茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

五島美術館

2006-12-27 00:20:53 | 美術館・展覧会
 五島美術館の“茶道具の取り合わせ展”に出かけた。2月12日まで。
http://www.gotoh-museum.or.jp/tenrankai/index.html

 五島美術館に行ったのは十何年ぶりかだろうか。上野毛という場所は行きづらく、つい足が遠のいていたが、コンパクトで静かな展示室でゆったりと名品を拝見した後、広大な美しい庭を散策して、いい時間を過ごすことができた。それにしても個人蔵でこれだけのものを持っているとはすごいと改めて感心した。以前拝見した際は茶道具や茶道の知識が少なすぎて実際のところそのすごさを実感できていなかったのだと気づく。

 砂張輪花口建水は、とてもおしゃれで目をひいた。砂張は銅に錫や鉛を加えた合金で、鈍く味わいある色をしている。何の変哲もない丸い建水だが、口の部分が、花びらのように細かく ⌒゜⌒゜⌒゜で繋がれている。品がいい。しかも、この建水は特別な茶会以外は使用しないよう、使用の際は鹿の皮を底につけて使うよう、箱蓋裏に注意書きがあり、いかに大切にされてきたかが伺えた。
 唐物藤竹組炭取(武野紹鴎所持写)は、密な細かな編み方で感動。しかも、元々は野菜籠に使用されていたものを炭斗として転用したものだとか。昔の人は贅沢だったのだなぁ。
 芦屋真形霰地紋釜は利休様が愛用したもの。鑑定と底の修理依頼に対する返事とされる添状があった。霰が大きく大胆だった。
 千利休様消息 横雲の文。これは、聚光院住持に茶壷“橋立”の保管を依頼した文で、この月の28日に利休様は自刃しているのだという。最期に近い頃の書、切ない。
 桃山時代の与次郎作五徳。ごつごつざっくりと大きく、力強かった。普段美術館であまり目につかない五徳だが、これはとても目立っていた。千道安による添状つき。

 名品の数々以外に今回目から鱗だったことが2つ。

 まず、美術館での展示品の説明文には英語がつきものですが、同行者は茶道をほとんど知らず、英語を読んでどういうものかを判断していたようです。確かに建水、五徳、炉縁、棗、釜敷などと言われても未経験者にはピンときませんね。
建水 waste water jar、
五徳 tribet、
炉縁 Edging for sunken hearth、
棗  Natsume tea caddy、
釜敷 mat for rest the kettle といった具合でした。
 五徳はtribetとありましたが、家に戻って辞書で引いたが出てこない。何を意味するのだろう。どなたかご存知でしたら教えて下さい。
 未経験者に「何に使う道具なの?英語だとわかりやすいね」と言われて慌てて英語を確認し直した私、全く違った新鮮な視点を与えてもらえて感謝しました。茶に造詣の深い方との美術館訪問はもちろん楽しいですが、新鮮な視点での素朴な質問からハッとさせられるのもいいものですね。何より興味をもって一緒に楽しもうとしてくれたことが嬉しいことでした。

 もうひとつの目から鱗。
 展示室中央に、“茶室起絵図(ちゃしつおこしえず)”なるものを発見。
台紙に床面の平面図(床の間、炉や畳)を描き、各壁面の内外(窓やにじり口など)を描いて切り抜いた紙を貼り付け、それらを起こして建物の様子を表現した立体図面。小空間に複雑な構成を示す茶室図面として茶人が活用したもの。千利休、古田織部、小堀遠州、川上不白、千宗旦、千宗左、金森宗和、尾形光琳らの茶室が飾られていた。
 私は見たのが初めてで、そのアイデア、コンパクトさ、精巧に驚いた。平面と違って、何処から入るのか、炉や床の位置はどこかが体感でき、見ていて楽しい。建築設計時、設計士は立体的にわかるように模型を作って施主に説明するが、更にシンプルな紙バージョンである。自分で作ってみたら勉強になるかもなぁと思いつつ、不器用な私には無理かもしれません。

 一歩庭に出ると、木漏れ日の中ひっそりとたたずむ石仏、池に浮かぶ岩の上で毛づくろいに余念のない鴛鴦、土に揺れる陽だまり、風が吹きザァーっという音と共に一気に落ちる葉、螺旋を描いてゆっくり舞い下りてくる木の葉、高台から見渡せる空、しっとりと建つ茶室、昭和天皇の皇太子時代お手飢えの立派な松、都会であることを忘れる風景が広がっておりました。
 今年は温かいせいか、まだ庭に紅葉した落ち葉がたくさん吹き溜まっていました。写真は美術館の庭の石畳に散りばめられた紅葉。

 名品を拝見した後の冬の庭の散策も穏やかな日差しに包まれてなかなかよいものです。
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15 コメント

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五島美術館 (りんず)
2006-12-27 00:27:51
こんばんは。
行きたい美術館のひとつです。2/12までなのね・・・残念。
もう少し会期が長かったら良かったのに(笑)

