ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

“大魔道師の弟子” 「最初の犠牲者」

2017-01-16 19:23:42 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月31日20:15.天候:雪 ペンション“ビッグフォレスト”2F 客室フロア]

 勇太は部屋に戻ると、部屋のカーテンを閉めた。
 幸い、窓の外から幽霊が覗き込んでくるようなことは無かった。
 準備と言っても、勇太の場合はいつもの服の上からローブを着込んで、魔法の杖を用意すれば良い。
 杖は普段は収縮しており、腰のベルトに吊るせるようになっている。

 勇太:「よし。これでいいな」

 勇太が洗面台の鏡で身だしなみを確認していると、部屋が急に明るくなった。
 そう、停電が復旧したのだ。

 勇太:「何だ。大したことは無かったんだ……」

 勇太が安堵の独り言を呟いている時だった。

 ガッシャーン!

 勇太:「!?」

 どこからか、ガラスの割れる音が聞こえて来た。
 少なくとも、この部屋ではない。
 ということは……?
 勇太は魔法の杖を持って、部屋の外に飛び出した。

 宗一郎:「一体、何事だね!?せっかく、停電が復旧したというのに……!」

 近くの部屋のドアから顔を出す宗一郎。

 元木:「この部屋から聞こえたよ!」

 元木も部屋から飛び出してきた。
 元木が指さした部屋にいるのは……。

 勇太:「あのスーツの人か!」

 階段の下から大森が駆け登って来た。

 大森:「何かありましたか!?」
 元木:「この部屋からガラスの割れる音がしたんですよ!」

 大森はその部屋のドアをノックした。

 大森:「鈴木様!鈴木様!何かありましたか!?」

 しかし、中からは何の応答も無い。

 大森:「鈴木様!?」
 元木:「オーナー、マスターキーは?それで開けてみましょう!」
 大森:「しかし……」
 宗一郎:「少なくとも、この部屋の窓ガラスが割れたんだとしたら異常じゃないか」
 元木:「オーナー、稲生専務の仰る通りです。開けてみましょ……」

 元木が言い終わろうとした時だった。
 中から男の叫び声がしたのだ。
 それは、断末魔のようにも聞こえた。
 女子大生の本田と渋谷は、びっくりして2人して抱き合ったくらいだ。

 マリア:「凄い霊気だ!」

 マリアが水晶球を片手に部屋の前に立ち尽くした。
 水晶球が赤い光を鈍く点滅させている。

 小久保:「オーナー、マスターキーっス!」
 大森:「早く開けろ!」
 小久保:「はいっス!」

 小久保は急いで鈴木の部屋を開錠した。

 マリア:「待ッテクダサーイ!マダ中ニ悪霊ガイルカモシレナイデス!」
 大森:「バカなこと言わないでください!」

 大森は急いで鈴木の部屋のドアを開けた。

 大森:「失礼します!鈴木様!大丈夫ですか!?」

 ドアを開けると、一陣の風が廊下を吹き抜けて行った。
 確かに、鈴木の部屋の窓ガラスが割れていた。
 そこから吹き込む吹雪がとても寒い。
 加えて、この部屋の装飾はとてもおかしかった。
 まるで赤いペンキをぶちまけたように……って、それは装飾ではない。

 勇太:「血だ……!」
 マリア:「!!!」

 201号室は凄惨なことになっていた。
 室内のあっちこっちに鈴木のバラバラ死体が散乱していた。

 大森:「こ、小久保君!警察だ!警察を呼べ!お、お客様が殺されたと……!」
 小久保:「は、はいっ!」
 大森:「早くここから出てください!この部屋は立入禁止にします!」
 マリア:「……!!」

 マリアはグラッと目まいのようなものを起こすと、水晶球を落としてしまった。
 ゴンッと床から鈍い音がする。
 水晶球はもう赤い光は放っていないものの、今度は黄色い光を点滅させていた。
 これは『注意』を意味する。
 さっきの赤い光が『要警戒』だから、少し幽霊は離れたのか。

 勇太:「大丈夫ですか、マリアさん?」
 マリア:「久しぶりにグロテスクなもの見た……。勇太は平気なのか?」
 勇太:「グロテスク過ぎて、却って麻痺したのかもしれません。火サスですら、全身死体は出てきても、バラバラ死体は出てきませんから」

 部屋の外に出た。

 大森:「皆さん、停電が復旧したのにあいにくですが、警察が来るまで1階ロビーで待っていて頂けませんか?」
 宗一郎:「うむ。その方がいいだろう」

 宗一郎は大きく頷いた。

 マリア:「私がただの人間だった頃、行った復讐劇で……首を刎ねられたヤツがいて、それを見た以来かな……ふふふ……」
 勇太:「マリアさん……。あれ?島村さんは?」
 本田:「しまむーなら、さっきトイレに行ってたけど……」
 渋谷:「ちょっと様子見て来るか」

 本田と渋谷は1度自分の部屋に戻り、残りの宿泊客は1階ロビーに向かった。

 小久保:「オーナー、大変っス!」
 大森:「何だ?」
 小久保:「電話が通じないんス!」
 大森:「ウソだろ?」
 小久保:「マジっスよ!」

 大森はフロントの上にある固定電話を取った。

 大森:「う、本当だ……」
 小久保:「でしょ?でしょ?」
 元木:「停電は復旧したのに、おかしいですね」

 電話線の先を見ると、それは繋がっていた。

 勇太:「あれ!?僕のスマホも電波が入らない!」
 宗一郎:「私のもだ!一体どうなってる!?」

 マリアの水晶球が再び赤く光る。
 電話の方に向けると、尚一層強く光った。

 マリア:「ちょっと貸して!
 小久保:「あっ……!」

 マリアは小久保から電話の受話器を奪い取った。
 それを耳に当てる。

 マリア:「悪霊め!フザけるなよ!一体、何が目的だ!?

