ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

“大魔道師の弟子” 「東京から長野へ」

2017-05-27 16:49:01 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月29日09:10.天候:晴 JR渋谷駅前]

 ハチ公口付近に1台のハイエースが停車する。

 運転手:「はい、着きました。ありがとうございました」

 スライドドアが開くと、乗車していた宿泊客が降り始めた。
 車はホテルがやっている『お送りサービス』だった。

 稲生:「ありがとうございました」
 イリーナ:「Спасибо.」
 マリア:「Thanks.」

 1番後ろに乗っていた稲生達が最後に降りる。

 稲生:「自動通訳(魔法)、よく切れますね」
 イリーナ:「フリーWi-Fiが飛び交ってると切れやすいね」
 マリア:「見も蓋も無いこと言わないでくださいよ」
 稲生:「ま、とにかく電車に乗りましょう」

 稲生達は休日で賑わう渋谷駅の中に入った。

 稲生:「本当にタクシーじゃなくていいんですか?」
 イリーナ:「ええ。日本の鉄道は安全だしね」
 マリア:(タクシーで行こうとすると何か障害がある予知でもしたか?)
 稲生:「先ほどお渡ししたキップで、そのまま改札口を通れます」
 イリーナ:「了解」

 新宿から特急に乗り換えるが、乗車券は新宿ではなく、東京都区内になっている為。
 白馬までだと軽く片道200キロ以上となるので、乗車券はそうなる(200キロ以下だと東京山手線内となる)。

〔まもなく1番線に、新宿、池袋方面行きが到着します。危ないですから、黄色い線までお下がりください〕

 渋谷駅はホームが曲がっていて見通しが悪い為、ホームに駅員が2人立っている。
 やってきた電車は主力のE231系500番台(つまり、新型じゃない方)で、電子警笛を鳴らしながらやってきた。

〔しぶや、渋谷。ご乗車、ありがとうございます〕
〔「電車とホームの間が広く空いている所があります。足元にご注意ください」〕

 多くの乗客が降りてくる。
 因みに渋谷駅には、まだホームドアが無い。

 稲生:「久しぶりに渋谷駅から乗るなぁ……」

 稲生は運転室の後ろの窓に陣取った。
 発車メロディ(曲名:小川のせせらぎ)が鳴り響く。

〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 ホームが曲がっている為、稲生達が乗り込んだ先頭車は最後尾にいる車掌からは見えない。
 そこで、ホームの前方に立っている駅員と後方に立っている駅員が連携して客扱い監視をしている。
 そして、ドアが閉まる。
 運転室内からは、運転士がハンドルをガチャガチャと手前に引く音が聞こえて来た。

 稲生:「ユウタ、どのくらいで着く?」
 マリア:「ものの5〜6分程度です」
 稲生:「そうなのか」

 電車が走り出してから、そんなやり取りがあった。

〔この電車は山手線外回り、新宿、池袋方面行きです。次は原宿、原宿。お出口は、右側です。地下鉄千代田線と地下鉄副都心線は、お乗り換えです〕

 稲生:「あの、マリアさん……」
 マリア:「なに?」
 稲生:「そのブレザーですが……」
 マリア:「師匠に何か言われた?」

 マリアはチラッと後ろを見た。
 イリーナは座席に座っている。

 稲生:「マリアさんのブレザー、勝手に一晩預かってて、すいませんでした」
 マリア:「いや、いいよ。酔っ払って脱ぎ捨てた私が悪い」

 マリアのブレザーは緑色と言っても、今乗っている山手線のラインカラーであるウグイス色(車体色名。正式名称としては「国鉄黄緑6号」というので、「黄緑色」と呼んでも良いことになる)ではなく、埼京線の緑色(国鉄緑15号)に近い。
 他に実際、黄緑色に近いものやエメラルドグリーン(国鉄青緑1号)、更にはJR東日本のコーポレートカラーに近い緑(いわゆる、モスグリーン)のものも持っている。
 これはマリアが表向き好きな色が緑色だからというのもあるのだが、実際は契約悪魔であるベルフェゴールのシンボルカラーが緑だからである。
 ベルフェゴールから多大な魔力を受けている為、その証としてシンボルカラーを服飾の一部として使用しているだけに過ぎない。
 その為、イリーナも契約悪魔がレヴィアタンなのだが、こちらはピンク色がシンボルである為、今着ているドレスコートがピンク色なのはその為である(実際は鴇色や桃色としてのピンク色ではなく、レッドパープルに近い)。
 エレーナもマモンと契約したが、マモンは青色である為、それまでは魔女らしい黒い服を着ていたのだが、青い服を用意している。
 で、稲生が内々定している“色欲の悪魔”だが、こちらは紫色らしい。

