佳曲)
などが好き。



4.P.Vや当時のライブ映像について。
People Are People以外のPVは85年にリリースされたSome Great Videos(LD)で初めて見た。
Blasphemous Rumoursは当時(購入したのは86年)18歳だった自分にはかなり身にしみる歌詞だった、皮肉めいて奥深い。ハサミを切るシャキシャキ音やヤカンがが落ちる音などのSEも効果的で、それがPVにも再現されていて少し怖い。

http://www.youtube.com/watch?v=AZRGPg5laDU



5.関連商品について。
なけなしの小遣いでせこく12インチを集めていたあの頃。
通しNoが付いていても輸入盤セールなどをマメに見ていると数百円で買えたりもした。
これを買った時は16歳だったもので、おんゆーさうんどてなんやねん?!これかっこええんか?とほとんど理解してなかったのもご愛敬ということで。

Depeche Mode ‎‎/ Master And Servant
(An ON-USound Science Fiction Dance Hall Classic)


検証4 Depeche Mode / Some Great Reward  (メリベル編)

2014-01-20 17:39:49 | 検証

1986年6月、私たち女子社員は年に一度の社員旅行のため、4人だけでグアムへ旅立った。実は会社から旅費の負担を頂けたのだ。
グアムの大手デパートのようなスーパーのようなビルのエスカレーターの前のワゴンの中にそれは売られていた。

デペッシュ・モードの4枚目のアルバム、Some Great Reward.

既にその時点で彼らは5枚目のBlack Celebrationを3月にリリースしていて、それは擦り切れるほど聴いていたのだが、この最も売れた4枚目を私はまだ持っていなかった!!


1.タイトルについて。

以下
Aちゃん(私)
ジュンコ(J)先輩(実在の会社の先輩)

J先輩「Aちゃんがレコードを2枚も買ってきた!!なんでグアムでレコード?」
A「安かった!しかもなぜグアムにデペッシュ!?ついでにブロンスキービートまで
あったから買っちゃった」
泊まっていたコテージに何故かレコードプレイヤーが置いてあった。私たちはそのレコードを聴きたくなった。他の二人はビーチに行ってしまったので。
J先輩「タイトルの意味は?」
A「莫大なる報酬ってことでしょうか」


2.アートワークについて。

J先輩「洒落てるジャケッドだね」
A「夜の工業地帯に佇むウェディングな二人、素敵」


3.アルバム全体の雰囲気(曲順も含む)について。

J先輩「洋楽には疎い私だけど、この打ち込みサウンドは凄いね。幾重にも幾重にも重なったひだのような感じ」
A「これは2年前に出されたデペッシュ・モードの4枚目のアルバムで、最もヒットしたものなの。中でもPeople Are PeopleとMaster And Servantは何回もビデオクリップが流され、聴かない日はないくらいだったのです」
J先輩「英語だと何歌っているか分からないけどさ、何か凄くカッコイイね。また言うけどアレンジが凄いよ」
A[綿密すぎるくらい計算されつくした音の重なり具合、これ以上ないくらいの正確度です」
J先輩[この6曲目のSomebodyはちょっと毛色が違うね。歌っている人も違う?」
A「マーティンが歌っているの!!素晴らしく繊細なファルセット!!」


私はそのあとレコードを後生大事に日本まで持ち帰った。
グアムの深い海とデペッシュの重厚な音。重なり合って最も美しい様式美を感じさせた。まだ21歳のときだった。


4.P.Vや当時のライブ映像について。
P.Vについては上にも書いたけど、あのモノクロのPeople Are Peopleは何度観たことか!!(何度オンエアした??)
ライブは実はその翌月1986年7月23日、NHKホールへ彼らを観に行った。
初めてのデペッシュ・モードのライブだった。
徹底してクールな打ち込み職人3人に対して、始終エキサイティングなボーカルのデイヴ。その対比がまた素晴らしく、高潔で上質で文句の付け所のないライブだった。
その夜、彼らはその足でフジテレビの夜のヒットスタジオに生出演。ちょうどマーティンのお誕生日で、ケーキを吹き消したあとアンディに抱っこされていたマーティンはその衣装からして絶対ゲイだと私は思った(その中継をライブ後に泊まった六本木のホテルで友人と見ていたのだ)。


