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美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




というわけで十代の頃から晩年にいたるまで、モネ、モネ、モネ...
の大回顧展です...

展覧会は『近代生活』『印象』『構図』『連作』『睡蓮/庭』の五章
からなっていますが、あんまり小難しいことは考えずに、それぞれ
のモチーフを楽しめばいいのではないでしょうか。

第一章 近代生活
近代生活で描かれているのはモネの家族。『揺りかごの中のジャン・
モネ』が可愛らしい。手に持っている風車のついたでんでん太鼓は
日本からのお土産でしょうか。
サン=シメオンの農園の前の道を描いた作品が二枚。ともに二十代
前半の作品です。その後の作風とはちょっと違うようですが、どち
らも不思議な吸引力を持っています。土くさい作品。

第二章 印象
ここでは『コロンブの平原、霜』が美しい。薄い色を重ねた夕暮れ
間近の空と明るい平原が、とても清んだ空気を思わせて気持ちよく
観られます。船好きには『アルジャントゥイユの小船』、川に浮か
ぶヨットにはあこがれがあります。緑美しい川沿いの風景を描いた
『ヴェトゥイユ』も明るくって気持ちいいな。
雪の原っぱに一匹の『かささぎ』、光のあたり具合といい、雪の白
さといい、かささぎや生垣の黒さといい、とてもバランスが取れた
作品。そして『モントルグイユ街、1878年パリ万博の祝祭』に描か
れたフランス国旗の色彩の乱舞。ともにいわゆる印象派とは違った、
モネの創意にあふれた作品です。
『ヴァランジュヴィルの猟師小屋』、さんさんとした日差しを浴び
た猟師小屋と、翡翠色に輝く海、その上に浮かぶまっ白い船...
絶景...

第三章 構図
『ルエルの眺め』は十代の作品。とても写実的で言われなければモ
ネの作品には見えませんが、印象派のモネとは違った魅力が感じら
れる作品だと思いました。何でも描けるのだな...
西洋美術館の『舟遊び』は見慣れていますが、やっぱりいいなぁ...
と。ヴェニスで描かれた何枚かの作品のうち、『コンタリーニ宮』、
日が昇る前なのでしょうか、青い運河に青い建造物、そして、その
前にそっと舫われたゴンドラがとても静謐で、瞑想的な作品だと思
いました。

第四章 連作
ここにはテムズ川を描いた作品が多数、どれも少しずつ違って描か
れていて面白い。個人的にはブリヂストン美術館の『霧のテームズ
河』も並べて欲しかった(パステルだけど...)。

第五章 睡蓮/庭
セザンヌは自分の描き方を押し進めて最後は抽象絵画にいたりまし
た。モネの晩年の作品もほとんど抽象化されていますが、どこか重
く、痛々しさを感じます。そんな中、アサヒビール収蔵の『睡蓮』
には堂々とした迫力があります。これは一年前まで直島の地中美術
館に貸し出されていた作品かな?
昨年の夏、私が直島のモネの部屋を訪れたときには、この作品はす
でに返却されたあとでした。ぐるり一周の中に、ひとつだけ、ぽっ
かりした白い空間があって、ちょっと残念でした...
# 知らなければそれですんでしまうのにな...(^^;
薄い紫色の空を背景に描かれた横長の大作、『藤』は、とても軽や
かな印象の作品で、このコーナーの中ではもっとも好きな作品...


その他、モネの遺産というストーリーで、多くの絵描きさんの作品
が紹介されています。個人的にはドットで描かれたリキテンスタイ
ンは『ルーアン大聖堂』の三幅対とジョゼフ・アルバースの三幅対、
そして、サム・フランシスの青がいいなと思いました。
# モネの影響下にあるかどうかは置いておいて...


そんなに気張らないで制作年代で並べたほうがいいだろうと思いつ
つ、思ったよりも混んでなくて、気持ちよく観られた展覧会でした。

大回顧展 モネ (国立新美術館) - 7/2

コメント ( 10 ) | Trackback ( 0 )



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コメント(10/1 コメント投稿終了予定)
 
 
 
Unknown (あおひー)
2007-04-18 10:19:08
こんにちわ。
直島に行かれた際に睡蓮が見られたらよかったですね。
リキテンスタインのルーアン大聖堂、あれは意外でした。あんな作品があったのですね。
 
 
 
Unknown (lysander)
2007-04-19 00:39:18
あおひーさん
コメントありがとうございます。

あおひーさんは直島に行かれたことあったのでしたっけ?
なければ行ったほうがいいっすよ...(^^)
 
 
 
っということで (Tak)
2007-04-19 22:25:07
直島にでも行こうかと。

変なセクションに細かく
分ける意味が理解できません。
もったいないですよね~
 
 
 
Re: っということで (lysander)
2007-04-20 00:20:02
Takさん
こんばんは

> 直島にでも行こうかと。
それは吉です。

私はGWに広島に行こうかどうしようか、
悩んでいるところです...(^^;
 
 
 
切り口 (モネ展)
2007-04-23 08:58:23
ヤット行ってきました。
疲れる章立てでしたが・・・
無視して
気楽に観てきました。
やっぱりモネはいいですね。
 
 
 
Re: 切り口 (lysander)
2007-04-24 23:06:57
とらさん
こんばんは

とてもいい展覧会だと思いました。
私は珍しくカタログを買ってしまいました。

> やっぱりモネはいいですね。
ですので、横浜美術館の水の情景も是非!
 
 
 
水の物語 (mizdesign)
2007-04-25 03:05:53
こんばんは。
本当に、モネ、モネ、モネの展覧会でした。
章ごとに見せ場があって、見応えたっぷり。
後半のヴェネツィア、ロンドン、睡蓮と続く水の物語は圧巻ですね。

横浜にも行ってきます(笑)!
 
 
 
Unknown (遊行七恵)
2007-04-25 22:24:05
こんばんは
私もモネを見てきました。
鑑賞する、というより楽しむと言うほうが近い感じですが。今回は予習なしで出かけましたので、今先行の皆様の記事を読ませてもらっています。
lysanderさんの記事の中でとても胸を衝かれるところがありました。

>セザンヌは自分の描き方を押し進めて最後は抽象絵画にいたりました。モネの晩年の作品もほとんど抽象化されていますが、どこか重く、痛々しさを感じます。

白内障で視界がぼやけていたから、色の混ざり合う形のないものが生まれていましたね。
しかし私はそれを見たとき、諦念から来る妙な明るさなのかもしれない、と感じました。
痛々しさを感じたのは、鹿児島の睡蓮(黒と紫の)を見たときでしたが、それをわたしはスルーしていました。向き合い方が足りなかったか、と反省しています。

TBいたしました。
 
 
 
Re: 水の物語 (lysander)
2007-04-26 23:47:05
mizさん
コメントありがとうございます。

> 後半のヴェネツィア、ロンドン、睡蓮と続く水の物語は圧巻ですね。
でしたね...(^^)

水といえば横須賀美術館が 4/28 にオープンですね。
こちらも水辺の箱物です...(^^)
 
 
 
Unknown (lysander)
2007-04-26 23:55:42
遊行さん
コメントありがとうございます。

私が書いたことは単に思ったことなのですが...
以前、地中美術館でもこんなことを書きました。
> あんなに探求してようやくものにした光、
> その源となった風景が自分の目で観られな
> くなってしまうのですよ、じぶんちの庭で...

辛いな...辛すぎます...
 
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