屋久島旅行記

屋久島に恋しました・・・。

バスの旅

2006-06-29 | 2006年6月
翌日。
6時ごろは少し晴れ間が出たけれど、すぐにまた雨が降り始めてしまった。

今日は暇だったらえのっきーさんが車を出してくれることになってたけど、どうかなぁ・・・。

と、思ってたらぶるっと携帯が鳴った。

残念ながらえのっきーさん、今日は忙しいみたいだ。
しかも、大雨・洪水警報が出てるとのこと。

何ですとーーーー!!

ヤクスギランドに行きたかったけど、この雨じゃカメラも使えそうにないし・・・。
今日はバスに乗って大川の滝まで行ってみることにしよう。
帰りに尾之間温泉に寄ってお昼を食べようと思ったので、着替えとタオルをリュックに詰める。
昨日はいてたジーパンはすっかりしけっているので、部屋着用にと持ってきたシャカパン(古い・・・)を履いて、さあ出発。

それにしても凄い雨だ。
安房のバス停にたどり着くまでにすでにだいぶ濡れてしまった。
ホテルからバス停までやや坂道になっているので、路面を雨水がざーっと流れ落ちてゆく。
都会でここまで雨が降ってたら電車位は止まっちゃうだろうなぁ。

バス停でバスを待つ間も物凄い雨だった。

やっとずぶぬれのバスがやって来た。
運転手さんに行き先を告げて乗り込む。

てっきり誰もいないと思ってたのに、薄暗い車内に女の子がぽつんの座っていた。

帽子をかぶって首にタオルをまき、ウエストポーチのやや登山系ルック。
明らかに観光客っぽい。

「どちらまで行くんですか」
と声をかけると、大川の滝までだと言う。
なんだ、一緒じゃん。

「あ、一緒ですね。良かったらご一緒しません?」
「いいですよ」

女の子はにっこり笑った。
ノーメイクの顔立ちは大人っぽく見えてたけど、笑った顔は幼い。
年下かもしれない。

こうして今日の旅の道連れが決まった。

2人で並んで降りしきる雨を眺めながら、自己紹介を交わす。
彼女は22歳でまだ大学生だった。
屋久島には大学の卒論の為に来たんだそう。
難しいことは良く判らないけれど、屋久島の生態とかそういうのを調べてるらしい。
若い女の子で、何か珍しいな。
どうも、もともと高校生ぐらいの頃から屋久島に惹かれていたんだそう。
はぁ~・・・・。
いろんな人がいるもんだな。

でも、屋久島大好き!ってなる人って大抵、皆どこか、一種の信仰めいた磁力で屋久島に魅入られてしまう処があるような気がする。
そういえば田口ランディさんはエッセイの中で、屋久島のことを「島自体がひとつの神社のようなもの」と表現されていたっけ。

屋久島は、そうやって島に似た波動を持つ人を引き寄せる神力と言うか、何かそんなようなモノがあるんだろうな。

雨は強くなったり、弱くなったりしながら降り続く。

ところで、私は安房を越えてからは千尋の滝辺りまでしか行ったことがなかったので、バスの車窓から見える雨に濡れた景色もまた見てて楽しめた。
思わず途中下車してしまいたくなるような雰囲気の川にかかる小さな橋や、雑草がもわっと生い茂って、山の方へ向かう小道が見える道端など、心惹かれる光景がいくつもあった。

一度のんびり、屋久島一周なんてのもしてみたいな。

30分も走ると途端に海が近くなる。
タイドプールで有名な栗生海岸が見えてきた。
この海は屋久島で一度潜ってみたい場所だ。

栗生を過ぎると途端に道が細くなる。
草が生い茂った道が海岸沿いになだらかに続く。

バスは栗生までしか行かないモノが多く、終点の大川の滝まで行ってくれるのは一日に午前と午後の2本しか通らない。
ネットで大川の滝を観に行った人の感想などを読んでると、車の運転が出来ない人は大抵栗生から滝まで歩いて行ってる。
しかし、距離にして4キロほどもあるらしく、なかなか大変そうだった。

今回、旅の計画を立ててる時、「でも実際に歩いてる人がいるんだから大丈夫じゃないかな?」と私も始め、栗生から滝まで歩いてみよう、なんて思っていたけれど、実際にバスで走ってみてかなりの距離があることが判った。
うーん・・・歩かなくて正解だったかな。

雨足は弱くなってきた。
雲が流れてる。
もしかしたら、晴れるかもしれない。

そう思っていた矢先に、窓の向こうにそびえる山合いに滝が見えてきた。





幸せに酔いしれる

2006-06-28 | 2006年6月
オーベルジュは、旅行雑誌などでも名前が載っていて、料理がとにかく評判だった。

ぐしょぐしょに濡れて安房川から戻り、軽くシャワーを浴びて着替えて、お楽しみの夕食だ。

ホテルの1階の小さな食堂のような部屋ではテーブルが用意されてある。
私のほかにも2組、お客さんが泊まっているようだが、まだ皆いない所を見ると宿に戻っていないのだろう。
まだ7時前だし、当然か。
私はとにかく午前中の飛行機で酔ってしまった為、お昼を少ししか食べられずお腹が減ってしまったので早めに夕食をお願いしておいたのだ。

テーブル席からは奥の台所が見えた。
丸くてやさしい笑顔のお母さんが手際よく料理を作っている。

ホテルのご主人らしいオジサンが出てきて、挨拶する。

「明日はどこ行くんですか?」
「そうですねぇ、ヤクスギランドとか行きたいんですけど・・・お天気が心配で」
「あー、明日はどうかねぇ」

などと話してるうちにどんどん料理が並ぶ。
お刺身、丸ごとの飛び魚のから揚げ、煮物、焼き魚などなど。

どれもバカ美味かった。

「えー!美味しい!!」
と、思わず叫んでしまったくらい。

今台所から作って出してくれたばっかりなので、とにかくどれもこれも熱々で、美味しい。
このご飯を食べる為だけにここに泊まりたい、とまで思ってしまう。

シメの固めに炊いたご飯も一粒残さず全部たいらげた。

お母さんが恥ずかしそうになるまで「美味しい!美味しいです!!」と褒め称えた。
いやホントに、美味しかったです。

食事の最中に肉体労働系の仕事から帰った、と言う感じのオジサン達がどやどやっと入って来た。
その中のひとり、若い男性に挨拶される。
何かと思ったら、お料理を作っているお母さんとさきほどご挨拶したご主人の息子さんで、メールのやりとりは彼がしていたのだそう。
あの、親しみやすい文章そのままにおおらかな印象の方だった。

料理の美味しさと宿の人たちの感じ良さにつられて、普段飲まないビールまで一缶空けてしまった。
ご機嫌になって部屋に戻る。

やさしいご主人と息子さんに、お料理上手なお母さん・・・いい宿に当たったなぁ。
そういえば、屋久島に来た過去2回とも、泊まった宿の人は皆良い人たちですぐに仲良くなれたっけ。
私ってこういう運は結構いい方だ。

美味しいご飯は人を幸せにする。
突然襲ってきたとてつもない幸福な気持ちにうちのめされて、酔っ払ってたのもあり、ベッドの上でごろごろと転がった。

ああー、ここは屋久島なんだぁ。
明日もお天気は悪いかもしれないけど、すぐそばに大好きな安房川があって、山もあって、ご飯は美味しくて、宿の人たちは皆、いい人で、何て幸せなんだろう。

