コンコン
窓をノックする音で目が覚めた。
目を上げると、キラキラダイヤ石油の制服を着た若者が息を弾ませながら座席を覗き込んでいる。
どうやら信号で停車していたこの車まで、100mほど後方のGSから追いかけて来たようだ。
運転手が私の左側のパワーウィンドウを開ける。
と同時に信号が青になった。
「脇に移動させるからちょっと離れてくれないか」
咄嗟に声を掛ける。
ちょうど横に農道があったのでそこへ車を停めさせた。
「あれ?朝の車かと思ったんだけど・・・違うかな?」とぶつぶつ言いながら
「あのぅ・・朝、トイレ借りに来た車じゃないですか?」
ああ、今朝中藤常務がトイレを借りたGSの子か・・・
「そうだよ」
「えっと?あの・・・眼鏡の人は?」
「ああ、彼は違う車で帰ったからね。どうしたんだい?」
「あの、コレ」とシガレットケースを見せる。
「忘れてたんスけど」
「そうなんだ。ありがとう。じゃあ僕から返しておくよ」と、受け取りながら
「よく車が分かったね」
「だって、これハイブリッドのプリウスでしょ。」
「珍しいから通ったら分かるから、もし又店の前を通ったら返してあげるようにって言われてたんで」
「そうか、気にしてくれていたんだね」
「ところで君はあそこの息子さんかい?」
「いえ、アルバイトです」
「学生さん?」
「はい、定時制です」
「てか、ちょっと文句言わしてもらっていいっスか?」
「何だい?」
「朝の眼鏡の人、トイレが長かったから『大丈夫すか?』って聞いてあげたのに無視だしぃ、燃料も入れないのにトイレの礼も言わないしぃ・・・トイレもスンゴイ汚してたんスよお」
「そうなのかい、それは済まなかったね」
「おじさんに言っても仕方ないんすけどね」
言ったことを後悔しているように頭を掻きながら
「スミマセン」と言う。
「いや、いや、悪いのはこっちだよ。本当に失礼なことをした。」
GSの方に目をやると、夫婦だろうか?初老の男女がこちらを覗っている。
「あ、俺もう帰ります。じゃあそれお願いしますね」
「わかった。本当にありがとう。お店の人にもよろしく言っておいてください」
ぴょこんと頭を下げて、若者は走って帰って行った。
やれやれ・・・中藤常務は店のことを貶していたが、親切な店じゃないか。
機会があればさっきの店へ顔を出してみよう・・・
そんな事を考えながら石崎はまた帰路についた。
つづく
※この物語はmasumiさんの被害妄想に基づくフィクションです(^^;
実在の人物及び団体とは一切関係ございません。
尚、加筆修正及びキャラの変更等もあるやも知れませぬことをお断り申しておきまする(^^;
窓をノックする音で目が覚めた。
目を上げると、キラキラダイヤ石油の制服を着た若者が息を弾ませながら座席を覗き込んでいる。
どうやら信号で停車していたこの車まで、100mほど後方のGSから追いかけて来たようだ。
運転手が私の左側のパワーウィンドウを開ける。
と同時に信号が青になった。
「脇に移動させるからちょっと離れてくれないか」
咄嗟に声を掛ける。
ちょうど横に農道があったのでそこへ車を停めさせた。
「あれ?朝の車かと思ったんだけど・・・違うかな?」とぶつぶつ言いながら
「あのぅ・・朝、トイレ借りに来た車じゃないですか?」
ああ、今朝中藤常務がトイレを借りたGSの子か・・・
「そうだよ」
「えっと?あの・・・眼鏡の人は?」
「ああ、彼は違う車で帰ったからね。どうしたんだい?」
「あの、コレ」とシガレットケースを見せる。
「忘れてたんスけど」
「そうなんだ。ありがとう。じゃあ僕から返しておくよ」と、受け取りながら
「よく車が分かったね」
「だって、これハイブリッドのプリウスでしょ。」
「珍しいから通ったら分かるから、もし又店の前を通ったら返してあげるようにって言われてたんで」
「そうか、気にしてくれていたんだね」
「ところで君はあそこの息子さんかい?」
「いえ、アルバイトです」
「学生さん?」
「はい、定時制です」
「てか、ちょっと文句言わしてもらっていいっスか?」
「何だい?」
「朝の眼鏡の人、トイレが長かったから『大丈夫すか?』って聞いてあげたのに無視だしぃ、燃料も入れないのにトイレの礼も言わないしぃ・・・トイレもスンゴイ汚してたんスよお」
「そうなのかい、それは済まなかったね」
「おじさんに言っても仕方ないんすけどね」
言ったことを後悔しているように頭を掻きながら
「スミマセン」と言う。
「いや、いや、悪いのはこっちだよ。本当に失礼なことをした。」
GSの方に目をやると、夫婦だろうか?初老の男女がこちらを覗っている。
「あ、俺もう帰ります。じゃあそれお願いしますね」
「わかった。本当にありがとう。お店の人にもよろしく言っておいてください」
ぴょこんと頭を下げて、若者は走って帰って行った。
やれやれ・・・中藤常務は店のことを貶していたが、親切な店じゃないか。
機会があればさっきの店へ顔を出してみよう・・・
そんな事を考えながら石崎はまた帰路についた。
つづく
※この物語はmasumiさんの被害妄想に基づくフィクションです(^^;
実在の人物及び団体とは一切関係ございません。
尚、加筆修正及びキャラの変更等もあるやも知れませぬことをお断り申しておきまする(^^;