 稲生:「やっぱりマリアさんには緑色が似合います」
 マリア:「ベルフェゴールが寂しがるもんでね。別に、嫌いな色ってわけじゃないんだけど」

 その為、夏はさすがに暑いのでブレザーは着ないが、代わりに薄緑色のブラウスを着るなどして対応している。

 稲生:「僕は紫かぁ……」

 稲生は東京メトロ半蔵門線のラインカラーを思い出した。

 稲生:「僕には似合いそうに無いなぁ……」
 マリア:「別に、パープル一辺倒でなくてもいい。大昔はだいぶこだわっていた悪魔達だけども、今はそこまで拘らないみたい」
 稲生:「そうなんですか」
 マリア:「よく見たら師匠の服、マゼンタだぞ。どちらかというと紫系の」
 稲生:「ありゃ?」
 マリア:「確か、ユウタが持っているスーツで、紺色のヤツがあるだろう?」
 稲生:「1着ありますね」
 マリア:「黒に近い紫色……何て言うのか知らないけど、そういう色のスーツでも買って着ればいいんだよ」
 稲生:「なるほど」

 稲生はポンと手を叩いた。
 後ろではあまり納得してなさそうな某色欲の悪魔がいたが、マリアが冷たい視線を送った。

 マリア:「他に契約してくれる魔道師もいないんだから、それくらい妥協しろ」

 と言った。

[同日10:04.天候:晴 JR新宿駅→特急“あずさ”55号8号車内]

 隣のホームから定期列車の“スーパーあずさ”11号が発車していく。
 稲生達が乗っている臨時列車はその後追いをしていくわけだが、先発列車と比べて停車駅が多いので、ダイヤ通りであるなら追い付くことはない。

 稲生:「新宿駅で少し時間があるからということで、少しエキナカを回ったわけですが……」

 稲生はグリーン席上の網棚に荷物を置いた。

 稲生:「最後の最後で『爆買い』しましたね」
 マリア:「何かきっかけが無いと、なかなか家の外に出ないからね。買い物は人形やユウタが行ってくれるからいいんだけど……」
 稲生:「村の中心部へ向かうバスが1日3本しか無い状態ですからねぇ……」

 それも、屋敷の最寄りバス停が、明らかに稲生くらいしか利用しないような所だ。
 網棚に乗せた荷物は、購入した日用品が入っているバッグだった。

〔「お待たせ致しました。10時4分発、中央本線特急“あずさ”55号、白馬行き、まもなく発車致します」〕

 ホームから発車メロディが微かに聞こえてくる。
 タイトルは“see you again”という、正に長距離列車に相応しい曲名なのだが。
 列車は新型車両のVVVFインバータの音を響かせて発車した。
 前に座るイリーナはリクライニングを倒して、早速寝入っている。

 稲生:「何だか大変な旅行でした」
 マリア:「大師匠様が、よくゾーイの幻影から逃れられたと驚かれていたみたいだな」
 稲生:「まあ、脱出ゲームは既に何度もやって……」
 マリア:「は?」
 稲生:「あ、いや、何でも無いです」

 マリアの屋敷において、自室として与えられた稲生の部屋に、テレビゲームが設置されていることはあまり大っぴらにしたくない稲生だった。

 マリア:「ま、師匠も寝てるし、帰りは何事も無く着けるだろう」
 稲生:「そうですね」

 臨時列車はそろそろ暑くなってくる日差しを背に、まずは北、それからすぐに西へと進路を取った。
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“大魔道師の弟子” 「一夜明けて」