って言うか、屋久島に嫁入りしてぇ・・・。






雨の安房川を歩く

2006-06-28 | 2006年6月
オーベルジュは思ったより安房川から離れていたけど、ちょっとした散歩気分で歩くにはちょうど良いかもしれない。
チェックインを済ませて荷物を置くと、早速傘を持って、散歩に出かけた。

とりあえず安房川方面へ、と歩き始めて5分もしないうちにちょっとだけ後悔した。
ずっとえのっきーさんの車に乗っていたから実感がなかったけれど、雨の屋久島を普通に歩こうと思ったら都会の雨の日に会社へ向かう、程度のことと同じ感覚でいてはいけない。
都会では傘をさしても濡れる、と言う位凄い雨は、台風や夕立の時くらいだけれど、この島では「普通」の雨でも傘をさしてても濡れる。
そりゃもう濡れまくる。
一応防水スプレーはして来たとはいえ、完全防水ではないスニーカーはすでにびしょびしょ。
ジーパンもすっかり湿気を含んでじっとり濡れている。
傘を持つ手も腕もびちゃびちゃだ。

今度からこの島に来る時は長靴か、せめてカッパを持ってこよう・・・。

それでもどんなに濡れても決して不快に感じない。
むしろ、ちょっと気持ち良かったりする。

何でだろう。
明らかにこの島に降る雨って、都会の雨と違って何だか気持ちが良い。

大通りまで出ると安房橋が見える。
その向こう、緑にちょっと埋もれるような感じでロイヤルホテルが立っている。

安房橋の手前でわき道にそれて安房川の堤防へ降りる。
前回歩いた時に覚えた道だ。
安房橋の下に出ると、安房橋より小ぶりのまんてん橋を渡る道に出る。
まんてん橋を渡りきった処はロイヤルホテルの裏口と通じていて、川べりに降りる小さな梯子もある。
今日は川の水が増水していて、梯子を降りるのは危険そうなので止めておいた。

まっすぐ川沿いに山の方へ向かって歩いてみることにした。

ここまで来ると車もまったく通らない。
晴れた日は堤防に地元の人たちが集まって井戸端会議をしているけれど、今日は誰もいない。

ひとりでとぼとぼと歩いてゆく。

雨は時折止み、しばらくしてまたさあっと降り始める。
その繰り返し。

川の水も今日は底が見えない。
晴れている日のこの川の水は澄んでいてとても美しいのに、と恋しくなった。

そのうち道は行き止まり、目の前は突如として森の入り口があった。
足を踏み入れてみると、急に木の香りが匂いたった。
空気が切り替わる。

この感じ。

森は、木は、不思議だなぁ。

ほんの出入り口程度の場所であっても、森の中へ一歩足を踏み入れると途端に空気が変わる。
酸素が濃くなり、ふっと肩から力が抜ける。

どこまで続いてるのだろうか。
歩いて行ってみたい気持ちもあったけれど、何せ舗道されてない道はどろどろにぬかるんでいて、このスニーカーで歩いてくのはかなり大変そうだ。
雑草も生い茂っているので、ジーパンがもっと濡れてしまうだろう。

申し訳程度に森の入り口に佇んで、流れる安房川をしばらくぼーっと眺めていた。

雨がやんで、次にまた降り始める時の空気が面白い。
最初のうちはぱら、ぱらぱら、って感じで落ちて来る雨粒が、ある瞬間、細い糸のような雨に変わる。
その時、安房川の川面にまるで風が吹くように雨の影がさあっと走るのだ。

首筋がじっとりと汗ばんでいる。
ここに来る途中、ついいつもの癖で早歩きしていた為、汗をかいてしまった。
湿度が高いので、汗はなかなか蒸発しない。

都会では常に時間に追われている。
特に何も予定が無い日でさえも、何かしら時間に追われている。
だからいつも早足で歩く。

だけど、この島では時間は間延びする。
早歩きしたって無駄なだけだ。
時間が余るだけ。

不思議だね。
流れてる時間そのものは、都会でもこの島でも同じな筈なのに。

雨は降り続けてる。
時間はゆっくりゆっくり過ぎてゆく。

だんだんと気持ちが静かになってゆく。
ああ、ここでは急ぐ必要がないんだなぁ。

雨は雨の筈なのに、都会に降る雨とこの島に降る雨はやっぱり違う。

そして、私は私なんだけれど、この島に来ると明らかにちょっとだけ違う自分になるんだ。
私は私でありながら、私が醸し出す空気が変わる、と言うか。
きっと、この島にいる時の方が私の命そのものに近い顔をしているかもしれない。

雨足が弱まった隙に、道を引き返す。
とは言っても、どうせまたすぐに降り出す。

帰りは安房橋の下を歩いて、海へ向かう道なりにホテルまで戻ってみることにする。
港の近くにAコープがあったので、そこで軽く飲み物などを買っておこう。

港が近くなると途端に潮の匂いが濃くなる。
振り返れば相変わらず濡れた緑が静かにそびえている。

明日も一緒だね。
まだ側にいられる。
ここにいられることそのものの幸福さに、心がじんわりと嬉しくなった。




雨の中のドライブ

2006-06-28 | 2006年6月
それにしても今回の屋久島の雨は凄い。

車のワイパーが弾くたびに、フロントガラスに降りしきった雨が何と言うか、しぶきになって飛び散るのですよ。
それ位に本気で降ってます降ってます。

えのっきーさん曰く、「屋久島の本気の雨はまだこんなモンじゃない」らしい・・・。

今回えのっきーさんからサプライズがあった。
と言うか、私が単に忘れてただけなんだけれど。

11月に風邪でキャンセルした際、えのっきーさんのお古であるフィルム式カメラを譲ってもらえると言う話があったのだ。
えのっきーさんはそのことをちゃんと覚えていて、今回、まずそのカメラをプレゼントしてくれた。

それが物凄いカッコいい、ちゃんとしたカメラなの。
カメラ初心者の私がタダでこんなものもらっちゃっていいのかしら・・・と思うような。
何か、真面目に写真やってるカメラ小僧が聞いたら怒られそうだな。

でも嬉しい。
この天気じゃ3日間のうち、いつ行けるか判らないけれど、ヤクスギランドに行ったらいっぱい写真撮ろう、っと。

えのっきーさんは午後から用事があるということで、とりあえずお昼だけ一緒に、の予定だったけれど、「ちょっと遠回りしてもいい?」と言いながら、車でぐるっと私の好きなわき道を軽くドライブしてくれた。
さすが師匠だ。
「ちょっとドライブしようか」じゃなくて、「ちょっと遠回りしていい?」と入っていくあたりがツボを心得ている。

雨に濡れた屋久島は相変わらず美しかった。
激しい雨に打たれて、植物達は悲愴な感じではなくてむしろ生き生きと色彩を放っていた。

山も海も空も、木々も土も道路も、ずっしりと水を含んでいる。

途中、千尋の滝へ寄ってもらった。
ここは車を駐車場に停めて、5分ほど歩く。
外に出ると途端に澄んだ空気が肺を満たした。
ふわっと肩が軽くなる感覚。
屋久島に来ると何故かいつも、肩が軽くなる気がする。
きっと空気が軽いんだろう。