 マリアは英語で電話線の向こうに問い詰めた。
 しかし、何の応答も無い。

 マリア:「私はダンテ門流イリーナ組のロー・マスター、マリアンナ・ベルフェ・スカーレットだ!悪霊め、そこにいるのは分かってる!いい加減に応答しろ!

 すると電話の向こうから、何か声が聞こえて来た。

 ???:「マリア……!」
 マリア:「お前は誰だ?ペンションの宿泊客を殺して、何が目的だ?答えないと滅するが良いか?
 ???:「違う……!」
 マリア:「違う?何が違う?答えろ
 ???:「お前は……マリアじゃない……。私の……マリア……」

 これ以上の話は不可能と分かったマリアは電話の受話器を切った。

 大森:「マリア……さん?何かありましたか?」
 マリア:「オーナー、このペンションに『マリア』に纏わるものは無いですか?
 大森:「えっと……?」
 勇太:「ああ、僕が訳します!このペンションに、『マリア』と名の付くものは無いですか?だそうです」
 大森:「いや、特に無いですね。私達夫婦も小久保君も篠原さんも、別にクリスチャンってわけではないですし……」
 勇太:「マリアさん、島村さんのことじゃないですか?島村さんの下の名前、真理愛ですよ?」
 元木:「あれ?そういえばあのコ達、下りて来ないな?どうしたんだろう?」

 大森は電話の受話器を取った。
 外線は相変わらずダメだが、内線なら通じる。
 だが……。

 大森:「おかしいな?呼び出し音は鳴っているのに、誰も出ないぞ?」
 小久保:「ま、まさか、鈴木さんを殺したヤツに……?」
 大森:「バカなことを言うんじゃない!きっとまたテレビに夢中になっているんだろう。或いは、部屋に籠もることが安全だと思っているのか……。とにかく、ここに来てもらうんだ。小久保君」
 小久保:「お、俺っスか?」
 勇太:「僕も一緒に行きましょうか?」
 小久保:「よ、よろしくっス!」
 篠原:「度胸無いなぁ……」

 篠原は宿泊客にコーヒーを入れながら言った。
 この時はまだ、例え凄惨で不可解とはいえ、何だか得体の知れない怪しい男が殺されたというだけで、どこか他人事でいられたのかもしれない。
 小久保と勇太が階段を上って、209号室に向かう。

 宗一郎:「ダメだ。ネット回線に繋いでも、メールとかが送れなくなっている。これでは警察に通報できないぞ!」
 マリア:(ここまでの徹底ぶり……。私達が外部と連絡を取れなくなるようにしている。これは一体、何を意味してる?)

 相変わらず、水晶球は黄色い光と赤い光を繰り返していた。
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“大魔道師の弟子” 「停電」

2017-01-16 10:06:20 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月31日19:45.天候:雪 ペンション“ビッグフォレスト”1F・ロビー]

 突然ペンション内に襲って来た闇。
 それは停電に他ならなかった。

 宗一郎:「な、何事だね、これは!?」
 佳子:「あなた!」
 大森:「皆さん、落ち着いてください。今、懐中電灯を持って来ます。この場から動かないでください」

 大森が手探りの状態で奥へ向かった。

 マリア:「勇太、油断しないでよ?闇に乗じて襲って来る恐れがあるから!
 勇太:「分かってます!
 宗一郎:「何の話だね?」

 魔道師2人が臨戦態勢に入ろうとしているのを、宗一郎は見とがめるように言った。
 しかし、光は階段の上からやってくる。

 島村:「ちょっとォ!何があったの!?」
 本田:「マジ、停電って……最悪なんスけど」
 渋谷:「取りあえず、1階に避難しよう」

 客室でテレビの年末特番を観ていた女子大生3人組だった。
 1つの懐中電灯の明かりを頼りに、階段を下りてくる。
 どうやら客室内に、停電用の懐中電灯が備え付けられているらしい。

 小久保:「お待たせしましたーっ!」

 小久保が懐中電灯を持ってきた。
 だがどういうわけだか、懐中電灯を顎の下から照らしてホラーを演出している。
 階段を下り切った女子大生達は、それにびっくりしてキャーキャー叫び声を上げた。

 篠原:「っ!懐中電灯を下から照らすな!!」

 篠原は持っていたマグライトで小久保の頭をボコッとやる。

 小久保:「いてっ!?……き、緊張をほぐしてあげるサービスのつもりだったんスけど……」
 渋谷:「いや、笑えないから」
 大森:「小久保君、いいから早く石油ストーブ持って来て!」
 小久保:「あ、はい!」