2017-05-27 11:17:13 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月29日07:00.天候:晴 東京都渋谷区 ドーミーイン渋谷神宮前]

 イリーナ:「うーん……」

 イリーナは設定したモーニングコールで目を覚ました。

 イリーナ:(魔力が強いってのも楽じゃないねぇ……)

 隣のベッドでは直弟子のマリアが酔い潰れて眠っている。
 さすがにもう酔いは醒めただろうか?
 イリーナは起き上がると、ライティングデスクの上に乗せた白紙の手帳に何かをロシア語で書き込んだ。
 それは夢日記。
 イリーナは予知夢をよく見るので、それを手帳に書き込んでいるのだ。
 人によって見る夢の背景は、モノクロだったりカラーだったりする。
 イリーナの場合、どちらも見るが、それだけなら大勢に影響は無い。
 要注意なのは、その背景が赤色になっている場合。
 ほぼ100%の確率で発生するフラグといっても良いもので、しかも大凶夢である。
 イリーナはそれを『赤い夢』と呼んでいるが、今回はそれが無かった。
 もちろん予知夢である為、それを見た後で、自分は回避することは可能。
 多くの場合は、イリーナ1人では食い止めることができない場合が殆ど。
 食い止めることができる場合、もう『赤い夢』として見ることが無い。
 実は今見た夢の中に、稲生の死亡フラグがあったのだが、ほぼ簡単に回避できるものだったので、『赤い夢』としては登場しなかった。

 イリーナ:「マリア、そろそろ起きなさい」
 マリア:「う……」

 イリーナが揺り動かすと、マリアはだるそうにしていた。

 マリア:「……あと5分……」
 イリーナ:「ダメよ。私がそう言った時、すぐに起こすでしょう?分かったら、あなたもすぐに起きなさい。ほら!」

 イリーナはマリアの上半身を起こした。
 ホテルに戻る前から良い潰れていたので、昨日着ていた服のまんまだ。

 マリア:「頭痛い……」
 イリーナ:「昨夜、飲み過ぎたからね。ポーションがあるから、それを飲みなさい」
 マリア:「昨夜……。えっと……」
 イリーナ:「深くは思い出さない方がいいよ。それより、早くその服着替えてお風呂に行こう。せっかくユウタ君が大きなお風呂のあるホテルを取ってくれたのに、まだ入ってない」
 マリア:「はあ……」

 マリアはベッドに座ると、しわしわになったブラウスを脱ぎ始めた。
 何の疑いも無く下着を替えていると、ふと気づいた。

 マリア:「師匠、私のブレザー知りませんか?」
 イリーナ:「あんた、酔っぱらってて暑いなんて言って、思いっ切り脱いでたじゃない」
 マリア:「は!?」
 イリーナ:「ユウタ君の前でスカートまで脱ごうとしたものだから、私が慌てて止めたんだからね」
 マリア:「……そうでしたっけ???(;゚Д゚)」
 イリーナ:「ユウタ君は昨日、お風呂に入ったのかな?ちょっと聞いてみましょう」

 イリーナはデスク上の電話機を取ると、それで稲生の部屋に掛けた。
 部屋同士、内線が掛けられる。

 イリーナ:「ん?あれ?」
 マリア:「どうしたんですか?」
 イリーナ:「なかなか出ないわねぇ……。まだ寝てるのかな?それとも……」
 マリア:「ユウタも酔い潰れてました?」
 イリーナ:「あなたが先に酔い潰れたものだから、それどころじゃなかったよ」
 マリア:「うっ……!」
 稲生:「はいっ、もしもし!稲生です!」
 イリーナ:「あっ、ユウタ君、おはよう。どうしたの、そんなに慌てて……」
 稲生:「あっ、いや、すいません!お待たせしました……」
 イリーナ:「別にいいのよ。昨夜は大変だったもんねぇ……」

 イリーナ、チラッとマリアを見る。

 マリア:「もうカンベンしてください……」
 イリーナ:「それでね、マリアったらまだお風呂入ってないから、これから行こうと思うんだけど、一緒に行く?」
 稲生:「あ、はい。行きます」

