文京シビックホールで定期的に開催されている午後7時30分開演の90分のコンサートである。少人数の室内アンサンブルを、少し遅い時間に、心にゆとりを持ってゆったりと楽しんでもらおうという企画だろう。夜のこのホールは初めてだったが、外を行き交う車のライトを窓越しに眺めつつ、すこし照度を落としたロビーの雰囲気が心安らぐ。このシリーズの趣向の一つは、毎回ドビュッシーの「月の光」で幕が開くというもの。ライトを完全に落とした舞台にピアノの田村響が登場して、暗闇の中から静かに優しくピアノが響く。素敵な夜の始まりである。続いてはショーソンの「詩曲」。ツルゲーネフの小説に着想を得た曲想は、基本的には静謐さが支配する。ここから加わった郷古廉のバイオリンはクールで、しかし中に一本筋が取っているのが実に心地よい。続くドビュッシーの小さなバイオリン・ソナタも、このバイオリニストのそうした個性が際立った。軽やかながら骨格の確りした音楽が凛と響き渡る。休憩後のバッハの「シャコンヌ」も決して理屈っぽくなくスタイリッシュに決める。ストラディヴァリウス(Banat)を実に良く鳴らす腕を持っている。最後のフランクのバイオリンソナタでは、そんなバイオリンを優しく包み込んで、決して出しゃばらずにサポートした田村のピアノも印象に残った。大きな拍手にアンコールはイザイの「子供の夢」。心静かなコンサートを結ぶに相応しい佳作が優しくホールに響いた。
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