 入れ替わりに大森が戻ってくる。
 手には大きめのランタンを手にしていた。
 電池式ではなく、本格的な石油燃料のランタンである。

 大森:「せっかくお寛ぎのところ、皆さん申し訳ありません。実はこの停電は毎冬に1回くらい、猛吹雪の時に発生する事故なんですよ。大抵はものの数分で復旧するんですが、数年に1度は電線や電柱自体がやられてしまって、長時間の停電になることもあります。今回の停電がどんなものなのかは分かりませんが、長時間に及ぶ恐れがありますので、そうなってしまった場合、早めにお休み頂いた方がいいかもしれません」
 島村:「えーっ!?テレビいい所だったのにぃ!」
 渋谷:「この停電じゃ、しょうがないって」
 本田:「そうだよ。それなら、ワンセグで観ればいいじゃん。こんなこともあろうかと、タブレット持って来たよ」
 島村:「おお〜、さすが倫ちゃん!」
 小久保:「いや、多分ムリっスよ。ここ、電波入らないんで」

 小久保が石油ストーブを持って来ながら言った。

 渋谷:「は!?」
 小久保:「だからここ、専用のアンテナ付けて、Wi-Fiも入れてるんスけど、どれも停電じゃ使えないっスし……」
 勇太:「本当だ!電波が入らない!」

 勇太は自分のスマホを見て愕然とした。

 本田:「マジ、ツいてねぇ……」
 大森:「一応、お部屋用の照明として、小型のランタンをお配りします」

 それは電池式のものだった。

 宗一郎:「うーむ……。これでは確かに、さっさと寝てしまった方がいいかもしれないねぇ……」

 宗一郎は腕組みをして残念そうに言った。

 大森:「せっかくお寛ぎのところ、申し訳ありません。早ければ、こうしてお話ししている間にも復旧してしまうんですが、どうやら今回は長引くパターンのようです」

 マリアだけは周囲を警戒している。
 あの幽霊が、この闇をチャンスにしないわけがない。

 渋谷:「しょうがない。これも1つの思い出だと思って、さっさと寝ようか。実は少し疲れちゃったし……」
 本田:「麻央っちはお気楽だねぇ……」
 渋谷:「いや、気楽とかそんなんじゃないから。他にすること無いからって話」
 篠原:「そういえば、鈴木さんは大丈夫なんですか?」
 宗一郎:「鈴木さん?」
 大森:「あのスーツの男性のお客様ですよ。きっと、もうお休みになられているんでしょう。フロントで対応した時も、何だかお疲れの様子でしたし」
 宗一郎:「ふーむ……。あれ?それと、元木さんってやらはどこだ?さっきから姿が見えないが……?」
 勇太:「あれ?」

 すると、正面玄関からゴォーッという風が吹き込んで来た。
 その風に乗るようにして、元木が入って来た。

 大森:「元木さん!?」
 元木:「いやあ、凄い吹雪です。実は停電の原因を探りに行ったんですが、このペンションのブレーカーも異常は無いし、外側の電線が切れているような感じもしませんでした。こりゃ、変電所辺りから既に原因があるんじゃないですかね」
 勇太:「すると停電しているのは、このペンションだけじゃないってこと……?」
 元木:「そういうことになるね。このペンションに続く一本道も、街灯が全く点いてないし、ということは……」
 大森:「元木さん、そういうムチャはやめてください。今、外に一歩でも出たらすぐ凍死するようなレベルなんですよ?当ペンションでお客様が事故に遭われたら大変なんですから」
 元木:「すいません。性分なもので」
 マリア:(魔界に行ったら、結構稼げるトレジャーハンターになれそうだな、この男は……)

 マリアは呆れ顔だった。

 マリア:(……にしても、幽霊は何を企んでいる?相変わらず霊気は強いままだし、しかし今襲って来る気配は無い。あの強さなら、このペンションを停電させることも可能だろう。いや、実際に停電させた可能性が高い)

 元木:「体が冷えちゃったから、温泉入ってこようかな。源泉かけ流しだから入れますよね?」
 大森:「暗くて危険なので許可しかねます!今、温かいお飲み物を持ってきますから」
 勇太:「ガスは無事なんですか?」
 小久保:「ここ、プロパンガスっスからね。電気は基本関係無いっスよ。それに、それもダメになった場合に備えて、卓上コンロもあるんで」
 勇太:「へえ……」
 篠原:「街から遠く離れてますからね、食料なんかも十分に備えてあるんですよ。ですから雪に閉ざされたりしたとしても、復旧するまで落ち着いて待つことができんです」
 宗一郎:「それなら安心だな」

 マリアが勇太に耳打ちする。

 マリア:「今のところは何も無いが、でも絶対に何かが起こる。1度部屋に戻って、準備しようと思う」
 勇太:「分かりました。……父さん、僕達、部屋に戻るから」
 宗一郎:「その方がいいな。よし、私達も戻ろう」
 大森:「申し訳ありません。お部屋にあるセラミックヒーターは充電式でして、今フル充電してありますので、翌朝まで使えます」
 宗一郎:「それまでに、復電してくれるといいがな」
 大森:「もし寒いようでしたら、このロビーは一晩中ストーブを焚いておきますし、食堂にある暖炉も使おうと思いますので」
 宗一郎:「了解だ」