 その時、マリアがイリーナから受話器を奪い取った。

 マリア:「ユウタ!私のブレザー知らない!?」
 稲生:「ブっ、ブレザーですか!?じ、実はお預かりしています」
 マリア:「すぐ返して!」
 稲生:「わっ、分かりました!今、持っていきます!」

 イリーナはその間、稲生がどうして慌てたのか、どうしてすぐに電話に出なかったのかを水晶球で見てみた。

 イリーナ:「あー……若いっていいねぇ……」

[同日08:00.天候:晴 同ホテル]

 今回はマリア達の下着がパクられることは無かった。

 稲生:「ふう……」

 稲生は先に出て待っていたが、女湯から出て来たのはイリーナだけだった。

 稲生:「あっ、先生」
 イリーナ:「マリア、もうすぐ来るよ」
 稲生:「分かりました。このままホテルのレストランで朝食にしようかと思いますが、いいですか?」
 イリーナ:「そうしよう。今度は何でもいいよ」
 稲生:「はい」
 イリーナ:「昨夜は大変だったねぇ……」
 稲生:「そうですね。でもまあ、マリアさんの意外な一面が見れて……何か、良かったです」
 イリーナ:「うんうん、そうだね」

 するとイリーナ、こそっと稲生の耳元に寄る。

 イリーナ:「ユウタ君、マリアの匂いは良かったかい?」
 稲生:「ええっ!?」
 イリーナ:「その人の体臭がいいと思えば、それは体の相性が合うってことだよ」
 稲生:「あの……その……」
 イリーナ:「私もそうだけど、マリアもコーカソイドだから、体臭は結構あるんだよね」
 稲生:「はあ……」
 イリーナ:「電話に出れなかったのは、ちょうど『絶頂』にいたからかい?悪かったね。とんでもない時に電話しちゃって」
 稲生:「すいませんでした」
 イリーナ:「いやいや、あなたが謝ることはないよ」
 稲生:「ちゃんとファブリーズしておきましたから」
 イリーナ:「あー、それは余計だったかもね」
 稲生:「えっ?」
 イリーナ:「さっきお風呂でマリアに、『あのブレザーが一晩、ユウタ君という男の子の部屋に預けられていた意味を考えてみましょう』という課題を与えてみたの。そしたらね、『しばらく洗いません』だって」
 稲生:「え……?」
 イリーナ:「そこで稲生君へ、私という先生からの課題。『その答えに対する意味を考えなさい』」
 稲生:「か、課題の提出期限は?」
 イリーナ:「自由よ。むしろ、提出してもしなくても構わない。いや、むしろ提出先は私じゃなくてマリアの方がいいかな?ま、とにかく課題に対する答えを出したという所をいつの日か見せてくれればいいわ」
 稲生:「わ、分かりました」

 すると、そこへようやくマリアがやってきた。

 マリア:「遅くなりました」
 イリーナ:「はいよ。それじゃ、今度は朝食と行こうかね」

 イリーナは相変わらずの調子で向かい、後に続く2人の弟子は何となくぎこちなかった。
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短いながらも雑感です。

2017-05-27 10:37:25 | 日記
 “フェイク”が大石寺で行われている夏期講習会のことを、「実りの無いもの」と叩いていたが、やはり衰退しているのか。
 私の場合、法道院に所属してから1度も参加したことが無い。
 平日の部が無かったから、参加しにくかったというのもあるしね。

 因みに今研修中の新しい職場は、前職場(法道院で信心していた時)よりも土日の休みが比較的取りやすくなっているというのが痛烈な皮肉だ。
 辞めてから1年も経たないうちに信心しやすい環境に異動となるとは!

