まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

英文契約のConsideration(約因)

2011-02-19 21:17:37 | 商事法務

  英文契約書の前文・事実説明部分(Recital)の後に、Now therefore, in consideration of premises and mutual covenants set forth herein, the parties hereto agree as follows等と記載しますね。このConsiderationとは何かというのが今回のテーマです。まず前提として、有効な契約の成立要件は何か、英米契約法(田中和夫著)によれば、以下の諸要件が必要としています。

 合意=申込(offer)と承諾(acceptance)の一致

② 捺印証書(deed)または約因(Consideration)

  法律的効果を発生させる意思

上記3つが基本ですね。更に契約が完全に有効=無効・取消の原因の不存在の為には、更に以下が必要と記載されていますね。まあ実務上はあまり考えなくても良い事ですけど、一応記載します。

   契約締結能力

  意思表示の真正:錯誤(mistake)=無効、以下は取消原因=詐欺(fraud,善意不実表示(innocent misrepresentation),強迫(duress)及び不当威圧(undue influence)

  目的の適法

   強行性に必要な要件

  ということで、英国の場合ですが、契約の成立には一定の様式に従った捺印証書又はConsiderationが必要となっています。約因などというと、何?となりますが、まあ「対価」関係と考えると分かりやすいですね。これがないと履行の強制即ちenforceableではないということになります。しかし、約因がない契約でも、履行されると有効に権利の移転が生じます。従い、後になって無償贈与したものの返還は請求することができません。約因のない契約は法的効力が無いというのは、それに基づいて請求することができないという意味ですね。

  ではConsiderationの定義は何でしょうか。おたくの人用に、正確に書いてみましょう。Currie v. Misa (1875)の判例で述べられた定義です。

A valuable consideration, in the sense of the law, may consist either in some right, interest, profit, or benefit accruing to the one party, or some forbearance, detriment, loss, or responsibility given, suffered, or undertaken by the other“(Anson’s Law of Contractから)」範囲は結構広いですね。不作為や損失等も約因になりますね。

約因は、契約成立時における履行行為(現在の履行=executed consideration, present consideration)であっても、将来履行するという約束(将来の約因=executor consideration, future consideration)でも構わないのですね。但し、過去の約因は、契約の約因にはなりません。

  では、英国法を継承している米国ではどのように考えられているかですが、米国では州によって違いますね。どうなっているかと言うと、書面による契約には全て約因があると推定する州や、書面による契約は約因がなくても有効とする州などがあります。形骸化しているところもあります。“In consideration of $1.00”等と「1ドルを対価として」等と書く場合もありますね。勿論企業同士の契約は、無償の贈与等は普通ありませんので対価関係がある契約が殆ど全てですから、約因があるのかどうかという争いは通常は起こりませんね。

  英国法と米国法の違いで重要なのは、英国では”Consideration“は、直接相手方から受けなければならないというルールがあります。従い、第三者のためにする契約は認められませんが、米国では殆どの州で、第三者のためにする契約は有効です。

コメント (1)
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