2/6の朝日新聞より
交通事故や脳卒中などで脳が損傷し、意識がないと考えられている患者との間で、機能的磁気共鳴断層撮影(fMRI)を使って「会話」することに、英国とベルギーの医療チームが成功した。声をかけても反応がみられないことなどから「植物状態」と診断された患者にも、意識がある可能性を示している。
3日付の米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン電子版に論文が掲載された。
医療チームは、植物状態またはそれに近い「最小意識状態」と診断された患者54人に「テニスボールを打つところ」「自宅の部屋を歩いているところ」をそれぞれ想像するよう口頭で指示し、fMRIで脳の活動を調べた。
すると、多くの患者の脳は無反応だったが、5人だけは脳に障害がない健康な人と同じ反応を示し、意識があるらしいことがわかった。
チームはさらに、交通事故で植物状態になった男性との会話を試みた。「兄弟はいますか」といったいくつかの質問に対し、「はい」ならテニスを、「いいえ」なら自宅を想像するように指示したところ、男性は正しく回答した。
今回の研究から、植物状態の患者との間で一定の意思疎通ができる可能性が示されるが、治療の継続を望むかどうかを患者に尋ねたりすることには、倫理的な課題もありそうだ。
「全国遷延性意識障害者・家族の会」のウェブサイトによると、日本で植物状態の患者は1万5千~2万7千人と推定されている。