 ロビーにいた宿泊客は、ぞろぞろと階段を上って行った。
 手には各部屋用の電池式ランタンを持って。

 元木:「幽霊さん、襲って来なかったねぇ……」
 勇太:「えっ!?」
 元木:「本当はロビーに全員で集まっていた方がいいと思うんだけど、話の流れからしてしょうがないかな」
 勇太:「そ、そうですねぇ……」
 マリア:(この男、何かを知っている……?)
 元木:「それじゃ、気をつけて」

 元木はそう言って、自分の部屋に入った。

 勇太:「僕達はどうします?」
 マリア:「準備ができたら、ロビーで待機しておいた方がいいかもしれないな」
 勇太:「分かりました。着替えたら、すぐに行きます」

 勇太達はそれぞれ自分の部屋に入って行った。
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“大魔道師の弟子” 「遅れて来た客、元木」

2017-01-15 20:59:45 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月31日19:15.天候:雪 ペンション“ビッグフォレスト”1Fロビー]

 マリアが窓の外を見ると、2つの光がこちらに向かっていた。
 幽霊騒ぎの最中なので、マリアはまたそれが窓から覗き込んでいたのかと思ってしまったが、何のことは無い。
 それは車のヘッドライドだった。
 吹雪でライトの光が拡散されていた為、錯覚をしてしまったのだろう。

 大森:「多分あれが元木さんだろう」
 宗一郎:「よく辿りつけたねぇ……」

 車は四駆のRV車のようだったが、そんな車でも、こんな猛吹雪の中を来るのは大変だっただろう。
 車が止まった所からエントランスまでは目と鼻の先のはずだが、それでも入って来た男の頭や肩には雪が降り積もっていた。
 風除室でパッパッと雪を払う姿が見えた。
 そして、ようやく入って来る。

 大森:「いらっしゃいませ。元木様でいらっしゃいますか?」
 元木:「はい、元木です。遅くなりました」

 元木は40歳前後の大柄な男で、黒い髭を生やしていた。
 手にはカメラバッグを持っている。

 大森:「大変でしたねぇ」 
 元木:「いやぁ、雪には強い方なんですが、さすがにいきなり強く降って来た時にはびっくりしましたよ。こんな時に限ってチェーンは切れてしまうし、楽しい冒険でした」

 カラカラと笑う元木。
 トレジャーハンター的な仕事でもしているのだろうか。

 大森:「すぐに食事になさいますか?」
 元木:「あー、いや、途中で色々食べて来ちゃったんで、お腹は空いてません。何か、温かい飲み物があると助かります」
 大森:「コーヒーと紅茶、どちらになさいますか?あと、スープもできますが……」
 元木:「それじゃ、コーヒーをください。何だか今日は、長い夜になりそうなので」

 元木の意味深な発言を聞いた勇太達は首を傾げた。
 チェックインの手続きを済ませた元木はルームキーを受け取ると、大きなカメラバッグを抱えて階段を上って行った。

 勇太:「気さくそうな人ではあるけど、何か少し変わってるね」
 大森:「お仕事はカメラマンらしい。きっと、風景写真でも撮りに来られたのでしょう」

 長い夜になりそうという言葉が引っ掛かった勇太とマリアだったが……。
 すぐに元木は、部屋から出て来て降りて来た。

 元木:「209号室は若い女性達の部屋ですか?何だか賑やかですよ」
 勇太:「まさか、叫び声!?」
 元木:「叫び声?笑い声だったけど……。多分、“笑ってはいけない”でも見てるんじゃないかな?」
 勇太:「なるほど……」
 元木:「ここは紅白のコーナーですか?」
 宗一郎:「ああ。もし観たい番組があればどうぞ」
 元木:「ああ、いえいえ。僕は何でもいいです。それより、どこかでお見かけしたことがあるなと思ったんですが、もしかして、大日本ゼネラルの稲生専務さんじゃありませんか?」
 宗一郎:「いかにもそうですが、どこでお会いしましたか?」
 元木:「さる経済紙の雑誌記者と一緒に、カメラマンとして付いて行ったんですが、社長とのインタビューの時に役員室エリアの廊下でお見かけしましたよ」
 宗一郎:「おお、あの時か。世間は狭いですなぁ」
 元木:「今日はどうしてこのペンションに?」
 宗一郎:「大森オーナーは元常務でね、ここに招待されたので、それに預かったわけですよ。ちょうど家族旅行も兼ねてね」
 元木:「そうですか。それではこちらが奥様と御子息ですね。……ん?そちらは?」

 元木はマリアを見た。
 まだ、勇太以外の男性に嫌悪感のあるマリアは警戒心を露わにした。

 宗一郎:「ああ、息子の就職先の先輩なんですが……」
 元木:「なるほど。あ、申し遅れました。僕はフリーのカメラマンとライターの真似事をしている元木洋介と申します」

