こうちゃんのスリッパ
昨日は朝8時半に配達に出るというので8時出勤で閉店まで働いた。
午後からはトップページに書いたように忙しくて、クタクタで家に帰ってから「コンビニでお弁当買ってくればよかったー」と言ったら「それで良いで、今から買っておいで」と言う。
「もう炊飯器のスイッチ入れてしもたし、作るわ」
釣銭の勘定を終えたこうちゃんはテレビをつけた。
masumiさんはキャベツを刻みながら「こうちゃんのバカ」「こうちゃんのバカ」を繰り返す。
「何て~?」というこうちゃんの声を無視して、さらに大きな声で「こうちゃんのバカ」を唱え続ける。
声を出し続けるのも疲れたので、キャベツのせん切り終了とともに止めた。
こうちゃんはテレビを見ている。
ご飯を食べながら(その頃には笑顔のmasumiさん)
「な、こうちゃんはさ、こうちゃんのバカって言われても全然平気やねんな?」と訊いてみる。
「俺かて分かってるねんで」とひと言。
月刊ガソリンスタンド3月号
ここで紹介されるお店や人物は眩し過ぎて、読むと自分と比べて凹むことが多いからあまり見ないようにしているのだけど、先日こうちゃんが「同じような店があるんやなぁ」と言うので読んでみました。
スタッフの辞職が続き、日中のスタッフが所長を含め3人(実質2人)になってしまった。
昼休みも取れない日々が1年間続いた。
店にはその時の名残である「助けてチャイム」がある。
(店頭が一人で大変なとき、中にいるスタッフに知らせるために設置したもの)
1人で6台の車に対応しなくてはならないことがあったが、そういう時は常連客が「いいよ、いいよ、私は急がないから」と言って助けてくれた。
***
うん、同じだね。
でもうちには「助けてチャイム」は無かったよ。
こうちゃんが配達等で留守の時は完全に独りだったからね。
配達しているこうちゃんは店頭でのクレームとは無縁だったけど、
独りだから油外注文に応えられなくて「それでもフルか!」「そんなことでは潰れるぞ!」「もう来てやらんからな!」という責めも受けてきた。
だからこそ、
常連さんの優しい言葉に助けられたし、救われた。
オイル交換の為に3度も出直して来てくれた人もいる。
今も店をやれているのは、そういった常連さんたちのお蔭です。
***
月刊ガソリンスタンドの、この記事の最初の方に戻ると、
近隣より14-15円高い価格が掲げられていて、2年前から周辺では最も高いガソリンを売る店になったー
それまでの所長はボリューム優先主義で近隣セルフの2円高で価格を設定していたが、当時ボリュームは100キロリットル以上あったが、「働いても、働いても利益ゼロ。真っ赤っ赤」の状態が続いたそうで、この状態から抜け出す方策が「ガソリンマージンを取ること」だった、ーと書いてあります。
ガソリンを高く売ることで来店客数もボリュームも減ったが、今は黒字だそうで、「ようやく報われるところにきた」と所長さんは胸を撫で下ろしている。そして店頭では油外を売るための積極的な声掛けはしていない。
スタッフは増えたものの、今なお日中はギリギリの人数で回している。
こちらから声掛けしたのに、(人手不足で)お客を待たせてしまうわけにはいかない。というのがその理由。
これも同じ。
違うのは、当店にはスタッフの増員はない。
でも、
もっともっと大きな違いはー
このお店はセルフの2円高という価格設定が可能だった。
当店の場合はセルフの売り値が自店の仕入れ値かそれ以下という状態だったから、2円差という価格設定は不可能でした。
同じように安値店より13-15円高値で売っていても、粗利も同じとは限らない。
うちは13円高く売っても粗利は5円しかなかった。
リッター5円の粗利では採算割れになる“証拠”
そして、所長さんや主人公の女性は雇用されている身ー
つまり店がいくら大赤字でも自身の収入(給料)は得ていた。
しかし、一店舗を運営している経営者の場合、店の赤字は個人資産の流出を意味します。
(これは精神的にかなり大きな違いをもたらすのではないでしょうか)
それでも、記事にもあるように、ドライブウェイサービスやセールストークコンテストで2度の優勝経験があり、明るくポジティブな女性だからこそ、周辺より14-15円高値で売って、店を赤字から黒字にできたのでしょうね。
やはり笑顔が眩しい女性です。
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某サイトで、当ブログに対して「どこかあきらめの気持ちが伝わってきます」というコメントもありました。
そりゃあそうでしょう。
当店だって赤字を黒字にして、3年連続で設備投資を行ってきました。
そしてここにきて、この先は業界全体がマージン確保に移行しそうな雰囲気です。
本当ならここで「さあ、これからだ!」となるところです。本当なら。
特にこれまでどれだけ苦しくても業転に手を出さずやってきた(やってこれた)ような店は、恐らくこれからは仕切りの苦労はなくなるはずです。
だけど、地下タンクだけでなく施設や設備、全ての老朽化という問題。
働いて得た利益の殆どが維持管理や修繕費に消えていきます。
経営者もです。
70を超えて後継者がいなければ、数年先には店を畳むしかないでしょう。
黒字でも。
お客さんに恵まれていても。
お客さんに恵まれている。
これがどれほどの宝か、分かりますか?
つまらんことで文句を言う消費者など不要なのです。
文句を言って去っていった人に帰って来て貰いたいなんて思うわけがない。
だから、
今の常連さんたちを手放すことになる“廃業”が、どれほどの苦痛か。
それを(も)書いているのです。
PS
月刊ガソリンスタンドをめくっていたら、地場3者店が知らされていなかった“青写真”の事が書いてありました。
別記事にします。
追伸
これはmasumiのブログです。
こうちゃんとmasumiとは考え方も違います。
こうちゃんの頭の中は「まだまだやる気満々」みたいです。