「主任」に口なし(「死人に口なし」のパロディ)とは日ごろの口癖。そんなわけで、多言はしないのがポリシーであるが、おそらく3年間で唯一だと思うのだが、「口」を求められることがある。それは、修学旅行中の行程に関する毎日の報告記録である。それが、散文であれば問題ないのだが、「短歌」・「和歌」形式で、となれば、いささか構えてしまう。古い学校ではそんなしきたりがある。こんな経験をするのは、今回で2回目。
12月1日から12月4日までの3泊4日の関西方面の修学旅行は無事に終了した。帰途の東北新幹線が大風のために運休になる(!)という大ハプニングこそあったが、生徒たちは「得難い体験」と前向きにとらえ、それがこちらに勇気を与えてくれた。
初日は古川―神戸。
(1)やはらかな日差しあふるる古川の駅舎(えき)の片隅うづくまる子あり
(2)はらからと一人別れて母親にもたるる姿哀しき
(3)政治屋の都合優先SP隊吾怒れるが子らの「すげえ!」
(4)とつ国の館路に沿ひて丘を登ればそこは絵葉書の中
(5)「ハーバー」の発音上手とほめたれば「今回、英語は赤点です」
(6)感謝・感謝・感謝 子らは皆寝入ってゐる
2日目は神戸―京都。クラス別研修なので奈良方面もあり。
(1)宇治の里極楽を垣間見し気になり呆然と時を忘れて立ちすくむ
(2)宇治の里極楽浄土を垣間見て陶酔のうちに時忘れ行く
(3)師走二日桂の川面に頬をなでる優しき風に冬を忘れし
(4)雲間より落日もれ出で嘆息す吾が子らの目は金閣に釘づけ
3日目は京都。生徒は班別研修で大阪・奈良方面もあり。
(1)あれも見むこれも見むと駆け回る子らの背に見るたくましさ
(2)寝台の上に大の字に両手両脚放り出すいつとはなく襲ひ来る睡魔ここちよし
4日目は東寺見学。帰途に就く。俳句を一句。
(1)木枯らしに負けじと紅葉散り残る
英文科在籍の頃、ソネットを作れと言われてだいぶ難儀したが、母語である日本語での定型詩の場合、言葉の一つひとつに意識がいくので上手下手はあるが作りやすい。