美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




実家に帰ると本棚を漁って何冊かずつ持って帰ります。学生時代に
一生懸命読んでいた本の発掘作業。今回、持ち帰ったのは村上春樹
の『中国行きのスロウ・ボート』でした...

私が村上春樹を読んでいたのは十代から二十代の初めです。お気に
入りは『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『羊をめ
ぐる冒険』『ダンス・ダンス・ダンス』あたりでしょうか...当時は
長編小説に傾倒していました...

数年前、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読み
返した時に、上巻の半分も読めないで投げてしまいました。村上春
樹を二度と読むことはないかもしれないなと思っていたところ...
この春『中国へ帰る人』という作文を書いたとき、コメント欄に『中国
行きのスロウ・ボート』という単語を見つけたのでした...

村上春樹は若い頃、自分の文体を確立するために、英語の短編をひ
たすら翻訳したり、一度英訳した自分の日本語を、もう一度日本語
に翻訳したりしていたそうです。村上春樹の比喩は平易で端的です。
それは言葉の置き換えを繰り返す作業によって培われたのでしょう。

学生の頃はどちらかと言えば、その物語や風俗に関心があったので
すが、今回、久しぶりに『中国行きのスロウ・ボウト』を読み返し、
村上春樹は文体が命だなぁ...と思った次第です...

読んだ当時、私は若かった。村上春樹も若かった。この作品を書い
ていた頃の村上春樹の興味は、世の中とどのように折り合いをつけ
るのか、といったところにあります。無器用な人物が多く出てきま
すが、それぞれが世の中をどのように認識したらいいのか、試行錯
誤しているように思いました。

『中国行きのスロウ・ボート』に収録されていた短編小説の筋は、
正直、覚えていませんでした。当時の私は登場人物に自分を重ねな
がら読んでいたのでしょうか。まだまだ経験が足りない若者、静か
に自分を肯定する言葉、他者とまじわり切れない切なさ...そんな描
写がとても酸っぱく、村上春樹は短編に限るな、と思った次第です...

中国行きのスロウ・ボート

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