 河童さんの“業務日誌de功徳〜(笑)”もお腹一杯だけど、破折ばかりで自分の功徳もブログや掲示板で語れない法華講員もイタいような気がする。

「いやいや、日々無病息災・家内安全などが功徳です」

 と、辛うじて反論する人もいるだろうけど、これってつまり、

「私の警備会社と契約して頂ければ、毎日安全・安心を御提供します!」

 と、言ったところで、

「それだけなら、他の警備会社と同じじゃん」

 と、言われるのと同じことなのである。
 他の警備会社と違う所、つまり何かのプラスαを営業しないと契約して頂けない時代だ。
 毎日が無病息災・家内安全だけなら、他の宗教と同じだ。
 もし日蓮正宗や顕正会に入信して欲しかったら、他の宗教と違うプラスαを語らなくてはならない。
 ただ単に、「うちだけが正しい」だけではダメなんだよ。
 正しい理由が御書を出して難しい古文をひけらかしたリ、代表者の指導を出したりしているけど、それだけでは納得できない。
 私の場合、手っ取り早いのが功徳の内容(それも他人のではなく、自分の)だと思ってはいるのだが、それだけでもまだ弱い部分はある。
 他の宗派でもやっていたりするからね。

 じゃあ、どうしろというのか。

 私はもうただ単に、これから所属してもらう支部(顕正会の場合は隊など)が如何に楽しい所かをアピールするのが良いと思う。
 もちろん、これだって他の宗派でもそうだよと言われればそれまでなのだが、しかしどうだろう?
 私はその部分が日蓮正宗や顕正会には欠けているような気がしてしょうがないのだ。

 んっ?さんに聞いてみたいんだけど、創価学会ではそういった点は恐らく大丈夫じゃないかなと。
 創価学会は創価学会で、それなりに一見して信心とは関係ないようなイベントを結構行っているような気がするのだが……。
 でも、それが無駄だとは思わない。
 それがきっかけで日蓮正宗の場合は所属寺院、顕正会なら所属組織の拠点となっている会館に足が運ぶようになればそれで良いではないか。
 ところが、どういうわけだか、それが無駄なことと斬り捨てる人達が多いんだよね。
 結局、そういう人達と揉めたのも辞めようと思ったきっかけでもあるのだが。

 楽しいイベントをやることって、そんなに無駄なことかい?

 「無駄なことだ!そんなヒマがあったら折伏しろ!誓願に間に合わんぞ!」

 と反論されるなら、やっぱり私には合わない宗派だったということになる。
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“大魔道師の弟子” 「魔道師達の宴会」

2017-05-26 20:45:10 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月28日18:00.天候:晴 東京都中央区築地 築地場外市場]

 稲生達はホテル前からタクシーに乗り、魚が食べたいというイリーナの希望を叶えるべく、築地の場外市場へと向かった。

 稲生:「この辺でいいかな……」
 運転手:「よろしいですか?」
 稲生:「はい。ここでお願いします」

 タクシー自体は入場が規制されている為、外周部の公道上で降りる。

 マリア:「魚臭い……」
 イリーナ:「何だか懐かしい匂いだねぇ……」
 マリア:「師匠はロシアの沿岸部生まれでした?」
 イリーナ:「そうかもね」
 マリア:「かもねって……」
 イリーナ:「この体の本当の持ち主が、そうだったかもしれないよ」
 マリア:「…………」
 イリーナ:「あなたも200年そこらでその体を別人の物と交換することになるんだから、細かいことは気にしない気にしない」
 マリア:(その境地に至るまで、あと何年掛かることやら……)

 稲生がイリーナのカードでタクシー料金を払い、最後に降りて来た。

 稲生:「じゃあ早速行きましょう。先生ご希望の魚がメインですが、肉も食べれる店を見つけましたので」
 イリーナ:「良かったね。肉もあるって。さすがはユウタ君だね」

[同日19:00.天候:晴 東京都中央区築地 某飲食店]

 マリア:「Excuse me!Japanese highball one!」
 稲生:「ま、マリアさん……?」
 イリーナ:「マリア、自動通訳(魔法)切れてるわよ」

 いつになくハイテンションになっているマリア。
 イリーナが日本酒を美味そうに飲んでいるのを見て、稲生が感嘆の声を上げたのが気に障り、自分もと1合飲んでから何かを間違えたようだ。

