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九州はなぜ農業王国となり得たか

2013年11月28日 15時33分35秒 | 学習支援・研究
九州はなぜ農業王国となり得たか? 
環境に適応、肉牛・野菜へ転換

産経新聞
2013年11月19日(火)08:17

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉やコメの減反見直しなど、
日本の農業は歴史的な転換期を迎えている。
農業産出額が全国の2割に達する九州は、
収益性の高い野菜や肉牛の産出額が過去30年で大幅に増加し、
農業の衰退を食い止めてきた。
なぜ「農業王国」となり得たのか。
TPP加盟後の農業の勝機は九州にある-。
(津田大資)

1兆6126億円。九州7県の平成22年産農業産出額は、
全国産出額(8兆2551億円)の2割を占めた。
産出額は農業の“売上高”にあたり、
22年産の数字は域内最大の企業、九州電力の売上高に匹敵する。

人口1310万人の九州の農業産出額は、
関東農政局管内の1兆9221億円に次いで全国2位だ。
関東農政局が1都8県計4,479万人を抱えることを考えれば、
九州農業の存在感の強さがわかる。



九州農業の強烈な存在感は、産業としての競争力の高さが裏付けとなっている。

昭和55年から平成22年までの30年間で、農業産出額は、
全国で20%も減少した。これに対し、
九州の低下幅はわずか5%。足腰の強靱(きょうじん)さが伺える。
一方、耕地面積が30アール以上または
年間の農産物販売額が50万円以上の「販売農家数」は、
全国・九州とも30年でほぼ半減した。

この結果、九州の販売農家戸数当たりの産出額は、
677万円と、全国平均506万円を大きく上回った。
離農した人々が多い半面、農業の生産性が向上し、
1戸当たりの収入は増加したといえる。

環境の変化に適応し、生産性を高める。
これがキーワードだった。
九州の農家は市場ニーズに即し、
商品ラインアップを変化させてきた。
30年前、九州の農業産出額のトップは米(3,640億円)だった。
だが現在、1位は野菜(4,222億円)だ。
鶏(2060億円)、肉用牛(1991億円)が続き、
米は1,740億円に過ぎない。30年前と比較し、
野菜は1.7倍、肉用牛40%増と伸びが目立つ。

米余りを背景に昭和45年、生産調整(減反)が始まった。
九州の農家は「漫然と米を作る時代は終わった」と、
いち早く対応した。消費量が多く収益性も高い野菜や果実へ転換を進めた。
この結果、イチゴ「博多あまおう」やイチジク「博多蓬莱」のほか
「はちべえトマト」(熊本)など、
高品質で全国に通用するブランド化に成功した野菜・果実が次々と登場した。

福岡県豊前市の農業、松本克己さん(63)は
「減反の補助金もいずれはなくなり、
米価が上がる見込みはないと思っていたから、
収益性の高いレタスやトウモロコシ、茶の生産に転換してきた。
今後も、この流れは続くだろう」と語った。

一方、もともと米作がそれほど盛んではなかった南部九州は、和牛に注力した。
鹿児島や宮崎の和牛は高級食材として、国内市場を席巻するまでに育った。
さらに、販路を拡大し、アジアの富裕層をターゲットにした輸出もじわりと拡大している。
両県は芋焼酎の販売増と連動し、原料のサツマイモ栽培も増加した。
ブランド化と6次産業化を進めた結果、
宮崎、鹿児島両県の農業産出額は、農業冬の時代にあって8~9%増加した。
「勝つ農業」を先駆けて実践したといえる。

民間シンクタンク、九州経済調査協会の南伸太郎研究主査は
「九州の農産物は国内他地域への移出が大きく、
自動車や半導体など九州の得意分野と同様に『稼ぐ産業』の1つ。
今後、就農者を増やし、作物の生産管理を徹底した上で
大規模化を図れば、さらなる利益向上が期待できる」と
九州農業の潜在能力を評価する。

離農や高齢化など課題が山積するとはいえ、
九州のように適応力と競争力をもつ農業は、
さらに「勝ち組」となる可能性
を秘めている。

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