昨日から降り続いてる雨のお陰で千尋の滝は通常の倍にも膨れ上がって、どうどうと水を放っていた。
ここの滝は有名だけど、滝からかなり離れているのがちょっと残念だ。
昔は滝つぼまで遊歩道で行けたらしい。
恐らく危険だからと言うことで、今はもう行けなくなってしまった。

相変わらず名前のついてるモノよりも「そこら辺」が好きな私は、千尋の滝そのものよりも、駐車場から滝まで向かう5分間の散歩道がすっかり気に入った。
去年みづえさんと来た時とは、全然雰囲気が違っていた。
あの時は晴れていたのでただただ暑かったけれど、今日は雨を含んでしっとりと重くなった木々の葉が垂れ下がり、道の奥へ続く緑の森が透明感を増してとても気持ち良さそうに佇んでいた。
その澄んだ緑達を眺めているだけで、何だか安らいでくるような気持ちになった。

紛れもない屋久島の空気だった。

ああ来れて良かった。
来て良かった。

軽くお昼を済ませてえのっきーさんに宿まで送り届けてもらって別れた。














VS雨

2006-06-28 | 2006年6月
目覚めたら雨が降りしきっていました・・・。

あーあ。

今回はダイビングがないので、いつも連れて行ってたキャリーはお留守番である。
小ぶりの旅行バッグに、リュックを背負ってビニール傘をさして出発。
ちなみに荷物になるので、このビニール傘は駅に寄付してしまいました(早い話が置き捨ててきた)

今回はチケットレスなので、航空券を忘れる心配もなし。
予約番号も控えたし、身障手帳も持ったし、万端の態勢である。
これで後は飛行機が飛んでくれるかどうか・・・。

と、気を揉んでいたのだけれど、いざJALに着いたらあっさりと「エアコミューターですか?今日は飛んでます。大丈夫ですよ」と言われてしまう。

ああ良かった~。

およそ半年振りではあっても、空港にもすっかり手馴れて来た感じです。
今回はちゃんと乗り継ぎ指定にして、エアコミューターのチェックインも済ませる。

これは、前回屋久島に行って、飛行機が壊れて帰れなくなった翌日、えのっきーさんが心配してわざわざ空港まで見送りに来てくれたんだけれど、その時のチェックインでえのっきーさんが「乗り継ぎで羽田まで」ってやってたのを見て覚えたのだ。
それまで私は乗り継ぎ指定を知らなかったのである・・・・。
つまり、鹿児島に着いたら一度ゲートを出て、荷物を受け取って、またカウンターに行ってエアコミューターのチェックインをして、またゲートに入って、と面倒なことをしてた訳。

はい、アホですね。

最初に屋久島に行った時も、羽田で「乗り継ぎ」ってやっておけば慌てふためいて鹿児島空港中を駈けずり回る羽目にならなかったんだけれどねぇ・・・・。
(参照記事→http://blog.goo.ne.jp/mahachohan_2006/e/1c7f81d0a9903992fd82f793a668ec84)

まぁ、こういうことが手際よく出来るようになったあたりに自らの成長を見たりする訳です。

鹿児島までは10分押し位で到着。

到着したのはいいけれど、エアコミューターの搭乗口までは相変わらず遠かった。
空港の端と端かって位に。
今回もエアコミューターへの乗り継ぎ時間がぎりぎりだったけれど、まぁチェックインも済ませてあるし、気持ちは余裕でざっざっざっ、と歩いて搭乗口に辿り着く。

と、あれ。
もう搭乗手続きが始まる時間なんだけれど、まだランプがついてない。
聞いてみると、飛行機の到着が遅れてるとのこと・・・。
何となくいやーな予感。

何しろ鹿児島は予想通り雨がざんざん降り。
屋久島の方ではどれだけ天気が悪いのか想像に難くない。
あのプロペラエンジンの小型ジェット機が、右往左往してるのも納得したくなんかないけど納得出来る。

それでも、10分も待ってると飛行機も到着し、何とか乗ることが出来た。
結局20分くらい押して鹿児島空港を飛び立つ。

飛び立ったのはいいけど、飛び立つ寸前、スチュワーデスさんから「只今悪天候により、鹿児島空港へ引き返すかもしれません・・・」などと言われてしまう。

おーい!!

私の前に座ってたオジサンも、「えぇ~・・・行けるのかなぁ・・・」とぼやきながら窓を見ている。
ホントだよ。しっかりしてくれよ。
ここまで来て帰るなんて嫌だよ。

エアコミューターに乗るのも3度目になるけれど、今回はさすがにこれまでの2回みたくスムーズに島へ進めないことがありありと判った。
だって、いつまでたっても窓の下が鹿児島なんだもん。
普段なら飛んで5分もすれば海の上に出るんだけれど今回は一度海の外に出た・・・と思ったらぐいぃぃんと斜めになって、また鹿児島上空に戻ってしまった。

お~いお~い・・・。

偉く機体が斜めにかしいでますけど・・・。

あまりにも悲愴な表情で窓の外を眺めていた気配が伝わったのか、前の席のオジサンが「行けるのかねぇ」と声をかけてきた。

「ねぇ・・・ホントに・・・」
と返事も上の空で拝み続ける。

神様すみません、もうビニール傘を駅に置き捨ててきたりしません。
どうか、屋久島まで導いてください。
お願いしますお願いしますお願いします・・・。

多分、大学の合格発表の時でさえもここまで真剣に祈らなかったんじゃないだうか。
それ程全身全霊をかけて祈った。
祈りまくった。

機体は風に翻弄され、始終ななめにかしいだ状態で、それでも何とか屋久島へ向かう。
見慣れた濃い緑の島がぽっかりと見えて来た時は、安堵の余り汗が吹き出た。

よーし、よーし、このままこのまま。
行けっ!今だー!!
神様、頼みますーー!!

祈りが通じたのかどうか、とにかく飛行機はよろよろっと屋久島空港に降り立った。
いつも空港が近づいてくると海面すれすれを飛ぶんだけれど、今日は風を避けて急降下しているせいか、いつもに増してすれすれ感があって、恐ろしかった。

タラップを降りると、むわっと独特の南国の風がふきつけてくる。

雨がざーざーと降っていた。

それでもいい。
屋久島だー!
半年振りの屋久島だー!!
会いたかったよー!!

と感涙にむせんだのもつかの間。
ただでさえ揺れる飛行機の中で、全身全霊をかけて祈ることに体力を使っていた私は、珍しく酔ってしまっていたのだ。

うえぇぇ。
気持ち悪ぃ。

ちょっと遅れたえのっきーさんはやってくるなり、空港内のベンチでぐったり沈んでる私を見てドン引きしていた。
すみません・・・。






屋久島前日(夜)

2006-06-27 | 2006年6月
去年の6月末の屋久島はちょうど梅雨明けにあたって、3日間ずっと快晴だった。
何となくそれにあやかって、今回も同じ時期に行くことにした。

2週間前に奄美が梅雨明けし、屋久島の方もお天気が続いてるようで、「よ~しよし」とほくそえんでいた。

・・・んが!

