月下に杯を重ね

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後鳥羽上皇

2006-01-11 21:13:26 | 刀工
 貴人が作刀に興じることは少なくない。
 後鳥羽上皇もその一人である。
 後鳥羽上皇作刀の太刀は数振り現存する。
 承元二年(1208年)正月に自ら槌を振るい作刀を行った。その際に相槌をしたのが粟田口久國・備前国信房の二工である。この功績により、久國・信房は日本鍛冶宗匠の名を与えられた。
 また一文字則宗は御番鍛冶中第一位の栄光に浴し、自分の作刀の茎に十六葉菊の紋章を切ることを許されたといわれている。一文字則宗の作刀が菊一文字と称される所以である。しかしながら、則宗には「則宗」二字銘の物以外なく伝説といえようか。また意外なことに、則宗の作は極めて地味であり、巷間でもてはやされる豪華絢爛にして華麗な印象とはほど遠い。

 後鳥羽が院中に名工を召し出す御番鍛冶制度が設けられた。
 御番鍛冶は以下十三工である。
 
 正月  一文字則宗        備前国
 二月  青江貞次         備中国
 三月  一文字延房        備前国
 四月  粟田口國安        山城国
 五月  青江恒次         備中国
 六月  粟田口國友        山城国
 七月  一文字宗吉        備前国
 八月  青江次家         備中国
 九月  一文字助宗        備前国
 十月  一文字行國        備前国
 十一月 一文字助成(助近とも書く) 備前国
 十二月 一文字助延        備前国
 閏月番 粟田口久國        山城国


 また承元二十四番鍛冶と呼ばれる別の御番鍛冶制度も存在している。
 これはその名の通り承元年間(1207~1211年)に限り行われた制度と見られている。

 正月  包道    備前国
     粟田口國友 山城国
 二月  古備前師実 備前国
     一文字長助 備前国
 三月  千手院重弘 大和国
     一文字行國 備前国
 四月  長船近房  備前国
     豊後行平  豊後国
 五月  包近    備前国
     直房    備前国
 六月  古備前則次 備前国
     番鍛冶吉房 備前国
 七月  朝助    備前国
     宗隆    伯耆国
 八月  章実    備前国
     実経    備前国
 九月  包末    備前国
     一文字信房 備前国
 十月  朝忠    美作国
     実経    美作国
 十一月 包助    備前国
     一文字則宗 備前国
 十二月 則眞    備中国
     長船是介  備前国


 後鳥羽上皇は承久の乱(1221年)で敗れ隠岐に流されるが、その刀剣熱は冷めず、隠岐においても御番鍛冶を招集した。
 隠岐御番鍛冶は以下六工である。
 
 正月・二月   粟田口則國        山城国
 三月・四月   粟田口景國        山城国
 五月・六月   粟田口國綱        山城国
 七月・八月   一文字宗吉        備前国
 九月・十月   一文字信正(延正とも書く) 備前国
 十一月・十二月 一文字助則        備前国