5.関連商品について。

関連商品というか。デペッシュ黄金時代の80年代は、かの有名なミュートレーベル公認ファンジン(?)
「empty world」が届くのが本当に楽しみで。投稿も何度かしました。松尾さんはお元気なのだろうか。本当にあのファンジンが私とデペを最も結び付けていたものだった。



検証4   SOME GREAT REWARD/DEPECHE MODE (Bプログラム編)

2014-01-13 15:36:39 | 検証
                


・・・新成人に贈るご褒美・・・




青春、という言葉をまだ使えるものであれば、DEPECHE MODEは、まさに青春そのものだった。



1.タイトルについて
「Lie to Me」にタイトルの「Some Great Reward」が登場する。
曰く“働かざる者 食うべからず”みたいな。


2.アートワークについて
84年9月リリースの本作で「Somebody」や「It doesn't Matter」には恋愛観、友情が描かれている。
それは同年代の等身大よりちょっぴり背伸びしたもので、憧れもした。

「Somebody」で唄われる“The world we live in and life in general”という一節はジャケットの裏にクレジットされている。
工場か倉庫をバックに新郎新婦が佇んでいる写真。


ちょっといいかも


就職も結婚もせず学生のままでいたいと思ってた当時、一瞬だけ社会人を意識し、そう思った。


4枚目のアルバムとなるこの作品からレコードはドイツ盤を買うようになる。

カラーレコードなのだ。しかも地味な塩ビ管のようなグレー。

内袋に歌詞が載っているので日本盤を買う必要はないのだから。




3.アルバム全体の雰囲気(曲順も含む)について
Dave Gahanは1stアルバムの頃に比べると声変わりしたかのようで、低音の魅力がいかんなく発揮されている。

一方、Martin Goreの繊細な唄声はもはや欠かせなくなっていて。ストーンズのアルバムに入ってるキースの曲、みたいな。

先行して発表された2枚のシングル「People are People」「Master and Servant」が、
カップリングの曲ともにかなりメタリックなのでアルバムはどんなにか、と思ったけどそれほどでもなく。
その一方で繊細で美しいメロディラインのナンバーを配置。
世界的ヒットとなった「People are People」も自然と溶け込んでいる。

とは言えサウンド的には前作の延長にメタルパーカッションや様々な効果音が加えられ重厚になってる。


全曲、捨て曲なし。

ほぼ全曲、詞は覚えるほど聴き込んだ。

これほど全般的に感情移入できたのは本作と次作ぐらいだ。

先行シングル「People are People」「Master and Servant」は共にアルバムテイク。

シングル以外だと「If You Want」が一番好き。
イントロの淀みから浮き上がってくる感じ、この手には弱い。
様々な効果音、特に爬虫類を想起させるような神経を逆なでする音が結構使われてたりする。
でも基本跳ねるような感じは1stアルバムの頃と変わっちゃいない。


それだけに、ラストに用意されている「Blasphemous Rumours」の絶望的な終わり方には戸惑った。

PVでは自転車のリムやハサミなんかがシンクロしている種明かしが見られる。
耳のそばでハサミの音を聞かされるなんて今でも寒気がする。


人生に絶望した16歳の少女が手首を切るという場面から始まるこの曲
幸い未遂に終わったのだが

20年過ぎた頃に同じことが自分に起ころうとは勿論その時は知る由もなかった
手首を切ったのが切れ味の悪い包丁だったから今こうやって生きながらえ文章を書いているわけだ