 稲生:「あっ、肉料理も来ますから」
 マリア:「肉もいいけど、酒も飲め!ユタっ!」
 稲生:「あ、さっきビール頼んで……」
 マリア:「日本人のくせに日本酒飲まねぇだとっ、ああっ!?」
 稲生:「いや、僕もそんなに酒強くないんで、アルコール度数10%以上のものはちょっと……」
 イリーナ:「あんたも日本酒1合だけでそのザマでしょ?」
 マリア:「分かりました!んじゃ、もう1合飲んでやります!」
 イリーナ:「やめなさい。もうあんた、顔と肌が真っ赤よ」
 マリア:「ユタ!アタシと一緒に飲め!そんでアタシの話を聞けっ!」
 稲生:「もう既に飲んでますけど……?」
 マリア:「だーかーらぁ!そんなビール、ジュース同然だろうが!Japanese sake・・・・・・・・・・(以下、解読不可能)」
 イリーナ:「ダメだこりゃ……」
 マリア:「暑いし!」
 イリーナ:「ちょっと!脱ぐなら、上のブレザーまでにしなさいよ!」
 マリア:「んじゃ、スカートならOKっスか?」
 稲生:「ブッ!」
 イリーナ:「OKじゃない!」
 稲生:(この人、あんま酒飲ませちゃいけない人だったーっ!)Σ( ̄□ ̄|||)

 屋敷では夕食おいて普通にワインまたはハイボールを飲んでいるくらいだから、日本酒も大丈夫だと思っていたのだが……。
 更に追加注文したハイボールをガブ飲みして、ついにマリアはテーブルに突っ伏して酔い潰れたのだった。

 稲生:(;゚Д゚)???
 イリーナ:「ゴメンねぇ。まさか、本当に日本酒飲むとは思わなかったから」
 稲生:「僕も想定外でした。ワインと日本酒って、アルコール度数が似たようなものだから、多分大丈夫だと思っていたんですが……」

 ただ、確かに稲生の中では、日本酒は悪酔いしやすい傾向があるというイメージは持っていた。
 それでもワインを飲んで平気なんだから、1合くらいなら大丈夫だろうと思っていたのだが……。

 イリーナ:「でもまあ、こうしてマリアを見ていると、何だか昔を思い出すわ」
 稲生:「そうなんですか?聞きたいです。先生の昔の話……」
 イリーナ:「そうねぇ……。半分失敗談、半分成功談の話でもしましょうか」

[今から数百年前のヨーロッパ某国]

 イリーナがダンテの直弟子であることは知られているが、更に知られているのが出戻り者であるということ。
 これは1度、修行を投げ出してしまった落伍者の烙印を押されたことを意味している。
 今でこそ大師匠ダンテは威厳に満ちた老翁といった感じ(もっとも、姿を現す時は50代くらいに若作りして登場する)だが、イリーナが修行を投げ出す直前のダンテは、イリーナから見れば、今でいうパワハラ上司みたいな感じであった。

 ダンテ:「イリーナ!課題の提出期限迫ってるぞ!まだ出してないのお前だけだぞ!!」
 イリーナ:「はい!もうすぐ出します!」
 ダンテ:「イリーナ!実験用魔法陣のデザイン間違ってるぞ!!」
 イリーナ:「はい!今直します!」
 ダンテ:「イリーナ!こっち手伝え!!」
 イリーナ:「はい!今行きます!」
 ダンテ:「イリーナ!フランス情勢の修正はどうなってる!?」
 イリーナ:「あー、まだっスねぇ……」
 ダンテ:「何をやってるんだ!?俺は何て言った!?今すぐやれって言ったよな!?すぐって言ったらすぐなんだよ!!」
 イリーナ:「ロシアの方もちょっと情勢が……」
 ダンテ:「口答えするな!いいか!?俺の予知じゃ、フランスはもうすぐ反乱が起こるんだ!俺達の活動費用を出してくれているルイ王朝が潰れたらどうするんだ!いいか!?何としてでも反乱を食い止めろ!分かったな!?」
 イリーナ:「優先順位的にはロシアの方が……」

