「同じような店があるんやなぁ」同じようで同じではない。
こうちゃんのこの言葉に反応していなければ、月間ガソリンスタンド3月号の、この記事も目にすることはなかった。
とても重大な「事」。
(※青系文字がmasumi)
先ずは向かって左の頁、
1997年新春討論会
両極・日石とエッソが激論! 意識改革が鍵を握る大競争時代の幕開け
(今から20年前の討論会です)
昨年は四月からの自由化による一時的な混乱から、先どころか現状さえも見えない、正にカオスの年であった。
しかし、今年は業界全体が自由化の真の意味を理解し、フェアなルールに則した「大競争時代の幕開け」となる年であろう。
この討論会では、販売業界の行方を予測する上で、ポイントとなる事柄に焦点を当て、率直な意見を語ってもらっているので、今後のSS経営・運営の一助として頂きたい。
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※1995年から2年間、エネ庁石油部流通課長を務めた加藤文彦氏(現、全石連・新専務理事)へのインタビューより
■最も印象に残っているのは「石油流通効率化ビジョン研究会」の提言
(※順番を変えて最後に持っていきます)
■石油製品流通の実態は以前とあまり変わっていない
余剰玉が業転として流通し、業転価格と系列価格の格差が大きく、特約店への卸価格の建値化と事後調整がセットになり、販売業者が本来の卸値が分からず経営しているということでは、そういう石油流通の実態は以前とあまり変わっていないと思います。
以前と比べて変化があったと思うことは何点かありますが、その一つはSS数が6万ヵ所から3万2000ヵ所へとほぼ半分になってしまったことです。
2つ目はその結果、SSの過疎化が進み、全国1700以上の市町村のうち288市町村でSS数が3か所以下になってしまっていること。
3つ目は、そういう状況の中で東日本大震災や熊本地震を経験して「石油はエネルギーの最後の砦」という認識が国民に定着していることで、これについては以前と比べると随分変わったと思います。
4つ目は、今年、元売の統合・再編が行われ巨大元売が誕生することで、これは流通業界にとって極めて大きな変化です。
またこの先の大きな変化といえば、10年先なのか数年後なのかはわかりませんが、電気自動車の普及といった大きな変化も見えている状況です。
■誕生する巨大元売が業界をリードしてくれることを期待
(略)
■全体の70%を占める中小零細SSを支援していく
(略)
■最も印象に残っているのは「石油流通効率化ビジョン研究会」の提言
(※最初のサブタイトルの部分です)
今から20年程前の話ですが、当時は元売が13社、SSは約6万ヵ所ありました。
それが1996年3月に特石法が廃止され、SSも各種の規制が撤廃されて大競争の幕が開き、これから業界はどうなっていくのだろうかという時代でした。
当時ある新聞に私の年頭メッセージが掲載されましたが、その中で「規制が無くなり痛みはあるが、不当廉売や差別対価などがない、公正で透明な取引を確立するために、悪い取引慣行を是正していく必要がある。行政はそのための構造改革を支援していく」と言ったのを覚えています。
あの時代で一番印象に残っているのは「石油流通効率化ビジョン研究会」(SSをはじめとする流通効率化の推進についての検討および提言を行った資源エネルギー庁の研究会)です。
その中間報告(1995年6月)の中で、SSを4つの類型に分け発表しました。
第1類型は「サービス充実型」で、これはガソリンなど燃料油販売だけでなく、油外商品を含めてお客様のニーズに応えていこうというものでした。
第2類型は、コンビニエンスストアをはじめ他業種にも進出し、多角化を図っていこうというもの。
第3類型は、ガソリン一筋で量を売ることで経営を成り立たせる「量販型」です。
そして4番目が、「早期撤退型」です。
6万ヵ所のSS数はどう考えても多く、
残念ながら競争の中で撤退せざるを得ないSSも出てくるだろうということで、
そういう時は個人財産までも失ってしまうことがないように、早期に撤退した方が良いという提言です。
こうした研究会では普通そこまで踏み込んで書くことはないのですが、そのため随分批判もありましたが、あえてこれを書いたということが印象に残っています。
