森村泰昌－美の教室、清聴せよ (横浜美術館)

学校の授業の形式をとった展覧会です。これが吉と出たか凶と出た
か...

展覧会はホームルームからはじまって、一時間目から順番に授業を
受けていきます。フェルメール、ゴッホ、レンブラント、ダヴィン
チと、作家本人の音声ガイドを聴きながらその作品を観ていく趣向
です。

森村さんは、以前、同じ横浜美術館で女優をモチーフにした展覧会
を開催したそうです。その時には館内に映画館を設けたそうです。

この展覧会は森村泰昌の個展...

ホームルームの時間に森村先生の話を聴く事ができます。森村さん
は若い頃、美術館で作品を観るのが苦手だったそうです。自由に観
ればいいんだと言われても、どう観ればいいのやら...というわけで
今回は先生自らの音声ガイドを聴きながら観ることになっていて...

当然ですが、これは森村さんの作品を順番にみせる展示...言い方は
悪いですが、学校の授業モチーフにしたコスプレです...

森村さんは女優や名画をモチーフにした作品を作ります。それぞれ
の作品に似せるために、森村さんは作品と向かい合います。それは
本当に根気の要る作業で、そんな工夫を説明するのが音声ガイドの
役割...だけど、そんな解説がなかったときに、これらの作品はどう
観えるのだろう...そんなことを考えました。

例えばフリーダ・カーロやゴヤの版画をモチーフにした作品はよく
できていて、それぞれに面白いところがあります。怒りを笑いに変
えるのが平和への近道で、それが美術の役割ではないか、という森
村さんの言葉には、それはそうかもしれないな、と思うのですが...

ですが、森村さんの多くの作品からは、そのオリジナルを揶揄する
ような調子が感じられます。美感を感じない...モノを作る人はその
時々によって作風を変えることがあります。だけど、あんまりその
思想があっちこっちに行ってしまうのはどうかなぁ...なんて思いま
す...

放課後の三島由紀夫の部屋...何だかんだ三島由紀夫には、ひとつの
事を、真剣に、考えて考えて考え抜いたような印象を持っているの
ですが、それを真似る森村さんは、どれくらい本気なのだろう...
映像の最後、森村さんの眼前に広がる日常の風景を見ながら、そん
な印象を持ちました。

学校の授業をモチーフにするには、あまりにも教育的によろしくな
い、笑えない展覧会だと思いました。

・森村泰昌－美の教室、清聴せよ (横浜美術館) - 9/17