茶室シンプル模型が気になります。
どれくらいの大きさなのかしら?紙はどんな紙なのかしら?
(ちょっと職業柄が出てる私。でも模型は作れない)
一度に全体を見渡せて良いかもしれませんし、色々な茶室の見比べもできますね。
m-tamagoさんの思い入れ茶室模型を拝見したいものです。
いつか作ってみてね♪
返信する
Unknown (みかん)
2006-12-27 00:39:42
辞書によると五徳は英語で
a tripod set up in a hibachi to support a kettle
とありました。
tripodの間違いでしょうか。
tripodは「三脚台」とか3本足とかいう意味だそうです。
4本足になるとtetrapod、テトラポッドです。

釜ってkettleなんだな~と思いました。
鍋でもやかんでも釜でもお湯を沸かすのは何でもkettleなんですね、大雑把だな~。
英語がシンプルなのか、日本語が難しいのか・・・

紅葉、きれいですね。
年末なのにまだキレイな落ち葉が見られるんですね。
私は今年は変な気候で紅葉は楽しめませんでした
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トリベット (ゴマたん)
2006-12-27 08:17:11
あれ? トリベット、辞書をひいてもでてきませんか?
「鍋敷き」という意味だったとおもうんですよ~。
私、雑貨が好きなのですが、雑貨カタログなど通販雑誌でも、「トリベット=鍋敷き」という意味で使われています。

茶道の場合は、「釜乗せ」ですよね(笑)

五島美術館、私も大好きで時々行きます。
確かに不便ですが、、、でもそのぶん、「わざわざ見に来た!」という気持ちになれますね。
紅葉が楽しめなかったのは残念でしたね、、、(;ω;)
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追伸 (ゴマたん)
2006-12-27 08:43:44
「トリベット」商品名になっているようですよ~。
ご参考までに(・ω・)ノ

http://www.rakuten.co.jp/angers/517239/578623/585080/#570203
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のっとり 五島 (雨点)
2006-12-27 10:28:41
って言われた 電車王

学生時代  毎年6月 家政大の茶会が行なわれたので行きましたし  自分でも見に行きました

伊賀水指破れ袋があるので有名ですね

その昔は 富士見亭から富士さんが見えたそうですが現在は植え込みが大きくなって見えないそうです

お茶の道具とか読み方難しいので英語の方でいつも
読み方 確認しています
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五島美術館 (m-tamago)
2006-12-27 20:05:54
りんずさん、こんばんは。
そう、2/12までなのです。残念。何処か茶道具展やっているところがあるか探してみますね♪

>茶室シンプル模型が気になります。
多分和紙で、大きさはそれほど大きくないです。床の図面を書いてある紙は許状みたいな折りかたでコンパクトに畳めるようになっていて、多分、その中に壁などを書いた立体図面を仕舞っておけるようになっているんです。見る時だけ、開いて使えるように。
同じ模型売ってたら買いたいなあと思った位です。
ああ、お見せしたい。

>m-tamagoさんの思い入れ茶室模型を拝見したいものです。
>いつか作ってみてね♪
頑張ります!いつになるかなぁ~。
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五徳 (m-tamago)
2006-12-27 20:11:36
みかんさん、五徳の英語、ありがとうございます。
>a tripod set up in a hibachi to support a kettle
Tripod=「三脚台」ですか。
本当にありがとうございます。

釜=kettleっていうのも不思議ですね。
英語で読むとはっきりわかる反面、味わいが半減と思うのは私だけ?

私も今年はまともに紅葉を楽しまなかったので思いがけずいい庭で秋と初冬を楽しみました。


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トリベット (m-tamago)
2006-12-27 20:17:55
ゴマたんさん、英語辞書、私のおかしいのかしら。でてこなかったんです。HPもありがとうございます。
鍋敷きなんですね。なんかちょっと微妙な感じですね。五徳が鍋敷き??釜敷=tribetならわかるけど、釜敷はmatって訳されていたんですよねー。まあ色々な訳し方があるのかもしれませんね。

>「わざわざ見に来た!」という気持ちになれますね。
本当にそうですね!しかも空いていてのんびり楽しめました。
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五島 (m-tamago)
2006-12-27 20:20:35
雨点さん、学生時代に思い出があるのですね。

>伊賀水指破れ袋があるので有名ですね
私は大学生の頃見ました。見事ですね。味わいあります。

確かに今は庭は木々がうっそうとしていました。
昔ほど見事には富士山は眺められないのでしょうね。

これからは英語で確認するクセがつきそうです。いい勉強になりました。
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Unknown (maosuke)
2006-12-28 15:29:28
紙の茶室模型。 私も初めて見たとき興奮でした。
そういうのばっかり集めた本があったんですよ。
題名失念。
で 探したら茶室の特集の後ろにおまけみたいについてるのもありました。
題名が手元にないんだけれど 建築関係でさがすと
見つかると思います。
起こし絵図とかだったかなぁ。
あやふやでごめんなさい。
付録がついてた本が 年末に探し出せたら また 碁連絡しますね。
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