そう、絶望とどん底ゆえのユーモア
葬儀の場ではしばしば冗談を言い合っている場面に出くわす
それは腹を抱えて笑うような類ではなく空しさや諦観、悟りの末に捻出されたものだ
そうやって少しでも悲しみを中和しようとする本能

当時、どうしてもこの曲が理解できなかったのだけど
今なら少しわかるような気がする

希死念慮、遺書を読む母親

年齢に関わらず容赦なくやって来るあっけない不慮の死

当時は全く縁のないことだったのだから


エンディングの生命維持装置がオープニングに繋がってることは2回目に聴いた時にわかり、
ほんの少しだけ救われた気になった。



4.P.Vや当時のライブ映像について
当時はシングルのカップリングに収録されているライヴ音源を繰り返し聴いたものだ。

DEPECHE MODEは「Get the Balance Right」から、B面にライヴ音源を数曲収録した限定12インチシングルをリリースしている。
それが久しぶりに「Blasphemous Rumours」で復活した。

初期のPV集はいまだにDVD化されていない。


(レーザーディスクです)

前まではオフィシャルサイトで全曲見ることができたのだが
あったあった、今はここです。
http://archives.depechemode.com/video/music_videos/index.html

あーでも「See You」の別ヴァージョンが無い...


'The World We Live In And Live In Hamburg'
確か邦題は「デペッシュ・モード・ライヴ」だったかな?
日本版のVHSを持ってたけど現在行方不明。
レーザーディスクは買いそびれた。
「ライブ・イン・ハンブルグ」というタイトルで再発されてるはず。
2003年にブートでDVD化。



初来日を逃したので、ライヴには欠かさず通った

一度、PAブースの隣の席だったことがある

開演時間になるとブースのオペレーターがキーボードを弾き始める。
ステージでは勿論メンバーが演奏してるのだけど。
ふーん、そういうこと...

雑誌には「Master and Servant」のライヴでは後半のインプロで「Una Paloma Blanca」もやってのけ
延々20分に亘るパフォーマンスを繰り広げたという記事が載っていたので期待したのだが、
実際のライヴは確かに12インチテイクのようなスゥイングするインプロは長めだったけど、
“パロマ・ブランカ”はやらなかったね、さすがに。


5.関連商品について
MUSIC for MASSESまでは、シングルは7インチ、12インチ共ほぼ一通り揃えた















まさにアナログ全盛期

アートワークとテイク違いと、特に12インチはお手本のような仕様だった。

「SHAKE THE DISEASE」あたりから怪しくなってくるんだけど
この頃はカセット付きの7インチとか、エイドリアンシャーウッドリミックスとか、
バラエティーに富んだものだった

この時期多くのシングルに関わっているのがGareth Jones。
前作「Construction Time Again」から絡んでいて、他にはJohn Foxx、
Einstürzende Neubauten、Wireなど。

CDの時代になり、限定12インチシングルもそのままシングルCDのフォーマットでリリースされた。


(CDシングル)

各種リミックスもBOXセットやコンピレーションで聴くことができるようになった。


++++++++++++++++++++++++++++++++++++

成人を迎える多感な時期にこのアルバムに出会えたことは重要な出来事だった


彼らはその後、単独でシングルを2枚出し、
本作と勝るとも劣らない傑作「Black Celebration」をリリースするのが1986年かな。

検証3  Tears For Fears  / The Hurting(メリベル編)

2014-01-04 20:16:58 | 検証
世界への漠然とした危機感を提示したアルバム。
Tears For Fears / The Hurting
これは彼等のデビューアルバムだった。その中の一曲:Mad World((狂気の世界)


Mad World by Tears For Fears Original HQ 1983


まあね、いつだって世界は楽園なんかじゃなく、狂気とまでは行かないけれど、数秒前まで仲睦まじく会話してたカップルの何かの軸が外れ、乱闘騒ぎの大喧嘩みたいなこともある世界。

世界はいつだってふんわりとしたババロアなんかじゃないのだ。

そのことに若い頃から気付いていたんだね。
だから上のような曲も書いたんだね。

そして。

Pale Sheltter

君の“侵入行為”が僕の錯覚である時
僕はどうやって確信を持てばいいんだろう?
君が絶えず僕の気持ちを変える時
僕はどうやって確信を持てばいいんだろう?
僕の疑問は止まらない
僕はどうやって確信を持てばいいんだろう?

