よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

睡眠の話(1)

2017-09-10 09:44:14 | 健康・病気
皆様は、すっきり快適な目覚めで毎日をスタートしていらっしゃいますか?
ある調査によると日本人の5人に一人が不眠の悩みをもっているそうです。

さて睡眠の役割は何でしょうか。
我々哺乳類は、魚類、両生類、爬虫類といった変温動物から進化して恒温動物となりました。身体の内部環境を一定に保つことができる恒温動物は、環境に対する適応力が大幅にアップし活動範囲が増えました。 しかし一方では、体温を保つために多くのエネルギー(食物)を獲得しなければなりません。また、内外からの情報を処理し、よりよく対応するために大脳を発達させる必要がありました。この高度に発達した大脳をもつ高等生物の頂点にいるのが人間です。
大脳は膨大なエネルギーを必要とし、活性酸素のような有害な老廃物も産生し、機能変調をきたしやすいという脆弱性を併せ持ちます。この大脳をうまく働かせるためには、休息を上手に管理する技術が必要となります。これが睡眠であり、身体が休む時間帯に大脳をうまく休息・回復させ、必要な時に高い機能状態の覚醒を保証する機能です。 すなわち、睡眠とは、身体が休む時に脳の活動をしっかり低下させ休養させるシステムなのです。

このシステムは、体内の温度を積極的に下げることで成り立ちます。体内の温度が下がると、生命を支えている体内の化学反応が不活化し(代謝が落ち)、休息状態となります。人間は、手先や足先から熱を逃がし、体内(脳内)の温度を下げ、強制的に脳を休ませているのです。

睡眠には、主に大脳を休める睡眠で睡眠の80%を占めるノンレム睡眠と、主に身体を休める睡眠で、残り20%を占めるレム睡眠があります。ノンレム睡眠とレム睡眠は90~120分の周期で繰り返し、入眠時はノンレム睡眠が多く、覚醒前にはレム睡眠が多くなります。
ノンレム睡眠は、眠りの深さにより三段階に分類されます。深い睡眠時には、自律神経系が安定的に働き、呼吸、循環は穏やかに保たれ、寝汗によりさらに脳の温度を下げ、脳はしっかり休息します。
レム睡眠は、脳は少し活動していますが、四肢筋肉は脱力しているため、いわゆる金縛りが起こる睡眠で、その多くで夢を見ています。
元々レム睡眠があり、大脳の発達に伴いノンレム睡眠が発達したと考えられ、脳は休むが身体は動くノンレム睡眠と身体が休むが脳が活動するレム睡眠を繰り返すことで、無防備な時間帯を少なくする役割があったと考えられています。

さてここから、少し専門的になります。睡眠・覚醒の基本メカニズムは、覚醒系神経(ノルアドレナリン、セロトニン、ヒスタミン、アセチルコリン、オレキシン作動性など)と睡眠系神経(GABA、ガラニン作動性など)のバランスを生物時計(体内時計)が制御することにより生じると考えられています。
日中の活動に応じて睡眠欲求が高まりますが、覚醒系シグナルを高めることにより覚醒水準を維持します。覚醒シグナルの強度は時間依存性であり、生物時計により駆動されています。入眠の2~3時間前に覚醒水準は最も高くなり(入眠禁止ゾーン)、その後急速に眠気が強まります。これは、この時間帯に、松果体からメラトニンの分泌増大、深部体温の低下、糖質コルチコイドの分泌抑制など睡眠を促進する生理機能が高まることに由来します。入眠すると睡眠欲求は急速に減少し、十分な睡眠がとると消失し、覚醒します。これが、睡眠・覚醒に関する24時間の日内変動リズムです。



