美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




目黒区美術館で石内都さんの個展が開催されています。七十年代後
半に撮られた『絶唱・横須賀ストーリー』のイメージから始まって、
人の身体を写した写真、お母さんの思い出を写した写真、そして最
新作の広島の写真までが一望できます。

今日はギャラリーでご本人が話をされていました...

石内さんは横須賀で育ったのですが、どこか違和感を感じていたの
だといいます。それが石内さんの内面的な葛藤なのか、横須賀がア
メリカの基地のように使われていたからなのかは分かりませんが、
そうした違和感がモノクロームの横須賀やアパートメントの写真に
結実しています。そこまでが第一期...

そうした自分の思いで撮った三十代の写真から、四十になってふと
自分の手を観た時に、人の体を写してみようと思ったのだそうです。
同じ年に生まれた人たちの体から、遂には人の体の傷を写すことに
なります。石内さんのモチーフは必ずしも美しいものではありませ
ん。だけど、石内さんはそこに美しさを観るのだといいます。傷や
シミは生きている証拠なのだといいます。そこまでが第二期...

それからヴェネツィア・ビエンナーレに持っていったお母さんが残
したものたちを撮った写真までが第三期...

そんな石内さんの仕事は横須賀から始まって人の肌、母親をめぐっ
て広島へとたどりつきます。正直、二期目と三期目の作品は苦手な
のですが、ここから始まる第四期の『ひろしま』の作品にとても心
が揺さぶられます...

これは広島平和記念資料館に残されていた被災者の洋服を撮ったも
の。ライトボックスを透して写真に写される薄黒くちりぢりになっ
た洋服たちは、なんて美しいのでしょう...目黒区美術館の高さ八メ
ートルの壁をいっぱいに使った服飾の写真は、空高く飛ぶようなイ
メージで展示されたのだそうです。高らかに歌いあげられるような...

実は石内さんは写真を撮ることが苦手なのだそうです。反面、自分
で写真をプリントするのが好きなのは、学生の頃は染織を勉強され
ていて手仕事が好きなのだからといいます。そして最新の『ひろし
ま』という写真はそんな石内さんの総決算的な作品ではないかと思
いました...

今年は広島をモチーフにいろいろな作品が発表されていますが、そ
の中でも深い余韻につつまれる、一番の展覧会だと思いました...

石内都展『ひろしま/ヨコスカ』 (目黒区美術館) - 2009/1/11

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