君が僕を愛してくれない時は
君が僕にくれるものは弱々しいシェルターだ
君が僕を愛してくれない時は
君が僕に差し出す手は冷たい
僕がただ完全に命令されたいと思う時は
僕はこの失敗に対して手の打ちようがない

君の言いなりで僕が待たされたままでいる時
僕はどうやって確信を持てばいいんだろう?
君のすることがただ僕の面倒を最後まで見るだけの時
僕はどうやって確信を持てばいいんだろう?
僕の疑問は止まらない
僕はどうやって確信を持てばいいんだろう?

僕は理由もなく、努力をする必要もないまま以前ここにいた
僕は君はあらゆるものを持っていると思っていた
僕は君を呼んでいる
僕の疑問は止まらない
僕はどうやって確信を持てばいいんだろう?

君は僕を愛してくれない  (参考資料;音楽magazineより)



つまりこの登場人物が男×女の場合は、完全に女性が有利な立場で別に男性に惹かれてもいないし尊敬してもいない、すきあらば利用してしまうような関係。しかし、男性は女性に惹かれている、そんなシチュエーションが伺える。逆に男女間ではなく同性同士なのだったら、ぼくはきみに完全に勝てない状態、きみの言うなり、きみはだからやりたい放題。
こんな力関係の恋愛や友情は全くの偽者。



もしかしたら。
ローランドがぼくで、カートがきみだったのかもしれない。
ローランドはカートに勝てない。
カートはしたい放題。TFFも突然気に入らなくて抜けてしまった。
ひとりになったローランドはカートの悪口三昧の歌を作ったり、TFFは全く売れなくなってしまった。

でも二人は2003年頃和解。
カートはTFFに戻ってきたのだけれど、今の彼らの音を私は知らない。
でも仲直りしてくれたことは本当に奇跡、良かった。
願わくばまた何か強烈な世界批判の歌を作って欲しい。

**********************************

1.タイトルについて。

一曲めの曲のタイトルをそのまま引用。しかし、曲のインパクトからすると、Mad WorldやChangeの方が強いような‥。

2.アートワークについて。

Bプログラムさんが日本盤として挙げてくださったジャケットのものを買った。ただし、それはUS盤だった。私はあのジャケットそのものに非常に惹かれて買ったのが実際のところ。

3.アルバム全体の雰囲気(曲順も含む)について。

人間の精神世界の代弁者のような気がした。
曲順は非常によい。あっという間に全部聴き入ってしまう。一回だけじゃ物足りなくて何回もターンテーブルに乗せたのを思い出す。

4.P.Vや当時のライブ映像について。
彼らの作り出す精神世界に私もどっぷりハマってしまった、このP.V.

Tears For Fears - Change


このファーストアルバムでは来日したことはなかったはず。続くセカンドアルバムの世界的成功によって日本に来てライブも行う。その際、例の夜のヒットスタジオにも出演した。


5.関連商品について。
関連商品というわけではないが‥。
Bプログラムさんが冒頭で紹介してくださっているティアーズフォーフィアーズを結成する前のカートとローランドの在籍していたバンド:Graduateが底抜けに明るいガレージバンドだったということが非常に意外だった。音源を聴かせていただいたときの衝撃といったら。一体その後どういう経緯があってTFF結成に至ったのか、謎だ。


検証3   the hurting/TEARS FOR FEARS (Bプログラム編)