よりにもよって1週間前になって、なんと九州地方に梅雨前線が停滞してしまった・・・。

出発を翌日に控えた今日、気になってJALのHPをチェックすると。

何と、鹿児島から屋久島へ向かうエアコミューターが欠航となっていた・・・(-◇ー;)!!

鹿児島は大雨。
当然、屋久島にもしっかりと雨のマークが光る。

はぁ~・・・。

何か私、屋久島行く前っていっつも何かしら、心配してるなぁ・・・。
たまには「よしっ。明日は快晴!航空券も持った!飛行機もOK!」ってな感じで、晴れ晴れと屋久島へ行く日を迎えたいんですけど。

とにかく、明日の飛行機が飛ぶかどうかはJALに行かないと何ともならないので、今夜はさっさと寝よう。

一応、友達何人かにメールを送っておく。
「九州地方大雨だってー!
明日飛行機、ヤバいかも・・・。
祈っててください」

皆さんも祈っててください(マジ)


屋久島前日

2006-06-27 | 2006年6月
今回はダイビング無しで2泊3日の予定にした。

詳しくは書かないが、去年の後半、ダイビングで関係してる人たちとトラブル、と言うか仲たがいが続いて起こった。
AさんとBさんがいたとして、この2人は私のダイビング関係の知人であるが、AさんとBさんはお互いを知らない。
にも関わらず、まずAさんと私の間でトラブルが起き、続いてBさんとも仲たがいが生じた。
そんな感じで、連鎖的にダイビングを通して知り合った方々との間で嫌なことが続いた。

その殆どはブログやメールでのやり取りが原因となったので、当時やっていたブログも閉鎖し、メールも次々と受信拒否設定に入れて、どんどん彼らとの関係を断っていった。
ダイビングそのものに対しても嫌気が差してきた、と言うか、ヤル気が沸かなくなってきた。

もともと気管支喘息を患っている人は医師の診断書がなければダイビングをしてはいけない。
私は主治医から「大丈夫」とサインをもらっていたのだけれど、11月に引いた風邪をこじらせてかなり悪い所まで行ってしまった。
そういうこともあって、いい機会だからダイビングの世界からもしばらく遠ざかっておくことに決めた。
もしまた始めるチャンスがあれば否が応でもやってくるだろう。
二十歳になってダイビングを始めてから7年間潜り倒していた。
ここらへんが区切り時なのかもしれない。

とは思っても、えのっきーさんは一連の騒動には関係してないし、正直、私の中で屋久島にここまでハマることが出来たのはえのっきーさんがいたから、と言う思いがある。
海ももちろんだけれど、陸でもえのっきーさんが車でいろんな処に連れて行ってくれて、その時々で屋久島の楽しみ方を伝授してくれた。
私は縄文杉も見てないし、太鼓岩も行ってないけれど、屋久島って楽しい!大好き!な気持ちになれたのは、えのっきーさんが「そこら辺」にある自然との遊び方、楽しみ方を教えてくれたからに他ならない。

「そこら辺」とはズバリ、普通の観光客が行かないような場所である。
名前すらもつかない。
だからこそ、自分だけが知ってると言う気になれる。
誰にも教えたくないような自分だけのスペシャルな場所が屋久島には溢れている。

ヤクスギランドでさえ、有名な杉の木を見て佇むよりも、どの木にもある苔に付着した雨の雫の美しさを見て歩くことの方が遥かに楽しい。
そういう目線もえのっきーさんから教わった。

自分の中では勝手にえのっきーさんの弟子入りまでしている。

そんな屋久島の師匠ではあるけれど、あくまでもダイビングショップのオーナーなので、何となく今回の旅行が決まってからもなかなか連絡が出来ずにいた。
ダイビングしないのに連絡して、「ちょっと一緒に遊べないかなー」なんて図々しいと言うか、おこがましいと言うか、失礼なんじゃないか・・・と根が生真面目な私は悶々としていたのである。

アホみたいなんだけど。
何ていうか、ダイビングショップのスタッフとダイビング以外の目的で会うのはあんまり、好ましくないんじゃないか・・・とか懸念していた訳です。
真面目だなぁホントに。

そんな話を、友達にした所、「連絡してみればいいじゃん」とあっさり言われてしまった。
そら、そうだな。
つーか、悶々してた処でどうしようもない。

気軽に行ける伊豆と違って、屋久島なんて半年に一回行けるか行けないか、位に遠いのだから、行ける時に連絡すべし!

ということで、恐る恐るメールをしてみたら、拍子抜けする位さくっと返事が来て、結局、当日は空港まで迎えに来てくれることになった。

なぁんだ。
なるようになるもんじゃん。

そうやって自分の内側で考えて事態を自ら難しくするのはホントに良くない癖だよなー。
とほほ。
案ずるより産むが安しってことだ。



準備-宿編-

2006-06-02 | 2006年6月
これまで屋久島の宿は割りと人任せだった。

初めて行った時は旅行会社のツアーだったので、宿も旅行会社のほうで手配してくれていた。

二回目と三回目はYMSさんの方でダイビングと宿泊をセットにしているパックがあって、それを利用することになっていたので、これまた手配はYMSさん任せ。

でも、今回で正式に島に行くのは3度目になるのだし、そろそろ自分で宿を開拓してみようじゃないか。
旅行会社にお願いしなくとも自分で飛行機も手配出来るようになったのだから、宿も自分で探してみよう!

まぁ、今回はダイビングをしないので、YMSさんにお任せ出来ないなどの事情もあったのだけれど、そんな訳で、次は宿探し。

相変わらず免許がない私は、島での交通手段はバスのみとなる。
バスは1時間に1本。
それでなくてもデカイあの島内をバスで動き回るのは時間もお金もそれなりにかかる。
となると、2泊3日という短い旅行期間の中で効率良く回る為に、まず拠点を決めよう、と思った。

今回は最初から私は、安房を拠点にするつもりだった。
まず、絶対行きたい場所がヤクスギランドだったので、ヤクスギランドまで直接行けるバスが通るバス停が近くにあることを第一条件としてあげると、そのバス停がが安房周辺に固まっているのだった。
それから、去年の今頃、初めて屋久島に行った時に泊まったロイヤルホテルが安房川のほとりにあって、川からの眺めや最終日に歩いた安房川の川べりの道などがとても印象に残っていて、あの辺りは自分の中でもお気に入りの場所だったので。

安房付近にあって、バス停が近くにある所を条件にしてネットで検索をかけた。

これが結構難航した。
前回2回ともホテルだったので、今回は民宿もいいかな、と思っていたのだけれど、民宿でHPを作っている処がなかなかみつからない。
最終的に屋久島情報サイトとして有名な屋久島リアルウェーブ(http://www.realwave-corp.com/index2.htm)から、探し出すことにする。

いくつかの宿をピックアップしてメールを送ってみる。
メールアドレスを持ってない処もあったので、そういう処は残念ながら選択範囲から外さざるを得なかった。
何しろ電話が出来ませんので。

翌日にはいくつかの宿からお返事が返って来ていた。
ほとんどの宿はメールを送ったその日のうちに返事をしている。

ところで、私は電話が出来ない分、メールにうるさい。
電話での応対同様にメールでの対応にもその会社なり、企業なりのイメージが問われてくるものだ。
これまでいろんな会社とメールのやり取りを交わしてきた経験から、必要以上にメールの返信に対して神経質な位にぴりぴりするようになってしまった。

