ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその271-草原の実験

2017年11月21日 | ヨーロッパ映画
カメラ=万年筆。以前このブログでも紹介した、アレクサンドル・アストリュックの映画理論である。
映像美が中心となる「映画」には、カメラの存在が実に大きい。
物語を語るのは「カメラ」なのである。
本日紹介する映画は、草原の実験。
まさに「カメラ=万年筆」を具象化した映画だ。
ストーリーを紹介しておこう。

草原に暮らす父と娘。荒涼としたそこには穏やかな時間が漂う。
そして、その娘に恋心を持つ幼馴染の少年。
毎日変わらぬ平和な世界がそのにはある。
しかし、ある日、少年の旅人が彼らの前に現れる。
徐々にその少年との距離を縮めていく少女。
幼馴染の少年の焦る気持ち。
それは、彼らの三角関係の始まりであった。
そして、平和な時間の中で彼らが見たものとは......

この映画はカラー作品であるが、台詞が一切ない。
正確に言えば「感嘆詞」を発するだけで、それいがいの人の声はしない。
カラー版サイレント映画と言っても良い。
こう言ってしまうと、見るのを拒む方もいらっしゃるだろうが、心配はない。
前述した「カメラ=万年筆」がしっかり構築されている。
人々や、背景を追うカメラ。実に重厚な映像がしっかり記録されている。
カメラの動くスピード、パンのスピード、静止画を捉える時間、全てが完璧と言える。
このカメラの圧倒的な描写力、筆圧、台詞が無くても観賞に十分耐えられる。
ラスト、この平和な世界に、信じられない光景が待っている。
その衝撃度は、ビートルズの楽曲「ア・ディ・イン・ザ・ライフ」のクライマックスにも例えることができよう。
作品時間は長くない、是非みてらっしゃらない方は観ることをお勧めする。

2014年、ロシア製作、2015年公開、カラー、97分、監督:アレクサンドル・コット。

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