2014-01-04 15:10:04 | 検証
               
                                   (日本盤LP)

・・・儚さと脆さを孕んだ負の輝き・・・


               


まず、この10インチLPをご覧いただこう。


能天気に演奏するフロントの二人に、見覚えがないだろうか

この数年後に、「the hurting」が世に出るとは



1.タイトルについて。
1曲目のタイトルナンバーと、ジャケットが表わしているように
傷つける、痛めつけるという言葉

歌詞カードには歌詞に、Painって頭文字が大文字になってるとこなんかが
シンクロしている。

第二次ブリティッシュインヴェンジョンのさ中、デビューしたTFF

日本盤の邦題は「チェンジ」


2.アートワークについて。
日本盤ではジャケットが無粋な写真(そのものは「Mad World」のジャケットなのでそれはそれで良いのだが)
に差し替えられてしまった
オリジナルは幼児虐待を想起させるからなのだろうか

とにかくよく12インチを買った

特に「Pale Shelter」は色違いのジャケットや初回盤や再発盤入り乱れてわけがわからない

とうとう「Mad World」の2枚組7インチは入手できなかった
今でもそこそこの値が付いてるらしい


そうそう、当時の購入履歴をメモしたものが残っていた

idea 12 SUFFER THE CHILDREN 1986.4.11
idea 212 PALE SHELTER 1986.4.11
idea 312 MAD WORLD 1984.1.5
IDEA 412 CHANGE 1984.2.4
IDEA 512 PALE SHELTER 1984.4.12













(これだけ購入時期不明)

タイトルやクレジットなどで使われている書体が、とてもこの作品のイメージに合致していた。


3.アルバム全体の雰囲気(曲順も含む)について。
1曲目のタイトルナンバーから、もう真っ暗な世界である。
オープニングからして何やら壮大で危うい空気に包まれる

後に1985年、PROPAGANDAが「A Seret Wish」の1曲目「Dream Within a Dream」でこのスタイルを踏襲している。
早くも詞に“Pain”が登場

追い討ちを掛けるように「mad world」
邦題は「狂気の世界」
近年、アダム・ランバートのカヴァーが話題になった

教師に今日の授業の内容を訊くくだりは
THE BOOMTOWN RATSの「I don't Like Mondays」を彷彿とさせる
少女が銃を乱射した事件をモチーフにしたものだ

そして不安や焦燥感を引きずるように「pale shelter」へと
ある種の諦観した、この救いがたい感じは「mad world」より傷が深い

さらに、やるせなさと虚無感を抱えたままで「idea as opitates」

容赦ない痛めつけは「memories fade」で止どめが刺される 
ここでも“Pain”という詞

まさに負の連鎖の如く組曲のように展開するA面は素晴らしい。


B面は打って変わってメロディアスなサウンドで始まるが、騙されちゃいけない。
それが彼らの1stシングル「suffer the children」である。
邦題は「悩める子供達」

典型的なエレクトリックポップの殻を被ったこのナンバーや、
シングルヒットした「change」はアメリカのチャートにも顔を出したりした。
73位と当時としては健闘。

その後1985年8月に全米3週連続1位を獲得した曲は2ndアルバムからの、あの曲。

「watch me bleed」も疾走感溢れるナンバーだが、
タイトルが示すようにストーンズの「Let it Bleed」のオマージュとも思える内容。
ここでも詞に“Pain”が登場する。そして“The hurting”も。
一体どんだけ痛めつければ気が済むのだろう。
なので、このナンバーはもう一つのタイトルナンバーと言っても過言ではなかろう。

一番実験的なナンバーが「the prisoner」
ライヴでも演奏していた
破壊衝動のループ

あっという間にラストの「start of the breakdown」がやってくる。
実はこの曲が一番好きだったりする。

イントロのマリンバに誘われ少しずつ真綿で首を絞められるような感覚
このアルバムでマリンバの果たす役割は大きい
やがてドラムスが加わり
ゆっくりと崩れ落ちてゆく砂上の楼閣