返事の早さが出来るだけ早ければ良いのは、当然のこと。
でも、例えば翌日以降の返信になったとしても、丁寧な謝罪の言葉があれば良し。
この辺は常識レベルだろうけれど。

文章もこちらが質問したことに簡潔かつ判りやすく、親しみの持てる文章で受け答えしてくれているかどうかが重要。
最後に「また何かご質問などございましたらご遠慮なくメールしてください。ご来島を心よりお待ちしております」などの一文が添えてあるだけで、相手への印象が断然ポイントアップする。
意外とこの最後の一文が無い返事が多くてガッカリした。

また、車の免許が無いことで何やかんや言ってくる処が結構ありました。

免許が無い旨を告げて、宿から歩いて行ける距離にバス停があるかどうかを質問事項として書いておいたのだけれど、いくつかの宿から「屋久島は免許がないと不便ですよ」と忠告を受けた。
そんなもん、端から知ってるわい。
だからバス停があるかどうかって聞いてるのだ。

経営者がエコガイドだったりするような宿からは、他のお客さんとカップリングでのエコツアーの参加も勧められた。
屋久島がまったく初めてだったら、そういうのも乗ったかもしれないが、前回白谷雲水峡エコツアーに参加して、それはそれで楽しいけれど自分の中ではもういいかな、と言う気がした。

もともと私は複数の人数で行動することが苦手なのだ。

縄文杉を見たい!とでも言うのであればガイドを雇っても良いかもしれないけれど、白谷雲水峡やヤクスギランドの30分コース程度であれば、ひとりで気ままに回った方がのんびり楽しめると思う。
それに、高いお金を払ってガイドを頼むくらいならえのっきーさんにダイビングついでに車で裏道を回ってもらった方が遥かに面白い。

そんな訳で、結構宿探しは難航した。
民宿は確かに安くなるけれど、泊まり客同士が親しくなるチャンスが高い分、宿の雰囲気が問われる。
もともと人見知りで、気を遣うタチなこともあって、皆でわいわいと言う雰囲気があんまり好きじゃない。
たまたま知り合った人と1対1で仲良くなるのは楽しいけれど、何人もいるのはちょっと疲れそうで嫌だなぁ。

としたらやっぱり、ホテルか。
ホテルになるとどうしても高くつくけれど、その分プライベートは確保されている。

安房港からほど近くにあるオーベルジュと言うホテルを見つけ、メールを送ってみたら、これがドンピシャだった。

丁寧かつ親しみのある内容のメールで、最後に「お身体ご自愛ください」とあるのも何だか可愛らしかった。
免許が無いことについても、「屋久島はバスの運行が非常に少ないですが、かえってバスの時間通りに行動するのも計画がたてやすいかもしれません」と、嬉しいことを言ってくれる。
難聴であることについても、「出来る限りお手伝いさせていただきます」とのこと。
決まりだね。

場所も安房港から近いので、帰りのトッピー乗船にも都合が良い。

やっとこれで宿も決定した。
やれやれ。
ひとりで色々やってみると大変だな。

でも、屋久島にまた行ける気持ちが大きくなってきた。










準備-交通編-

2006-06-01 | 2006年6月
そうと決まれば行動は早かった。

と言うか、早くしなきゃならなかった。

何と言っても飛行機の手配は早ければ早いほど値段が安くなる。
今年からスカイマークは鹿児島線を撤退してしまったので、JALかANAで行くしかない。
現時点で使える割引関係では、JALの28日前までに予約をすればちょっとお安くなる28割くらい。
それでも16,000円強はするが、もう仕方ない。
ここで失った分はまた仕事で稼ごう!と割り切るしかないか。

屋久島へ行くのも今回で3回目、キャンセルしたのも入れれば旅の準備は4回目になる。
最初の頃は右も左も判らなくて、旅行会社にまかせっぱなしだったにも関わらず、ゲートと搭乗口の違いも判らなくて空港を奔走したり、航空券を忘れて来たり、飛行機を壊して帰れなくなったり、ここまで場数を踏めば飛行機の手配程度なら、今となってはチョロいもの。

さくさくとネットから28割でチケットを手配する。

ところで今回、鹿児島から屋久島へ渡るのは船を使ってみたいと思った。

今回はダイビング無しの旅行にするつもりなので、比較的時間に余裕があるんじゃないか、と言う気がする為、あえて船でのんびり行くのもいいかもしれない、という考えもあったのだが、何と言っても船は安い。
身体障害者割引を使えば片道4,000円程度で行けてしまう。
エアコミューターの半分以下だ。

が、しかし。

ど~~~~~~~うしても、羽田から鹿児島に着く時間と、船に乗り換える時間が上手く合わない。
鹿児島に10時に着いても、船だと屋久島に着くのは15時になってしまう。
しかも、安房ではなく、宮之浦に到着する。

屋久島には安房と宮之浦、二つの港があるのだけれど、この二つの間をバスで移動するとなると軽く千円以上はかかる。
なら宮之浦に泊まればいいじゃねぇか、と言うことになるのだが、今回、私は諸々の事情があり、どうしても安房に宿を取りたかった。

更に鹿児島空港から船の出る港まではリムジンバスを使っても1,200円程度はかかるという。

そうするといくら船が安くたって、実質的には飛行機で行ったのとそんなに変わらない値段になってしまう上に、午後3時と遅い時間に屋久島に到着し、更に宮之浦から安房まで小1時間かけてバスで移動しなければならなくなり、時間的ロスもかかる。

少なくとも行きはエアコミューターを使った方が効率が良いな、と判断し、行きの便のみ身体障害者割引でエアコミューターを予約。

ちなみにJALで身体障害者割引を使いたい場合、ネットで普通に予約を入れた後、予約センターまで電話をかけなければならない。
別にいいんだけどさ、身体障害者のカテゴリの中に聴覚障害者は入ってないのかね。
聴覚障害者は電話が出来ないぞ。
こういう社会的な矛盾はしょっちゅうそこらへんにごろごろ転がってあって、けつまずく度にとほほ、とならざるを得ない。
私はたまたま電話をお願いできる友人がいるからいいけれど、そうでない聴覚障害の人はどうすればいいんだろう。

さて、帰りの船は13時過ぎに安房から出るとっぴーを予約。
こちらはネットで予約した際、正規の金額を振り込むのだけれど、当日、受付で障害者手帳を掲示すれば半額戻してくれるとのこと。
これも友人にわざわざ鹿児島の本社まで電話してもらって確認したんだけれど、せめて判りやすいようにHPにもそういうことを明示して欲しいなぁ。

今回、結構急に決めたこともあって、ネットで使える割引があんまりなかった為、身体障害者割引にかなり頼ることになってしまった。
でもそうすると、いちいち電話して聞いたりしなきゃならないことがあれこれとあったりして、気持ちの上では結構ざわついた。

仕方ない、と受け入れるしかないんだけれどね、単純にイラつく訳ですよ。

こういうイラつきがピークに来ると「畜生、障害者は屋久島行っちゃいけねぇのか!!」とキレたりするので、航空会社や船舶会社の皆さん、今後もバリアフリーの拡大をよろしくお願いしますね。
私はキレると結構怖いですから(謎)















