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『TROY』感想(1)

2007年04月30日 | 映画

●映画全体について(※ネタバレを含みます)


 ええと、実は、日本で数少ないオデュッセウスファンの身としては、変な筋肉バカになってたらどうしようと心配していたオデュッセウスが奇跡的にめったに無く好意的に描かれていた時点でもう合格点なのでございます。(で、ヘクトールが男前なのでプラス20点)どうしても点が甘くなってしまうのはご容赦くださいまし。


 さて、映画版は原作と違って、
・神々が出てこなかったり、
・登場人物が多数端折られてたり、
・死に場所が違う人がいたり、
といろいろ違う点があり、原作ファンはそこが気にいらず、原作未読者は知らないゆえに時々唐突な話の展開に戸惑うと思うのですが、大体の雰囲気は意外と『イーリアス』と近いかもしれない…と、『トロイ・ザ・ウォーズ』を見てから思うようになりました(笑)。

 何より、風景が違和感無い。
 流石にアポロン神殿やトロイア城内は微妙にちゃちだし、ギリシアってより聖書に出てくるヘブライの町って感じ(トロイアはギリシア世界よりも東方世界に近い、という演出なのか??)なのですが、周囲に広がる乾いた平野、埃っぽさ、照りつける太陽、広がる海、兵たちの鎧が照り返す様子などは原作のイメージどおりでした。
 鎧なんかも歴史時代よりはミュケーナイ時代寄りなのかな?(トロイアの方の武具はもっとオリエント風??)と思わせるやや古風なつくりで大変よろしい(←わあ、えらそう)。
 葬式シーンの瞼に乗せる貨幣や、乗馬の習慣、火葬については、いろいろと疑問ですが、そもそも原作が忠実に史実を描いているわけじゃなく半分以上フィクションなのでまあいいとしましょう。

 とはいえ、物語自体は原作から上手にエッセンスのみを汲み取って、再度構成しなおした風に感じました。映画としては割といい出来だと思うんだけど、どうしてこんなに酷評が多いのかしら…(Yah●o等の映画レビューを飛ばし見た感想)。
 まあ、確かに原作を知らない人が見たらまずパリスの行動にびっくりするよな。 原作を知ってればパリスのヘレネー略奪は起こるべき経過の一つでしかなく、予定調和で話は進むけど、知らない人はまずあそこで

「なんじゃこりゃーー!!!」という衝撃が。

国民に対して責任のある王子の身分にあるものが、人んちの嫁さんさらって挙句戦争の元凶になるなんて、いくら二人が愛しあっとったってありえん!!
…と、普通は思うでしょう。(とはいえ、アプロディーテの介入のせいで、パリスもヘレネーも駆け落ちの運命を逃れられない原作のすじでも、やはりパリスはあほだとは思います。アタシは割とそんなパリスも好きだけど)
 また、恋愛映画を期待してきた人は中途半端だと思うだろうし、戦争映画を期待してきた人は「何で善悪はっきりしてないんじゃい!それに、他の要素が多すぎる!!」と感じるに違いない。

 『トロイ・ザ・ウォーズ』あほ感想の方でも述べましたが、一応アキレウスが主人公だけれどもこの映画ではアキレウスばかりを追っているわけではありません。ですが、ああしてヘクトールやパリス、アガメムノンなど多くの人物を平行して立てた方がアキレウスの存在が浮き彫りになって、彼の個性が際立ってよいと思うのです。色んな人が色んな思いを持っていて、それがトロイア落城に向けて加速度を増して集約していくあの感じ、あの収束感は映画独特で、…何度も見るうち段々快感になってきました。最初見た時は、すじを知っているとはいえヘクトールが死ぬのがつらくてたまらなかったのですが、段々、回を重ねるうち、妙にアキレウスを見直してきてしまったあたり堕落…あ、いや、製作者側の思惑に乗せられてしまってるというかなんというか…

 では、次、それぞれの人物について

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