 元木が出した名刺にはシンプルに、肩書きはフリーカメラマン兼フリーライターとしか書かれていなかった。

 勇太:「それで、このペンションにはどうして来たんですか?風景写真でも撮りに?」
 元木:「それもいいんだけど、実はこのペンションに纏わる、とある噂を聞いたものでね。その取材さ」
 勇太:「とある噂?」
 元木:「そう」

 元木は大きく頷くと、ズイッと勇太とマリアの所に身を乗り出した。
 マリアは慌てて勇太の後ろに隠れる。

 勇太:「あっ、すいません。マリアさん、僕以外の男性が苦手で……」
 元木:「あっ、そうだったのか。これは申し訳無い。……それで、キミ達は何かこのペンションに関する噂を見たり聞いたりしたことはないかな?」
 勇太:「噂?どんな噂ですか?」
 元木:「このペンションには、あるモノが出るって噂さ」
 マリア:「!?」
 勇太:「えっと……それは……」
 元木:「おっ、その反応は知ってるってことだね?どこまで知ってるかな?」
 勇太:「どこまでって、その……」
 大森:「元木様、困りますね。他のお客様の御迷惑になるようなことは……」

 大森はコーヒー片手に、顔をしかめて言った。

 元木:「あ、いや、そんなつもりは……。あ、実は僕、こういう仕事をしてまして……」

 元木は勇太達に渡した名刺を大森にも渡す。

 元木:「オーナーは御存知ですよね?ちょっとしたSNSにはもう話題になってるんですよ?」
 大森:「そんなことは知りません。とにかく、他のお客様のご迷惑になるようなことはやめて頂きたいですね」
 元木:「分かりました。気を付けましょう」

 元木は肩を竦めた。
 そして、出されたコーヒーに口を着ける。

 元木:「そこのお嬢さんは、マリアさんというお名前なんですか?」
 勇太:「ええ、そうですよ。本名はマリアンナ・スカーレットさんと言います」

 あえてミドルネームであるデビルネームは除いておく。

 元木:「愛称がマリアさんか。なるほどなるほど。それじゃ、今夜は余計に出るかもしれないな」
 勇太:「幽霊が……ですか?」
 元木:「そう。やっぱり知ってるんだね?」
 勇太:「僕の部屋で一回、それらしいのを見たんですよ。直接見たのはマリアさんですけどね」
 マリア:「私の名前がマリアだとして、それと幽霊と何の関係があるの?

 マリアは英語で言った。
 もちろん、勇太越しにである。
 マリア自身、イギリスでは自分に対する数々の暴行や嫌がらせの加害者達に対し、彼らが化けて出てきてもおかしくないほどの凄惨な復讐劇を展開した。
 それが日本まで追ってきたとでもいうのか。

 元木:「えーっと……ゴメン。僕、英語はあまり良く分からなくて……」

 勇太がマリアの英語を日本語に訳した。

 元木:「それがあるんだよ。もちろん、キミは外国人だから本来関係無いんだけど、幽霊さん的にはどう思うだろうね」

 勇太が今度は元木の日本語を英語に訳す。
 実はそんなことしなくても、自動翻訳魔法でマリアの耳には自動的に英語に訳されて入ってきているのだが、何もしないと不自然だったからだ。

 マリア:「だから、どういうことだって聞いてるの!
 元木:「それは……」

 マリアの英語が勇太によって日本語に訳される。
 それに対し、元木が日本語で答えようとした時だった。

 勇太:「な、何だ!?」

 勇太の周囲が突然闇に覆われた。

 宗一郎:「何事だ!?」

 どうやら、闇に覆われたのは勇太だけではないらしい。
 一体、何が起きたというのか?
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“大魔道師の弟子” 「迫り来る恐怖」

2017-01-14 20:51:18 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月31日18:00.天候:雪 ペンション“ビッグフォレスト”1F食堂]

 大森:「宿泊客の皆様、食事の用意ができました。どうぞ、食堂までお越しください」

 館内に大森の放送が響いた。
 こういうペンションでも非常放送の機器は必要のようで、それを使って放送しているようだ。

 宗一郎:「おっ、お前やマリアさんも風呂に入ったのか」
 勇太:「一応ね。傷痕に効く温泉で良かったよ」

 勇太はマリアを見た。
 マリアは小さく頷いた。

 宗一郎:「そうか。それは良かった」

 宗一郎は笑みを浮かべると、食堂へ向かった。
 今日の宿泊客は稲生家とマリア、花の女子大生3人組、そしてあのスーツにサングラスの男だけのようだった。
 しかもそのスーツの男、他の宿泊客から離れたテーブルに1人で座り、相変わらずサングラスに帽子を被っていて、一切正体を明かすつもりは無いようだ。

 バイトA(男):「オーナー、元木様はまだ来てないんスか?」
 大森:「雪子、元木様は?」
 雪子:「まだ到着されてないよ」
 宗一郎:「まだ、他に予約の入ってる客がいるのかい?」
 大森:「ええ。お1人なんですけどね、吹雪で立ち往生とかされてたら大変ですよ」