屋久島、再び

2006-06-01 | 2006年6月
年が明けて半年もたとうかという頃、まぁいろいろあって、もう一度休職中の職場に戻ることにした。

昨年末から始めた漢方治療のお陰でだいぶ体調が安定してきているということに自分でも自信がついてきた。
それでも結構長いこと仕事を辞めようかどうしようか、ふらふらと迷っていたけれど、4月になって以前の職場でお世話になった人と会う機会があったり、職場と連携しているカウンセリングセンターのような処に伺って、カウンセラーの方に相談する機会があったり、色々あって、何となく気持ちが「やっぱりもう一度今の職場に戻ってみよう・・・」という風に切り替わってきたので。

まぁ、辞めるのはいつだって出来るし。
今の職場は何と言っても福利厚生などの境遇がとても良いのでそう簡単に手放してしまうには余りにも惜しい、と言うか勿体無いと言う気持ちもあった。
今の職場に戻ってみて、どうしても嫌なら異動願いを出してみて、それから考えてもいいだろう、と言う考えもあり、復帰してみることにした。

何と言っても、身体障害者である私が一般企業へ転職活動をすることは自分の中でかなり気が重たかった。
いちいち面接で、「電話は出来ませんが、ヤル気はあります!」と熱意をアピールするような気力が出てこない。
正直、仕事を頑張ろうという情熱、と言うか、気力のようなものが沸いて来ない。
やっぱり、頑張りすぎて身体を壊してしまった、ということもあって、「よーし頑張るぞー!」的な処までイマイチ、気持ちが向かないのだろうな。

でも、休み続けてることもいい加減つまらなくなってきた。
休んでると、人とコミュニケーションを取らない日が丸5日続くこともあるのだ。
時にはそういう時期も必要なのかもしれないけれど、だいぶ体調が安定してきた今の私にはちょっとそれはもういいかな、って心境になっていた。

何よりお金もだいぶ底をついてきたので、そろそろまた貯蓄も始めたい。

今の職場に復帰するとなれば、何しろ福利厚生は充実しているので、休職に入った職員であれば「職場復帰訓練制度」が使える。
これは最初からフルで働くのではなく、始めのうちは週2日から出勤、慣れて来たら週3日・・・と言うように徐々に復職してゆく制度で3ヶ月までは利用できる。
ヤル気満々にならなくても、とりあえず仕事に出られるということだ。

そういう諸々もあって、7月から復帰することに決めた。

自分の中では、約1年以上続いたお休みがついに終わる、ということで休みのうちに記念に旅行に行きたいと思った。

思えば休んでる間に結構、いろんな処に行った。
殆どはダイビング絡みで伊豆方面だったけれど、それ以外でも名古屋や相模湖、今年の3月は念願の出雲にも行って来た。

だけど、どこに行っても必ず屋久島を思い出していた。
特に自然がある所はそうだった。

出雲の須佐神社には、大変立派な杉のご神木が立っていた。
その木に触れて、私はヤクスギランドのあの、カッコいい王冠のような杉の木のことを想った。
会いたいな、と常に思っていた。

4月にNHKか何かで屋久島の特集番組があった。
画面を見てるだけであの清められた屋久島の、冷涼な森の空気の渦に引き込まれそうな錯覚に陥った。

結局の処、どこか行きたいな、と思っても、屋久島以外に行きたい処なんてなかった訳です。
まるで中毒みたいなんだけれど、そこまで魅入られてしまったのだ。

と言うことで、もう一度、屋久島に行こうと決めた。

私のせいじゃない

2005-12-02 | 番外編
先月、屋久島から帰ってすぐに今年最後の屋久島旅行を企画した。

スカイマークは二ヶ月前にチケットを購入すれば約1万円で鹿児島まで行けるので、殆ど帰ってからすぐに決めたようなものだった。

えのっきーさんにも連絡して、川に潜る為に冬用のウエットスーツも準備して、行く気満々。

が、しかし。

1週間前から気管支炎になって倒れてしまった。

今年最大の風邪、と言っても過言でない位に調子が悪く、今度ばかりは屋久島行きを強行する気力も沸いてこない。
泣く泣く、えのっきーさんにキャンセルの連絡を入れた。

きっと、今回は行かない方がいいってことなんだ。
でも、行きたかったなぁ・・・。

そして、数日後。

ニュースを見て愕然。

本来だったら私が乗っている筈だった鹿児島から羽田へ向かう飛行機が、エンジントラブルで不時着した、と言う・・・。

・・・・・ΣΣ┏(|||`□´|||;;)┓

わ、私のせいじゃないですよ。
いやホントに違いますってば!!

・・・その時私は、思い出した。
前科があることに。

実は、私は去年の今頃もダイビングショップが企画したツアーで屋久島に行く筈だった。
あの時も、風邪引いて直前になってショップにキャンセルの連絡を入れた。

ところが低気圧前線の影響で、ツアーメンバーは、鹿児島まで行けても、鹿児島から屋久島へ向かう飛行機が屋久島に到着出来ず、そのまま鹿児島に戻ってしまった。
結局、鹿児島で一夜を明かし、そのまま帰宅したらしい。
あの時、私だけ風邪でキャンセルしたと言うことで、ツアーメンバーからは「アンタの呪い??」と疑われた。

9月のあの忘れもしない「エアコミューター破壊事件」。
そして、今回のスカイマークの不時着・・・。

9月のことは島にいる間に起きたことだからまだしも、風邪でドタキャンした屋久島旅行で二回続けて、乗るべき飛行機がトラブったなんて、ちょっと我ながら恐ろしい。

いやだから、私のせいじゃないってば!!

・・・多分・・・。






思いがけないプレゼント

2005-10-01 | 2005年9月
すったもんだあったけれど、翌日には無事に飛行機も飛んで、ちゃんと帰って来れました。
良かった良かった。

でも、今回はトラブルも多かったけれど、まるで天使に守られているかのようにトラブルさえも何とか乗り越えられてお家に帰ることが出来て、物凄く楽しい旅行だったな。
航空券を忘れてきたのは私のミスだけれど、エアコミューターの故障の時は、あれはもう運としか言いようがない、位のタイミングだった。

空港まで送ってもらったえのっきーさんとは、もしかしたら空港の外で「じゃあ」って別れたかもしれなかったのだ。
結果的に物凄く助けられた訳だ。
こういうことがあると人間ってやっぱりありがたいなぁって感じてしまう。
ひとりが好きとかカッコつけて言ってたって、結局ホントの意味でひとりで生きてる訳がないのだ。
いろんな処で様々な人に助けられながら生きている。
言葉を交わさないような人ですらも、黙って私が生きるのを助けているんだ。

旅に出ると、そういうことも思い出すんだな。
誰かに助けられていることなんて、普段の生活の中ではついつい忘れてしまう。
そういうことを本当に忘れると、人は傲慢になって偉そうなことばっかり考えるようになる。

