語学は「語楽」--英語を楽しく学びましょう

英語の学習をしていて、「おや?」と思われる点について、みんなで考えてみたいと思います。

主任に口なし

2010-12-27 08:02:50 | 英語の学習と研究

 「主任」に口なし(「死人に口なし」のパロディ)とは日ごろの口癖。そんなわけで、多言はしないのがポリシーであるが、おそらく3年間で唯一だと思うのだが、「口」を求められることがある。それは、修学旅行中の行程に関する毎日の報告記録である。それが、散文であれば問題ないのだが、「短歌」・「和歌」形式で、となれば、いささか構えてしまう。古い学校ではそんなしきたりがある。こんな経験をするのは、今回で2回目。
 12月1日から12月4日までの3泊4日の関西方面の修学旅行は無事に終了した。帰途の東北新幹線が大風のために運休になる(!)という大ハプニングこそあったが、生徒たちは「得難い体験」と前向きにとらえ、それがこちらに勇気を与えてくれた。
 

 初日は古川―神戸。
(1)やはらかな日差しあふるる古川の駅舎(えき)の片隅うづくまる子あり
(2)はらからと一人別れて母親にもたるる姿哀しき
(3)政治屋の都合優先SP隊吾怒れるが子らの「すげえ!」
(4)とつ国の館路に沿ひて丘を登ればそこは絵葉書の中
(5)「ハーバー」の発音上手とほめたれば「今回、英語は赤点です」
(6)感謝・感謝・感謝 子らは皆寝入ってゐる

 2日目は神戸―京都。クラス別研修なので奈良方面もあり。
(1)宇治の里極楽を垣間見し気になり呆然と時を忘れて立ちすくむ
(2)宇治の里極楽浄土を垣間見て陶酔のうちに時忘れ行く
(3)師走二日桂の川面に頬をなでる優しき風に冬を忘れし
(4)雲間より落日もれ出で嘆息す吾が子らの目は金閣に釘づけ

 3日目は京都。生徒は班別研修で大阪・奈良方面もあり。
(1)あれも見むこれも見むと駆け回る子らの背に見るたくましさ
(2)寝台の上に大の字に両手両脚放り出すいつとはなく襲ひ来る睡魔ここちよし

 4日目は東寺見学。帰途に就く。俳句を一句。
(1)木枯らしに負けじと紅葉散り残る

 英文科在籍の頃、ソネットを作れと言われてだいぶ難儀したが、母語である日本語での定型詩の場合、言葉の一つひとつに意識がいくので上手下手はあるが作りやすい。

 


老いを感じるとき

2010-12-18 12:52:12 | 英語の学習と研究

 若い頃は、度の強い近眼で、牛乳瓶の底のような眼鏡をかけていた。周りからは、強い近眼だから、歳をとっても老眼にならなくていいよね、と慰められていた。
 しかし、加齢とともに何と老眼になってしまって久しい。近眼が改善されたわけではないので、現在の私は近眼と老眼の両方の問題を抱えていることになる。当初、遠近両用眼鏡をかけていたが、最近ではピントを合わせる所作が煩わしくなり、近眼用と老眼用の2種類の眼鏡を携帯している。授業中は、生徒の様子をうかがうためには近眼用を、教科書の英語を読むためには老眼用を使っている。
 歳をとることは必ずしも悪いことばかりではない。たとえば英語の古典作品を読む際には、若い頃には気付かなかったことや理解できなかったものが実によく「見え」、かつ理解できるのである。故福原麟太郎先生は、シェイクスピアの最良の注釈書は何かと尋ねられた時に、「それは、くぐった門松の数ですよ」と答えられた。この言葉には実感を持って首肯できる。King Learを読む際にも、若い頃は有名な荒々しい場面(第3幕第2場の冒頭など)の

   Blow, winds, and crack your cheeks!  風よ、吹け。頬張り裂けるまで吹きまくれ。
   rage! blow!                     荒れ狂え。吹いて吹いて吹きまくれ。 

などにひかれ、繰り返し、繰り返し音読しては暗記したものだったが、最近では、第4幕第6場の

                                  ... we came crying hither:   人はこの世に泣きながら生まれてきた。
   Thou know'st, the first time that we smell the air, 知っているか。最初にこの世の空気に触れるとき
   We wawl and cry.                           ワンワン泣いて泣きまくる。

   ...

   When we are born, we cry that we are          人がこの世に生まれると、
   come                                                                 来てしまった、と言っては泣き叫ぶ
   To this great stage of fools: ...                道化らが演じるこの巨大な舞台にと。

のほうにほだされ、ほろりとされるのだ。
 歳をとるということは、自分の先が見えるようになることだ。あと数年で定年。定年後の人生をどうしようか。そんなことを考えながら、書斎に置かれているおびただしい数の書籍に目がいく。若い頃に購入したもので、漢文大系、英文学叢書、ペーパーバックの山、ハードカバーの原書、Timeなどの英米の雑誌の類、語法書・文法書、辞書・事典類が、あるものはきちんと配列され、あるものは無造作に放置されている。その中には繰り返し読んだものも少なくないが、まったく読んでいないものもある。そもそも、なんで漢文大系を購入したのか理由が思い出せない。英文学叢書は昭和50年代に復刻されたものだが、全100巻中何冊読み終えているのやら。
 最近思うことがある。ここにある書物を死ぬまでにすべて読み切ることができるだろうか、と。
 歳をとるということは、そんなこと、あんなことを考えるようになることだ。