眠りを誘発する経路として、日中の活動で脳疲労物質(プロスタグランディンD2)が蓄積し、これを眉間の奥にある受容体が感知し、アデノシン神経系を介して視床下部のGABA神経系の活性化させることが知られています。GABA神経系は、ヒスタミン覚醒系神経を抑制し、入眠を促します。
コーヒー・お茶(カフェイン)は、アデノシンを抑制することで睡魔を妨害します。アルコールやベンゾジアゼピン系睡眠薬は、GABA神経系を活性化することで眠気を誘発します。また風邪薬や花粉症薬に含まれる抗ヒスタミン成分を摂取すると覚醒系神経を抑えて眠くなります。


参考文献:中公新書『睡眠のはなし』 著者 内山 真
     じほう『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』 編集 三島和夫 

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持続血糖測定器(FreeStyleリブレ)の使用経験

2017-06-27 16:23:34 | 健康・病気

 糖尿病でインスリン治療を受けておられる方は、日常生活において自分で血糖を測定することに馴染みがあるかもしれません。血糖値に応じて、打つインスリン単位数を変更したり、食事量や運動量を調節することは非常に重要なことです。
 今回、最新の持続血糖測定器(FreeStyleリブレ)を使用する機会がありましたのでご報告します。


 特徴は、簡便性です。今までは、一回一回いちいち指の皮膚を細い針で穿刺し、出てきた血液を測定用紙に染込ませて測定していました。しかしリブレでは、最初に上腕の皮膚にセンサーを留置してしまえば、以後2週間、本体を近づけると、瞬時に今の血糖値を知ることができます(もちろん入浴も可能です)。
また何もしないでも15分おきに血糖値を測定してくれるので、睡眠中の血糖変動も知ることができます。

 さて、糖代謝が全く正常な人(HbA1c 5.5%未満)は、どんなに沢山食べても、逆に食べなくても血糖値は80~140mg/dlの範囲内におさまります。しかし、HbA1cが5.6%以上の方は、食後に(重症化すると空腹時も)高血糖になっています。
注:HbA1cは、過去1~2ヶ月間の血糖の平均を表す指標ですから、HbA1c高値の人でも血糖変動の激しい方や、糖尿病薬を飲んでいる方は低血糖になることもあります。


 上のグラフは、私のある一日の血糖変動を示しています。オレンジの丸は食事開始ポイントです。一日を通して(睡眠中も)、ほぼ80から140mg/dlの間を推移していますが、昼食後に血糖値が200を超えています。残念ながら私は、食後高血糖という立派な糖代謝異常といえます(ちなみにHba1c 5.7%です)。


 ここで注目すべきは、昼食後の高血糖です。ちなみに、朝食は、ナッツ、果物、ヨーグルト。昼食は、お弁当。夕食は、おかず(たくさんの野菜を含む)とアルコール(ビール350ml+ワイン少々)です。量(カロリー)は、三食ほぼ同量と思います。
昼食後のみ高血糖になっているのは、ご飯(糖質)を摂取しているためと思われます。主食と呼ばれる米、小麦(パン、麺類)、いも類は、糖質が豊富で、血糖が急激に上がります。逆に、蛋白質、脂質、野菜、アルコールなどでは血糖の上昇はほとんど見られません。

最近健康番組でよく耳にすることとの一つに、野菜、おかずを先に食べて最後にご飯を食べると血糖が上がりにくいというのがあります。要は、先に食物繊維を摂ると糖質の吸収がゆっくりとなり、急激な血糖上昇が抑えられるというものです。これは会席料理の順番にも似ており、先人の知恵には感心しますが、やはり食事に一定の時間をかけるというのが条件になります。
今回も、昼のお弁当はおかずを先に食べ、最後にご飯を食べているのですが、食事時間がせいぜい15分程度では、血糖上昇抑制効果はほとんど期待できないことがわかります。