 しかし、ダンテの怒鳴り声が響く。
 そして、ついに……。

 イリーナ:「うるっせぇぇぇっ!!」
 ダンテ:「なにいっ!?」
 イリーナ:「こんな所もう辞めてやるよ!!」

 そして……。

 イリーナ:「おっちゃん、もう一杯!」
 店主:「はいよ」

 酒場で酒浸りになるイリーナ。

 イリーナ:「くそっ!あのクソオヤジが……。魔界にでも行って、大魔王バァルの椅子でも狙ってやろうかしら……」

 で、ワインの瓶片手に千鳥足。
 山に分け入ってしまい、山賊達に取り囲まれるも、魔法で一網打尽にしてしまう。

 山賊:「ね……姉ちゃんよ……!そっから先は危険だぜ……ああっ?……も……猛獣が出るって話だかんなぁ……ああっ?……ガクッ……」
 イリーナ:「猛獣?どっからでも掛かってこいやぁ!……ヒック!山はいいよねぇ!」

 完全に酔っ払いの千鳥足状態ながら、山賊団を一網打尽にできる魔法は使えたイリーナ。

 イリーナ:「……十九の青春♪道まよい♪キリストの道♪我往くと……ヒック!神なんかいねぇよ、ヒック!どこ行くんだよ、オラッ!」

 と、イリーナの行く手を遮る者がいた。

 イリーナ:「あーん……?誰だ、コラァ……?」

 酔っぱらって前後不覚になっているイリーナの視界に現れたのは……ドラゴンだった!
 ドラゴンは真正面にイリーナを見据えていた。

 ドラゴン:「……人間!どこからやってきた?ここは我の張った結界で入って来れないはずだ……!」
 イリーナ:「わぁい!ドラゴンだぁ〜!乗せて乗せてー!」

 イリーナはドラゴンの顔の上に抱きついた。
 だがドラゴンは、フンっと鼻息でイリーナを軽く吹き飛ばす。

 ドラゴン:「不遜な人間よ。直ちにここから去れ。さもなくば食い殺す……」
 イリーナ:「ねぇ。あんた、見たところ、魔界から流れて来た若いドラゴンでしょ?人間で言うなら、やっと大人になったかくらいの」
 ドラゴン:「なっ……!?」
 イリーナ:「まだ若いんだから、そんな堅苦しい話し方しないの。……で、その背中に刺さってる剣は何なの?」
 ドラゴン:「……お前に話すことなど無い。どうせ我も死ぬ。この背中の剣のせいで……」
 イリーナ:「んじゃ抜いてあげる」
 ドラゴン:「は!?」

 イリーナはドラゴンの背中によじ登った。

 ドラゴン:「おい、バカ!やめろ!その背中の剣、大きさを見れば分かるだろ!?ただの剣ではないぞ!これは魔界で大魔王バァルに刺された大剣で、一介の人間如きが触れただけでも滅されるものだぞ!?」
 イリーナ:「んなこと知らないし!魔王のクソジジィが何だって言うのよ!?皆してアタシのことバカにしやがって!んききききき……!!」

 イリーナはその剣を両手で掴んだ。

 イリーナ:「大魔王に神以上の力があるってんならぁ……!今すぐ課題提出日延ばしてみやがれぃ!ヒック!」

 ズボォォォッ!(剣が抜けた)

 ドラゴン:「ええええええええ!?」

 イリーナ:「飲めや!ドラゴン!そんでアタシの話を聞けぇっ!」
 ドラゴン:「す、すいませんでした。まさか、魔法使いだったとは……。本当に、何て御礼を言ったらいいか……」
 イリーナ:「んなことどうだっていいんだよォ!ヒック!さっさと飲めや、オラ!アタシだって鬱憤沢山溜まってんだ!!」

[同日22:00.天候:晴 東京都渋谷区 稲生達の宿泊しているホテル]

 ホテルの前にタクシーが到着する。
 酔い潰れたマリアは、イリーナが軽々と背負っていた。

 稲生:「まさか、大師匠様とケンカ別れしたのが原因で、リシーツァを使い魔にしたとは……」
 イリーナ:「あのコもバァルにコキ使われて、ついに爆発したみたいね。そしたら、バァルが逆ギレしたっていう……。ほんと、老害達は困るわねぇ。リシーちゃんったら、どうしても私に御礼がしたいっていうから、使い魔になってもらったの」
 稲生:「そうだったんですか」
 イリーナ:「せっかくユウタ君が大浴場のあるホテルを取ってくれたのに、勿体無いねぇ……」
 稲生:「まあ、大浴場は翌朝でも入れますから」