 確かに外を見ると、雪は大雪となっていた。
 時折、強い風が吹いて窓をガタガタと揺らした。

 宗一郎:「それは心配だねぇ……」
 バイトB(女):「お客様、お飲み物に何になさいますか?」
 宗一郎:「おお、そうだった。やはり、山の幸には赤ワインがいいかな?大森君お勧めのワインは無いの?」
 大森:「ああ、それなら取って置きのを持ってきますよ」
 宗一郎:「おっ、そうこなくちゃな」
 大森:「小久保君、ちょっと私はワインセラーに行ってくるから、もしその間に元木様が到着されたら、すぐに夕食の用意をしてあげて」
 バイトA改め小久保:「了解っス!」
 雪子:「ワインセラーの鍵なら今、葵ちゃんが持ってるんじゃない?」
 大森:「篠原さん?」
 バイトB改め篠原:「あっ、鍵ならさっき、フロントに戻しておきました」
 大森:「そうか」
 勇太:「僕はビールでいいです」
 佳子:「私もそれでいいわ」
 篠原:「かしこまりました!」

 メインディッシュは米沢牛のステーキだった。

 宗一郎:「いやあ、料理も美味いし、酒も美味い!おまけに温泉付きと来て、手頃な値段だ。こりゃ、別荘代わりに毎年お世話になりたいくらいだよ」

 宗一郎はワイングラス片手にそう言った。

 大森:「恐れ入ります」
 篠原:「おかわりいかがですかぁ?」
 勇太:「あっ、すいません」

 勇太はグラスにビールを注いでもらった。
 マリアはワイングラスを口に運んでいる。

 佳子:「元気なコね。いくつなの?」
 篠原:「今年、21です。冬休みの間だけ、小久保君とバイトしてるんですよぉ」
 大森:「こら。小久保君の方が年上なんだから、もっと敬語で喋りなさい」
 小久保:「別に、カタいことは気にしてないっスよ」
 大森:「いや、でもねぇ……」

 大森は苦笑していた。
 恐らく、いつものことなのだろう。
 何でも小久保は大学を留年しているそうなので、実質的に勇太と年齢は同じくらいかもしれない。
 もっとも、いかにも文科系といった見た目の勇太に対し、小久保はスラッとした長身の色黒なスポーツ系なので、スキーをやる為にここでバイトしているのかもしれない。
 そんなこんなで夕食は、楽しく終わった。
 最も先に切り上げたのは、あのスーツの男。
 料理やアルコールを早食いするように平らげて、さっさと食堂を出て行ってしまった。
 大森が食後のコーヒーを勧めたが、迷惑そうに手を振って行ってしまったのである。

 勇太:「何だか、犯罪の臭いがするなぁ……」
 宗一郎:「まあ、疑わしきは罰せずというからねぇ……」

 花の女子大生組が宿泊しているトリプルの部屋(実際はツインなのだが、エキストラベッドを1つ増設でき、それで3人部屋にできる)にはテレビが付いているそうで、それで年末特番を見るそうだ。
 “笑ってはいけない”でも見るのだろうか。

 勇太:「マリアさん、また温泉に入りますか?」(斜字は英語で喋っていることを表す)
 マリア:「うーん……。いや、さっき入ったばかりだから、また後ででいい
 宗一郎:「私達の部屋にはテレビが無いからな。しょうがないから、談話コーナーのテレビで紅白でも見るか」
 勇太:「う、うん。(どうせなせ、“笑ってはいけない”を見たいなぁ……)」

[同日19:00.天候:吹雪 ペンション1F談話コーナー]

 勇太達が食堂を出ると、女子大生達が大慌てで階段から駆け下りて来た。

 勇太:「何かあったのかな?」

 するとそのうちの1人、島村真理愛が勇太にいきなり抱きついた。
 ビキッと怒筋を浮かべるマリア。

 勇太:「わあっ?!なに、どうしたの!?」
 大森:「どうかしましたか?」
 本田:「オーナー、大変です!覗きです!覗き!」
 大森:「覗き?」
 島村:「怖かったよぉ……!」
 勇太:「そ、そう?」
 マリア:「勇太カラ離レテ!」

 マリアは島村を勇太から引き離した。

 渋谷:「私は直接見ていないんですけど、窓から私達の部屋を覗き込んでいたヤツがいたそうです。そうでしょ?」
 本田:「そう!そうなんです!私はまだチラ見だったからだけど、たまたま窓の外を見ようとしていたしまむーがガチ見しちゃって!」
 宗一郎:「窓の外からだって!?こんな吹雪なのに!?」
 佳子:「何かの間違いじゃないの?」
 島村:「本当なんです!窓の外に金色の目に、青白い肌をした人が……!」
 大森:「動物か何かを見間違えたんじゃないのか?」
 島村:「動物だったら動物だって分かるよ!あれは絶対、幽霊か何かだって!」
 大森:「いい加減にしなさい、真理愛。客商売なんだから、他のお客さんを怖がらせるようなことは言わないでくれ!」

 マリアは一瞬、自分のことを言われたような気がしてビクッとした。
 宗一郎が真っ先にそれに気づいた。

 宗一郎:「おいおい、大森君。キミこそ、あまり大声を出さないでくれ。うちの娘になるかもしれないお嬢さんがビックリしちゃったじゃないか」
 大森:「も、申し訳ありません!」

