美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




今日は千鳥ヶ淵のそばにある山種美術館で、速水御舟の展覧会を
観てきました。

速水御舟(1894-1935)は明治から昭和にかけて活躍した日本画家
です。切手にもなった『炎舞』で名前だけは知っていたのですが、
まとまった展覧会は今回がはじめてでした。日本画は洋画とは違
った趣があります。特に繊細な線で動植物を表現するのは日本画
の真骨頂でしょう。

『炎舞』は御舟、31歳の時の絹本彩色の作品で国の重要文化財に
指定されています。思ったよりも小さな絵で、赤く照らされた闇
から浮かび上がる炎とその上を群舞する蛾の構図です。仏教画の
影響から様式的にまとめられた炎と、自由な発想でデザインされ
た色とりどりの蛾の群れは神秘的な雰囲気をたたえていました。

その数年後に描かれた屏風『翠苔緑芝』では装飾的な画風がさら
に洗練されています。琳派の影響を受けているそうです。黒猫・
兎・ツツジ・紫陽花・枇杷といった、単純化された自然の素材は、
観るものをいつまでも飽きさせません。

絵の合間には、御舟が生前に残した言葉が掲示されていました。
その中に『人生には無駄が必要である。そうやって身についたも
のを乗り越えて初めて作品に魂が宿る。マチスの絵はとても単純
だけど、単純であることを目的にしていたら、あのようには描け
なかったろう。人生には回り道のようなことも必要なのだ』とい
うような言葉がありました(最近、短期記憶が悪いので正確には思
い出せないのですが、本当はもっと素敵な言葉でした)。そういっ
た言葉に、思わず自分の日々の生活を重ねてみたりしました...

『紅梅白梅』も二枚が対になった素敵な絵でした。月夜を背景に
二本の梅が向かい合っている作品です。二本の梅の幹は一見黒い
のですが、よく観ると碧や藍がまざっています。白い背景に月が
浮かんだ空には薄く墨の雲がかかっていて、闇の雰囲気がよく出
ていました。

晩年(といっても四十歳くらい)の作品は若い頃の作品に比べると
こじんまりしたものが多かった気がします。その中で『あけぼの
・春の宵』が印象に残りました。鴉が枯れ木に止まっていてどち
らかと言えば夕暮れを思わせる朝の風景と、月夜に花を散らす桜
の木。どことなく死の予感を感じさせる、寂しくて美しい作品で
した...

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コメント
 
 
 
はじめまして (ra-goo)
2004-11-01 23:57:37
同じ日かもしれません。

TBさせていただきました。

今年は素敵な美術展が多いですね。



 
 
 
Re: はじめまして (lysander)
2004-11-02 23:17:12
トラックバックありがとうございます。



今年は見応えのある展覧会が多いですね。



今回の山種美術館は初めて行ったのですが、

知らない美術館もまだまだあるのだなぁと

思いました。



これからの季節だと南青山の根津美術館な

んかもいいかもしれません。

http://www.nezu-muse.or.jp/



展示は(私には)渋すぎるけれど、日本庭園

が隣接していて落ち着けます。
 
 
 
コメントありがとうございました。 (イッセー)
2004-11-04 01:53:38
こんばんは、イッセーです。

当ブログにコメントありがとうございます。

実は、まだ速水御舟展見に行ってないのです。

展覧会が目白押しで、会期の終了が迫っているものを優先してしまうため、まだ行けてません。

一応、今週末か来週末ぐらいにはと思ってます。



このblog読んでますます行きたくなってしまいました。早く見たい。



今後ともよろしくお願いします。

 
 
 
御舟 (myu)
2004-11-04 13:29:04
はじめまして。

トラックバックさせて頂きました。



御舟展、まだ足を運んでいないのですが必ず自分の目で見たいものです。

今の私と同じ年の時の作品と聞いて更に強くそう思いました。

御舟が生前に残した言葉『人生には無駄が必要である。・・・~』というのも感銘です。
 
 
 
コメントありがとうございます (lysander)
2004-11-05 01:14:30
イッセーさん、myuさん

コメントありがとうございます。



お二人ともまだ観られていないようなので、

私の拙い感想文が、少しでも行ってみる気

のお手伝いになれば幸いです。



ぼちぼちと更新していきますので、懲りな

ければ、また、見にきてください。



ではでは。
 
 
 
素敵な作品の数々 (vagabond67)
2004-11-06 22:36:47
御舟展行ってきました。

色んなバリエーションの作品が沢山展示されていて,山種美術館の懐の深さを感じましたね。

それにしても,31歳であれだけの作品(「炎舞」)を残し,40歳で亡くなるとは凄すぎますよね。

40歳でなくなるとすると,私にはあと3~4年しかありません。一体,何ができるのかなあ?

TBさせていただきましたので,良かったら遊びに来てください!
 
 
 
TBありがとうございます (nacky73)
2004-11-07 22:34:14
私は「梯子の頂上に登る勇気は貴い。更にそこから降りて来て、再び登り返す勇気を持つ者は更に貴い…」という言葉が印象的でした。画家としての強い信念が感じられますね。

御舟が「炎舞」を描いた年は今の自分と同じ年…それを考えると、やっぱり常人ではないなあ、と思います。凄いですよね。
 
 
 
ようやく行ってきました (イッセー)
2004-11-15 03:06:14
こんばんわ、イッセーです。

「速水御舟展」ようやく行ってきました。

どれもこれも素晴らしい。思ったほどは混んでなかったし。

本当に良いもの見せて頂きました、という感じです。
 
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