このオケの本拠地であるミューザ川崎で開催された川崎定期の今年度最終公演は、正指揮者飯森範親によるレスピーギのローマ三部作である。潔くキッパリこの3曲だけのプログラムというのは珍しいような気がするが、それぞれに特色を持ったこれら3つをどう並べるかは考えどころだろう。個人的な意見としては、作品として最も効果的に纏まった「松」あたりを最後に置き、盛り上がりが頂点を迎えたところでお開きとしてほしいところだったが、今回は学究的に作曲年代順ということで、「ローマの噴水」、「ローマの松」そして休憩を挟んで「ローマの祭り」という順であった。こうして並べると「噴水」着手から「祭」完成まで13年の隔たりがあるわけで、それがそれぞれの個性となって表れているのかなと。まあそのあたりは、それぞれの周辺の曲を聞き込んでみないと何とも言えないだろう。演奏はさぞや元気に華やかに鳴らすだろうと予想していたのだが、案外と着実で正面から堂々と立ち向かったという感じの格調のあるもの。もちろんオーケストレーションが華やかなので、それなりの音はするのだが、色彩的に地味で骨太な感じの仕上がりが意外であった。飯森は以前にもこのプログラムを披露したことがあるので、これは不慣れというよりも解釈であろう。あるいはこのあたりはオケの個性なのかもしれない。相変わらず充実の東響であるが、今回はとりわけクラ首席の吉野亜希菜が絶妙なバランス感覚で良い仕事をして多くの聴衆の喝采を集めていた。
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