 だが、勇太とマリアは宗一郎の意味深なセリフの意味を知って、勇太は照れたように落ち着きを無くし、マリアは俯いてしまった。

 渋谷:「オーナー、部屋を替えてもらうことはできますか?」
 本田:「それも、できればテレビのある部屋がいいです!」
 大森:「あいにくと塞がってまして……」
 島村:「えーっ!?」
 宗一郎:「私達の部屋じゃないところを見ると、あのスーツの人の部屋だろう」
 本田:「うへっ?あのヤバそうな感じの人?麻央っち、ちょっと交渉してきてよ」
 渋谷:「何で私が?私は直接見てないんだから、気にしてないし」

 結局、部屋を替えてもらうことは諦めたようだ。
 カーテンを閉めて、窓の鍵もしっかり掛ければ大丈夫だということになった。

 大森:「何かありましたら、すぐにお知らせください。ドアの横に内線電話がありますから」
 本田:「は〜い」
 渋谷:「ほら、真理愛、行くよ」

 女子大生3人組は階段を上がって行った。

 大森:「きっと、旅の疲れと酔っぱらっていて、幻でも見たんですよ。すいません、姪がお騒がせして……」
 宗一郎:「いや……」
 マリア:(あの霊感の無い女達の前にも現れた……?あの幽霊、何かこれからやろうとしているということか……。明らかに、良からぬことではないな)

 マリアはふと談話コーナーの窓に目をやった。
 するとそこには、2つの光が……!

 マリア:「わっ!?」

 人が集まる談話コーナーにも幽霊が現れた!?
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“大魔道師の弟子” 「女子大生3人組」

2017-01-13 21:01:28 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月31日17:00.天候:雪 ペンション“ビッグフォレスト”]

 マリアは温泉から上がると、脱衣所の洗面台の前で髪を乾かしていた。
 あえて入浴前に現れた幽霊の所を使っている。
 地縛霊というのがいるが、どうもこのペンションに現れるのは地縛霊ではないらしい。
 いや、このペンション内に括られていることは間違い無いだろうから、広義の意味では地縛霊になるのだろうが……。
 マップ移動すると現れなくなるのが狭義の地縛霊なら、意味は違ってくる。
 そして今は、マリアの前にはいないようだった。
 その幽霊は今のところ、マリアには用が無いらしい。
 だが、どこかで見られている気はした。
 直接的に用は無いが、何らかの理由で監視対象とはなっているのだろう。
 それは魔道師としての魔力だろうか。
 だがこの魔力を妖怪などに狙われても、幽霊に狙われる理由にはならないのだが(霊能者の持つ力は魔力では無い)。

 マリア:(よく分からないな。ある程度、何かの怨念は持っているようだ。ただ、それを私や勇太……引いては、ユウタの両親に向けるつもりはないらしい)

 自分達に危害が及ばないなら放置OKが方針のイリーナ組である。
 但し、それを解決してくれというオファーが出たら別だが。
 もちろん、報酬は頂く。

 勇太:「あ、マリアさん」

 脱衣所の外に出ると、勇太が待っていた。

 マリア:「あ、ゴメン。待たせた?」
 勇太:「いえ、別に大丈夫ですよ」

 マリアは白いブラウスの長袖を捲っていた。
 さすがに風呂上がりで暑いというのがある。
 本当はニットのベストも脱いでも良かったのだが、それだと下着が透けて見えてしまう恐れがあった為、躊躇した。

 ???:「マリア……?」
 マリア:「!?」

 マリアは地の底から聞こえてくる、自分を呼ぶような声がしたので振り向いた。
 今、温泉には誰もいないはずだ。
 もちろん、人の姿は無かった。

 勇太:「何かあったんですか、マリアさん?」
 マリア:「気のせいか……」

 マリアは首を傾げた。

 大浴場からロビーへ戻る途中には厨房やスタッフルーム、そしてオーナーの部屋のある廊下を通らなくてはならない。
 厨房からは食欲をそそる良い香りが漂っていた。

 勇太:「お、誰か来てる」

 ロビーに戻ると、フロントから話し声が聞こえて来た。
 複数の女性達のようだ。
 今、到着した宿泊客だろうか。

 ???:「あっ!もしかして、稲生勇太君!?」

 フロントにいた宿泊客は3人。
 年代は勇太やマリアとあまり変わらない。
 そのうちの1人が勇太を見て、パッと顔を明るくさせた。

 勇太:「えーと……?」

 勇太が記憶の糸を手繰り寄せる。
 女友達の多くない勇太にとって、記憶のダウンロードは早目のはずだが……。
 ナウ・ローディングの状態でいると、フロントにいた女性が助け船を出してくれた。
 それは大森オーナーの妻で、雪子という。
 オーナーの大森次郎は食事の支度中なので、その間は妻の雪子がフロント業務に当たるとのこと。

