背中合わせの二人

有川浩氏作【図書館戦争】手塚×柴崎メインの二次創作ブログ 最近はCJの二次がメイン

ハッピーエンド?

2008年11月19日 05時00分51秒 | 【別冊図書館戦争Ⅱ】以降

「やったわ! あたしの勝ちよ!」
柴崎が歓声を上げ、ベッドに仰向けに倒れこんだ。
両腕はコントローラーを放り出し、高々と頭上に突き上げた形で。
隣であぐらをかいていた手塚は、
「ちぇっ。ここんとこ連戦連勝だったのにな」
憮然としてこちらも後ろに倒れた。
お互い仰向けになって天井を見やる。
相変わらずなつかしのテトリスブームが続いている手塚家。今夜も日付が変わるまで白熱した戦いを繰り広げた。
二人の対戦場所は、主に寝室。横長のテレビにハードを繋いで、ベッドの上で行う。
朝、起きたらブランケットの中からコントローラーが出てきた、なんてことは最近はザラにあった。
手塚は勝利の余韻に浸る柴崎に首をめぐらした。
「おい。罰ゲーム、なんでもするぞ」
柴崎も顔を向ける。
にんまり。そんな形容がふさわしい笑みを彼女は浮かべた。
「往生際がいいじゃない」
「ルールはルールだからな」
「立派な心がけだわ」
「いや、俺の言うとおり【裸エプロン】をしっかり呑んでやってくれたお前に比べたら、なんてことない」
「だからなんでそこで話を蒸し返すのよ!」
ばちん! と派手な音を立てて柴崎は手塚をはたいた。
おお痛え。手塚はわざとらしく顔をしかめ、叩かれた腕をさすりながら、
「ほんとに、何でもするよ。罰は罰だもんな。しっかり考えておいてくれ」
「実はもう決まってるの」
「え」
手塚は一瞬だけ頬の辺りをひくっとさせた。
柴崎の愛らしい顔をこわごわと眺める。
そこには無邪気な微笑みしか浮かんでいないが、その腹の底にはいったいどんな考えが渦巻いているのだろう。
そう思うと、彼は震撼した。
柴崎は黒目がちの瞳で、瞬きも惜しんで手塚を見つめた。
手塚はかすかに息を呑んだ。コク、と喉仏が鳴る。
ああ、もう耐えられない。
生殺しにする前に、いっそ止めを刺してくれ!
とばかり、手塚は口を開いた。
「決まってるんなら言ってくれ。まさか俺にも【裸エプロン】を求めてるんじゃないだろう?」
「それもいいわね」
柴崎は笑った。
たぶん頭の中で想像したのだ。やぶへびだったか! 手塚は自分のうかつさを呪った。
「でも残念。違います」
ほっ……。わずかに胸を撫で下ろし、安堵する。
柴崎は手塚の反応を心行くまで愉しんでいる様子で、切り出した。
「あたしがあんたに言い渡す罰ゲームはね。一日、休みを取って家にいること。
我が家でカンヅメになることよ」
「え……?」
意外な、あまりにも予想外な言葉に手塚は思考を停止させる。
柴崎はふふ、と微笑んで、
「あんた最近休みの日も呼び出されてヘルプに行ったりして全然ゆっくりできてないでしょう。だから、この際思い切って丸一日公休取って、家にこもって、好きなことを好きなだけやりなさい。自分のために時間を使って。ほら、そこに積んである本を読むとかね」
柔らかい口調でそう告げた。
「……それが、罰ゲームか」
胸がいっぱいになって、それしか言えなかった。
「そうよ、絶対その日は家から出ちゃダメよ。たとえ敬愛する堂上一正から呼び出しがあってもよ」
「……麻子。お前」
「なあに? 照れくさいなら別にお礼とか言わなくてもいいわよ」
柴崎は先手を打つ。
そうしてしまうのは、彼女もかなりの照れ屋だからだ。手塚から伝染するのが分かってるから、防護線を張ってしまう。
でも手塚の口から出たのはお礼ではなかった。
「愛してる」
そして横になった柴崎の身体に、手塚はそっと体重をかけた。
包み込むように、腕の中に抱く。
柴崎は男の身体の重みに、いつになっても慣れない様子で、手塚にそうされたときは一瞬だけ身をすくめる。
その仕草さえ愛おしい。
手塚は柴崎を真上から見下ろして言った。
「俺がお前に決め台詞だの、裸エプロンだの要求したってのに、お前は。
……俺はほんとにお前って女が好きだ。どうにかなっちまうくらい愛してる」
「知ってるわ」
さらりと返して柴崎は形のいい眉をひそめる。手塚の肩を押し返しつつ、
「今更繰り返さなくなって大丈夫よ。
ねえ光。重い、から離して」
「離さない」
手塚は柴崎のパジャマの裾に手を忍び込ませた。
「光ってば」
「俺は恥ずかしい。お前にあんな品のない罰ゲームを与えた自分をデリートしたい」
本当に恥じ入っているように、柴崎の胸に顔を埋める。
柴崎は、少し迷ってから手塚の頭を腕で抱きかかえた。
優しく撫でる。
「いいの。あれはあれで、そのう、実際のところそう悪くはない罰だったから」
迷った末、そう言って慰めた。
手塚はそこでふいと身を起こした。
そして、
「だろ? やっぱしお前もそう思ってくれてたんだ。滅茶苦茶よかったよな」
といたずらっ子のように笑い、柴崎に再度身体を重ねた。
「! 騙したわね」
「騙してない。騙してない」
「うそ! もうあんたってほんとに。――ぜ、前言撤回よ。罰ゲームの内容、変える! めちゃくちゃ変なのにしてやるから」
「もう撤回不可能だよ」
「あ……、光……」
だいきらい……。
久々に聞く、柴崎のその台詞は、手塚の愛撫によって夜の甘い闇に飲み込まれた。


結局。
このカップルが何か賭けをしてゲームをしても、
最後の最後においしい目を見るのは手塚ということで。
ハッピーエンド?

fin.

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3 コメント

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すばらしく (たくねこ)
2008-11-19 13:52:58
甘~~いハッピーエンドですね(^^)
にやにやが止まりません。
どうしましょう…
にやにやです
(すいません、こんなコメントで…orz)
返信する
ハッピーエンドで ()
2008-11-19 18:23:57
い、いいのかな?(^^;
連続でコメント本当に感謝です。
一ヶ月以上も放置しておいて、見捨てないで下さって、足を向けてくれただけでもありがたいのに。
ううう。情けが身にしみます!びしばしと!
どうかにまにましていってください。それぐらいしか差し上げるものがありません(><)
返信する
そりゃぁ (たくねこ)
2008-11-19 20:39:37
更新が楽しみですからっ!!
手柴は少ないですし…
エプロン柴崎は、後ろから抱きつきたいと思います!
返信する

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