りなりあ

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約束を抱いて:番外編-はじまり-前編

2007-04-02 13:31:58 | 約束を抱いて 番外編

◇むつみ◇

早朝なのに、室内は明かりが灯り暖房で暖められていた。
新堂の家の家政婦さん達に挨拶をして、椅子に座る前に窓辺に近づき、外を見る。
暗くて何も見えなかったけれど、少しずつ庭の木々の輪郭が浮かび上がってくる。
それは、私の目が慣れてきたからなのか、それとも外界が照らされ始めたのか正しい事は分からないけれど、一日の始まりを告げるように自然が覚醒を始めるのを、私は見ていた。
「おはよう。」
振り向くと、すっきりと目覚めた人が立っていた。
「おはよう。優輝君。」
朝の挨拶を交わせるのが幸せで嬉しいけれど、以前よりも優輝君と過せる時間が多くなった事は、少し不思議な気分。
“付き合っている”という状況になっているのだから、以前よりも彼に近づけた事は嬉しいけれど、同じ時間を過す事は無理だと思っていたし、それが当然だと思っていた。
大晦日を明日に控えて冬休みは半分が終わろうとしている。
イヴの日を優輝君と一緒に過せたのは、杏依さんの提案なのか、はる兄の提案なのか、はっきりとした事は分からないけれど、はる兄が納得済みであるのは確かな事。
少しだけ様々な人間関係が交錯していて困ったけれど、とても楽しかった、と思う。
「むつみ、ジュース?」
優輝君は別邸から本邸まで走って来たらしく、ミネラルウォーターを飲んでいる。
「うん。」
優輝君が注いでくれるオレンジジュースを眺めながら椅子に座る。
早朝だというのに、彼はすっかり目が覚めていて、まだ少し眠気がある自分が恥ずかしい。
向かい合って座るのが、なんとなく恥ずかしくて隣に座るようにしている。
でも、晴己様に見られないほうがいいですよ、と家政婦さんに言われたけれど、その意味が分からない。

はる兄は別邸で朝食を済ますし、それに、こんな早朝には起きないだろうから問題はない、と思う。
早朝から練習をする優輝君に合わせて、私も早起きして一緒に朝食を取りたいと言ったら、はる兄は『それなら僕は杏依と一緒に食べられる。』と嬉しそうに言っていた。
それは晴己様が気を使ってとかなんとか、それも家政婦さんに言われたけれど、そうなのかなぁ。
はる兄の考えている事は、私には分からない。
24日は、最初から新堂の家に泊まる事になっていたけれど、翌日も雪が残っていた為に、私と母は滞在を1日延ばした。
26日に自宅に戻ったけれど、母が地方への仕事で家を留守にする事と和枝さんに休暇を取ってもらう為に、私は28日から再び新堂の家にお世話になっている。
優輝君は大晦日とお正月は家に戻るらしいけれど、休みの間は新堂の家に長期滞在する事になっている。
でも、今までは本邸に泊まっていたのに、なぜか別邸に移動してしまい、同じ敷地内だと分かっているけれど、離れてしまって寂しい。
朝食は本邸に準備されるから、優輝君は本邸と別邸をウロウロしている状態で、はる兄が優輝君を別邸に移動させた意図が不明。
でも、私が新堂の家に来る事を許してくれるのだから、怒っているわけではない、と思う。
はる兄の気持ちの全てが分からなくて、少し不安。
この状況を喜んで歓迎してもらうというのは、無理みたい。

でも、はる兄が認めてくれた事は、事実、なのかな?



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