「正義」が勝てない社会であってはならない。
組織的凶悪犯罪を重ねる集団が放置されている国。
そんな国に住んでいるということを、人々はどう考えているのだろうか、、、
先日ただ紅葉に誘われて、信州の大町ダムを訪れた。
色とりどりの木々と、白く光る山々が絶妙である。
ダム湖の上には公園があり、この地域の伝説にちなんだ子供と龍の像が建てられていた。
そしてその横にもうひとつの慰霊碑があった。
三つの輪がかたどられたもので、オウム真理教事件で犠牲となられた坂本弁護士一家を悼むものである。
何の予備知識も持たずに足を運んだ場所だったが、この慰霊碑と向き合った瞬間にあの忌まわしい事件の記憶がよみがえってきた。
そういえば幼い龍彦ちゃんが惨い姿でようやく発見されたのは、確かにこの大町だった。
警察が湿地帯を捜索し続ける様子が、連日TVで報道されていたのを覚えているかたは多いと思う。
地元のかたの話では、実際に発見された場所は少し離れているのだが、家族三人やすらかにと願うためにこの公園に置かれたそうである。
三人の姿が横浜の自宅から忽然と消えたのは、1989年の11月3日夜~4日の未明だったと言われている。
その頃の大町もこのように綺麗な紅葉に覆われていただろうか。
人々は忘れやすい。
しかし忘れてはならないことはたくさんある。
そしてそれを覚えているだけではいけない。それを教訓として先へ進まなければならない。
オウム事件の解明はまだなされていない。
絶対に風化させてはいけない。
だが同様の、より凶悪化した事件は、また明らかになるだろう。
その時に坂本弁護士のように、毅然とした態度で被害者を、そして社会を護ろうとする弁護士はどのくらいいるだろうか。
あの頃よりもきっと増えているであろう。 と希望だけは持っていたいと思う。