自分はホントにちっちゃいヤツだったなぁ。

A子ちゃんは、突如帰れなくなってしまった私に気を遣って、その日は夕食に付き合ってくれた。
30分もかけて悩んで決めてくれたお店は、お刺身が新鮮で美味しかった。

帰りにふと車の窓から見た夜空がとても晴れていて、思わず車を停めてもらう。
もともと街灯の少ない屋久島の夜は、都会住まいの私からすれば真っ暗で殆ど見えない。
山と空の区別もつかない。
ただでさえ鳥目の私は恐ろしくて、屋久島に滞在中、車がある時以外は夜、表に出ることはなかった。

だから初めて、屋久島で星空を見た。

ちょっと田舎に行けば大抵これ位は見えるものなんだろうか。
A子ちゃんは「ウチの地元もこんな感じ」と言っていた。
もともとが都会育ちの私は、夜空を見上げることすらも殆どしたことがない。
見上げてもそこには何も見えないので。

でも、この日見た空は素晴らしかった。
空一面に光の雫。
海と空の境目すらも判らない。
すっぽりと空を包む濃い闇のドームに散りばめられた光の群れ。

じーっと見ていると自分も飲み込まれてしまいそうになる。

屋久島が見せてくれたんだな、と思った。

想定外のトラブルがあったけれど、思いがけないプレゼントを屋久島からもらった。
人情とか、生きる楽しさとか、こんな星空とか。

旅に出るまで、もうどうしようもなく落ち込んでいた。
正直、自分なんか生きてるに足りない人間だ、なんて結構本気で思ってた。
周りの人たちに怒りを抱く反面、自分自身に一番バツをつけていた。

だけど、そんな私なのに、こうやってこんなに遠い屋久島まで来て、いろんな楽しい気持ち、生きる力を取り戻すことが出来た。
日常に置いてきた問題は何一つ解決なんてしてないけど、そんなもの解決なんてしなくたってこんなに楽しい気分になれるんじゃん。
それでいいじゃん?

土がほとんどないこの島で、木は、一本が存在してるだけでかなり凄いことだ。
私だって、存在してるだけでこの人生、かなり凄いことに出来るんだよ。

今回のトラブルその2

2005-09-30 | 2005年9月
ヤクスギランドは30分コース、50分コース、80分コース、150分コース、と道ごとにコースが定められている。
今回、歩いたのは30分コースだったにも関わらず、1時間もかけて歩いてしまった。
立ち去りがたい気持ちのままに、山を降りて、昼食を取り、空港へ向かう。

気持ちは寂しさでいっぱいだった。

あーあ、もう帰っちゃうんだ。
次はいつ来られるかな。

まさか、そんな気持ちが伝わった、と言う訳でもあるまいに。

空港に着くと、何だか騒然としていた。
いつもに比べて人が多いような気がする。
でも、チェックインの時間が近いからそういうものなのかな、なんて呑気に思いながらカウンターへ向かう。

えー、カウンターのお姉さんとのやりとりを省いて、結果だけさくっと書いてしまう。

騒然としていたのも当たり前で、何と私の乗る予定の便から飛行機が故障した、と言う。
当面、欠航。
当日中の復旧の見通しは立たず。

・・・( ̄□ ̄;)!!

言葉にならず。

何だってこう、私が屋久島に行くと、ピンポイントで飛行機関係のトラブルが起こるんだか・・・。

はっ∑(゜o゜
そう言えば、今回は行きで航空券を忘れてきたんだった・・・。

やっぱりタダで終わらないってことなのか・・・。

そんなことをぐるぐる考えながら、茫然自失状態になっている私の横で、えのっきーさんはさくさくとカウンターのお姉さんとコミュニケーションを取り、私がはたっと正気を取り戻さなければ!と思った時、既に私の今後の段取りはすべてえのっきーさんの取り計らいで決定されていた。

な、何が起きたんだろう?どうなったんだろう?
と、まだ半分、自失しているうちにえのっきーさんに車に乗せられ、何故かA子ちゃんまでいつの間にか側にいて、気付いたら3人でソフトクリームを食べていました・・・・。

呆然とソフトクリームを食べながら、えのっきーさんに事の次第を説明してもらう。

結論から言えば、明日の飛行機はJACの方で手配済み。
今夜の宿は引き続きエアポートホテルをこれまた手配済み。
更に、航空券の変更・今夜の宿代については飛行機会社側の責任と言うことで、JACの方で持ってもらえるようにえのっきーさんが交渉してくださったとのこと。

つまりは今夜の宿はタダ同然。

・・・・えのっきーさん、凄いよ。
凄いですよ!!!!(って言うか、私が何も出来なさ過ぎ)

もう一生ついてゆきます!!(いや、ついて来られても)

出会ってから、屋久島の海の師匠・森の師匠、と、とんとんと株を上げているえのっきーさんだけれど、今回のことで、もう持ち株はバブルかって位、上がりまくり。
凄いわー、今なら何百万円よー(謎)

ところで、エアコミューターが故障で欠航になるなんてことは、えのっきーさんが屋久島に移住してから8年間、今回が初めてとのこと。
この話題は島中で持ちきりになってるらしく、ソフトクリーム屋さんでも地元の人たちが噂していた。

何だかなぁ・・・。
よりにもよって、私が乗る筈だった飛行機がこうなったって言うのは、何か・・・いや、私が壊した訳じゃないんだけどさ。

夜、エアポートホテルに戻ると、4日間ですっかり仲良くなった支配人のおにーさんが出迎えてくれた。
「何か飛行機壊したんだって?」

ちーがーうー!!!!

ところで、このネタはえのっきーさんも偉く気に入られた様子で、私はその後「飛行機壊した女」と異名を上げることになりました。
いやだから違うってばっ!!













ヤクスギランドで杉と出会う

2005-09-30 | 2005年9月
最終日は快晴、とまではいかなくても、雨は止んだ。

午後の飛行機まで時間がある。
この日はえのっきーさんとヤクスギランドに行くことになった。

ヤクスギランドに対して私はさほど興味を抱いてなかった。
まず、名前が悪い。
よくあるいかにも観光客向けのてかてかした雰囲気漂う場所じゃないか・・・と思ってしまう。
私はそういう場所が一番嫌いです。

そう思っていたけれど、えのっきーさんとA子ちゃんから熱心に勧められ、「そんなに言うなら行ってみようじゃないか」と思ったのである。

6月にみづえさんと2人でドライブした道を登る。
昨日の雨のお陰で、山肌にいくつも清流の筋が流れていた。
普段はちょろちょろとしか流れてない山あいの小さな滝も、水の量が増えてオブジェのように綺麗な形を創り上げている。

ヤクスギランドへ向かう途中の景色は壮観だ。
ある程度の処まで登ると、急に山がガンッと大きく、目の前に迫ってくる。
杉の木一本一本まで見えるほどにくっきりとした輪郭を持って、勇壮とそびえる山の眺めに、息が詰まる。

「見ていいんですか・・・?」
そんな気持ちにさせられる程に素晴らしい眺めです。

ヤクスギランドは安房から車で40分ほど。
車から降り立つと、下界とはまったく違う澄んだ冷涼な空気が佇んでいる。

入り口を入ってすぐに、来てしまったことを後悔した。

そこは深い緑の透明な海だった。

一本一本がすくっと空に向かって伸びる杉の木々。
枝は空を区切り、輪郭を際立たせている。

雨上がりで、森は清められていた。
木々の葉からかもし出す酸素が一粒一粒見えそうな位に、澄んだ空気が身体のすみずみまで浸透してゆく。
海に潜る時、海水がウエットスーツを通して全身を満たしてゆくように。
生まれたての酸素の海。