 エレベーターに乗って、客室フロアで別れた稲生達。
 稲生にとってはマリアの意外な一面が見れたが、別に幻滅はしなかった。
 むしろ、ハイテンションなマリアもそれはそれでいいと思ったものだ。
 しかも……。

 稲生:「あ、持ってきちゃった……」

 マリアの緑色のブレザーを持ってきてしまった。

 稲生:「ま、いっか。明日返せば……。うん、明日でもね」
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小説の途中ですが、ここで本日の日記お送り致します。20170525

2017-05-25 20:06:52 | 日記
 今日から新しい現場での研修が始まった。
 所属支社の担当主任に連れられて行った場所は、とある工場。
 工場なだけに警備上の機密も多く、詳細をここで語ることはできないが、歴史ある場所とはいえ、古い建物が多い(というか古い建物しか無い)。
 まるで、昭和時代に戻ったかのようだ。

 昭和も昭和。

 弊社警備員の休憩室として与えられた部屋が、工場敷地内の一軒家の中だった。
 その家というのが、これまたリアル“三丁目の夕日”といった感じ。
 畳は新しいものに替えられ(つまり和室!)、新型のエアコンも完備されていて自由に使って良いとのことだったが、共用のトイレがこれがまた……。
 通称「朝顔」と呼ばれるタイプの小便器で、水を流す為には便器の上に設置されている水道の蛇口をひねるタイプだ(多分、私が言葉で説明しても20代以下の、引いては同年代の30代でもピンと来ないのではないだろうか)。
 私が在住している社員寮も平成元年定礎ということもあって、トイレなども陳腐化しているのだが、それでも小便器はまだボタン式だし、個室にはちゃんと洋式もある。
 その休憩室のある一軒家は、他にも清掃員や設備員が休憩室として使っている所らしい。
 そのうちの一部屋だけは、弊社警備員専用室となっている。
 小便器があの古さなら、個室もまた【お察しください】。
 7〜8年ぶりに使う和式トイレというだけでも戸惑うのに、水を流す方法が分からずに5分ほど苦戦した。
 普通は便器の上にレバーが付いているよなぁ……と。

 実は、壁にボタンが仕掛けられているとか?……いや、違う。

 実はセンサー式だった!?……いやいや、最新式のセンサーにするくらいならまず便器に洋式に替えてくれ。

 よく見るとパイプの上、天井付近の高さの所に水タンクがある。
 私が卒業した小中学校のトイレは、小便器の上に水タンクがあって、一定時間おきに水が全便器に一斉に流れる仕組みになっていた。
 え?まさか、これも?
 うーん……。

 で、ようやく分かった。
 水タンクの下から一本のチェーンが伸びており、これを引っ張って水を流す仕組みだったのだ。
 何とまあ、バリアフリーの欠片も無い。
 休憩室に戻ってから、同じく研修に入っている50代半ばのオジさんに聞いたら、あっけらかんとしていた。

「おお、そうか!懐かしいな!」

 と。
 いや、こちとらとても新鮮過ぎて涙が出ました。

 本当は是非とも写真に撮ってアップしたいところなのだが、工場内は撮影は一切禁止というお達しで、それが例え休憩室のある一軒家であろうとダメだということだった。
 言葉では上手く表現できなくて申し訳ないのだが、もしこれを読んでいる方がお若く、ピンと来ないようなら、近しい年配者に聞いてみると良い。

 と、言いつつ、きっと私が年配者になる頃は、ボタン式の小便器やレバー式(またはボタン式)の大便器も殆ど見られなくなって、30代以下の後輩が驚愕する所を見ることになるのだろう。

 嗚呼、世代間ギャップ!

 因みに担当主任からは私は班長として赴任すると聞いていたのだが、何故だか支隊長……もとい、副隊長のバッジが用意されていたことは見なかったことにしておこう。
 研修は明日も続く。
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