 次に、糖尿病薬の効果を見てみましょう。



上段は、DPP4阻害剤とビグアナイドの合剤を朝食後に内服した時、下段は、グリニドとαグルコシダーゼ阻害剤の合剤を昼食直前に内服した時の血糖推移です。それぞれ作用機序や容量・用法が違う薬ですから直接比較することに意味はありませんが、見事に食後高血糖を抑えています。
最近の知見では、HbA1c高値だけでなく食後高血糖も血管内皮を傷つけ動脈硬化を促進させることが知られていますので、これらの薬を上手に使い食後高血糖を抑えることにも重要な意味があります。

2週間の間、自分の食生活習慣が血糖に及ぼす影響を観察することができ、私自身非常に勉強になりました。残念ながらまだ保険適応ではないため、皆様に積極的にお勧めできないのですが、この持続血糖測定器は自己血糖管理を身近にする非常に有望なツールだと感じます(ただ瞬時に血糖測定ができるので、甘いものが食べれなくなるという“食の楽しみ”が奪われる欠点もあります)。
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ストレスに負けない生き方(2)

2017-05-08 14:44:32 | 健康・病気
では、様々なストレスから身を守るにはどうすればよいでしょうか。
1.ストレスの原因を避ける:簡単そうで意外に難しい。
2.笑い:ストレスを軽減、自律神経の過剰興奮を抑える。
3.友人や家族のサポートを得る:周りに共有してもらうことでストレスが緩和する。
4.運動:自律神経の興奮を抑制し、ストレス反応の暴走を抑える。脳自体を変化させる。
5.食事:ω3系脂肪酸、不飽和脂肪酸(青魚、ナッツ、オリーブ,アボガド)。
葉酸、ビタミンB12(枝豆、ほうれん草、レバー)。
乳酸菌、ビフィズス菌(発酵食品)。 緑茶。 全粒穀物(玄米)。
砂糖・アルコールは控えめにする。
6.睡眠:脳の休息
7.スマホ、パソコン生活に依存しない:情報氾濫、SNSなどの対応で脳が休めない。
などが挙げられます。具体的なストレス対策としては、次の二つが有名です。

“コーピング”
ストレスがかかった時にどんな気晴らしをすれば気分がよくなるか、あらかじめリストアップしておく。例えば、「音楽を聴く」、「本を読む」、「買い物をする」など。実際にストレスがかかる度に、そのストレスに見合った気晴らしをリストからピックアップして実行する(自らのストレスの「観察」と「対処」を意識的かつ徹底的に繰り返す)。 認知や理性を司る前頭葉が活発に働くことにより、恐怖や不安に反応する扁桃体の働きを抑える作用が期待できます。
ポイント①できるだけたくさんリストアップする(より具体的に100個以上)
    ②行動だけでなく妄想する気晴らしもリストアップする(手軽に実行)
    ③作成したリストを持ち歩く(その場で即座に対処する)
    ④頑張るストレスには、ダウン系の対処、
我慢するストレスには、アップ系の対処を選ぶ
    ⑤時には正面突破の問題解決も考える

“マインドフルネス”
日本では、瞑想(心の迷走を抑える)として知られています。
マインドフルネス・ストレス低減法
 体の力を抜き、背筋を伸ばして座る。そして、体と呼吸に意識を向け、その様子を感じるようにする。呼吸をただ感じる。おなかが膨らんで平らになったり、胸がゆっくり上がったり下がったり、などそのまま感じる。呼吸や意識へ集中するのではなく、今の瞬間に「気づき」が向かう状態。現実をあるがままに知覚することが大切。
脳が変化する(扁桃体の減少、海馬の増大)、体内の炎症を抑えるなどの効果があります。


参考文献:NHK出版新書『キラーストレス』 著者 NHKスペシャル取材班 
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ストレスに負けない生き方(1)

2017-05-08 14:41:50 | 健康・病気
太古の昔から、ヒトはいろんなストレスに対応しながら生きてきました。かつては、外敵から身を守るなど生命の危機に対するストレスが主流でしたが、現代では、仕事、人間関係、金銭など、より多面的、複雑化、慢性化したストレスに変化しているといってもよいと思います。