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20年前にこんな青写真が描かれていたことは全く知らなかったけれど、今、これを知って全てが腑に落ちました。
この青写真通りに事が進んでいます。
>第1類型は「サービス充実型」で、これはガソリンなど燃料油販売だけでなく、油外商品を含めてお客様のニーズに応えていこうというものでした。
※第1類型は、販社そして元売と資本提携しているような大手特約店。
>第2類型は、コンビニエンスストアをはじめ他業種にも進出し、多角化を図っていこうというもの。
※外資系元売。
>第3類型は、ガソリン一筋で量を売ることで経営を成り立たせる「量販型」です。
※ジョイフル本田やコストコ等の異業種。
そしてー
「早期撤退型」
※地場3者店がここに当て嵌められた。
けれども販売価格が同じなら地域密着で手堅く商売をしている地場店の方が強みがある。だから「卸格差」というハンデが与えられたのでしょう。
けれども計算違いもありましたね。
ハンデ(10円以上の卸格差)があっても、地場3者店は負けなかった。
(元売販売子会社も赤字だけど)地場3者店も(個人資産を食い潰しながらも)生き残っている。
そして東日本大震災
当初の予定は2万店まで減らすはずが、災害時の燃料供給のためには地場店が必要だと気付いた。⇒「これ以上減少させてはいけない」
20年前に「石油流通効率化ビジョン研究会」でSSを4つの類型に分け、
個人財産までも失ってしまうことがないように、早期に撤退した方が良いという提言をなさった方が、
20年を経て今、全石連の新しい専務理事となり、
全体の70%を占める中小零細SSを支援していくー
とおっしゃっています。
そういえば昔、理事か何か役職にあった特約店社長が業績好調にもかかわらず突然ガソリンスタンド業から撤退したーというのを業界紙か何かで知りましたが、
このエネルギー政策(青写真)を知ったからーと考えれば、納得ですね。
それはそうと、
このような提言がなされていたことを同業者の皆さんはご存知なのでしょうか?
こうちゃんは「知らん」と言ってます。
私も20年前はこの業界に入ったばかりで、当時は業界紙の存在すら知らなかったので当然このような提言も知りませんでした。
「今になって知らされても、既に個人財産失ってしもた人、よぉけおるやんなあ!この時に全石連が文書で知らせてくれてたら良かったんちゃうん?!」
そう言うと、
「もしそんなことしてたら組合が炎上しとるわ」と、こうちゃんは笑います。
確かに。
でも笑い事ではないと思う。
「私の使命は理解している。だが赤字では苦しい」と話した九州の販売店主さんのように、
大手が不採算だとして切り捨てた小口配達を、「自分が店を畳んでしまったら、では誰が代わりに行ってくれるのか」と、
今まで通り供給責任を果たそうと、「業界(卸格差)の是正」を信じて個人資産を注ぎ込みながら店を続けてきた同業者は多い。
早期撤退した方がいいと分かっていても、
個人財産を食い潰しながらも、
店を続けるのは、“本当の意味での”燃料供給を担っているという自覚があるからです。
これはもの凄く重大な事だと思います。
20年前の、両極・日石とエッソが激論! 意識改革が鍵を握る大競争時代の幕開け
昨年は四月からの自由化による一時的な混乱から、先どころか現状さえも見えない、正にカオスの年であった。
しかし、今年は業界全体が自由化の真の意味を理解し、フェアなルールに則した「大競争時代の幕開け」となる年であろう。
20年前から、なんですよね。
流通の実態は変わっていなくて、ガソリンスタンド数は半分になってもまだ減少は止まる気配を見せず・・・
今後は業転玉に頼った経営をしてきた業者が廃業を検討し出すことも考えられます。
で、公取委だったかな?エネ庁だったかな?
お役人の中には次のようにおっしゃっている方もおられるようです。
「元売は1社で良いんじゃない?」
おまけ
ウズベキスタンのSS事情
元売1社体制でSSは安定経営
旧ソ連時代はセルフ、独立後は全店フルサービスに
※セルフ比率はどんどん上がって、障害者差別解消法とか?
高齢者のために給油を手伝うセルフとか?
最初っからフルならそういう問題もないですからね。