むせかえるような緑の匂い。
えのっきーさんから教えてもらったニョッキの葉の香り。
どこか懐かしくて切なくなる。
遠い昔の記憶が蘇りそうで、思い出せない。

森に入ってから、ずっと水の音がしていた。
川がそばにあるのだ。
だけど、この音は川だけが醸し出す音じゃないような気がする。
森のどこにいても、水の音が均等に聞こえてくるのだ。
まるで、森の鼓動だ。
生きている森の血脈の音だ。

えのっきーさんが木にカメラをセットして、私を呼んだ。
ファインダーをのぞくと、幹から生えた一枚の淡い緑の葉がクローズアップされていた。
その葉の上に、雨の雫が一粒。
ファインダー越しに見た葉の上の雨粒は、まるで宝石のように生き生きと煌いていた。

その時、私の視点が切り替わった。
例えれば、ワイドレンズがマクロに変わった、みたいな。

見上げているだけでも木は美しい。
だけど、ちょうどこんな雨上がりの日は、木の枝を見てみる。
枝の先に水滴がまだ残っている。
時折差し込む陽の光を反射して、風が吹くと枝がキラキラ光る。

視点が切り替わると、森は光に満ちていた。
あっちにもこっちにも、丸い雨の雫をまといつかせて、煌く木々。

ゆっくりゆっくり、歩く。
一歩一歩が勿体無く感じてしまうくらいに、この場所は美しかった。

こんなに美しいモノを見せられてしまって、どうして良いか判らなくなってしまう。
ああ、来るんじゃなかった。

こんな場所を知らなければ、虜にならないでいられたのに。
もう遅い。
どうしてくれるんだ、えのっきーさんは!
と、また人のせいにしてみたり。

この日、私はとある杉の木と出会って恋に堕ちた。

ひとつの切り株からいくつも幹が生えていて、パッと見るとまるで王冠のように見える立派な木だった。

くぐり杉のちょっと先に、山奥から清流が流れ込む岩肌がある。
小さな橋のようになっているその場所でえのっきーさんが清流をカメラに収めている間、私はぼーっと岩に筋を作る水の流れを眺めていた。
その水の行く先を目で追ってゆくと、その杉の木にぶつかった。

凄く良い木だと思った。
どっしりしていて、カッコいい。

眺めてるうちに、だんだん懐かしい気持ちにさえなってきた。
何だか、この木は私が来ることを知っていて、ちゃんと待っていたような、そんな気がしてきた。

恥ずかしいくらい、少女趣味な想像です。
でも、ホントにそう感じてしまったのだ。

まるで遠い昔から、私とこの木はどこかつながっていて、会うことが定められていたような、そんな気持ちだ。

それ程に立派で、素晴らしい木だった。

何となく、私が屋久島に来ることは、この木にちゃんと守られていて、この木が私と屋久島の縁をつないでくれている気がした。
じーっと眺めていると心が安らいで、幸福な気持ちになる。

ああ、良かったなぁ。
屋久島に来られて。
この木と出会えて。

この日、初めて、私は森とつながれた気がする。

今までダイバーだったので、海とばっかりつながろうとしていて、山や森はあんまり関心を持ってなかった。
綺麗だなぁとは思うけれど、自分の精神と山がリンク出来ないと言うか。
どうやって楽しめば良いのか、イマイチよく判らなかった。

だけど、この日をきっかけに、私の中で、木とつながるパイプが出来た。

きっとこの先、屋久島以外のどの場所でも森や、立派な木がある処で、私は屋久島のこの森を思い出すだろう。
そして、その時、私と屋久島の森はリンクする。

Photo by ayako


屋久島の雨

2005-09-29 | 2005年9月
午後になるといよいよ雨足が激しくなってきた。

安房川からエキジットする時はもう既に川の流れもだいぶ早くなっていて、出るのが大変だった。
台風が近くを通っているので、当然海も荒れている。
午後のダイビングは中止になった。

えのっきーさんが車で観光に連れて行ってくれるとのこと。
屋久島環境文化センターを勧められるけれど、せっかく車で動けるのだから、車でしか行けない屋久島の裏道を見たい!とわがままを言って、多分普通の観光客の人からしたら面白くも何ともないかもしれない、雑草が生い茂った地元民御用達わき道巡りツアーとなってしまった。

個人的に、一番私が屋久島らしさ、と言うか、「あぁ屋久島に来たんだなぁー」と感じるのは、どこでも流れている清流であったり、エメラルドグリーンの海であったり、むわっとした湿度の高い熱気や、澄んだ空気や、そういうものたちと同じ位のレベルで、道路にまで生い茂る雑草達を見た時なのである。
特にえのっきーさんのガイドで海に行く時は、大抵、雑草をかきわけてゆく勢いの裏道を行くので、余計に「この生い茂る雑草が屋久島だ!」と言う気がしてしまう。
雑草にまで屋久島を感じるなんて、変なの。
まぁ、こうなったのはえのっきーさんがそういう道ばっかり連れて行くからってことで、人のせいにしておこう。

それにしても、屋久島の雨はよく降る。
雨粒が明らかに都会に比べて大きい。
都会の雨が「しとしと」だとしたら、屋久島の雨は「ぼたぼた」って感じだ。
ちょっと雨が強くなると、「ぼったんぼったん」と言う音が物凄い勢いで続く。

前回の旅行の時は、3日間いいお天気だったので、屋久島の雨を見るのは今回が初めてだった。

雨は嫌いだった。
蒸すし、お気に入りの靴も濡れてしまうのでお洒落して出かけられない。
傘を持ち歩くことも面倒だ。
雨の日は極力、家にいたいと思う。
そういう日常的なわずらわしさ以上に、雨のもたらす重い空気が嫌いだった。

でも不思議なことに、屋久島の雨は軽かった。

何だろう、都会で雨が降る時のあの独特の澱んだ空気がない。
湿度は確かに高いけれど、雨粒ひとつひとつはさらっとしているように感じられる。

きっと空気が綺麗だからだろうな。
都会で降る雨は、スモッグや車の排気ガスや街の埃をたっぷり含んでいる。
屋久島に降る雨にはそれがない。

海の水がそのまま雨になり、山に降り注ぐ。
木々の緑は雨を受けて、ひときわ色濃く輝く。
ここで雨は生命の水そのものとして機能している。

雨が止んだ隙に車から出て、どうどうと流れる川を見下ろす道を歩いた。
あんなに綺麗だった川の水は土色に濁り、白く泡立っている。
雨が止めばきっとまた、澄んだ水を取り戻すのだろう。

濡れた山はすぐそばにあって、緑の匂いがいっそう濃くなっていた。
深呼吸を繰り返す。
濡れて澄んだ空気が体内を巡る。

ああ気持ちいい。

この島では、雨ですらもいとおしくなる。
私は、そんな気持ちになれる場所と出会ってしまったんだなぁ。

何だか泣きそうになってしまった。

ここにいると、「好き」の気持ちが大きくなりすぎて、時々うわーっと泣き出したくなってしまう。