唄い出しの
「氷を引っ掻いて 電話を掛ける」

というくだりは鳥膚もん


何も解決せず、何もわからないまま終わる
そこがまたいいところだ。


B面は前半が軽めだっただけに聴き終わるとぐったりしてしばらく動けない


4.P.Vや当時のライブ映像について。
・P.V.
陰鬱な雰囲気や、やるせなさはPVにもダイレクトに表現されている。

特に好きなのは「Pale Shelter」の冷ややかな残酷さ

爬虫類的なギターの音色が映像にマッチしている

そして「JAWS」を彷彿とさせる切迫感

圧巻なのが紙飛行機が飛び交う光景

それぞれが紙一重ということが本当に良くできていて何度見ても飽きない


・ライヴ映像
30周年記念BOXにもDVDで収録された「in my mind's eye」は当時レーザーディスクで何回も見たものだ。
アルバム1枚でライヴというのも大胆だが、当時は良くあること。


5.関連商品について。

今まで、LP(日本盤)、CD、リマスターCD(何れも輸入盤)と聴いてきたが、
2013年の30周年記念BOXは是非お勧めしたい。

12インチテイク、2枚組7インチでしか聴けなかった「mad world」のworld remixやB面など。
一部はリマスター再発時にボーナストラックとして収録されているものだが、
今回は、たっぷりCD1枚分のボリューム。
それと1982年を中心としたライヴセッション音源も聴きもの。
前述のライヴ映像作品「in my mind's eye」のDVDという充実した内容。

蛇足ながら、ポール・ヤングが「pale shelter」をカヴァーしている。
彼はJOY DIVISION「Love will Tear Us Apart」を1stアルバムに収録したり
スラップ・ハッピーと組んだりするくらいのニューウェーヴフリークで、
「pale shelter」は1stアルバム「No Parlez」の2枚組版にデモが収録されている。
アコースティックギターとコーラスが尊重されていて、これはこれでいい感じだ。



・「ザ・ウェイ・ユー・アー」

LPとデザインを合わせた日本編集の12インチシングル。(当時のクレジットは“ミニアルバム”)
「the hurting」後にリリースされた「the way you are」の12インチ収録曲に加え
「pale shelter」の再録EXTENDED VERSION(IDEA 512)やカップリングの「we are broken」
が収録された全5曲。
これがリリースされた頃はTFFは沈黙を続けている状態だった。
まだ「Mothers Talk」さえも出ていない頃。



・「TEARS ROLL DOWN GREATEST HITS '82-'92」
1992年にVHSとレーザーディスクでリリースされたPV集が2003年にDVD化されたもの。
「Pale Shelter」「Mad World」「Change」のPVが収録されている。


・GRADUATE「Acting My Age」
何故かCD化されており、2002年の再発盤にはボーナストラックが追加され何と19曲が収録されている。
再び入手困難になってしまったのは残念。


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ほんの数年前にお気楽モッズバンドでアルバムやシングルを出していた

一体、何があったのだろうか?


そりゃあね、
ライナーとかバイオにはジョン・レノンも傾倒してたアーサー・ヤノフ(アメリカの心理学者)の
存在や影響が色濃いとされている。
ローランドが幼少に受けた心の傷とか。
勿論それは事実だろう。
だからといってそれだけで片づけてしまうには惜しいアルバムだ。

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やるせなさや、いたたまれなさで気分が落ち込んだ時はいつでもその世界に逃げ込むことができた。

だから、シェルターというのもあながちかけ離れてはいない。


「シャウト」や2ndアルバム以降、彼らは大きく方向転換をせざるを得なかった。
ヴォーカルの役割も変わり、難解なサウンドも影を潜めるようになる。

それだけにこの1stアルバムは、儚さと脆さを孕みつつ負の輝きを放ち続ける。