美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




国立西洋美術館で開催されているコロー展に行ってきました。今日
はアフターシックスにこの展覧会を監修した高橋明也さんの講演会
があったので、それを聞いてから...

コローと言えば風景画ですが、今回の展覧会の特徴は人物画を揃え
ていること。身近な人物を描いた作品から衣装に身をつつんだモデ
ルさんの作品まで、いろいろなタイプの人物像が見られます。そん
な人物画を高橋さんは『画題の意味』をなくした絵とおっしゃって
います。

それまでの絵画は常に描かれる理由がありました。偉い人を偉く、
敬虔な気持ちを敬虔に...そんな絵画の間口が広がりをみせたのが近
代と言われる時代。自然の風景をモチーフにしたり、普通の人を描
いたり、絵描きさんが描きたいものを描けるようになってきたのが
この時代なのでしょう...

今回の展覧会で特徴的なのは小さな絵がたくさん展示されているこ
と。コローと言えば大きな風景画のイメージがあったのですが、小
さな風景、小さな人物をみているうちに、絵描きさん自身が楽しん
で描いている様子が伝わってきます。

また、もうひとつ高橋さんがおっしゃっていたのが『一瞬の時間』。
歴史的な場面をきっちり描くのではなしに、スナップのような人物
画が多数見られました。中にはポーズをつけていたりして...写真が
普及する前の、生活の中に自然にとけこむ絵画が観られてとても楽
しい...

会場にはコロー縁の絵描きさんの絵も多数あります。シニャックの
若い頃の点描は遠慮がち。モンドリアンの描く風景。キュビズムで
ないブラック...よく集めたなぁ...ピサロやゴーギャンの風景画も
まばゆいばかり。ルノワールの『木かげ』という作品は西洋美術館
の収蔵。ルノワールらしくないけれど、緑がまぶしいとても素敵な
作品でした。

一方、コローの風景画、フォンテーヌブローを描いた作品はどれも
いいのですが、とどめは『モルトフォンテーヌの想い出』でしょう...
自然の中にゆったりと流れる大気が感じられる、詩情あふれた作品
だと思います。詩を感じさせる作品はとても好きなのですが、風景
を写実するところからこれだけの雰囲気をかもしだす例を私は知り
ません。

人物画についてはその繊細な色づかいに目を奪われました。淡い、
ちょっとくすんだような青や緑...こういう微妙な色合いは印刷屋泣
かせですね...チラシではあなどっていた『真珠の女』や『青い服の
婦人』は言うに及ばず、『ミューズ-歴史-』や『身づくろいをす
る若い娘』などの白を基調にした色合いの作品もとても好ましく感
じられました。

とても気持ちよく観られた展覧会でした。会期は8月いっぱいなの
で、また観にいこうと思います。

コロー展『光と追憶の変奏曲』 (国立西洋美術館) 8/31 まで...

コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (Tak)
2008-07-17 15:57:28
こんにちは。

昨夜はお疲れさまでした。

楽しかったですね、
そして大変有意義でした。
中々体験できることではありません。
有り難いことだと感謝しています。

観方によって、こうも作品の印象が
変わるものかと当たり前のことを
まじまじと実感させられました。
 
 
 
Unknown (とら)
2008-07-17 20:37:48
昨日はありがとうございました。
高橋明也さんの講演は良かったですね。メモを記事にしてみました。誤解があれば指摘してください。
あの広い部屋にそれほど大きくない画がギッチリと並んでいるのは壮観でした。コローの幅の広さと不思議さを実感してきました。
 
 
 
Unknown (lysander)
2008-07-18 01:49:14
Takさん
こんばんは

昨日はどうもありがとうございました。
とても楽しかったです。

講演を聴けたのは最後の十分ほどでしたが、
もっと早くに到着したかったです...
 
 
 
Unknown (lysander)
2008-07-18 01:53:27
とらさん
こんばんは

> メモを記事にしてみました。
遅刻してしまったので助かります。
また、観に行きます。
 
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