indigo rain

気まぐれなおはなし。

同じ涙を分け合って

2016-09-10 12:01:33 | SS




「ええ!亜美ちゃんが留学!?」
「そうなんだよ。ドイツへの留学の話が、また来てるらしいんだ。」
「そうねえ。すっかり街も平和になっちゃったし、今なら亜美ちゃんも心置きなく、お勉強に専念できるわね。」
「寂しいけど、亜美ちゃんが笑顔で出発できるように、私たちが笑って見送ってあげましょう。」






私が留学を決めた理由は二つあった。
ドイツへの留学の話は以前にもあったのだが、その時は戦士としての使命が何よりも大切だと思ったから、ここに残ってみんなと一緒に戦うことを選んだ。
その甲斐あってか、これまでの戦いの日々もすっかり私の思い出になろうとしている。
今では、子供の頃からずっと持っていた、母親と同じような医者になるという夢を、もう一度追いかけたいと思うようになっていた。そこで今回の誘い。悩んだ末に、私はドイツへ行くことを決めた。

それともうひとつの理由。

お勉強のことしか見えていなかった私の生き方に、他の色を見せてくれたあの人たち。
今度はあの人たちが私の色を必要とした時に、分けることができるような人になりたいと思った。
もちろん寂しい気持ちはある。それでも、私を変えてくれたあの人たちに少しでも、自分なりの恩返しがしたかった。
そのためには私が持つ色をもっと大きく、深くしないといけない。
私の色で、誰かを少しでも助けられる人になりたい。
私があの人たちの色に救われたように、
今度は私が。






「見送りはいいって言ったのに・・・」
出発前にみんなの顔を見るときっとまた迷ってしまうから見送りはいい、と言っていたのだが、彼女たちは空港まできてくれた。
「そうは行かないわよ。あなたは私たちの大切な仲間なんだから。亜美ちゃんは、誰にも言わずに一人で悩んじゃうことが多いから私たち心配なの。誰かに甘えることは悪いことじゃないのよ。だから困った時や、辛い時はいつだって、私たちのこと頼ってね。」
私たちの誰よりも、幽霊と他人の心に敏感で、私たちの誰よりも熱い心を持つあなたになら、この人たちの心を任せても心配なさそうね。

「そうだよ。亜美ちゃんの問題は、私たちの問題みたいなもんさ。亜美ちゃんが答えを出せないときは、私も一緒に考えるからさ、だから、その・・・うーん・・・こういうのって苦手なんだよなあ・・・」
そういって首を傾げた時、薔薇のピアスが光った。
今まで言えなかったけど、私はあなたのそういうところがずっと・・・
でも。
この言葉は戻ってくるまで取っておくことにしよう。
だから、必ず戻ってこなくちゃ。

「亜美ちゃーん、いくらお勉強が大切だからって無理しすぎちゃだめよー?
ほら、むかしっから『明日は明日の風邪を引く』って言うでしょ?いっちばん大事なのは自分の身体なんだから、お勉強もほどほどにね、わかった?」
彼女はそう言ってなぜか得意気に胸を張った。出発前に心配事が一つ増えてしまうなんて。帰ってきたら愛の女神にもお勉強を教えてあげなくちゃ。

「亜美ちゃん。どんなときも、私たちはずっと一緒よ。もし亜美ちゃんを困らせるような悪い子ちゃんがいたら、いつでもお仕置き、しに行っちゃうからね!」
おだんご頭がにゃははと笑った。あの頃と変わらないその笑い方。
真っさらなあなたのその色に出会えたおかげで、私はみんなにも出会えて変わることができたのよ。

「ありがとうみんな。私は大丈夫。どんなとこにいっても、私はみんなのことがずっとずっと大好きよ。」

あなたたちは知らなくていい。
あなたたちの色が、あなたたちの知らない所でどれほどの人の心を助けてきたのか。
私があなたちの色と出会えたことで、どれだけ救われたのか。
今の私の中には、あなたたちのくれた、たくさんの色がある。


今度は私がもっと綺麗な水色になって、あなたたちを迎えにいくから。


蒼い髪の少女は心の奥でそう呟くと、
夢色のゲートをくぐった。



fin.













タイトルは同名の亜美ちゃんのキャラソンから。
初めてやってみて、話の長さに関わらず、物語を書く人ってすごいなあと思いました。
小説家、作詞家とかじゃなくて、文字書きが趣味の人もほんとすごいです。
もし読んでくれた人がいたらありがとうございます。
次はないと思いますが...
でも来年のこの日までには、また何かできたらなあ。
改めて、水野亜美さま。
お誕生日おめでとうございます。