 雪子:「高校生の頃、助けた女の子がいなかった?」
 勇太:「高校の頃……?」

 勇太はその時の記憶を辿ってみた。
 東京中央学園の現役生として、威吹や新聞部のメンバー達と怪奇現象に立ち向かった記憶しか無いが……。

 ???:「埼玉の彩の国女子学園の島村真理愛だよ。忘れちゃった?」
 勇太:「彩の国女子学園!?あの時か!」

 勇太は思い出した。
 東京中央学園新聞部の噂を聞きつけて、そこに除霊の依頼をしてきた女子高生達がいたのだ。
 しょうがないので、女子バスケ部の交流試合の取材にかこつけて向かった。
 ただ、場所が女子高である為、例え新聞部の取材であっても男子の入校は認められなかった。
 女子部員だけで向かったのだが、とても苦戦した為、仕方なく威吹が対応した。
 威吹は勇太の言う事しか聞かなかった為(逆に勇太の言う事なら何でも聞く)、勇太も行かざるを得なかった。
 何とかバレずには済んだものの……。

 島村:「化け物に捕まってて危うく死ぬ所だったのを助けてくれたんだよ」
 勇太:「そう、だったっけ?」

 確かにあの時、何人かの女子生徒が獲物として捕まっていたような気がする。
 ただ当時の勇太は、いかに女子校への侵入がバレないか、威吹がいかに迅速にカタを付けてくれるか、そればかりを気にしていた。
 なので、全員救出することはできたが、あとは逃げるようにして帰ったのである。
 そんな記憶しかない。

 島村:「ちゃんとした御礼を言えなくて……。あ、この友達2人も助けられたんだよ。こっちが本田倫、そっちが渋谷麻央」

 島村が黒のロングなのに対し、本田はショートで眼鏡を掛けている。
 渋谷はセミロングで茶色に染めていた。

 本田:「あの時はありがとう」
 渋谷:「ありがとう。逃げなくても上手く、私達から先生には誤魔化したのに……」
 勇太:「さすがに女子校に男2人がこっそり入ったこと自体が犯罪みたいなものですから……。それに、活躍したのは僕じゃないですよ。威吹って、僕の友達です。キミ達も見ていたと思うけど、あの銀髪に着物を着て、刀を持っていたヤツね。僕はただ威吹を学校に連れて行って、化け物の居場所まで誘導しただけです」
 島村:「でも、的確にアドバイスしてたじゃん!」
 渋谷:「うん。それに、刀持った人が戦っている隙に私達を助けてくれた作戦は良かったと思うね」
 本田:「化け物、すっかり刀の人に気を取られてたもんね!ナイス作戦だったよ!」

 勇太がいきなりチヤホヤされたもので、蚊帳の外に追いやられたマリアだった。

 マリア:「……勇太っ!」
 勇太:「あっ、はいっ!」
 マリア:「早く部屋に戻ろう!」
 島村:「勇太君、この外人さんは?」
 勇太:「えーと……何て説明したらいいのかな?……実は僕、大学出てから魔道……あ、いや、世界的に有名な占い師の先生の所に弟子入りすることになって、この人はマリアンナ・スカーレットさんって言って、その先生の弟子の先輩」
 本田:「お〜、しまむーと同じ名前じゃん!」
 渋谷:「いや、少し違うから。真理愛は真理愛。この人はマリアンナさん」
 マリア:「マリアンナ・ベルフェ・スカーレットだ。イリーナ・レヴィア・ブリジッド師匠の1番弟子」
 本田:「イリーナ……?あっ、もしかして、ロシアのプーチン大統領の占いをした人!?」
 マリア:「その通り」
 島村:「じゃ、占ってください」
 マリア:「で、何を?」
 島村:「私と稲生勇太君との関係が上手く行くかどうか!」

 マリアのこめかみにピシッと怒筋が浮かんだ。

 渋谷:「あ、あのさ、そういうのはやめた方がいいと思うよ」

 この3人の中では渋谷が1番クールで空気解読が上手いらしい。

 マリア:「……最悪だという結果が出ている。あと、これからこのペンションで大きな災厄が訪れるということも。今のうちに去った方がいいだろう……!」
 勇太:「ま、まあまあ。それより、皆はどうしてこのペンションに?」

 勇太が話題を変えた。

 島村:「このペンションのオーナー、私の親戚の叔父さんなの」
 勇太:「そうだったんだ!」
 本田:「そう。で、冬休みを利用して、しまむーの帰省にくっついてきたってわけ」
 勇太:「帰省って、キミ達はいいの?」
 本田:「私も麻央っちも実家暮らしだから、たまには年末年始、旅行先で過ごすのも悪くないかなーなんて思ったってわけ。ペンションなら客として泊まれば、しまむーの帰省の邪魔にもならないしぃ!」

 本田はこの3人の中ではあっけらかんとしている。
 いずれにせよ、ダンテ一門の魔女達にはいないタイプだろう。
 勇太より2つ年下で、今は大学生とのこと。
 確かに、勇太が高校3年生の頃の話だ。

 勇太:「じゃあ僕達、ちょっと部屋に戻るから」

 勇太は不機嫌な顔をしているマリアの背中を押しながら言った。

 島村:「えっ、一緒の部屋!?」
 勇太:「いや、もちろん別」
 本田:「私達、209号室だから、いつでも遊びに来てね!」
 勇太:「どうもどうも」

 勇太はマリアの背中を押し、途中で手を引きながら階段を駆け登った。
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