では、ストレスの正体は何でしょうか。良いことであれ、悪いことであれ、ある状態から、別の状態へ大きく「変化」すると、人間はそれをストレスと感じます。適度なストレスは、思考能力アップ、体力増進など体にとってもよいものですが、悪いものでは、様々な病気の原因になることが知られています。

かつては、身を守る仕組み(~闘争か逃避か~)として進化してきたのが、「ストレス反応」と呼ばれるものです。強い不安・恐怖を感じると、最初に脳の扁桃体と呼ばれるところが興奮し、視床下部(自律神経の中枢)を介して、体の各臓器が反応します。この時、副腎からストレスホルモンと呼ばれるコルチゾール、アドレナリンなどが分泌され、血圧や脈拍、血糖が上昇し、瞬時に行動できるようになります。
現代では、生命の危機になるような大きなストレスはめったにありませんが、現代社会を生き抜く上での様々な小さなストレスが積み重なって、体に変調をきたします。

慢性のストレスにより絶えず分泌されるコルチゾールにより、特に海馬の神経細胞が傷害され、うつ病の原因となることが知られています。さらに、ヒトには、目の前の現実だけでなく、過去や未来についてあれこれ考えを巡らす能力(心の迷走)があり、そうしている間、ストレス反応が続き事態を悪化させています。ストレスが続くことにより、自律神経の過剰反応が起こり、血圧上昇、血液凝固能亢進し、脳卒中、心筋梗塞発症の原因になることもよく知られています。
その他、免疫力が低下し、がん、アレルギーが起こります。ストレスにより、胃が痛くなる経験(胃炎・胃潰瘍)をお持ちの方もおられるでしょう。血糖上昇により、糖尿病になる危険性もあります。
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散歩はできる、では次のステップは?

2017-03-17 09:37:24 | 健康・病気
  健康維持に運動が重要なのは十分ご存知のことと思います。そこで皆様が手軽に取り組めるのが、“歩く”ことです。歩くことで、体脂肪が燃焼して減量が期待できますし、認知症予防にも有効と言われ、一日一万歩を目標に頑張っていらっしゃる方も多いと思います。
 今日のお勧めは、“スロージョッギング”です。これは、心臓のバイパス手術を受けられた天皇陛下が、リハビリとして皇后様とご一緒に皇居の中を走っていらっしゃる姿がテレビで放映され、一躍有名になりました。

 一般に、“走る”となると、運動強度が強くなり、膝・腰など体にも負担が生じ、何よりしんどくて疲れるので続けられる人が少なくなります。そこでニコニコ笑顔で続けられるスピード(歩くスピードと同じでもOK)で走る“スロージョッギング”が注目されています。
実際に“ゆっくり走る”時によく使う筋肉は、“歩く”時に使う筋肉と違い、スピードが同じでも消費カロリーが2倍に増えます。消費カロリーが増えるのであれば、やはりしんどくて疲れるのではないかと思われるかも知れませんが、ゆっくり走ると遅筋と呼ばれる筋肉しか働かず、乳酸がたまらず(疲れにくい)、運動を苦もなく続けられることが知られています。

やり方は簡単で、背筋を伸ばしやや前傾姿勢で、上下動を少なく歩幅を狭く、足指の付け根で着地して足裏全体で押し出す感じで走ります。大事なのは、笑顔で話ができるぐらいのペースを守ることが続けるコツです。こま切れでもいいですから一日30分・週3回を目標にしましょう。

ヒトは、二足歩行をするゴリラやチンパンジーと違って、“歩く”ことよりむしろ“走る”ことに適した体の進化をしています(Born to Run!)。 散歩ができる人は、次に“スロージョギング”に挑戦してみてください。

参考文献:クリストファー・マクドゥーガル『BORN TO RUN 走るために生まれた』
    日本スロージョギング協会ホームページ 
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