金刀比羅宮 書院の美 (金刀比羅宮)

この展示は昨年の夏に上野でも観ています。

・金刀比羅宮 書院の美 (東京藝術大学大学美術館)

そこに再現されている空間が何ともいえず、年末に振り返るともっ
とも印象に残った展覧会のひとつとなっていました。そこで終わっ
たはずだったのですが...

年が明けると、普段から読ませてもらっているブログで、にわかに
金刀比羅宮に行かれた人の感想が...

・書院の美＠金刀比羅宮 (1/6 artholic days)
・金刀比羅宮へ　1泊2日＜旅程＞ (1/12 あるYoginiの日常)
＃ 知らなくっていいことって、いろいろ、ある...

というわけで書院の美、金刀比羅宮篇です...

やっぱり応挙の襖絵。今回も虎。ホワイトキューブな上野の展示よ
りも厳めしくみえます。前回は蛍光灯で一様に照らされた空間で、
白い虎がお気に入り。今回の表書院の暗い空間では黒い虎、特に水
呑みの虎に迫力を感じました。虎の皮と猫を見ながら描いたなんて
言われてますが、正面から対峙すると、凄みが感じられます。

開場は八時半、私が訪れたのは九時半でしたが朝はまだ早い。お客
さんもまばらなので、襖の前に正座して、静かな時の流れを楽しめ
ました...ちょっと離れて縁側から振り返って観るのも良い。朝の光
線に、鈍く光る虎...

前回はカラーコピーだった瀑布図の迫力...

そして若冲の『花丸図』、まずは奥書院へ続く途中で四枚の襖と再
会。上野では狭い空間につけたような展示でしたが、今回は正面か
ら観ることができます。朝顔、紫陽花、牡丹、桃...その他、たくさ
んの花...単眼鏡を持ってきた甲斐がありました。さらに奥へと足を
踏み入れると上段の間...

花、花、花...と若冲の花で埋め尽くされた三方の壁、仕切りがあっ
て残念ながらその空間に身を置くことはできませんが、膝を折って、
しばしその前で佇みます...

そこに座ったらどんな気持ちがするのだろう...何となく桜の森の満
開の下を思い浮かべます。坂口安吾の作品。それは、無知なる者が未
知なる美しさに気づく物語...野田秀樹が贋作しています。

鬼女『今日でなくちゃいけないのかい？』
耳男『今日でなくちゃいけないんだ。』
鬼女『昨日もそう思ったんだろ？』
耳男『昨日もそう思ったんだ。』
鬼女『それでも約束があるんだね？』
中略
鬼女『この山奥に約束した誰がいるんだい？』
耳男『誰もいないけれども約束があるんだ。』
鬼女『誰もいなくって、誰と約束するんだえ？』
耳男『桜の花が咲くんだよ。』
＃ 『贋作・桜の森の満開の下』より...

あと、伝狩野清信の『象頭山社頭並大祭行列図屏風』も面白い。細
かく描かれた人の波を、単眼鏡でゆっくりと追っていきます。ある
波はお屋敷に通じ、ある波は坂道をあがり...小さな視界を行ったり
来たりしながら、その賑わいが伝わってきます...

高橋由一は風景画がよかった。『墨堤桜花』の春らしいおだやかな
陽気、『月下隅田川』の月明かりとそこに往く船の反射、本牧や洲
崎で網引く小船...そのほとんどの作品が五十前後で描かれています。
最後に展示されている『琴平山遠望図』の、山に繋がる平たい田ん
ぼ。そこだけ明るくみえるあぜ道なんかの描写は光をストレートに
みせる油絵ならではの表現です。よくぞここまで辿り着いたものだ
な...

宝物館では狩野尚信の『出山釈迦並梅竹図』左右のともに雀をあし
らった梅と竹の簡潔な描写が潔い。二階に行くと生田久一の『百鬼
夜行図』。ずいぶん保存状態がいいなと思ったら昭和の作品。こう
いうの現代の絵描きさんが描いても面白そうだな...

というわけでとっても堪能。０泊三日で行ってきた甲斐があったも
のです...(^^;

・金刀比羅宮 書院の美 (金刀比羅宮) - 1/31 まで...
＃ まだ、十日間"も"ありますよ...


おまけ
・上野展の感想
＃ いろいろ書きましたが、おさまるところにおさまった作品群を
＃ 観て、昨年の上野展の展示もやっぱり素晴らしかったなぁ...
＃ とつくづく思いました。よかったな。ほんと。